遊戯王GX-砂の魔女-   作:あぬびすびすこ

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TURN08-2 最強! プロデュエリスト アヌビス

「なんだかすごいことになっちゃったぞ」

 

 三日月はポツリと呟きながらデッキを確認する。

 十代とのデュエル後、カイザー亮からデュエルしてほしいと言われた三日月。

 プロデュエリストを目指している彼は、現役プロとデュエルして経験を積みたいというのだ。

 

 随分いいほうに買われているなぁと思いながら、デッキのカードを入れ替えて調整していた。

 アカデミア生としてでなく、プロとしてデュエルをする。そのため、生半可な状態ではなく、真っすぐ勝利を目指すデッキにしなくてはならない。

 

 なんだか責任重大だ。

 デッキの調整が終わったときには、既に日が昇っていた。

 

 そしてその日の夜。

 

「じゃ、よろしくお願いします」

「ああ、よろしく頼む」

 

 十代とデュエルした埠頭でカイザーと対峙する三日月。

 タイタンの時から縁があるなぁと海を見る。

 

「2人とも、がんばって」

 

 ギャラリーは明日香1人である。

 人が増えると、流石にとんでもないことになるという共通見解によってあの時聞いていたメンバー以外は呼んでいなかった。

 

「……今日は後輩じゃなく、アヌビスとしてデュエルするってことでいいですか?」

「ああ。胸を借りるつもりだ。よろしく頼む」

「はい。では、いきましょう……」

「「デュエル!」」

 

カイザー亮 LP 4000

三日月 LP4000

 

「先行と後攻どっちがいいです?」

「……では、後攻を」

 

 カイザーは実力もあってか相手に先行を渡すことが多い。そして《サイバー・ドラゴン》は後攻で有利だ。

 三日月に先行を譲り、後攻で攻め込む算段である。

 

「じゃあ先行をいただきます。僕のターン、ドロー! 手札からフィールド魔法《岩投げエリア》を発動!」

 

 三日月がディスクの端から飛び出たゾーンへフィールド魔法をセットすると、彼の背後に投石器が設置された崖が出現した。

 

「《岩投げエリア》……」

「モンスターが戦闘で破壊されるとき、デッキから岩石族モンスターを墓地に送ることでその破壊を無効にできますよ。1ターンに1度だけ使えます」

 

 戦闘破壊に耐性を持たせるフィールド魔法。強力な攻撃力への対策カードだ。

 三日月はさらにカードを手に取る。

 

「《伝説の柔術家》を守備表示で召喚!」

 

 現れたのは眼帯をつけ胴着を着た老齢の漢。

 膝をつきながらもカイザーへ向けてどっしりと両手を構える。手からは青いオーラも見えるほどだ。

 

《伝説の柔術家》

星3/地属性/岩石族

攻1300/守1800

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンドします」

 

 しっかりと防御のカードを用意してターンを渡す三日月。

 この堅実で堅牢な守りこそ、彼をプロたらしめているタクティクスだ。

 

「俺のターン、ドロー。俺は《サイバー・ドラゴン》を攻撃表示で特殊召喚!」

 

 現れたのはサイバー流の全てと言っても過言ではない機械の龍。

 相手フィールドにのみモンスターが存在する時、特殊召喚できる優秀なモンスターだ。

 

《サイバー・ドラゴン》

星5/光属性/機械族

攻2100/守1600

 

「そして速攻魔法《サイクロン》を発動。魔法・罠カードを1枚破壊する」

 

 カイザーがカードの選択をしようとした時、突然強烈な稲妻が炸裂!

 《サイバー・ドラゴン》に直撃し、そのまま爆発して破壊されてしまう。

 

「なっ……」

「カウンター罠《アヌビスの裁き》! フィールドの魔法・罠カードを”破壊する”効果をもつ魔法カードの発動と効果を無効にします。そして、相手のモンスター1体を破壊して、攻撃力分のダメージを与える!」

「くっ!」

 

 稲妻と爆発の勢いはすさまじく、カイザーはその余波を思いきり受けてしまった。

 

カイザー亮 LP4000 → 1900

 

「アヌビスプロの十八番か……迂闊だった」

「十代の時もそうだったけれど、モンスター出してから《サイクロン》ってのはあまりよくないですよ。《サイバー・ドラゴン》をもってしても」

 

