「俺の負けだったぁ~!?」
「どういうことっすか!」
「私も気になるわ」
次の日、メールで呼び出された十代と翔、ついてきた明日香は食堂にて三日月に詰め寄っていた。
どうどうと手の平を見せながら、ポチポチとPDAを操作する。
画面には昨日のデュエルの状態が再現されていた。
「最後のターンに《死者蘇生》を引いて、《
「おう! それで攻撃すれば……」
「それが無理なんだ」
断言する三日月に、十代は目をパチパチさせる。
「十代、フレイム・ウィングマンのカード出して?」
「あ、ああ」
フレイム・ウィングマンのカードがテーブルに置かれ、みんなで見る。
三日月がわかる? と声をかけると、全員唸りながら見つめていた。
と、その時、明日香があっと声を出す。
「……そういうことね」
「そういうこと」
「どういうことっすか!」
翔は同じように声を荒げる。
三日月はここだよとフレイム・ウィングマンのカードテキストを指さした。
《
星6/風属性/戦士族
攻2100/守1200
「
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。
そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
「フレイム・ウィングマンは融合召喚でしかだせないんだ。《死者蘇生》じゃ出せないよ」
「ああ!? そういうことっすか!」
翔も納得した様子で、改めてフレイム・ウィングマンを見る。
十代はすねた様子で唇を尖らせていた。
「ちぇっ。じゃあ勝ちじゃなかったのか」
「もう1枚の手札ってなんだった?」
「確か、《ドレイン・シールド》だったぜ」
それを聞いて三日月はふーむと考える。
ドレイン・シールドはモンスターの攻撃を無効にして、その攻撃力分ライフポイントを回復できるカード。
攻撃を1度無効にできれば、その後の展開もまた変わっていく。
「わからないかな。戦ってた万丈目くんの手札にもよるけど、《
《
星5/闇属性/戦士族
攻1800/守1700
《
星4/地属性/戦士族
攻800/守2000
「はー、なるほどな」
十代は感心したように頷いた。隣に座る翔に至ってはキラキラした目で見ている。
プロの考え方を目の前で受けて感動しているようだ。
「ほ、他になにかあるっすか?」
「他に? うーん、そうだな。もし《ドレイン・シールド》だけで対処しようとするなら、《死者蘇生》はセットしておいた方がいいよ」
PDAの画面を操作して昨日のデュエルを再現しながら、十代側のプレイヤーが手札にもっている融合をセットした。
「それは、どうしてかしら」
「メフィストは戦闘ダメージを与えた時、手札を1枚捨てさせる効果があるんだ。しかも、守備表示のモンスターを攻撃した時、攻撃力が上回っていれば貫通ダメージを与える効果ももってる。もし他に強いモンスター出されたり《ドレイン・シールド》を破壊されたりして、メフィストを装備魔法とかで攻撃力を上げたりなんてことがあったら、蘇生のチャンスもなくなっちゃうし」
あとは1枚分無駄に警戒してくれるかもしれないしと話していると、周りが静かになっていた。
なんだと思って顔を上げると、十代や翔、明日香以外の生徒たちもまじまじと三日月を見つめている。
プロの講義にみんな興味津々のようだ。
「すごい論理的ね……参考になるわ」
「ただ、正直かなり負け濃厚だからね。この後相手はドローして手札3枚だし。《融合》を使うデッキは息切れが早いから、対処されると中々つらいね」
十代の融合召喚を多用するE・HEROたちは、強力な融合モンスターを出せるものの、カードの消費が激しい。
《融合》とヒーロー2体で、必ず3枚以上のカードを使うため仕方がないことでもある。
「デュエルタクティクスで言うと十代はかなり負けてるね。頑張って勉強しよう」
「げぇ、勉強かぁ……」
そう言ってうなだれる十代を見て三日月たちは笑う。
苦手だけど少しは頑張るかぁと元気のない十代をはげますのであった。
◆ ◆ ◆
「で、俺を呼び留めてどういうことだ?」
「ええ、どういうことなの?」
三日月が今日の授業が終わってから呼び止めたのは万丈目だ。取り巻きたちもいるが。
十代達と話してからなんとなく行動を共にしている明日香も一緒にいる。
「いやぁ、十代だけに声をかけるのは不公平だからさ。あと、僕の勉強にもなるし」
「はぁ?」
不思議そうにする彼らに、PDAで先日のデュエル再現を見せる。
それを見た万丈目は勝気な顔をした。
