僕とフライトラップは左右に分かれて泉──ブラックウィドゥ・オルフェノクを挟み込むような位置を取る。
『はあっ!』
真っ先に襲いかかったのはフライトラップ・オルフェノク。その拳はまっすぐブラックウィドゥへ向かうが、交差させた彼女の腕に防がれる。
『!!』
次の瞬間、フライトラップの身体が吹き飛ばされていた。片方から距離を取ることに成功したブラックウィドゥは、今度はこちらへと向き直る。
『なっ……』
『遅い……』
呆然とする僕に対し、泉はそう呟く。彼女が片腕を振るうと僕の首筋にも鋭い痛みが走った。
『がああぁっ!?』
躱すことには成功していたが、辺りに絶叫が響き渡る。よく見ると、彼女の持つ大鎌が僕の首を薄く切り裂いていた。傷口を手で押さえ、なんとか立ち上がる僕。フライトラップも立ち上がり、怒りのこもった声で言う。
『あいつめ……なめやがって……』
その言葉と同時に、彼──フライトラップの両腕からそれぞれ、名前の通りの、組み合わさった顎のような捕虫器官が生えてきた。腕の動きに合わせて動き、それらが同時に閉じられると金属同士がぶつかり合うような硬質な音が響く。
『おらああああああ!!!!』
雄叫びと共に、彼はブラックウィドゥを噛み砕こうとそれらを次々に繰り出した。ブラックウィドゥはそれらを躱し、あるいは鎌で切り落としていくが落とされた大顎はすぐに再生し反撃の隙を与えない。
(…は、そうだ。僕も加勢しないと…!)
僕も飛び上がって、彼女目掛けて襲いかかろうとする。
『くらえっ!』
しかし、側面から衝突した何かが僕の身体を壁まで弾き飛ばした。そのままソレは攻撃を続けてくる。
『がっ……!?』
地面に叩きつけられる僕。
『くそっ! なんだ、お前は!』
なんとか蹴り飛ばして仕切り直す。そこにいたのは、一つ目の同族。顔全体を覆う兜を被ったサイを思わせる姿──ライノ・オルフェノク。
『あいつの仲間か……!』
山上が忌々しげにその名を呼ぶ。
『ウオオオ!!!』
大声を上げながら外見通りに突進を繰り出すライノ・オルフェノクだったが、どうやら彼は僕たちのような【オリジナル】のオルフェノクでは無いようだった。パワーは僕なら十分受け止めきれるレベルであり、スピードも僕の全力よりは遅い。
僕は容易くその一撃を受け止めると、そのまま彼の顔面に拳を叩きつける。ふらつくライノ・オルフェノクはそのまま拳や蹴りを次々とまともに受け、最初とは逆に吹き飛んだ。
『ウオアァッ……!』
悲鳴を上げて倒れる彼に、僕は続けて銃撃を加えた。ダメージを超過したライノ・オルフェノクは断末魔と共に青い炎を上げ、灰となって崩れる。
だがその時、
『ぐああっ……!』
突然背後から衝撃が加わった。振り返ると、そこには見たことも無いような巨大な虫の脚が──すぐ目の前にあった。
ライノ・オルフェノク
ブラックウィドゥ・オルフェノクに匿われていた、穏健派のオルフェノク。
犀型オルフェノク。