十代がカイザー丸藤亮とデュエルすると決めて数日後。
三日月は十代と一緒に購買のデスクに腰かけていた。
「デュエル許可願い、遊城十代。相手は丸藤亮……っと」
「あとはデュエルスペースの場所と日時だね」
十代が書いているのはデュエルスペースの使用許可願いだ。
カイザーとデュエルするならば、そういった申請をするようにと明日香から薦められていた。
というのも、単純に成績最優秀かつ最も強いと言われている生徒との対戦希望。十代は目をつけられているので、こういうときにはきちんとしたほうがいいということである。
2人で申請書の記入をしていると、通りかかったクロノスが近寄って申請書を奪い取った。
「あっ!」
「フーム、デュエル許可願い。相手ーは、ゴルゴンゾーラ!?」
名前を見てクロノスはギョッと目を見開いた。
まあそれそうだろうと三日月は頷く。
「なぁ、返してくれよ! まだ途中なんだ」
「心配いりまセンーノ。何故なーら、オシリスレッドの落第生が、オベリスクブルーの丸藤亮とデュエルなど、思い上がりもいいところデスーノ!」
クロノスは煽るように言いながら、目の前で申請書をビリビリと破り捨ててしまった。
「ああーっ!?」
「フン! セニョール三日月は、申請してくれたら優先的に扱うノーネ! あなたのデュエルーは、生徒たちにもいい刺激デスーノ!」
三日月にはにっこりとデュエルを薦め、そのまま出ていってしまった。
わかりやすい贔屓である。が、成績優秀で現役プロの三日月と問題児の十代では扱いが違うのは仕方のないことだった。実力主義のアカデミアなのだから。
「なんなんだよクロノス先生!」
「相変わらずだねぇ」
流石の十代も目を吊り上げてぷんすか怒っていた。三日月も目の前でやられて苦笑いだ。
「ちぇ! ちょっと外に出てくる!」
「いってらっしゃーい。さーて、僕もどうしよう」
肩を怒らせる十代に手を振って見送る。
一応翔のフォローであったりアドバイスを考えたりしている三日月だが、本人が最近授業にも出ずに部屋でこもりっきりなのだ。
いい案はないかと考えてはいるが、中々難しい。
デュエルばかりは、本人の気持ちが全て。デュエリストの魂を燃やさなければ勝負にすらならないのだ。
だからこそ、翔にカードを封印させているカイザーの印象はよくはない。
デュエルにおいて『使わないカード』を作るということが、プロとしての理念に反するからである。
成績優秀でも、デュエルが強くても、カードを使わせないのはデュエリストとして恥ずべき行為だ。
「ま、事情を知らないからとやかく言えないけどね」
しかし今回は兄弟間の話だ。
詳しい内容を知らないので、三日月は何も言うことはない。
ただちょっと、カイザーって言うほどすごい人じゃないんだろうなと思っているだけである。
「ドローパン買って帰ろうかな。セイコさーん、ドローパン1つくださーい」
「はいどうぞー!」
店員のセイコさんに声をかけ、ドローパンを1つとって購買を後にする三日月。
何か変なことが起きなければいいなぁと思いながらドローパンを頬張るのだった。
「お、ジャムパンだ」
◆ ◆ ◆
「えーっと、これってどういう状況?」
その日の夜。明日香から連絡を受けて呼び出されると、十代とオベリスクブルーの先輩らしき人が対峙していた。
ギャラリーは明日香に翔、隼人だ。
「この人が丸藤亮。カイザーよ」
「うぅん……? ああ、どうも。三日月圭です」
「丸藤亮だ。現役プロのアヌビスとアカデミアであえて嬉しいよ」
お互いに礼をして握手する。
何がどうなったら十代とカイザー亮でデュエルすることになるのだろうかと首を傾げる三日月。
明日香の説明によると、どうやら翔がお手製のいかだでアカデミアから逃走を図ろうとしていたらしい。
そこに十代がインターセプト。止めに入ったものの、その場面を亮と明日香に見つかった。
カイザーは翔に逃げるなら逃げろと突き放したため、十代が餞別で俺とデュエルしろ! と言って了承したため、今に至ると。
「……なにがなんだか。随分と奇跡的だね」
「ええ、そうね」
隼人の隣で不安そうにしている翔。
まあ、とりあえず何事もなくいるのでよしとしよう。
「言いたいことは山ほどあるけど、一旦デュエルを見ようか。2人ともよろしく」
「俺はいつでもいいぜ!」
「俺もだ」
2人は改めて構えると、デュエルディスクを起動した。
「「デュエル!」」
十代 LP4000
カイザー亮 LP4000
「くぅ~! アカデミア最強のカイザーとなんて楽しみだぜ! 俺のターン、ドロー!」
十代は勢いよくカードをドローすると、手札を見てモンスターを掴む。
「
現れるのはいつものヒーローフェザーマン。
十代が信頼する風の戦士だ。
《
星3/風属性/戦士族
攻1000/守1000
防御のカードを伏せてターンを渡す十代。奇しくも翔とデュエルした時と同じ構えだ。
「俺のターン、ドロー。俺は《サイバー・ドラゴン》を特殊召喚!」
カイザーは手札から機械の竜を特殊召喚した!
