『させるか!』
僕はハーミットクラブ・オルフェノクの拳を寸前のところで受け止める。だがその威力はすさまじく、僕の体はわずかにたじろいだ。
『ぐっ!』
『おまえはあの時の翼竜野郎!? 何故邪魔をする!』
『あいにくとルールなんでな! お前こそ、どうして彼女を襲おうとするんだ!』
『おまえ達のやることを見逃したくないからだ。俺は…人間を守る!』
『おまえだってオルフェノクだろう! まだ分かってないのか!』
叫びと同時に、僕はハーミットクラブへ発砲しようとするが、そうはさせじと今度は僕の腹部に蹴りが入る。僕は思わずうめき声を上げながら吹き飛ばされた。
『ぐあっ!!』
だがすぐに体勢を立て直すと、そのまま突進し、銃口を奴の胸元に押し付ける。
『おらあああ!!』
至近距離からの銃撃。しかしそれは躱され、かすり傷をつけるにとどまる。
『ちいっ!!』
さらにもう一発、二発、と撃ち込むが、いずれも当てるが致命傷には至らない。ハーミットクラブは銃弾をひょいと避けると、双剣で斬りつけた。衝撃に怯む僕に対し、ハーミットクラブの追撃が迫る。
『ぐっ!!』
『ああ! 今、助けます!』
いくらか疲労が抜けたらしきオーキッドマンティスがこちらへ向かおうとするが、僕はそれを制止した。
『だめだ! 君は一旦逃げろ! 後で合流する!』
その言葉に数秒悩みながらも姿を消したオーキッドマンティス。
その後も何とか身を捻り、ハーミットクラブの直撃を避けるも、左腕に大きな裂傷を負ってしまう。
それでも諦めず、ハーミットクラブを羽交い絞めにする。
『はなせぇっ!』
『離すかよ!』
必死に抵抗するハーミットクラブ。その力はやはり強く、今にも振りほどかれそうだ。
『うおおおっ!』
渾身の力により、ついに拘束が解けた。即座に銃を構え撃つが、相手の斬撃もまたもろに入ってしまう。
『ぐうっ!』
『はぁっ!』
相打ちとなりそろって倒れ込む。そろそろ逃げても良かったのだが、飛翔態へ変わる隙がなかなか見つけられない。以前と比べて、向こうには自分を逃がす気がまったく無いのだ。
『てっめえ…、しぶといな…!』
『それはこっちのセリフだ。いい加減ゲームを続けなくちゃならないってのに…』
「いいえ。あなた達はここまでです」
その時、先ほどオーキッドマンティスが去って行った方向から聞き覚えのある声が聞こえた。
『……っ! あんたは…桜井…?』
いつの間にかオーキッドマンティスが戻って来ていた。そして彼女の後ろから現れる、数人の人々。皆一様にオルフェノクだった。その中央に抱えられていたのは──
『オーキッドマンティス……!』
ぐったりとしたオーキッドマンティスの姿。意識があるかすら分からない。だがあちこちから青い炎を上げ、その死が近づいていることが見てとれた。
『何を……? まさか、あんなたちがこれをやったのか!』
全身の痛みも忘れて叫ぶが、桜井は涼しげな顔。
「彼女はさきほど、自身で直接──つまり『ルール以外の方法で』使徒再生を行いました。ゆえに失敗と見なしたのです。そしてそうである以上、貴方もまた…」
オーキッドマンティスを放りだし、周囲のオルフェノク達が引いていく。そして桜井はその顔に黒い何本もの筋のような紋章を浮かび上がらせた。
『同様に処刑される。…ああ、ついでにそこの邪魔者もついでに排除しておこうか。では、心の準備は良いかな?』
そう言って、桜井──ホエール・オルフェノクが突進してきた。