「隼人くんが退学ぅ?」
「そうなんだよ! 頼むぜ、圭!」
十代たちから呼び出しを受けた圭は、またぞろ面倒なことになっているのではと念のためクロノスに連絡を取ってからレッド寮へ向かった。
小さなマンションのような亮の部屋へ呼ばれて説明されたのは、なんと隼人のこと。
父親がアカデミアに来て、留年してくすぶっている隼人を連れていこうというのだ。早い話は退学である。
そして、デュエルで隼人が勝てばよし。負けたら退学という話になった……ということだ。
アカデミアらしいなと思いつつ、圭は床に座る。
「で、僕に何をしてほしいって?」
「デッキを考えてほしいっす。ほら、見てよこのデッキ!」
「ふぅん?」
翔に言われるがままデッキを手に取る圭。
1枚ずつめくっていくと、現れるのはコアラ、コアラ、コアラ、ディアン・ケト、コアラ。
「……コアラデッキ?」
「そうなんだ。コアラばっかりなんだぜ、隼人のデッキ」
「それはまた」
わかりやすいテーマデッキだ。思わず隼人の顔を見てしまう。
簡単に言えば獣族デッキなわけだが、コアラだけとは中々ニッチだ。
カイザーのサイバー流と似たようなものだ。コアラ流である。
「デッキはなぁ、あまり大きく変えないほうがいいと思うけど」
「そうなのか?」
「十代は大事なデュエルの前に《融合》全部抜いて《フュージョン・ゲート》にします! ってやって使いこなせる?」
「あー……」
そういうことっすかと翔は頷いた。
使い慣れたデッキを調整するぐらいならば問題ないが、一気に作り替えるのはよくない。
使い方がわからないのであれば、そちらの方が問題になるのだ。
「調整ぐらいならいいんじゃないかな。1、2枚替える分には問題ないし」
「じゃあ、これあげるよ」
翔がカードを1枚取り出し、隼人へと手渡す。
「いいのか?」
「うん。ほら、カンガルーとコアラで、オーストラリアデッキになるでしょ」
渡しているカードは《デス・カンガルー》。
なるほど、獣族で統一しつつ補強になる。いいカードだ。
「よーし! じゃあ俺も!」
そういって十代もカードを探し出した。
圭は予備のカードを全て寮に置いてきてしまったので何もできないので、デッキの内容を確認することに。
「ふーむ……ん?」
ふと、1枚のカードに気が付く。
何の変哲もないコアラカード、《デス・コアラ》。
しかしそのカードに眠る力。それに圭は反応した。
「ねえ隼人くん。時々なにか聞こえたりしない? ほら、クリクリ~って」
「ああっ、聞こえるんだな」
こっそり耳打ちして聞いてみると、確かに聞こえているらしい。
十代にはその素養があるのは気づいていたが、どうやら隼人にも声が聞こえるようだ。
といっても、姿を見ることは叶わないようだが。
「《デス・コアラ》、大事にね」
「ああ。わかってるんだぞ」
うんうんと隼人の隣で頷く精霊のデス・コアラ。
以前の廃寮でハネクリボーがいたり、砂の魔女が出現したりとしている。
デュエルモンスターズの精霊といわれる存在だが、アカデミアではかなり散見されていた。
結構多いのかなと思わず翔を見るが、首を傾げられるだけ。4人のうち3人とは逆に珍しい。
「ま、それは置いといてだ。十代はカード見つけた?」
「ああ! ほら、こいつだ!」
十代は彼らしい融合モンスターを隼人へと手渡した。
なるほど、コアラだ。こんな融合モンスターがいたのだと翔は目を見開いて驚く。
「すごいカードなんだな! ありがとう、十代!」
「へへっ、いいってことよ!」
やいのやいのと盛り上がるレッド生3人。
やはり十代がいると明るくなるなぁと感じる圭であった。
「じゃあとりあえずデュエルしてみようか……隼人くんのお父さんってどのぐらいの実力なの?」
「あ、そっか。圭は知らねーんだった」
「すごい人なんすよ!」
十代たちがレッド寮の寮長大徳寺先生から聞いた話によると、薩摩示現流の使い手で、一撃必殺のデュエルで名をはせたとかはせてないとか。
有名なデュエリストのようで、その実力は折り紙付きであるとは聞かされているとのことだ。
「はえー……そしたら僕がデュエルするよ。隼人くんは思いきりかかってきてね」
圭がデッキを取り出して床に置くと、隼人も慌ててデッキをシャッフルして対面した。
十代はいいなーとぶーぶー言っているが、プロの指南デュエルはかなり羨ましいものだ。翔も黙ってはいるがいいなぁと思っている。
