その日、僕は学校が終わると真っ直ぐ帰宅した。
自室に戻り、制服から私服へと着替える。そしてベッドの上に仰向けに横たわった。
「…………」
目を閉じ、意識を集中させる。
それから数十秒後、僕はカッとその目を開いた。
(やはりだ。学校には他にもオルフェノクがいる!)
今日一日、周囲の気配に集中して確信した。誰かはまだ分からないが、学校内の生徒──おそらく隣のクラスに同族が混じっている。それこそが先日の件の元凶なのだ。
(別にそいつが誰を襲おうが自由だが…。念のためだ。確かめなければ!)
次の日、早速行動を開始する。
まずは隣のクラスの教室を覗きに行く。幸いなことに、まだ授業が始まる前であったため、生徒たちは思い思いの行動を取っていた。その中で一人だけ、窓際の席に座って外を眺めている男子生徒がいることに気付いた。
(あいつか……)
僕はその男子に近づくと、背後に立った。そして耳元で──普通なら聞き取れない声量で囁く。
「なあ、ちょっといいかな」
「…」
相手は反応しない。聞こえないのだから当然だ。
次に目をつけたのは、階段の踊り場で一人の女子とすれ違ったときだった。
「ねえ、ちょっといいかな」
今度も先程と同様の小さな声で話しかける。
「……」
彼女は振り返りすらしない。彼女も『違う』ようだ。
次の生徒は廊下ですれ違ったときに試してみた。
「ちょっといいかな」
「…」
今度もハズレ。同族ならばこの声量でも聞き取り反応を示すはずだ。だがその様子は全く見せない。
その後も何度か話しかけたり、観察してみたりするが、どれも空振りに終わった。どうやら今のところ、目についた中に探していた同族はいないらしい。
(さて、探し続けるしかないか……)
そう考えながら、気分を切り替えようと僕は放課後に屋上へと向かった。
「やあ、待ってたよ」
しかしそこには一人の男子が待っていた。僕が来ることが分かっていたようだ。彼が──。
「君が……?」
「そうだよ。まあとりあえず座ってよ」
促され、僕はベンチに腰掛ける。
「……僕に何か用ですか?」
「うん。読んでたんだろう? 僕のこと」
「気付いてたのか…」
「まあね。僕はこの学校でただ一人のオルフェノクだから。いや……君以外にももう一人いるけど」
「え?」
「いや、何でもないよ。ところで何のつもりなんだい? あんなにしつこく探し回って…」
不審そうにこちらを見る男子生徒。だが確認したいのはこちらのほうだ。
「それはこっちの台詞だ。そっちの担任を狙ったのはいい。だが学校内でこれ以上襲うな。あんまり騒ぎを起こしたくは無ない」
「ああそうかい? そうか、君はそうなのか」
彼は納得したように呟き、だがまるで気にするそぶりを見せずに続けてくる。
「けど僕はどうでもいいんだ。そんなこと…。いざとなればスマートブレインの手を借りる。せっかく実験もすんだんだ」
「実験?」
「そう! 効率よく仲間を増やす方法だよ!」
「……!」
僕は思わず息を呑む。
「まさか……!」
「そう、あれは僕だけの能力だ。宿主から宿主へ。指示一つで宿主を操り、頃合いを狙ってまとめて『使徒再生』させる。上手くいけば短時間で一気に覚醒者を増やせる!」
興奮したように立ち上がって力説してくる彼。
「なるほど、それがお前の能力というわけか」
「そうさ。そしてその力で僕は……」
彼はそこで一度言葉を区切り、ニヤリと笑い──
『次の『ラッキークローバー』になれるんだ!』
正体──【パラサイトワスプ・オルフェノク】の姿を現した。
シリーズ
オルフェノク──灰の翼
パラサイトワスプ・オルフェノク
教師に蟲を寄生させていたオルフェノク。 この子蟲を食いつかせることで間接的に
使徒再生を行うが、寄生している宿主に対してはすぐには使徒再生を行わない。
寄生蜂型オルフェノク。
宿主は操られることで意識の無い間も屋外を出歩き、獲物を探すようになる。
また、また、多数の蟲が一度に寄生しているため、何度でも使徒再生に利
用される。