 《サイバー・ドラゴン》が特殊召喚できるからこその踏み絵的なプレイングだと三日月は認識しているし、カイザーもそうだろう。

 ただし、踏み絵だからこそ危険なわけで。今回はまともに引っかかってしまったようだ。

 

「痛い授業料ね……」

「ああ。だが、これで覚えた……俺はさらに《サイバー・ドラゴン》を特殊召喚!」

「2体目ぇ?」

 

 新たに現れた《サイバー・ドラゴン》に、思わずため息が漏れ出る三日月。

 流石はカイザーと呼ばれる男。この程度では揺るがない。

 勘弁してほしいよと頭をかいた。しかしこちらも防御が固いだけではない。

 

「ただ、《伝説の柔術家》は守備表示の時に攻撃されると、攻撃したモンスターをデッキの上に戻す効果を持ちますよ」

「……なるほど。そして《岩投げエリア》で戦闘破壊から守るということか」

「そうです」

 

 《伝説の柔術家》は、攻撃されれば相手をデッキの上まで投げ飛ばしてしまう恐ろしい効果を持つ。

 破壊で対処するわけでもないため、破壊されないという効果を持っていても効いてしまういぶし銀な漢だ。

 2度攻撃しなければならず、しかも2体のモンスターがデッキへと戻ってしまう。強力な布陣である。

 

「ならば乗り越えてみせよう。俺は《死者蘇生》を発動! 墓地の《サイバー・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

 カイザーはまたも《サイバー・ドラゴン》を特殊召喚。

 これでフィールドには2体の龍が並んだ。

 

「バトルだ! 2体の《サイバー・ドラゴン》で《伝説の柔術家》を攻撃! エヴォリューション・バースト! 2連打!」

「強引だなぁ! 僕は《岩投げエリア》の効果を発動! 1度目の攻撃での破壊は阻止します!」

 

 デッキから岩石族モンスターを探して墓地へと送る三日月。

 1度目のエヴォリューション・バーストは投石器からの岩で防がれたが、2度目の攻撃は防げない。

 強烈な光を浴びて柔術家は爆発するが、その意志は消えない。青いオーラが煙の中から飛びだして、《サイバー・ドラゴン》たちにまとわりついた。

 

「《伝説の柔術家》の効果で《サイバー・ドラゴン》は2体ともデッキに戻ってもらいますよ」

「ああ、了解だ。バトルフェイズを終了して《強欲な壺》を発動。カードを2枚ドローする」

「いやいやいやいや、いや。いやぁ~……強欲が過ぎる」

 

 カイザーはさらりと《サイバー・ドラゴン》2体を手札に回収してしまった。そりゃあないでしょうと思わずため息を1つ。

 

「カードを1枚伏せてターンエンド」

「手札は《サイバー・ドラゴン》2体ね……僕のターン、ドロー」

 

 三日月はカードを1枚引き、カイザーの伏せカードを見る。

 少し考えるそぶりを見せてから、自分の手札を確認した。

 

「僕はモンスターをセット。カードを2枚セット。これでターンエンドです」

 

 セットモンスターに伏せカードが3枚。そして《岩投げエリア》。

 ガッチガチの防御姿勢だ。流石の堅牢さにカイザーも思わず眉をひそめる。

 

「固いな……俺のターン、ドロー」

 

 カイザーは引いたカードを見て、即座に発動した。

 

「魔法カード《融合》! 手札の《サイバー・ドラゴン》2体を融合! 現れろ、《サイバー・ツイン・ドラゴン》!」

 

 機械の龍が融合されて、現れたのは機械の龍。

 ただし、顔が2つある二又の龍だ。

 

《サイバー・ツイン・ドラゴン》

星8/光属性/機械族

攻2800/守2100

 

「サイバー・ツインは2回攻撃……でも、《岩投げエリア》が」

「そ。いかなる状況にも対応するのがプロってものだよ」

 

 2回攻撃することができても、2度攻撃を耐えるのならライフポイントは減らない。

 単純だが、極めて効率のいい防御だ。

 

「流石だな……この堅牢さ。俺が見ていたアヌビスプロだ」

「どうもありがとうございます。このまま見ていた通りに勝たせてもらいたいですね」

「フッ、それだけは見た通りにはさせないさ。バトルだ!」

 

 バトルフェイズに入り、サイバー・ツインは両方の口に光を溜める。

 

