しばらく進むと、そこには一人の青年がいた。年齢は二十歳くらいだろうか。黒いコートに身を包んでいる。そして、彼の前には灰色の同族の姿があった。
「あれは……?」
見た限り、鱗や背ビレ、棘のようなものが生えた外皮からするとワニだろうか。疑問に思う間もなく、彼はゆっくりとこちらを振り返る。
「!?」
次の瞬間、僕の身体を衝撃が貫いた。同時に先ほどまで立っていた青年の身体が灰となって崩れ落ちていくのが目に入る。
(やられた……)
薄れゆく意識の中、最後に見たのは僕を睨みつける外国人の眼光だった。
「うっ……」
目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。白い壁に囲まれた小さな部屋の中央に僕は寝ている。
「ここは……?」
呟くと、すぐに答えが返ってきた。
「おはよう、目が覚めたみたいだな」
見ると、入り口のところに先ほどの青年が立っていた。僕をここまで運んだ人物なのだろうか。
「あなたは……誰ですか」
僕が起き上がると、彼は小さく笑う。
「俺は山上だ。山上隼人。オルフェノクだよ」
そう言って山上は怪人態──『フライトラップ・オルフェノク』へと変身して見せた。ハエトリグサらしく、その各部には二枚貝状の捕虫器が形成されている。
「スマートブレインの……」
「ああ。君は何が起きたのか、分かっているか?」
「ええ、僕を襲った彼──クロコダイルオルフェノクが僕も使徒再生をしようとしたのでしょうか。それで多分既にオルフェノクだと気付いて…」
「なるほど……。しかしオリジナルのオルフェノクがやられるなんて珍しい。よりによってラッキークローバーの仕事に巻き込まれるなんて災難だったな」
ラッキークローバー。その名前を聞いて思い出す。
「あの、彼がそのラッキークローバーなんですか? もしかしてあなたも…」
「ああ……。彼は確かにそうらしい。だが俺は違うよ。ラッキークローバーっていうのは俺達のようなのを超えた強さを持った、特別なオルフェノク達のことだ」
「特別……」
「そうだ。だが候補ではある。『ソードフィッシュ・オルフェノク』『ワーム・オルフェノク』『シーキューカンバー・オルフェノク』あの地位を狙う連中は多い。…で、だ。そんな俺達には普通の使徒再生とは別に任務が与えられることもある。ここにはお前を勧誘にきたんだ」
そう言い、山上は一枚の写真を取り出す。そこには、一人の女性が写っていた。
「この人は……」
「『泉理奈』。彼女はスマートブレインの意思に背き、勝手な行動を取っている。だから排除するんだ」
「排除…仲間を、ですか…」
暗い顔で呟く自分をあえて無視するように、山上は話し続ける。
「ああ。彼女はすでに幾度も警告を無視し、追っ手を一人返り討ちにし続けている。ラッキークローバーが出るほどではないにしても再生オルフェノクでは無理、だからオリジナルの俺達二人で向かうんだ」
フライトラップ・オルフェノク
捕虫器官(ハエトリグサのもの)型の触手が武器。
蠅捕草型オルフェノク