定期試験の実技ということで、デッキの調整をしてきた三日月。
対戦相手を知らされていないため、誰になるのかはわからないが、全力を出すつもりである。
プロの自負もあるため、非公式デュエルであっても負けるつもりはなかった。
名を呼ばれてフィールドへ向かうと、対戦相手も現れた。
「あれ」
「まあ」
対戦相手は浜口ももえ。今日の昼も一緒に食べていた友人である。
なんともまあ偶然だこと。顔を見合わせて2人で笑う。
「三日月様、よろしくお願いしますわ」
「よろしく。もう付き合い長くなったし圭でもいいよ。僕ももえって言ってるし」
「まあ、付き合うだなんて! 圭様、イケメンなのにはしたないですわ」
「そういう意味じゃないのわかってるでしょ」
友人らしく軽口をたたきながらもデッキをシャッフルする2人。
丁寧と思いきや結構ズバズバ言ってくるももえと、以外にもノリがいい三日月は相性がいいようだ。
なんだアイツらという視線を浴びながらデュエルディスクを起動し、セットは完了した。
「これよりオベリスクブルー1年三日月圭と、オベリスクブルー1年浜口ももえのデュエルを開始する!」
「「デュエル!」」
三日月 LP4000
ももえ LP4000
「先行はどうぞ」
「あら。ではありがたく頂戴しますわ。私のターン、ドロー!」
ももえは静かに力強くドローすると、ニンマリといい笑顔を見せた。
「私は《ネコ耳族》を攻撃表示で召喚しますわ!」
ちんまりとした猫耳の少年らしき子が2人現れた。
おー、と手を上げてやる気を見せている。
女子生徒たちから「かわいい~!!」と評判だ。
《ネコ耳族》
星1/地属性/獣戦士族
攻200/守100
「《ネコ耳族》か……いいカードだね」
「ええ、頼もしいカードですの! 私はカードを1枚セットしてターン終了です」
レベル1のモンスターが攻撃表示でリバースカード。
かなり濃い罠の香りだと三日月は思いつつ、デッキに手を向ける。
「僕のターン、ドロー! 僕は《エンシェント・エルフ》を攻撃表示で召喚!」
目を伏せた紫の魔導服を着たエルフの女性が現れる。
登場と共に《ネコ耳族》を見て、戸惑いがちに杖を構えた。
《エンシェント・エルフ》
星4/光属性/魔法使い族
攻1450/守1200
「少し厄介だからね、早めに退場してもらおうかな。バトルフェイズ! 《エンシェント・エルフ》で《ネコ耳族》に攻撃!」
《エンシェント・エルフ》の杖から光の精霊が現れ、《ネコ耳族》へと一直線に飛びかかる。
しかし、少年たちが精霊へがおーと威嚇すると、しおしおと小さくなってしまった。
「《ネコ耳族》と戦闘を行うモンスターの攻撃力は200ポイントになりますわ!」
「相手ターンでのみ、だけどね。相討ちでいいかな?」
「はい、攻撃を受けます」
精霊とぶつかった《ネコ耳族》たちはころんと転がっていき、やる気をなくした精霊はそのまま杖の中へと戻っていく。
これ以上の戦闘は不可能と判断したエルフは、三日月を一瞥して光と共に消えていった。
「僕はカードを2枚セット。ターンエンドだ」
「私のターン、ドロー! セットカードは2枚ですか……」
ももえはドローしつつ、三日月のフィールドを見る。
守りが得意なデュエリストとして名高いアヌビスプロである。何も考えずに攻めれば返り討ちとなるだろう。
しかし、仕掛けなければ勝てないのだ。
「臆せず攻めますわ! 私は《レスキューキャット》を召喚します!」
「来るか!」
ももえが召喚したのは工事用ヘルメットをかぶった猫。
にゃーんと鳴きながら出てきた可愛らしいこの猫は、とてつもない効果をもっている。
「《レスキューキャット》の効果を発動します! この子を墓地に送って、デッキからレベル3以下の獣族モンスターを2体特殊召喚しますわ! 私は《隻眼のホワイトタイガー》と《素早いモモンガ》を攻撃表示で特殊召喚!」
にゃーんと鳴いてももえのデュエルディスクに跳びつくと、デッキから隻眼の白虎と愛くるしいモモンガが登場した。
どちらもやる気満々で、むふーと鼻息荒く手足を動かしている。
《隻眼のホワイトタイガー》
星3/風属性/獣族
攻1300/守500
《素早いモモンガ》
星2/地属性/獣族
攻1000/守100