「サイバー・ツインでセットモンスターへ攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト!」

 

 1度目の攻撃。風圧でセットされたカードがめくれ上がり、登場したのは小さな壺。

 

「《メタモルポット》の効果! リバースしたとき、お互いに手札を全て捨てて5枚ドローする! さらに《岩投げエリア》の効果で岩石族を墓地に送って、破壊を無効!」

 

 三日月はデッキからさらに岩石族モンスターを墓地へ送ると、5枚ものカードを手札に加える。

 カイザーも恩恵を受け、5枚のカードが手札に。

 

「続けて攻撃する。《メタモルポット》に攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト! 第2打!」

 

 もう片方の口から放たれた攻撃で《メタモルポット》は吹き飛ばされる。

 壺のあちこちにひびが入り、まともな状態ではなくなってしまった。

 

「まだだ! 手札から速攻魔法《融合解除》を発動! 《サイバー・ツイン・ドラゴン》の融合を解除し、《サイバー・ドラゴン》を2体特殊召喚!」

「なんとっ!」

 

 二又の龍の融合が解かれ、2体の機械龍が再登場した。

 どちらもやる気は満々。バチバチと電流が散っている。

 

「これはバトルフェイズ中の特殊召喚だ。攻撃する権利は残っている! 行け! 《サイバー・ドラゴン》! 三日月にダイレクトアタック!」

 

 エヴォリューション・バーストが三日月を襲う!

 強烈な一撃だ。受ければライフポイントを半分以上失ってしまう。

 しかし三日月は涼しい表情でこの攻撃を受けた。

 

三日月 LP4000 → 1900

 

「なにっ?」

 

 カイザーはあまりにもあっさりと攻撃を通されたせいで思わず声が漏れる。

 しかし三日月は楽しそうに笑い、ダメージを受けてからリバースカードを発動した。

 

「罠発動! 《ダメージ・コンデンサー》! 手札を1枚墓地に送って、今受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つモンスターを攻撃表示で特殊召喚! 僕は《磁石の戦士β(マグネット・ウォリアー・ベータ)》を出します!」

 

 三日月が発動した罠により、背後でコンデンサーが出現。

 バチバチと強力な電気がほとばしり、地面に落ちた。その中心から煙を伴い現れたのは磁石の戦士。

 両手をぶつけ合わせて電気を放つ。やる気は十分だ。

 

磁石の戦士β(マグネット・ウォリアー・ベータ)

星4/地属性/岩石族

攻1700/守1600

 

「磁石の戦士か……合体しなければ、《サイバー・ドラゴン》の方が攻撃力は上だ。攻撃続行! エヴォリューション・バースト! 第2打!」

「おおっとそれは通しませんよ。速攻魔法《エネミーコントローラー》発動! 攻撃してきた《サイバー・ドラゴン》を守備表示に!」

 

 《サイバー・ドラゴン》は口に光を溜めていたが、出現したコントローラーがポチポチカタカタ動かされる。

 すると攻撃をやめて静かにとぐろを巻いた。攻撃は中止だ。

 

「……やるな。俺はカードを1枚セット。ターンエンドだ」

 

 攻撃を止められたのであればやることは少ない。カイザーは守備を固めつつターンを渡した。

 

「僕のターン、ドロー」

 

 三日月はカードを引くと、ニッと笑ってカイザーを見る。

 

「知ってるみたいですが、改めて教えてあげましょう。僕が何故アヌビスと呼ばれているかを!」

「っ! 来るか!」

「僕は《磁石の戦士β(マグネット・ウォリアー・ベータ)》を生贄に捧げます!」

 

 ズォッと磁石の戦士が生贄に捧げられると、地中から棺が現れる。

 その中から、1体の悪魔が飛びだした。

 

「現れろ! 《エンド・オブ・アヌビス》ッ!」

 

 獣の頭を持つ筋骨隆々な大男。

 紫がかったその肉体から、強力なパワーを持っていることがよくわかる。

 静かに腕を組み、《サイバー・ドラゴン》2体を睨みつけた。

 

《エンド・オブ・アヌビス》

星6/闇属性/悪魔族

攻2500/守0

 

「これが、圭のエース……!」

「アヌビスプロが使う、切り札の1枚か」

 

 現れたエースカードの存在に、警戒を強めるカイザー。

 しかし、アヌビスは出てしまったならば、もう警戒しても遅いのだ。

 

