「今日から本格的に仕事をしてもらう。まずは君がオルフェノクとしてどれだけやれるかテストさせてもらう」
そう言って連れてこられたのは、繁華街にあるゲームセンター。入り口には数人の不良少年たちが屯している。
彼らは僕を見ると舌打ちをしたり、露骨に睨みつけてきたりした。
「おい、お前ら。ちょっと遊んでやってくれないか」
「え?遊ぶって……」
「いいから。遠慮はいらん」
戸惑う僕の背中を男が押す。
「チッ、しょうがねえな」
「ったく、なめやがって!」
少年達はぶつくさ言いながらも飛び出して来た。そして、店内から出ると一斉に殴りかかってきた。
「オラァ!!」
「死ねや!」
「クソがぁっ」
様々な悪罵と共に繰り出される拳、蹴り。それらは本来ならばそれなりに恐ろしいもののはずだ。――数日前までの自分だったならば。
僕は姿をケツァルコアトルス・オルフェノクとしてのものに変えると、彼らの攻撃を片手で受け止め、逆にその腕を捻り上げた。痛みを訴える悲鳴が上がる。
「いでぇっ!?いてぇよぉっ!」
『うるさい』
その声は路上に投影された影――人間の姿が映し出されたものから響く。
「がはっ!」
掴んだままの腕を振り回し、他の少年たちへぶつける。いとも容易く二人同時に床へ叩きつけられた。
「ぐあっ」
「ごほっ」
「ひぃいっ」
『次は誰だ?』
しかしもう遊ぶのも良いだろう。使徒再生攻撃のため、銃を取り出しつつ僕が一歩踏み出した瞬間、最も遠くにいた少年が仲間を見捨て逃げ出そうとする。『待て!』
だが逃げられるわけもない。僕は宙へ飛び上がると、ほんの一飛びでその目の前に降り立った。彼は僕の姿を認めるなり驚愕の表情を浮かべた。
「な、なんなんだよ、お前は!」
そう叫びつつも必死の形相でこちらへ駆け寄ってくる。
「どきやがれ、化け物め!」
怯えきった顔で叫ぶ彼に向けて、僕は引き金を引いた。エネルギー弾はまっすぐにその心臓を射貫き、その目を真っ白に染め上げたが数秒後には各部から灰が吹き出し始めた。
(彼も、なのか)
考えながら残りの二人に目をやる。
「ひ、ひぃいっ!」
「助けてくれ!」
幸運なことに、彼らは腰を抜かしたままその場を動いていなかった。二人の少年は、僕が近づいた途端に命乞いを始める。そんな彼らに向かって無造作に銃口を向ける。
「た、頼む!殺さないでくれ」
「お願いだ。見逃してくれ」
涙ながらの命乞いにも応じず、僕は引き金を引く。
乾いた音とともに撃ち出されたエネルギー弾は、一人につき一発ずつ命中した。
「がはっ」
「ぎっ」
二つの短い断末魔を残し、二人は灰となって崩れ落ちた。
「お見事」
いつの間にか近くに立っていた男がパチパチと手を叩く。
「やはり君には素質があるようだ。これからの活躍に期待しているよ」
それだけ言うと、男は片方の少年に視線を送った。
つられて自分もそちらを見る。
『これは…。まさか!』
揃って灰になったかと思っていたが、一人は身体を震わせながらも人の形状を保っていた。いや、一瞬ではあるがその身体は点滅するように、白く大柄なものに変化し戻ることを繰り返している。
「ほう、珍しいな。こいつは使徒再生の適応者らしい」
『使徒再生の……適応者?』
「ああ。さっそく覚醒とは運が良い。この子は私に任せろ」
僕が何も言わずにいると、男は懐から携帯電話のようなものを取り出すとどこかへ連絡を取り始める。
「もしもし?……ああ、今から例の場所へ来てくれ。適合者が居たのでな。……そうだ、急いで来い」
電話を切ると、男はこちらを向く。
「それでは、私はこれで失礼しよう。また後ほど会おう、灰村くん――ケツァルコアトルス・オルフェノク」
男は軽く手を上げると店から出て行ったのだった。