手足のないヘビのようなドラゴンは、駆動音を響かせながら強烈な存在感を放つ。
《サイバー・ドラゴン》
星5/光属性/機械族
攻2100/守1600
「レベル5のモンスターを特殊召喚!?」
「《サイバー・ドラゴン》は、相手フィールドにのみモンスターが存在する時、手札から特殊召喚できる」
高い攻撃力にすぐさま呼び出せる特殊効果。
使い勝手が良く、それでいて強力なモンスターだ。
「《サイバー・ドラゴン》! なるほど、そういうことか」
「知ってるんだな、圭」
「うん」
三日月は何度も見たことがあった。プロデュエリストの中にもいるのだ、この《サイバー・ドラゴン》を主軸として使うデュエリストが。
サイバー流と呼ばれる流派のデュエリストで、互いのエースモンスターで真っ向勝負することを信条としている。
「何回かデュエルしたことがあるよ。引きが強いし、デュエルタクティクスもすごかった」
「サイバー流……なんだかすごそうなんだぞ」
隼人はごくりと唾を飲み込む。
カイザーは静かにフィールドを確認すると、手札のカードを発動する。
「速攻魔法《サイクロン》を発動。お前のセットカードを破壊させてもらう」
突然の暴風で、十代の伏せカードが破壊される。
セットカードは《攻撃の無力化》。攻撃反応の罠カードだったため、そのまま破壊されてしまう。
「くっ! リバースカードが!」
「バトルだ。《サイバー・ドラゴン》でフェザーマンに攻撃! エヴォリューション・バースト!」
《サイバー・ドラゴン》の口から放たれた光のビームがフェザーマンに直撃!
高い攻撃力で一気に破壊されてしまった。
十代 LP4000 → 2900
「うわあーっ!」
「アニキ!?」
「十代!」
一瞬でフィールドを更地にされ、思わず声をかけてしまう翔と隼人。
明日香は見慣れているのか、少し心配そうなだけ。
三日月はと言うと、うーんとやや唸りつつ今の流れを見ていた。
「俺は魔法カード《タイムカプセル》を発動。デッキからタイムカプセルの中にカードを封印する。発動後、2回目のスタンバイフェイズに手札に加えるカードだ。俺はこれでターンエンド」
カイザーは次なる展開へ向けてカードを封じた。
攻撃的な布陣だ。防御型の三日月とは対照的なデュエル展開である。
「へへっ! 面白いな! 俺のターンだ、ドロー!」
十代はそうこなくっちゃと楽しそうにカードをドローする。
手札にカードが揃ったのか、カイザーのフィールドを見てカードを発動した。
「魔法カード、《融合》を発動!」
「! 来るか」
「俺は手札の《
《
星4/光属性/戦士族
攻1600/守1200
《
星4/地属性/戦士族
攻800/守2000
電気の戦士と土くれの戦士が飛び上がって融合される。
現れたのは幾度となく十代を助けた稲妻の巨人。
「現れろ! 《
《
星6/光属性/戦士族
攻2400/守1500
「来た! 十代の融合ヒーロー!」
「サンダー・ジャイアント……やるわね、十代」
展開を押し返せるモンスターを出したことに喜ぶ2人。
十代は嬉しそうにしながら、手札を1枚墓地へと送る。
「サンダー・ジャイアントの効果! 手札を1枚墓地に送り、サンダー・ジャイアントより攻撃力が低い相手フィールドのモンスターを破壊する! 《サイバー・ドラゴン》を破壊するぜ!」
サンダー・ジャイアントが稲妻を放ち、《サイバー・ドラゴン》に直撃!
