『受験番号110番! デュエルフィールドへ!』
あらかたの実技試験が終わる中、新たな受験生が呼ばれていた。
観戦している人たちはおや? と首を傾げるものが多くいる。既に過ぎた番号だったからだ。
一体誰だろうと受験生を見ると、ワクワクした表情でデュエルディスクを身につけている男の子が1人。
そして試験官として現れたのは、金髪おかっぱの何やら濃いめの男性。
デュエルコートという体に装着するタイプの機器を装備している。
「おい、あれって……」
「クロノス教諭じゃないか! どうして試験官なんか」
クロノス・デ・メディチ。デュエルアカデミアにおける実技担当最高責任者である。
今回の試験では受験生のチェックと受験そのものを統括している先生だ。
そんな先生が直々に。先ほどのプロでさえ普通の試験官だったのに。
どういうことだとアカデミア中等部の生徒たちはざわつき始める。
クロノスとしては、ただ遅刻してきた成績の悪い受験生を叩きのめす以外の意味合いはないのだが。
受験番号が大きい数字なら、それだけ筆記試験の成績が悪いということ。勉強できないということだ。
別に有望な生徒でもなく。きちんと勉強してこない生徒をつまみだしたかったのである。
『受験番号110番、遊城十代! 実技試験を始めてください!』
「よし! いくぜ!」
「フン! せいぜい思い出になるがいいノーネ!」
「「デュエル!」」
十代 LP4000
クロノス LP4000
「俺が先行だな! ドロー! 俺は《
十代が呼び出したのは緑の色が美しい戦士。背には翼も生えている。
マスクをしたアメリカンコミックなヒーローは、フィールドに降りたち手をクロスに。
《E・HERO フェザーマン》
星3/風属性/戦士族
攻1000/守1000
「カードを2枚セットしてターンエンドだ!」
先行1ターン目としてはまずまずの状態。
ターンをクロノスへと返すと、フンと鼻息荒くデッキに手をかざす。
「私のターン、ドロー!」
自動でデッキからカードが1枚出てくるハイテクなデュエルコート。
手札を見た彼はフッと笑い、素早くアクションを行う。
「魔法カード《押収》を発動デスーノ! ライフを1000ポイント支払い、相手の手札を見て1枚墓地に送るノーネ」
「えっ!?」
クロノス LP4000 → 3000
十代は自分の手札が全て公開されて思わず声を上げる。ソリッドビジョンでクロノスの元へカードが映し出される。
3枚の手札を確認したクロノスは1枚のカードを指さした。
「《死者蘇生》を墓地へ送るノーネ!」
「くっ!」
手札から墓地に送られた《死者蘇生》。墓地から好きなモンスターを特殊召喚できる万能蘇生カード。
せっかく手札にきたのにと思わず表情が固くなる十代。
しかしクロノスの攻撃はまだ終わらない。むしろ、始まりなのだ。
「私はカードを2枚セットし、魔法カード《大嵐》を発動! フィールドの魔法・罠カードを全て破壊するノーネ!」
「だったら罠カード《エレメンタル・チャージ》を発動! フィールドの『E・HERO』の数だけライフを1000ポイント回復する!」
十代 LP4000 → 5000
ロロロロロロ~と楽し気に歌うクロノスは、巻き起こる嵐によって破壊された十代のセットカード《ドレインシールド》を見てほくそ笑む。
《エレメンタル・チャージ》で回復されたものの、攻撃反応の罠である《ドレインシールド》を除去できたので小満足といったところ。
「だけど先生! アンタのカードも破壊されてるぜ!」
そう、クロノスは《大嵐》を発動する前にカードをセットしていた。
プレイミス。十代はチャンスだと笑みを浮かべる。
「それが井の中の蛙だというのデース」
ゲロゲ~ロ。クロノスが不敵な笑みを浮かべると、破壊されたセットカードが2枚フィールドへと帰ってくる。
「特殊召喚! 《邪神トークン》!」
突如現れたのは黄金に輝く邪神の像。それが2体だ。
十代は何が起こったのかわからず、現れた邪神像を睨む。
《邪神トークン》
星4/闇属性/悪魔族
攻1000/守1000
「じゃ、邪神トークン!?」
「私がセットしていた罠カード《黄金の邪神像》は、破壊され墓地に送られた時! 《邪神トークン》を特殊召喚できるノーネ!」
