『これで十九人目、だな』
崩れ落ちる灰の山を前に、再確認。僕(正式にはオーキッドマンティス)に与えられていたクリア条件は5日で二十人。今日は三日目だったが、早くもあと一人というところまで来ていた。
『ここまで来たんだ。最後の一人も今日のうちに見つけておきたいが…』
「────―」
ふいに声が聞こえた気がして振り向くが、そこには誰もいない。
『気のせいか?』
「────―!」
再び、今度は先程よりはっきりと声が聞こえる。
「そこまでだ……!」
その声に、僕は反射的に振り返った。
そこに立っていたのは、一人の少年。だがその顔に浮かぶ紋様を見て、思わず驚きの声を上げた。
『お前は……!』
「どうやら間に合ったようだな…。おまえのゲーム、ここで止めさせて貰う!』
言っているうちにその姿が変化する。日本の兜のような…しかし装飾の先端は小さな球体のような形状となっている。眼球のようなそれとは別の、顔面の目と口元の触角。肩からは節足動物の脚のような触角が伸びている。そして何より特徴的なのは、背中に背負った小さな巻き貝状の装甲。
『ハーミットクラブ・オルフェノク、か? そして…!』
その姿を見て、僕は思わず呻いた。
これがゲームの進行を妨害していたのだ。見た限りでは辛うじてオリジナルのオルフェノクでは無さそうだが、それでもかなりの実力を持っていそうに見える。実際これまで何人ものオルフェノクに打ち勝っているのだからその見立ても間違ってはいないだろう。
『一体何故、僕の邪魔をする? 僕はただゲームをクリアしようとしているだけだぞ』
『それが気に入らないからだ』
『ほう? どういう意味だ』
『俺は、人間に害を与えるようなことはしない! だが、お前はゲームなどとほざき、人を襲っている!』
叫ぶと同時に、ハーミットクラブは突っ込んでくる。
僕はそれを迎撃すべく銃を構えた。だが──
『おっと、その必要はなくなったな』
僕が撃ち倒したのは突っ込んで来たハーミットクラブではなく、塀の影から姿を現した通行人だった。彼が通りがからなければ、まず目の前の敵を倒さなければならなかったところだったが、こうして規定人数をクリアした以上ここに留まる必要も無い。
『お前! 次に会ったら勝負をつけてやるからな!!』
既視感のある叫び。だが今回ばかりは再会が時間の問題のようだった。
*
「クリア、か…」
サイトにログインし、正式に予選を突破したことを確認する。だが問題はここからだ。プロソポコイルスもそうだが、次の『挑戦』では襲撃に対し具体的な条件が指定されるからだ。
「面倒な内容じゃなきゃ良いんだがな…」
呟きながら椅子の背にもたれかかり、天を仰ぐのだった。