闇討ち
「ふむ、どうやら君は本当にオリジナルのオルフェノクであるようだね」
そう言うのは、僕の目の前の机に座った30代ほどの男――スマートブレインの現社長・村上だった。
「先ほどのテストの結果を見ても、とても人間とは思えない身体能力だ。実に素晴らしい」
先ほど、僕が行った試験――それは簡単なもので、内容は『オルフェノクとしてどの程度の力を持っているのかを見る』というものだ。僕はそれを難なくこなし、結果を出した。
「さて、君がオルフェノクとしてさっそく仲間を覚醒させたことは聞いている。ひとまずは私から言うことはないでしょう。あるいは君ならばいつか『ラッキークローバー』になることもできるかもしれないな。楽しみにしていますよ」
「『ラッキークローバー』?」
村上社長は頷く。
「君もすでに知っていると思うが、我々スマートブレインの社員――特に上層部はほぼ皆、オルフェノクだ。だが、中にはただの社員の枠には入らない方々もいる。そういった者達四人のことを『ラッキークローバー』と呼んでいるのです。
彼らは特別な存在でね、その力は非常に強い。実際、あの四人はそれぞれが一人でオルフェノクの集団を壊滅させることも可能なのですから」
「そうなんですか……」
「まあ、彼らは基本、特別な事件にしか動かないのですがね。それでも、その地位故に特別な待遇を受けている」
「……」
僕は黙って社長の話を聞いていた。正直言って実感はなかった。自分の中に眠るオルフェノクとしての能力もまだよく分からないのだ。
「とにかく、君のオルフェノクとしての力は申し分ない。そこで、君にはいずれ、オルフェノクとしての特殊な仕事に就いてもらう。良いですね?」
「はい、分かりました」
「さしあたっては実戦経験を積んでおいてください。場合によってはこちらから連絡をします」
「ラッキークローバー…」
呟きながら、夜の公園を歩く。
(ラッキークローバーか……。一体どんな奴らなんだろう)
そんなことを考えていると、不意に後ろから声をかけられた。
「君、こんな時間になにをしているんだ」
振り返ると、そこにいたのは警官らしき男性だった。
「いえ、ちょっと散歩をしていただけです」
「本当かい?物騒だから気をつけた方がいいぞ。昨日もゲームセンターの前で灰まみれの遺体が見つかったばかりだ」
「はい、ありがとうございます」
「うん。じゃ、早く帰りなさい」
「はい」
そう言いつつ、僕はそっと拳を握る。彼が言っているのはもしかしなくても僕が殺害した三人――いや二人のことだろう。放っておいても大して問題にはならないだろうが…。これもついでだ。
「それじゃあ…。な、なんだ!」
警官が振り返った時には、そこにいた僕の姿はオルフェノクのものに変身していた。彼はとっさに拳銃を引き抜くが、その弾丸は僕の肌に傷すら残すことはない。
「ば、化け物が!死ねぇっ!」
最後まで発砲されるが、結局意味を成すことはなかった。
『それじゃあ、さようなら』
青い光が瞬いた直後、灰となって崩れ落ちる警官。それを一瞥すらすることなく僕はその場を後にした。だが。
『!!』
人間態に戻ろうとしたその時、少し離れたところから強い気配を感じた。教官役だった『スティングレイ・オルフェノク』とは比べものにならない強力なものだ。
(行ってみるか……)
好奇心に駆られ、僕は気配の元へと向かった。