相手のセットカードを破壊しつつ、自分のフィールドにモンスタートークン2体を特殊召喚。
流れるようなタクティクスに会場の観客たちは思わず唸る。
「流石はクロノス教諭だ」
「ええ。あの受験生、かわいそうね」
一瞬にして不利になった十代に同情してしまう観客は多い。
先ほどデュエルしていた三日月ですら、このデュエルを見てレベルの差に愕然としている。
受験なのに試験官がやりすぎじゃないのか、と。
しかしクロノスはそんなことなど露知らず。
いかにこの成績の悪い生徒を不合格にするかということしか考えていない。
手札にあるモンスターカードを引き抜き、デュエルコートに叩きつけた。
「私は邪神トークンを2体生贄に、《
トークン2体が光となって生贄となり、現れたのは歯車で動く機械仕掛けの巨人。
兜の中から見える目は赤く光り、モノアイが十代を静かに見つめている。
《
星8/地属性/機械族
攻3000/守3000
「《
「あれは試験用のデッキじゃない! クロノス教諭の使う、暗黒の中世デッキ!」
「クロノス教諭のやつ、どうやら本気で潰すつもりらしいな」
暗黒の中世デッキとは。声を聞いた三日月は首を傾げるが、ともかくあの《
攻撃力3000ポイントのモンスターがこうも簡単に……実技担当最高責任者の実力を、ここにいる全員が噛みしめる。
「バトルフェイズナノーネ! 《
巨人から繰り出される強烈なパンチ。上から叩きつけられたフェザーマンは耐えきれずに破壊された。
そしてその余波が十代を襲う!
「《
貫通とは、攻撃力マイナス守備力分の戦闘ダメージを与える効果だ。
つまり、《
十代 LP5000 → 3000
「うわぁーーっ!」
「私はこれでターンエンドデスーノ」
クロノスは満足気に頷く。
《
かの有名な《
「俺のターン、ドロー! よし! 魔法カード《強欲な壺》を発動するぜ! カードを2枚ドローするぜ!」
「ムッ! 強欲デスーノ!」
「へへっ、ドロー! あっ!」
十代が2枚ドローした内の1枚は、ラッキーカードと称して渡されたカード。
渡してくれた人は、恐らく決闘王……十代はそう感じている。
「よし……俺は《ハネクリボー》を攻撃表示で召喚!」
クリクリ~! 翼が生えた毛むくじゃらの天使がフィールドへ降り立つ。
観戦している女子生徒はかわいい~! と思わず声を漏らす。
《ハネクリボー》
星1/光属性/天使族
攻300/守200
「カードを2枚セットして、ターンエンドだ!」
十代はカードを伏せてターンを渡す。
防御としては盤石のはずだが、《
「私のターン、ドロー! 何を考えてるかは知りませんが、このままバトルナノーネ!」
《
「先に言っておきマスーノ。《
「えっ!?」
思いきり振り下ろされた拳が小さな天使を吹き飛ばす。
目を回して飛んでいった《ハネクリボー》は十代を巻きこんでダメージを受ける。
十代 LP3000 → 300
「くっそー! 《ハネクリボー》が破壊された場合、このターン受ける戦闘ダメージが0になるぜ!」
「しかし、遅かったみたいデスーノ」
「ああ、だけどこっちの効果が使えるぜ! 罠カード《ヒーロー・シグナル》! 俺のモンスターが戦闘で破壊されたとき、デッキ・手札からヒーローを呼び出せる! 来い! 《
飛びだしてきたのはヒーローたちの紅一点。バースト・レディだ。
両手に燃ゆる炎を出しながら、《
《E・HERO バースト・レディ》
星3/火属性/戦士族
攻1200/守800
「フン、そんなモンスターで何ができマスーノ。私はこれでターンエンド」
クロノスはバースト・レディを見て鼻で笑う。
そのままターンを返した時、観戦していた三日月はあぁ……と声を漏らす。
「これは……勝ったんじゃないか?」
プロから聞こえた衝撃の宣言に、周りにいた生徒たちはギョッとした顔で彼を見る。
明らかにクロノスが絶対有利な状況だ。負けが見えないというのに一体なぜ……。
三日月は視線に気づきながらも、あえて気にせずデュエルの展開を見守った。
「俺のターンドロー! よし! 俺は魔法カード《戦士の生還》を発動! 墓地の戦士族モンスターを1体手札に戻すぜ! 選択するのは《