「バトルフェイズに入ります! 《隻眼のホワイトタイガー》で攻撃しますわ!」
「待った! リバースカードオープン! 罠カード《和睦の使者》! このターン受ける戦闘ダメージは0になる!」
獣たちの突撃に対して現れたのは青い衣装を着た平和の使者たち。
2匹の目の前に現れると、にこやかに笑って体を撫でる。
気持ちよかったのかふにゃふにゃとお腹を見せ、その後満足したのかももえのところに戻ってきた。
「むむ……流石にやりますわね。罠カード《キャトルミューティレーション》を発動しますわ。私のフィールドにいる獣族モンスター1体を手札に戻して、獣族モンスターを特殊召喚できます。《素早いモモンガ》を手札に戻して、再びフィールドへ。守備表示にします」
ぴょいんと跳びはねてももえの元へと戻り、改めて飛び出してきたモモンガ。
体を丸めて防御の姿勢だ。ホワイトタイガーは獲物を見る目でモモンガを見ている。
「ターンエンドですわ。エンドフェイズに《レスキューキャット》の効果で特殊召喚した《隻眼のホワイトタイガー》が破壊されます。モモンガは出し直したので効果を受けておりません。よってホワイトタイガーだけ破壊です」
え!? という顔でももえを見るホワイトタイガー。
とぼとぼとフィールドに背を向けて去っていったその姿は何とも言えない哀愁があった。
「僕のターン、ドロー! お、いいね。まずは《強欲な壺》を発動。カードを2枚ドローする」
「まあ、強欲ですわ!」
「欲深くないとプロなんてなれないよ!」
デッキに1枚しか入れられない強欲な壺を使用してドローする三日月。
あまりに手軽な2枚ドローという効果のため、禁止しなくていいのかとプロの中でも意見が分かれている1枚である。
ほとんどのデュエリストがデッキに入れているわけだが。
「よしよし。僕は《
三日月が召喚したのは磁石の戦士の内3人目。
やる気十分に拳を掲げての登場だ。
《
星4/地属性/岩石族
攻1500/守1800
「バトルフェイズ! 《
鉄の翼をはためかせてモモンガに突撃。
ゲンコツをぺしんと叩きこんでさらりと戦闘破壊した。
「《素早いモモンガ》の効果ですわ! この子が戦闘破壊された時、ライフを1000ポイント回復します! さらにデッキから《素早いモモンガ》を好きな枚数裏側守備表示で特殊召喚できますの! 私は2体のモモンガをセットしますわ!」
モモンガがピィ! と泣き声を上げると、デッキからササっと仲間が2体現れた。
ただし、カードの裏に隠れて見ているだけだが。
ももえ LP4000 → 5000
「モモンガは厄介だなぁ……僕はカードを1枚セットしてターンエンドだよ」
「では、私のターン。ドロー!」
ももえはカードを1枚ドローして、手札とフィールドを見返す。
三日月は新たにセットカードを1枚。《
モモンガを有効活用したいと、ももえは手札のモンスターカードを掴む。
「私は《素早いモモンガ》を2体反転召喚! 1体を生贄に捧げ、手札から《ファイヤー・ウィング・ペガサス》を召喚しますわ!」
モモンガを生贄として現れたのは、真紅の翼をはばたかせる天馬。
凛々しい立ち姿からヒヒーンと鳴き声を上げ、三日月たちを威嚇する。
《ファイヤー・ウィング・ペガサス》
星6/炎属性/獣族
攻2250/守1800
「すげぇ! 《ファイヤー・ウィング・ペガサス》!」
「レアカードじゃないか! あんな子がどうして!」
ももえの召喚したペガサスに、他の生徒たちは驚いている。
中々手に入らない珍しいカードの登場だ。色めき立つ生徒が多い。
明日香はいつあんなレアカードを……と前のめりになってしまったが、対戦している三日月を見てああと納得した。
つまり、そういうことだ。
「ここでそのカードか!」
「行きますわ! 《ファイヤー・ウィング・ペガサス》で《
素早く飛び込んできたペガサスは瞬く間に磁石の戦士の元へ。
口から火炎を吐き出し、燃えない磁石を燃やし尽くした。
三日月 LP4000 → 3250
「続けて《素早いモモンガ》でダイレクトアタックします!」
「それは止めるよ! 罠発動! 《リビングデッドの呼び声》! 今倒された《
光と共に磁石の戦士が帰ってくる。ちょっとだけ焦げ臭い。
