花螳螂の誘い
『ねえ、あなたなんでしょう? 私をオルフェノクにしたのは…』
「え……」
そんな言葉から始まったのは…。放課後、帰宅途中の通学路。突然話しかけてきた少女──【オーキッドマンティス・オルフェノク】の誘いだった。
※※※
「あれは確か私が高校に入ってすぐ、ケツァルコアトルス・オルフェノク──つまりあなたに襲われてオルフェノクに覚醒したすぐ後のことだった……」
彼女は語り始めた。
「入ったばかりの部活を終えて帰ろうとしたとき、いきなり数人の男に取り囲まれたの。それで逃げようとしたら、その内の一人に捕まって…」
「っ!」
「痛かったわ……。でもその時、私の身体に変化が起こってね……。気づいたときにはもう、私はもう人間じゃなく、初めて【ハナカマキリ】の姿になっていた。
それからは大変だった……。なんとかして戻ろうと思ったけど……どうしようもなかった……。そのときよ、あの人が目の前に現れたのは」
彼女はそこで一度、口を閉じた。
「あの人?」
僕は聞き返す。
「桜井さん。そう名乗っていたわ。そして『ゲーム』に参加するように言われた。でも、それはできない…。
私は遊びで人を襲うなんてしたくないの!」
「……」
彼女の決意を聞きながら、僕は複雑な気持ちでいた。
「それで、君を覚醒させたオルフェノクである僕に助けてくれって? 初対面以来会ってないのに…」
「人間の警察には助けは求められない…。かといってスマートブレインはむしろ向こうに味方するわ。だから
この一年、いつ私の順番が回ってくるか震えているしかなかった」
それを聞き、僕は考える。
(僕なら…。人の襲い方を他人に強いるのはあまり好きじゃ無い。『ゲーム』というのがどんなものかは知らないが…。ここは彼女を助ける、か)
「分かった。詳しく聞かせてくれ」
【挑戦は一人ずつ、指名された者から順番に行う】
【期限はそれぞれに指定され、使徒再生人数をぴったりに達成しなければならない】
【襲撃対象や狩り場はあらかじめ指示された条件を遵守する】
『なるほど、ね』
オーキッドマンティスから教えられたサイトを見て、ルールを確認する。ログイン用のIDとパスワードは彼女の物だ。現在、予選がほぼ完了し、そろそろ彼女の番が回ってくるはずとのことだった。
(ファイアフライ、ポーキュパイン、ローカスト…。しかし成功者が思ったよりも少ないな?)
挑戦者の情報はある程度サイトに載せられていた。それによると全体の挑戦者数はおよそ三十人ほど。だが記載された情報によればただ規定人数を使徒再生するというだけの予選ですら、半分ほどしか達成していないのだ。
(死因まではさすがに載っていないな。まあ、反撃に遭うとも邪魔が入ったとも考えられない。おおかた力に溺れて規定人数を超過したとかそんなところだろう)
逆に言えば、そういった者達を篩にかけるためのものがこの予選なのだろう。そんなことを考えているとちょうど更新が入っていた。次の挑戦者は──。
『オーキッドマンティス…』
つまりは代理人となった自分と言うことだ。目的を果たすためにも失敗するわけにはいかない。気を奮い立たせつつ、自制心をも呼び起こしたのだった。