電気系統が全てショートし、煙を出しながらガラガラと崩れ落ちた。
「なるほど、なかなかやる」
「へへっ! 行くぜ、バトルだ! サンダー・ジャイアントでカイザーへダイレクトアタック!」
そのままの勢いで稲妻を再度放ち、カイザーへと放つ。
防御札のない状態だ。そのまま直撃して大きくライフポイントを減らした。
カイザー亮 LP4000 → 1600
「お兄さんのライフが一気に!」
「すごいぞ、十代!」
盛り返した十代に盛り上がるが、三日月も明日香も冷静だ。
それは、サイバー流と言う流派を知っているためである。
「よし! 俺はさらに《強欲な壺》を発動するぜ! カードを2枚ドローだ!」
「強欲っすよアニキ!」
十代は新たにカードを2枚ドローすると、よしと頷いてカードをセットする。
「カードを1枚伏せて、ターンエンド!」
「俺のターン、ドロー。《タイムカプセル》は時を刻む」
カイザーのタイムカプセルがゴリゴリと音を立てる。
次のターン、封じられたカードが手に入るようになるのだ。
「俺は手札から《サイバー・ドラゴン》を特殊召喚」
「流石はサイバー流……」
カイザーがいとも簡単に《サイバー・ドラゴン》を出してくるのを呆れた表情で見る三日月。
プロのデュエルでもよくやられるため、辟易しているのだ。
「さらに魔法カード《死者蘇生》を発動! 墓地の《サイバー・ドラゴン》を復活させる!」
「2体目だって!?」
2体のサイバー・ドラゴンがフィールドに並び、十代は驚く。
「だけど、《サイバー・ドラゴン》の攻撃力は2100。サンダー・ジャイアントには届かないぜ」
「なら見るといい。《サイバー・ドラゴン》の真の強さを!」
カイザーは手札のカードを十代に見せつける。
「魔法カード、《融合》を発動!」
「《融合》!?」
「フィールドの《サイバー・ドラゴン》2体で融合召喚!」
機械の竜が2体融合の渦に飲み込まれていく。
「現れろ! 《サイバー・ツイン・ドラゴン》!」
現れたのは2体が合体したようなサイバー・ドラゴンだ。
2つの頭に1つの胴としっぽ。しかしその威圧感はすさまじい。
《サイバー・ツイン・ドラゴン》
星8/光属性/機械族
攻2800/守2100
「《サイバー・ツイン・ドラゴン》は、1度のバトルフェイズで2回攻撃ができる」
「なんだって!?」
「そんな! 十代!」
「アニキ!」
あまりの強烈な効果に悲鳴も沸き上がる。
十代も驚き《サイバー・ツイン・ドラゴン》を凝視してしまう。
「バトルだ! 《サイバー・ツイン・ドラゴン》でサンダー・ジャイアントに攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト!」
「罠発動! 《ヒーロー見参》! カイザーは俺の手札から1枚指定して、そのカードがモンスターだったら特殊召喚できるぜ!」
「お前の手札は1枚……つまり、そのカードがでるということか」
「ああ! 俺は《フレンドッグ》を守備表示で特殊召喚!」
十代が防御にと召喚したのは機械でできた犬だ。
人懐っこい動きを見せるが、《サイバー・ツイン・ドラゴン》を見てそそくさと丸くなった。
《フレンドッグ》
星3/地属性/機械族
攻800/守1200
「……攻撃は続行する。サンダー・ジャイアントに攻撃!」
《サイバー・ツイン・ドラゴン》の攻撃はそのままサンダー・ジャイアントへ飛んでいく。
ビームを受けて膝をつき、倒れ伏してしまう。
十代 LP2900 → 2500
「続けて《フレンドッグ》に攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト! 第2打!」
もう1つの首からビームが放たれる。
いともかんたんに熱で焼かれ、爆発して吹き飛んでいった。
しかし《フレンドッグ》に眠るヒーローの魂は、継承されるのだ。
「《フレンドッグ》が戦闘で破壊された時に効果が発動するぜ! 墓地のヒーロー1体と《融合》を手札に加える! 俺は墓地のクレイマンと融合を回収するぜ!」
「おお、やるね、十代」
十代は防御と合わせて次の布石を手に入れた。
攻撃と防御のバランスがいい。攻撃一辺倒だと思っていたが、中々成長しているようだ。三日月は頷く。
「俺はターンエンドだ」
カイザーがターンエンドを宣言すると、十代は嬉しそうに笑顔を見せる。
「おもしれぇ! おもしれぇよカイザー! このデュエル!」
「フッ……俺もだ」
カイザーも嬉しそうに口元を緩ませる。
翔はそれを見て思わず前のめりになった。
そんな顔を見たことが無かったのだろう。
「よっしゃ! 俺のターン、ドロー!」
十代はカードをドローすると、いいカードを引いたらしく満面の笑みだ。
「俺は墓地にある《テイク・オーバー5》の効果発動! 墓地にあるこのカードをゲームから除外することで、1枚ドローできる!」
「墓地から発動……! いつそんなカードを」
「サンダー・ジャイアントの効果を使った時だね……やるじゃん、十代」
墓地からの効果発動。高等テクニックによって十代はさらに手札を増やす。
クレイマンと《融合》だけだった手札は、これで4枚となる。
「ドロー! おっ、相棒!」
「クリクリ~」
「ハネクリボーか……ん? ハネクリボー?」
隣に出現した半透明のハネクリボーに、自然な形で声をかける十代。
三日月はあまりに自然すぎたため、思わず2度見だ。
隣の隼人も声がするんだなとキョロキョロしている。どうやら”見える”デュエリストが何名かいるらしい。
十代は周囲を気にせず手札とフィールドを確認して、《ハネクリボー》の使い時がここではないことを確信する。使い時は、《進化する翼》を引いた時のみ!