モモンガは慌ててブレーキをかけ、攻撃を中断してももえへと戻ってきた。
「中々攻めきれませんわね。私はカードを1枚セットしてターンエンドします」
ももえは上級モンスターを召喚して有利になっているはずだが、攻撃が通りにくいことにヤキモキし始めた。
それを見ていた三沢と明日香は、守りの固さに思わずほぅとため息が漏れる。
「堅牢だ……まさしく岩のようだな」
「ええ。攻撃はできているのに、大きなダメージはあまりないわ」
「圭くん、やっぱり強いっす」
周りの生徒たちはプロのタクティクスに釘づけだ。
視線を浴びながらも悠々とデッキからカードをドローする三日月。
うまく攻撃をいなした。次は攻撃する番である。
(大丈夫です。セットしたカードは《聖なるバリアーミラーフォースー》。攻撃してきたモンスターを全て破壊できますわ。いかに圭様といえど、全てのモンスターを破壊されては……)
「いいドローだ。僕は魔法カード《おとり人形》を発動!」
「《おとり人形》ですの……? きゃっ!」
ももえは聞きなれない魔法に首傾げるが、自分の目の前に現れた大きな釘に思わず驚く。
その釘はももえのセットカードに飛んでいき、ブスリと刺さった。
「《おとり人形》はセットされたカードを確認して、罠カードだったら強制的に発動させる魔法カードだ」
めくられたももえの伏せカードは《聖なるバリアーミラーフォースー》。これが強制発動する。
しかし、攻撃が無ければ反応しないバリア。ペガサスやモモンガたちを守るように発生したそれは、ただキレイな壁だ。
「発動したタイミングが間違っていたのなら、そのカードを破壊する」
「うっ……それでは」
「ミラフォは破壊だね」
パリンと音を立てて割れたバリア。
何もなせずに墓地へと送られた。
藁人形がフラフラ揺れて墓地へ行くかと思いきや、そのまま三日月のデッキへと帰っていく。
「《おとり人形》は使った後墓地へは行かず、デッキに戻るよ」
「再利用できるのですか。便利ですわ」
「代わりに《サイクロン》みたいな即効性はないけどね……安全が確保されたなら、一気に攻めようか」
三日月の宣言に、ももえは思わず身構えた。
伏せカードなしで苛烈な攻めに耐えられるのか。生徒たちも固唾をのんで見守る。
「僕は手札から《
γと同じ磁石の戦士が召喚される。
焦げ臭い相棒に思わず何してたのと視線を向けていた。
《
星4/地属性/岩石族
攻1400/守1700
「続いて罠カード《岩投げアタック》を発動! デッキから岩石族モンスターを1体墓地に送って500ポイントのダメージを与えるよ。僕が落とすのは《
墓地へと送られるのは磁石の戦士残りの1体。
デッキから飛びだしてももえに向かって突撃していった。《おとり人形》同様ビックリしている。
《
星4/地属性/岩石族
攻1700/守1600
ももえ LP5000 → 4500
「そして《死者蘇生》を発動! 墓地から《
さらなる蘇生カードでβを特殊召喚。
これでフィールドにはα、β、γが揃った。
「まさか……!」
「想像の通りだよ。僕は《
三日月が手札に残る最後の1枚を掲げると、3体の戦士たちが分離と合体を繰り返していく。
生徒たちがおおー! と興奮する。バトルシティの映像で幾度も見た、磁石の戦士たち。
その合体した戦士が目の前で登場するのだ。
「現れろ! 《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》!」
合体が終わって登場したのは、1体の大きな戦士。
右手に剣を構え、静かに相対している。
《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》
星8/地属性/岩石族
攻3500/守3850
「あれがマグネット・バルキリオン……!」
「くぅ~! かっけー!」
「すごい……」
見ている生徒たちは興奮し、大きな声を上げている。
十代たちも同じようで、前のめりになってデュエルを見ていた。
見る側だと伝説のモンスターだと騒げるが、相対しているももえはたまったものではない。
とてつもない攻撃力のモンスターを出されてかなり苦しい状況だ。
「バトルフェイズ! マグネット・バルキリオン! ペガサスに攻撃だ!