「アヌビスが存在する限り、墓地を対象として発動する効果と、墓地で発動する効果の一切は無効化されます」

「《死者蘇生》や《リビングデッドの呼び声》のような蘇生カードは使えない、か」

「その通り。冥界の神がいるかぎり、死の法は守ってもらいます」

 

 強烈な効果でカイザーの蘇生や墓地からの回収などを全て封じた。

 あまりにも鮮烈な効果であるため、三日月はプロデュエリストアヌビスと呼ばれているのである。

 

「バトル! アヌビスで攻撃表示の《サイバー・ドラゴン》を攻撃! 魂の審判ッ!」

 

 アヌビスが《サイバー・ドラゴン》に手をかざすと、体からコアのようなものが飛びだしてくる。

 かざした手をぐっと握りしめると、コアがバキバキと音を立てて破壊された。それと同時に《サイバー・ドラゴン》が動きを止めて地面に崩れ落ちていく。

 

カイザー亮 LP1900 → 1500

 

「……ふーむ、僕はカードを2枚セットしてターン終了します」

 

 カイザーの伏せカードが全く発動しないことを気にしながら、防御を固めて三日月はターンを終える。

 蘇生カードかなぁと考えているようだが、動きがないなら少しずつ攻めの姿勢をとるだけだと前向きな姿勢をとるつもりのようだ。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 カイザーは手札を見て少し顔をしかめる。

 できる展開は《サイバー・ドラゴン》を融合しての《サイバー・ツイン・ドラゴン》をもう1度出すこと。

 しかし、先ほどのように防御を固められた場合、厳しい展開になるのは目に見えている。

 特に、先ほどからずっとある《岩投げエリア》。あのカードが本当に状況を苦しくさせているのだ。

 リバースカードの《リビングデッドの呼び声》。アヌビスさえ突破出来れば使えるが、突破しきれないと消耗するだけ。

 

「………」

「亮……」

 

 かなり苦しい状況なのは明日香も感じていた。

 エースである《サイバー・ドラゴン》たちが墓地に行ってしまうと、アヌビスの効果で回収できなくなる可能性があること。

 そして、防御がうまい三日月ならば、アヌビスを守った上で《サイバー・ドラゴン》を突破して来るだろうということ。

 あたり前のように予想できる。だからこそ、その苦しさがよくわかった。

 

「……いや、ここで臆するのは、リスペクトに欠ける! 俺はリバースカードを発動!」

「!」

 

 三日月はすぐさま警戒を強める。

 カイザーが使用するのは1ターン目からずっと伏せていて使わなかったカードだ。

 ブラフじゃないかと考えていたが、ここへきての発動。怪しさ満点である。

 

「魔法カード! 《パワー・ボンド》を発動!」

「そのカードか!」

「俺は手札の《サイバー・ドラゴン》とフィールドの《サイバー・ドラゴン》で融合! 現れろ! 《サイバー・ツイン・ドラゴン》!」

 

 飛びだしてきたのは《サイバー・ツイン・ドラゴン》。2度目の登場だ。

 そして《パワー・ボンド》の効果によって、溢れんばかりのパワーを持っている。

 

「《パワー・ボンド》の効果により、サイバー・ツインの攻撃力は2倍になる!」

 

《サイバー・ツイン・ドラゴン》

攻2800 → 5600

 

「攻撃力5600! しかも2回攻撃……!」

「やるねぇ」

 

 《サイバー・エンド・ドラゴン》までにはいかないが、それでも十分強烈なモンスターだ。

 破壊を防げたところで、ダメージを防がない限り敗北は必至。

 カイザーは手を振りかざして三日月への攻撃を宣言する。

 

「バトルだ! 《サイバー・ツイン・ドラゴン》で《エンド・オブ・アヌビス》を攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト!」

 

 ツインヘッドから繰り出される強烈な光。

 今放たれんとしたところで、アヌビスがすっと手を伸ばす。

 すると、サイバー・ツインがだらりと首を下げ、そのままうずくまってしまった。

 

「《サイバー・ツイン・ドラゴン》が!?」

「一体何だ……まさか、お前なのか、三日月」

 

 三日月を見れば、当然と言わんばかりの顔つきでカイザーを見ている。

 そして、1枚のカードが発動されていた。

 

「僕は攻撃宣言時、罠カード《アヌビスの呪い》を発動しました。この効果でフィールドの効果モンスターは全て守備表示に変更されます」

 