いつもの魔法カードを手にして、ディスクにセット。
「俺は魔法カード《融合》を発動! 手札のクレイマンと、《
土くれのヒーローと共に現れたのは水の戦士バブルマン。
ひょいっと飛び上がって融合の渦へと入っていった。
《
星4/水属性/戦士族
攻800/守1200
「現れろ! 《
融合の渦から出てきたのは、バブルマンの顔だけくっついた丸っこいクレイマン。
何を言っているのかわからないが、これをどう形容すればいいのか。三日月はちょっとコミカルな見た目になった融合ヒーローに思わず笑ってしまった。
《
星6/地属性/戦士族
攻1900/守3000
見た目と裏腹に守備力は極めて高い。
《サイバー・ツイン・ドラゴン》の攻撃を止めることができるヒーローだ。
「守備力3000!」
「これでサイバー・ツインが2回攻撃できても、関係ないんだな!」
「ここでピンポイントに欲しいモンスターを出したね」
「引きの良さもあるけれど、すごいプレイングよ」
十代のデュエルに感心するギャラリーたち。
今の十代はとてもレベルの高い攻防をしている。
強い相手と戦う時に輝く才能があるのだろうと三日月は感じていた。プロでもそういった方々は多いのだ。
「ターンエンドだぜ!」
「俺のターン、ドロー。ここで《タイムカプセル》の封印が解かれる」
スタンバイフェイズ、カイザーの元にあったカプセルがバキリと音を立てて壊れる。
中からカードが現れた。そのカードは一体……みんなが見つめているが、三日月はなんとなく察しがついた。おそらく明日香と、翔もだろう。
「遊城十代、いいデュエルだ」
「ああ! 俺の本気のデュエルさ!」
「君が本気を出してくれるおかげで、俺も本気のデュエルができている。そんな君に敬意を表する」
カイザーは後輩である十代の姿勢をリスペクトし、頷く。
それはまるで、翔へ言ってあげているような。
十代がニッと笑うと、亮を笑みを浮かべてカードを1枚発動した。
「俺は速攻魔法《融合解除》を発動。フィールドの融合モンスターの融合を解き、融合素材としたモンスターを墓地から復活させる。俺は《サイバー・ツイン・ドラゴン》を指定」
「サイバー・ツインを?」
カイザーは《サイバー・ツイン・ドラゴン》をデッキへと戻し、墓地の《サイバー・ドラゴン》2体をフィールドへと呼び戻した。
この状況で何を……十代は亮のプレイングを見守る。
「俺は魔法カード、《パワー・ボンド》を発動!」
「《パワー・ボンド》!?」
「あのカードは!」
十代と翔が声を荒げる。
《タイムカプセル》で封じたカードだろう。そして、翔に使用を封じたカードでもある。
もしや当てつけかと三日月は思ったが、そんな感じの人でもなさそうだと首を振る。
恐らく、ただデュエルの展開としていいと思っているだけだろう。
「《パワー・ボンド》の効果により、手札の《サイバー・ドラゴン》とフィールドの《サイバー・ドラゴン》2体を融合する!」
融合の渦に巻き込まれていく3体の《サイバー・ドラゴン》。
ああ、と声を漏らして固唾をのむ十代たち。
「現れろ! 《サイバー・エンド・ドラゴン》!」
出てきたのは3つの頭を持ち、機械の翼を生やしたドラゴンだ。
あまりのスケールの大きさに、言葉を失ってしまう。
《サイバー・エンド・ドラゴン》
星10/光属性/機械族
攻4000/守2800
「攻撃力、4000……!」
「いや、違う。《パワー・ボンド》の効果だ!」
カイザーがそう宣言すると、サイバー・エンドは大きく羽ばたき、声を上げる。
「《パワー・ボンド》で融合召喚したモンスターは、攻撃力が倍になる!」
「じゃあ、攻撃力は……」
「8000!?」
《サイバー・エンド・ドラゴン》
攻4000 → 8000