磁石の戦士による剣が《ファイヤー・ウィング・ペガサス》を襲う。
強烈な一撃でペガサスは倒れ、その余波でももえに大きなダメージを与えた。
ももえ LP4500 → 3250
「くうぅ……!」
「僕はこれでターンエンド」
先ほど見たVWXYZよりも高い攻撃力。
対抗できるのかと不安になりながら、ももえはカードをドローする。
「私のターン! ドロー! ~~っ!」
引いたカードを見て状況を打開できないことを理解する。
思わずぐっと声が漏れかけるが、なんとか耐えた。
「《素早いモモンガ》を守備表示に! 《シルバー・フォング》を守備表示で召喚してターンエンドですわ!」
ももえの窮地に現れたのは銀の毛を輝かせた狼。
頼もしい獣ではあるが、磁石の戦士を突破する力はない。大人しく座り込んで待機した。
《シルバー・フォング》
星3/地属性/獣族
攻1200/守800
「僕のターン、ドロー! まずは攻撃しよう。マグネット・バルキリオンで《シルバー・フォング》を攻撃!」
「受けますわ!」
マグネット・バルキリオンは《シルバー・フォング》に剣を振るう。
容易く直撃した磁石の剣は、狼を切り裂き吹き飛ばした。
「モンスターをセットしてターン終了だ。どうぞ」
裏側守備表示でモンスターがセットされる。
そのままターンが返ってくると、ももえは勢いよくカードをドロー。
「私のターン、ドロー!」
手札に来たカードを見て、三日月のセットモンスターを確認する。
守備力が100ポイントしかないモモンガを攻撃しないということは、表側へとリバースした時に効果を発揮するモンスターである可能性が高い。
何の効果だろうかと考えるが、ももえのドローカードでは対処ができないため甘んじて効果を受けるつもりだ。
ただし、少しだけ攻めの姿勢を止めることはできるはず。
「私はカードを1枚セットしてターンエンドです!」
カードを伏せることでけん制する。
三日月が特に守備を重視するプレイヤーだからこそ効く可能性が高い戦術だ。
常に相手のカウンターや攻撃を気にしてデュエルしているのだから、今回もまた。それを願うプレイングである。
「僕のターン、ドロー! うん、《おとり人形》だ。セットカードを確認させてもらうよ」
「うう……はい、わかりましたわ」
しかし三日月は《おとり人形》を引き当てる。安全に攻撃を通すために確認をしていく。
ももえは苦しそうにセットカードを見せる。セットされたカードは《神秘の中華なべ》。自分フィールドのモンスター1体を生贄にすることで、攻撃力か守備力どちらかの数値分ライフポイントを回復することができる速攻魔法だ。
「速攻魔法か。じゃあ強制発動はなし。《おとり人形》をデッキに戻して……セットモンスターを反転召喚」
《おとり人形》をデッキに戻した後、三日月はセットされたモンスターを反転召喚。
現れたのは、壺だ。そして壺の中から1つ目が見えている。
「《メタモルポット》だよ。効果でお互いに手札を全て捨てて5枚ドローする」
《メタモルポット》
星2/地属性/岩石族
攻800/守700
三日月は手札がないため5枚ドロー。
ももえは手札を3枚捨て、新たに5枚ドロー。
手札が回復したことで、三日月が一気に攻勢に出ると思われた。
「……ん?」
しかし、目の前に現れた招き猫のようなモンスターに気づく。
少ししてももえを見ると、不敵な笑みを浮かべている。
「圭様ならきっと、この子の効果を使わせてくれると思いましたわ」
「この猫……ああッ!?」
三日月は何かを思い出して声を上げる。
招き猫は小判をチャリチャリ落としながらももえのデュエルディスクへと吸い込まれていった。
そして、ターンが切り替わる!