十代は手札にフェザーマンを戻す。そして続けざまに手札のカードを手に取った。
「フェザーマンやバースト・レディ、このヒーローたちは仮の姿だ! 真の姿を見せてやるぜ! 魔法カード《融合》を発動! 手札の《
「オゥ……!」
風の戦士と炎の戦士が融合し、光を放つ。
その光から飛び出てきたのは、2つの属性を受け継いだ新たなヒーロー。
「融合召喚! マイフェイバリット・ヒーロー! 《
《
星6/風属性/戦士族
攻2100/守1200
現れた融合モンスターに見ていた生徒たちは驚くが、クロノスはフンと慢心を隠さない。
「特別講義をしてあげマスーノ。デュエルに御託はいらないノーネ。融合召喚したところで、攻撃力は2100。《
そう。意気揚々と召喚されたフレイム・ウィングマンの攻撃力は《
攻撃したところで返り討ちになる。
しかし十代は自信満々に笑みを浮かべていた。
「じゃあ先生に教えてやるぜ! ヒーローにはヒーローに相応しい戦う舞台ってもんがあるんだ!」
十代はデュエルディスクを掲げると、先端からカードをセットする機材が飛び出てくる。
そして、手札のカードをクロノスへと見せた。
「フィールド魔法、スカイスクレイパー発動!」
セットされたフィールド魔法《摩天楼-スカイスクレイパー-》が発動されると、周囲には高層ビルが出現していく。
そして、最も高いビルである摩天楼の先端にフレイム・ウィングマンは腕を組んで立っていた。
「さあ舞台は整った! 行け、フレイム・ウィングマン! 《
誰もがギョッとした。攻撃力が低いモンスターで攻撃!?
クロノスも血迷ったかとニヤつきながらその攻撃を見つめていた。
「冗談でショウ? フレイム・ウィングマンの攻撃力など、《
フレイム・ウィングマンが摩天楼から降りて向かっていく中、クロノスは手を広げて攻撃を迎え撃っていた。
このままでは負ける。だが、十代の顔はワクワクして楽しそうだ。何かが起こる。全員がこのデュエルの終幕を見つめていた。
フレイム・ウィングマンが瞬間移動しながら《
「ヒーローは必ず勝つ! スカイスクレイパーの効果は、ヒーローが攻撃する時、攻撃力が相手モンスターの攻撃力より低い場合、ヒーローの攻撃力を1000ポイントアップさせる、フィールド魔法!」
《
《E・HERO フレイム・ウィングマン》
攻2100 → 3100
「くらえ! スカイスクレイパー・シュート!」
機械仕掛けの巨人に向かって突進したヒーローは一気に体中を破壊!
優雅に下りたつと、十代の元へと帰っていく。
クロノス LP3000 → 2900
「マンマミーア! 私の《
破壊された巨人の鉄くずが頭の上に落ち、ノゥ! と声を漏らすクロノス。
そしてそれを静かに見守る十代たち。
「フレイム・ウィングマンの効果! モンスターを破壊したとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを受けてもらうぜ。先生!」
ギョッとした顔で十代を見るクロノスだが、背後では《
慌てて逃げようとしたが間に合わず。鉄くずの下敷きとなってしまった。
クロノス LP2900 → 0
逆転勝利。思わず全員がぽかんと見つめてしまった。
十代は嬉しそうにクロノスへと指を向けた。
「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」
彼の声で見ていた生徒たちはハッとなり、ざわざわと友人たちと話し合う。
とんでもないやつが現れた。おもしろいことになるかも。
ライバルが現れたぞ。あんなのまぐれだ。
様々な評価がされる中、全てを見ていた三日月は楽しそうに笑った。
「デュエルアカデミア、思ったよりいい勉強になるかも」
今後の生活を思いながら、喜びと悲しみが対照的な2人を見るのであった。
今日の最強カードは《
《
星6/風属性/戦士族
攻2100/守1200
フェザーマン+バースト・レディ
相手モンスターを破壊したとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える
ヒーローを融合した真の姿だ!
相手モンスターを倒せれば、強力な効果を使えるぞ!
必殺のフレイム・シュートで必ず勝つ!