攻撃力8000の《サイバー・エンド・ドラゴン》。一撃で十代を葬り去る攻撃力だ。
あまりにも雄々しい機械の竜は、電気を外へ走らせながらマッド・ボールマンを見つめいてる。
「これがカイザー……《サイバー・エンド・ドラゴン》……!」
「《サイバー・エンド・ドラゴン》は守備表示モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える!」
この一撃で5000ポイントのダメージが確定する。
あまりのパワーに十代ですら乾いた笑みを浮かべていた。
「きばれ、十代! このターンをしのげばお前の勝ちだぞ!」
「……強力なカードには、デメリットが存在する」
「ええ、そうね。《パワー・ボンド》は発動したターンのエンドフェイズ、融合召喚したモンスターの元々の攻撃力分ダメージを受けるリスクがある」
隼人は既に負けだとわかっているが、十代に声援を送る。
三日月と明日香は、静かに《サイバー・エンド・ドラゴン》を見つめていた。
「そんなリスクは問題じゃない」
翔は目を見開き、カイザーを見つめる。
「お兄さんが言いたいのは、相手をリスペクトするということ……!」
言いたいことは、伝わったようだ。
カイザーは十代へ手を向ける。
「《サイバー・エンド・ドラゴン》でマッド・ボールマンを攻撃! エターナル・エボリューション・バースト!」
サイバー・エンドが全ての口からビームをチャージし、マッド・ボールマンへと放つ。
貫通効果により、マッド・ボールマンへと当たったビームは十代へも降り注ぐ!
一瞬にしてヒーローは崩壊し、凄まじい光と共にすべてが吹き飛んだ。
十代 LP2500 → 0
圧倒的。その言葉が正解だろう。
全力の上から全力を叩きつけられた。そんなデュエルだった。
「遊城十代が、負けた……」
「アニキ!」
呆然とする明日香の横から翔が飛びだしていく。
十代は少し俯いていたが、アニキという声に反応して起き上がる。
カイザーは十代と翔を見て、フッと笑いながら振り向いてその場から去っていく。
明日香がその背中を慌てて追いかけていった。
「いいデュエルだったよ、十代」
「三日月……」
「今回は仕方ない。次、がんばろう」
じゃあね、と少しだけ意気消沈する十代の肩を叩いて2人の後を追った。
デュエルで負けた時、あまり声掛けするのはナンセンス。自分で立ち上がらなければならないのだ。
「や、亮さん」
「アヌビスプロ……いや、三日月圭か」
ブルー寮へ帰る2人に声をかけ、隣立って歩き出す三日月。
「楽しかったですか?」
「ああ、いいデュエルだった」
「面白いデュエリストですからね、十代」
初対面ではあるが、デュエルという共通の話題があるためかスムーズに話す2人。
明日香もやや楽しそうに会話に参加する。
あのプレイングはどうだった、十代の融合の選択は。
あれやこれやと感想戦をしていると、あっという間にブルー寮へ。
「じゃあ、僕はこれで」
「ああ……いや、待ってくれ」
三日月は部屋に戻って講義の内容でも詰めようかと言うところだったが、カイザーに引き止められた。
「なんです?」
「大したことじゃない」
カイザーはそう言いながら、真剣な面持ちで三日月を見る。
そして、アカデミア生なら当たり前なことを言うのだった。
「俺と、デュエルしてくれないか」
今日の最強カードは、《サイバー・エンド・ドラゴン》!
《サイバー・エンド・ドラゴン》
星10/光属性/機械族
攻4000/守2800
「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
貫通能力を持つ
守備表示モンスターを攻撃したとき、攻撃力と守備力の差分、戦闘ダメージを与えるぜ!
超強力な攻撃力は、ほとんどのモンスターを圧倒する強さがあるんだ!