「夜だからテーブルデュエルだけど、よろしく」
「よ、よろしくなんだな」
「「デュエル」」
隼人 LP4000
圭 LP4000
「先行はどうぞ」
「よ、よし。俺のターン、ドロー! 俺は《デス・コアラ》を攻撃表示で召喚するんだな!」
隼人は焦りながら手札のカードを場に出す。
攻撃表示で現れたのは《デス・コアラ》だ。
《デス・コアラ》
星3/地属性/獣族
攻1100/守1800
「おっとぉ? 隼人くん?」
「え、どうしたんだ?」
圭は思わずツッコんでしまう。
それもそのはずだ。床に置かれた《デス・コアラ》を手に取り隼人に見せる。
「《デス・コアラ》はリバース効果を持つモンスターだよ。裏側守備表示で出さないと」
「ああっ」
「へぇー、そうなんすね」
隼人は思わずのけぞって、がっくりと肩を落とす。
十代と翔は興味深そうに《デス・コアラ》の効果を覗き込んだ。
「リバースすると、相手の手札1枚につき400ポイントのダメージ……かなり大きいな」
「そうだね。しっかりと忘れないように!」
「わ、わかったんだな」
気を取り直して、《デス・コアラ》召喚後からデュエルを再開する。
「俺はこれでターンエンドだぞ」
「じゃ、僕のターンドロー。一撃必殺かぁ」
ぽつりと不穏なことを言う圭。
手札を見て悩みながら、カードを1枚手に取る。
「魔法カード《融合》発動。手札の《岩石の巨兵》と《エンシェント・エルフ》で融合召喚。《
さらっと出てきたのは圭のフェイバリットカード《
最初のターンから攻めの姿勢だ。
《岩石の巨兵》
星3/地属性/岩石族
攻1300/守2000
《エンシェント・エルフ》
星4/光属性/魔法使い族
攻1450/守1200
《
星6/地属性/岩石族・融合
攻2100/守1700
「いきなりっすか!」
「一撃必殺なんでしょう? さらに魔法カード《黙する使者》を発動。墓地の通常モンスターを守備表示で蘇生するよ。《岩石の巨兵》を出すね」
墓地から融合素材にした《岩石の巨兵》が登場。
守備表示ではあるが、これでフィールドにはモンスターが2体。
「そして《岩石の巨兵》を生贄に、《ヒエラコスフィンクス》を召喚」
「うぅ」
蘇生したばかりの巨兵を墓地へ送り、手札からハヤブサの頭を持つスフィンクスのモンスターを召喚。
あまりにも攻めに特化した動きに思わず隼人はうめき声を上げてしまう。
《ヒエラコスフィンクス》
星6/地属性/岩石族
攻2400/守1200
「じゃあバトルフェイズね。僕は
「う、受けるんだな」
「続けてスフィンクスでダイレクトアタック」
「それも、受けるんだぞ……」
圭は果敢に攻め込み、隼人のフィールドを更地にした。
その上でダイレクトアタックまで決め込み、かなりの優勢に。
既に戦う意志が無くなっている状態である。
隼人 LP4000 → 3000 → 600
「カードを1枚セットしてターン終了」
「俺のターン、ドロー……」
隼人はチラッとドローカードを見ると、うなだれてしまった。
「打つ手なしだ……モンスターをセットしてターンエンドするんだな」
「僕のターンドロー。じゃあスフィンクスで攻撃」
隼人のセットモンスターは《デス・カンガルー》だ。
スフィンクスの攻撃を止めるほどの守備力はもたない。
《デス・カンガルー》
星4/闇属性/獣族
攻1500/守1700
「じゃあ
「負けなんだな……」
特に防ぐ手もなく、隼人はそのまま攻撃を受け入れた。
隼人 LP600 → 0
「うう、やっぱり俺はダメなんだな……」
「そ、そんなことねぇって! な、翔!」
「う、うん! そうだよ隼人くん! 相手は現役のプロなんだから! 圭くんも少しは考えてよ!」
「えぇ、僕ぅ?」
わっと騒がしくなる4人。
楽し気に、しかして真剣にデュエルへ取り組んでいる。
隼人の父である前田熊蔵は、寮の外からその声を聞いていた。
そして、フッと笑みを見せる。その顔は正しく父親の顔であった。
今日の最強カードは、《デス・コアラ》!
《デス・コアラ》
星3/地属性/獣族
攻1100/守1800
リバースしたとき、相手の手札の枚数×400ポイントダメージを与える
セットされた《デス・コアラ》がリバースしたとき、相手の手札の枚数だけダメージを与えるんだ!
セットしなければ使えないから、要注意だぜ!