「何かと思えば、昨日のデュエルじゃないか。俺の勝ちだっただろう?」
「まあ、おおよそ勝ちだったね」
三日月がそう言うと、取り巻き共々嫌らしく笑う。
明日香は機嫌が悪そうに視線をきつくする。
「ただね、ちょっとプレイングで気になるところがあるからそこを聞きたいんだ」
「ほう? プロが俺にか……クク、どこだ?」
「ここだね。ラストターン前の、メフィスト召喚前後のところ」
そういって《
万丈目はそんなことかと鼻で笑う。
「なに、ここで強力なモンスターを出せば負けを認めると思ってね」
「はーん、そういうこと……だからか」
三日月が少し落胆した様子を見せると、万丈目はプライドを刺激されたのか眉を顰める。
「問題ないだろう。このデュエルは勝ったんだからな」
「そうだ! 万丈目さんが圧倒してただろう!」
取り巻きたちも声を上げるが、わからないの? と視線を向けると、うっと押し黙ってしまう。
三日月はうーんと唸ると、フィールドにセットされていた《ヘル・ブラスト》を指さす。
「これは状況によるけど、まずは《ヘル・ブラスト》を温存するかを考えないといけないかな」
「……《ヘル・ブラスト》を?」
「うん。まず、《異次元トンネルーミラーゲートー》ってエンドフェイズまでしか効果が続かないんだよね。だからそのままターンエンドしておけばフレイム・ウィングマンが帰ってくる。ダメージは稼げるけど、フィールド上のアドバンテージがね」
「なるほど。一理あるな」
万丈目はプライドが高く、人の意見は聞かない。しかし、この指摘は素直に聞いた。
三日月の実績もあるが、確かに効果的だと思ったからだ。視野の広さに思わず声が漏れるほど。
「正解があるわけじゃないけど、十代の手札は1枚で余裕があるからね。攻めっ気が強すぎたかもって印象かな」
「でも、《
取り巻きの生徒の発言に、そうだねと頷く三日月。
ダメージを与えて上級モンスターを召喚するというのは重要なポイントだ。
ライフが少ない状態で貫通ダメージを与えるモンスターというのは、強いプレッシャーである。
「このへんは結果論だね。僕は防御を大事にしてるデュエリストだから、攻めと守りの切り替えを気にしてるんだ。《ヘル・ブラスト》を使うと自分のライフが450になっちゃうから、最悪ちょっとしたことで負けちゃうからね」
「……もしヤツのデッキに、ダイレクトアタックできるモンスターや効果ダメージがあればということか」
「そういうこと」
そう話すと、万丈目は静かに頷く。
流石はブルー生。説明しなくともすぐに考えが多岐にわたるようだ。
「ところでこの時手札に装備魔法とかあった?」
「ああ。《ヘル・アライアンス》を持っていた。同名モンスターがいれば、1体につき攻撃力が800ポイントアップする」
そう話すと、明日香が成程と三日月を見る。
この後のターン、十代は次の万丈目のターンで攻撃力2600となったメフィストの攻撃を受けることになる。
その際発動される《ドレイン・シールド》によって、十代のライフポイントは550から3150へ。
《死者蘇生》しかないが、万丈目が450ポイントの状況でこの差は大きい。
ただし、魔法罠カードを破壊できるカードをドローしていれば、十代は負けとなる。
「なるほど……デッキの構築がいいね。フィールドも手札もきっちり整ったうえで次につなげてるし、攻めっ気を絶やさない工夫もある。いいデュエルだったよ」
「フッ、当然さ……プロの知見、参考になったよ」
にこやかに笑い手をあげる万丈目。
こちらもうんと頷くと、彼らは去っていった。
そういえば、途中から取り巻きみんな黙っていたなと三日月が思っていると、明日香がハァとため息を吐く。
「十代、かなり厳しかったみたいね」
「正直押し負け続けてたからね。しっかり対策されてたし」
あのデュエルは明らかに万丈目が一枚上手だった。
プロのデュエルでも対策されることはあるが、それと同じレベルでしっかりとしたものだ。
アカデミアのレベルが高いことの証明だろうと三日月は思っている。
「知ったら悲しむかしら」
「喜ぶんじゃない? デュエル一番って感じしてるし」
「ふふ、それもそうね」
十代のやんちゃさを思い出しながら笑い合う2人であった。
今日の最強カードは、《ヘル・ブラスト》だ!
《ヘル・ブラスト》
通常罠カード
自分のモンスターが破壊された時、攻撃力が一番低いモンスターを破壊してお互いに攻撃力の半分ダメージを受ける
モンスターがやられた時に、他のモンスターを破壊してダメージを与えるんだ!
自分もダメージをうけてしまうから、使い時には要注意だぜ!