「《ネコマネキング》の効果です! 相手のカード効果によって墓地に送られた時、相手のターンを終了させますわ!」
「《ネコマネキング》! しまった、忘れてたァ!」
思わず頭を抱える三日月。
それもそのはず。このカードを勧めたのは彼である。ちょっとしたカード破壊に巻きこんでくれたら簡単に切り返せるよと1枚トレードしたのだ。
すっかり忘れていた彼は、警戒せずに《メタモルポット》を使用。伏せカードをセットできないままにターンが渡ってしまう。
「あのブルー女子生、アヌビスプロにしてやってるぜ!」
「なんとレベルの高いデュエルだ!」
生徒も先生たちも、攻守が激しく入れ替わっていくこのデュエルに興奮している。
特に実技担当の先生たちやクロノス先生は大満足だ。素晴らしいノーネ! と拳を握っていた。
「私のターン、ドロー! 行きますわよ、圭様! 私は装備魔法《早すぎた埋葬》を発動します!」
ももえはカードをドローすると、潤沢な6枚の手札から強力な魔法を発動する。
自分の墓地より好きなモンスターを蘇らせる、切り札にもなり得るカードだ。
「ライフポイントを800ポイント払い、墓地から《ファイヤー・ウィング・ペガサス》を攻撃表示で特殊召喚!」
「そのカードか!」
墓地から炎の翼を生やしたペガサスが舞い戻る。
ブルルとひと啼き。やる気は十分だ。
ももえ LP3250 → 2450
「さらに装備魔法《一角獣のホーン》をペガサスに装備! これで攻撃力守備力が700ポイントアップします!」
ペガサスに生えていた角が雄々しく力強い角へと変化した。
そこから炎が湧き出ている。攻撃力が飛び抜けて強くなったのが目で見ても分かるようだ。
《ファイヤー・ウィング・ペガサス》
攻2250/守1800 → 攻2950/守2500
「攻撃力2950……まだバルキリオンが上だよ、ももえ」
「承知しておりますわ! モモンガを攻撃表示に変更してバトルフェイズ!」
「バトル!?」
三日月は何かあるとももえの動きに注目する。
手札は4枚。いくらでも使えるカードはあるはずだ。
「《ファイヤー・ウィング・ペガサス》でマグネット・バルキリオンに攻撃します!」
「……受ける!」
「では速攻魔法《突進》を発動です! エンドフェイズまでモンスターの攻撃力を700ポイントアップしますわ! ペガサスの攻撃力を上げます!」
燃ゆるホーンから繰り出される強烈な突進。
魔法の力によって倍加したパワーでマグネット・バルキリオンに突撃する!
《ファイヤー・ウィング・ペガサス》
攻2950 → 3650
「攻撃力3650!?」
「マグネット・バルキリオンを上回ったぞ!」
突貫してきたペガサスの角がマグネット・バルキリオンに直撃!
炎に燃えながら吹き飛び、バラバラになって転がっていった。
三日月 LP3250 → 3100
「やられたな……!」
「続いてモモンガで《メタモルポット》を攻撃しますわ!」
ペガサスの後ろから飛んできたモモンガは、壺の中へ頭を突っ込む。
そしてバリバリと爪で中を引っ掻き回す。たまらず《メタモルポット》はひび割れながら退散した。
三日月 LP3100 → 2800
三日月のフィールドが更地になった。
ももえはよし! と拳を握り、笑みを見せる。
「カードを1枚セットして、ターンエンドです! ペガサスの攻撃力は元に戻りますわ」
「僕のターン、ドロー! おっ、このカードは」
三日月はドローカードとももえのフィールドを見比べる。
手札は2枚とかなりの消費だが、ペガサスとモモンガ。《神秘の中華なべ》にセットカード1枚。
そしてライフポイントが2450ポイントとかなりの差である。しかもモモンガと中華なべはライフポイントを回復できるカードだ。
しかし、ここからどうにかするのがプロってもんだろう。三日月は楽しそうに手札を確認した。
「よし、使ってみようかな! まずはこれを使うよ。装備魔法《早すぎた埋葬》を発動! ライフを800ポイント支払って、自分の墓地からモンスターを復活させる。僕は《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》を特殊召喚!」
「またっ……!」
墓地より現れたのはやはりと言うべきか、切り札たるマグネット・バルキリオン。
焦げた部分や角で凹まされた部分もなく、新品同様の磁石の体を見せつける。
三日月 LP2800 → 2000
「ももえ、知ってる? マグネット・バルキリオンは合体するだけじゃないんだ」
「それは……?」
「合体できるなら、その逆もできるだろう? 分解だ! バルキリオン!」
三日月の声と共にマグネット・バルキリオンは体を分解させる。
1つ1つが別れていき、登場したのは3体。磁石の戦士α・β・γだ。
「これは……! でも、わざわざ分解するなんて」