 同じ効果モンスターであるアヌビスも静かに跪いて両腕をクロスしている。

 しかし、サイバー・ツインはうなだれている。差は歴然だ。

 

「そして元々の守備力は0になります」

「守備力が、0に……」

「そしてこのターンは表示形式の変更はできません……ターンエンドなら、《パワー・ボンド》のコストを払ってもらいますけど」

 

 攻撃できない。それはカイザーにとっての敗北宣告だ。

 しかしまだ手はある。巻き返す可能性もないわけではない。

 カイザーは手札の《神秘の中華なべ》を手に取り、ディスクへとセットしようとしたところで。

 

「も、もうやめるノーネ!」

「え?」

「んっ?」

「おぉ?」

 

 何故か海から飛びだしてきたのはクロノス。

 きちんとダイビング用の装備を着ている。な、なんだこの人はという視線が3つ刺さっていた。

 

「クロノス先生、どうしたんですか」

「こんな夜に、何をしているゥーのデス! オベリスクブルーとして、規則通りにしなサイーノ!」

 

 そう言われると耳が痛い。

 なにせ門限ギリギリの時間だ。言い返せない。

 

「クロノス教諭。このデュエルだけやらせてください。もうすぐ終わるはずです」

「セニョール丸藤といえーど、規則破りは許しまセンーノ! 早く帰る準備をするノーネ!」

 

 何故かクロノスは3人を帰したいらしい。

 怪しい。しかし、正しいことを言われているため引き下がるしかないのだ。

 

「亮さん、ここで終わりましょう。引き分けってことで」

「……君はそれでいいのか?」

「ええ。僕の勝ちは固いでしょうからね」

 

 舌をペロリ。プロらしい傲慢さと茶目っ気を含んだ表情と物言いに、明日香もカイザーも思わず笑ってしまう。

 

「フッ……わかった。次のデュエルでは、俺が勝つ」

「楽しみにしてますよ。その時はプロの舞台がいいですね」

 

 デュエルディスクをオフにして片付ける。

 クロノスはなぜかホッと息を吐いていた。

 

(危なかったノーネ! セニョール三日月が勝つのはいいデスーノ。しかーし、セニョール丸藤が負けるのは、よくないノーネ!)

 

 クロノスはカイザーと呼ばれる亮に黒星をつけたくないのである。

 このままいけば無敵のカイザーとして卒業し、プロデュエリストへ輝かしいスタートをきれるのだ。

 それを応援したいがために、今のデュエルを止めてしまった。デュエリストしてよくないとわかってはいたが、どうしても教師として生徒を考えざるを得なかった。

 

 3人がこっそりブルー寮から出ていくのを見た時、思わず追いかけて正解だったとクロノスは頷く。

 しかしデュエルを止めるという極めてよくないことをしているため、かなり反省はしているが。

 

「ところでクロノス先生。なぜダイビングを? 寒くないかしら……」

「エッ!? アッ! と、ときどきここにカードが飛んできてしまうーのデス! 生徒が落としたカードが無いか、調べているノーネ!」

「おおー、流石は先生。僕も学ばないと」

 

 三日月は素直に頷いている。彼はクロノスの腕を買っているので、ややイエスマン気味だ。

 明日香と亮はちょっと変だと思っているが、三日月が感心しているので黙っている。

 

「さ、早く帰るノーネ。夕飯を食べ損ねマスーノ」

「はーい。それじゃあお先に」

 

 三日月はデッキをまとめると、手を振って先に戻っていく。

 今のデュエルの反省点をぶつぶつと独り言を言いながら、カイザーと明日香の脇を通っていった。

 

「……どうだった?」

 

 明日香がそう聞くと、カイザーは少しだけ眉をひそめて息を吐く。

 

「……強いな、プロは」

 

 悔し気に漏れた声。

 カイザーにとってこの感情は、きっとプラスに働くだろう。

 冷えた体を震わせながら、クロノスは頷くのであった。




 今日の最強カードは、《エンド・オブ・アヌビス》!

《エンド・オブ・アヌビス》
星6/闇属性/悪魔族
攻2500/守0
墓地への効果や発動を封印する

 墓地を対象にする効果と、墓地で発動する効果を無効にするぜ!
 《死者蘇生》も使えなくなる、すごい強力な効果だ!
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