「こうしたほうが都合がいいからね。続けて手札の《ギガンテス》の効果。墓地の地属性モンスターを1体除外することで、手札から特殊召喚できる。墓地の《岩石の巨兵》を除外して特殊召喚だ!」
墓地のカードをポケットにしまい込み、手札から現れたのは鬼のような見た目の巨人。
こん棒を持ってももえを睨みつけながらの登場だ。
《ギガンテス》
星4/地属性/岩石族
攻1900/守1300
「あ、《ギガンテス》」
「知っているの?」
「う、うん」
翔はあのカードに見覚えがあった。
先ほどのパックを開けた時に三日月が1枚だけともらったカードだ。
レベルは普通、攻撃力はそこそこといったカードだったが。どんな効果を持っているのだろうか。
「モンスターが4体も……」
「壮観でしょう? さて、バトルフェイズ」
三日月は静かに宣言すると、モンスターたちは戦闘態勢に。
ももえは気を引き締めつつ、伏せカードを確認する。
1枚は《神秘の中華なべ》。そしてもう1枚。
(2枚目の《突進》です。これで何をされても返り討ちですわ)
自分の切り札たるペガサスは《一角獣のホーン》によって2950の攻撃力。そこに先ほど同様《突進》を用意している。
攻撃力が低いモンスターたちだけでバトルフェイズに入っているのだ。先ほどのももえと似た動きをしてくる可能性は高い。
たとえ同じように攻撃力を上げてきても対応できる。ももえは自信をもって待ち構えた。
「まずは《ギガンテス》で《ファイヤー・ウィング・ペガサス》に攻撃だ!」
「受けますわ!」
ペガサスへっ突っこんでいく巨人。こん棒を振りかぶり攻撃するが、角で吹き飛ばされて鎧袖一触である。
三日月 LP2000 → 950
「……あら?」
攻撃力も上がらず、普通に自滅だ。
何をして……と思っていると、突如《ギガンテス》が暴れ出す。
「な、なんですの!?」
「《ギガンテス》は戦闘で破壊された時、その怒りでフィールドの魔法・罠カードを全て破壊するんだ」
「魔法カードを……あっ!」
思わず《ファイヤー・ウィング・ペガサス》を見ると、地面から何本もの手が伸びてきてその脚を掴んでいる。
頭の角も折れて無くなってしまっていた。
「《早すぎた埋葬》は装備カード。そのカードが破壊されると、装備モンスターは破壊されて墓地へと戻る……《ファイヤー・ウィング・ペガサス》を破壊!」
「きゃあっ!?」
暴れまわった《ギガンテス》は魔法を全て吹き飛ばす。
中華なべと猪が吹き飛んでいく。そしてペガサスは地面へと戻り、墓地へ埋葬された。
「これですっきりした。じゃあ攻撃を続行しようか」
「うっ……!」
《突進》と《神秘の中華なべ》が無くなったことで、防御が0になってしまった。
モモンガは戦闘破壊されると1000ポイント回復できるが、この状況では焼け石に水だろう。
「まずは《
「ううっ! 破壊された時、ライフを1000ポイント回復しますわ!」
磁石の剣で一閃。モモンガは鼻先を斬られ、慌てて逃げていった。
ももえ LP2450 → 2050 → 3050
「続けてβとγでダイレクトアタック!」
磁石の戦士2体は互いに電力を合わせ、バチバチと稲妻の球を作り出す。
そして、ももえに発射! 一気にライフポイントを消し飛ばした。
「きゃああああーーーっ!!!」
ももえ LP3050 → 1350 → 0
フィールドが空の状態から一転して攻勢。
劇的な勝利に生徒たちは歓声と拍手を2人に送る。
「ふぅー……ハードなデュエルだった。対戦ありがとう、ももえ」
「こちらこそですわ……悔しいです」
近づいた三日月はももえと握手する。
いいデュエルができたことに満足しているが、負けたことは悔しい。ももえは少し頬を膨らませて三日月を睨んだ。
「こればかりは負けたくないからね」
「次は勝って見せますわ!」
「楽しみにしてる。さ、戻ろう」
デュエル開始の宣言をした先生に礼をして、2人でデュエルフィールドから出る。
通路を歩いている最中、ふと三日月がため息を吐いた。
「ねぇ~、《ネコマネキング》は心臓に悪いってぇ」
「圭様がくれたのではありませんか。《ファイヤー・ウィング・ペガサス》もですけれど」
「他の人が使えそうなカードはトレードしてあげる主義なんだ……コレクターってわけじゃないからね」
上手く使ってよ? 楽しそうに笑う三日月を見て、ももえは勿論ですわと笑うのだった。
今日の最強カードは、《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》だ!
《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》
星8/地属性/岩石族
攻3500/守3850
磁石の戦士たちで合体。分離することもできる。
磁石の戦士α・β・γたちが揃うと合体できるぞ!
強力なモンスターだけど、分離して元の磁石の戦士に戻ることもできるんだ!