ありふれた闇に呑まれゆく   作:6LD

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帰還

「おらっ!」

『ゴォ……!』

 

 

 鈍い動きで棍棒を振り上げたオークに大剣を突き出す。防御が間に合わなかったオークはそのまま体を貫かれ、だらんと力が抜けるとともに粒子となって四散した。

 

 

「一撃……」

 

 

 10Fとはいえ一応はボスで、25F以降に出てくる同名エネミーと比較しても更に高い耐久力はあるはず。ボス補正というらしいが……。

 

 それを貸し出しの武器で一撃となると、はたしてどういう状態になっているんだか。まあ、まずはこれを見てからだ。

 

 いつの間にか床に落ちていたカードを拾う。非致死性ダンジョン10F共通の確定ドロップにして、非致死性ダンジョンに最初に潜る理由の一つ。

 

 

(ステータスカード……これが……)

 

 

 ガイダンスで教わった通り、大剣の刃で指先に小さい切り傷を作り、表面に血を垂らす。血はすぐさま吸収され、何も書かれていなかった表面に様々な文字列を映し出す。

 

 血中魔力濃度《レベル》……181。

 

 スキル……『■■■』『怪力4』『大剣1』。

 

 踏破歴……支配の塔10F。

 

 その他、名前や年齢、ステータスといった簡素なプロフィールも克明に記されている。自分の目で見たのは初めてだが、本当に不可解な技術だ。レベルは直接的に血液を採取しているからまだしも、それがダンジョン内で使用できるスキルや過去のダンジョンの踏破歴まで目に見える形で現出する。

 

 まあ、重要なのはそこじゃない。

 

 

(レベル181……現代の最高到達層がアメリカのTeam Brilliant Cutのフリット・ダイヤの241で、レベルも同じく。そしてレベル200越えの探索者は確認されている分で1000人はいないはず。それに近いレベル……)

 

 

 レベルはそのまま適正階層だ。当然今日潜り始めて10Fに到達したばかりの俺がこんなレベルになってるわけが無い、やはりこれはおかしい。

 

 

(そして、この黒塗りのスキル。他は一般スキルだが、黒塗りのスキルは聞いたことが無い。もしくはこういう名前なのかもしれないけど)

 

 

 『怪力』『大剣』は汎用スキル……ダンジョン内での行動に従って取得できるものだ。大剣を使っているし、使ってはいるけど斬るというよりは力任せに叩き潰すような攻撃が多かったから、剣術系である『大剣』より『怪力』が高くなっているのはわかる。

 

 そして黒塗りは……。

 

 

(詳細がわからない……閲覧権限が無い? 俺のスキルなのになんで俺が見れないんだ)

 

 

 試しにツリースキル『怪力』を押してみれば簡単なスキル説明と習熟度を伸ばすために必要な行動、ツリーによって習得したスキル、次に習得するスキルに必要な習熟度が脳内に浮かび上がってくる。まあマスクデータも多いから、より正確なものを知りたければ纏められている書籍とかサイトを見たほうが早いが。

 

 翻って黒塗りスキルは、スキル説明も必要な行動も何もかもが「閲覧権限がありません」で埋め尽くされてしまっている。これでは何の予測も立てようがない。

 

 まあ流石にこの黒塗りのスキルが俺の異様なレベルに関連してないってことは無いだろうが、閲覧権限とやらが無いことにはどうしようも無いし、良い影響があるのか悪影響があるのかもわからない。

 

 

(むしろこんな不明スキル持ってたら就職に影響が出たりするのかな……)

 

 

 そんな心配をしながら、白の門を潜ってダンジョンの外へと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっ?」

 

 

 探索者ライセンスとステータスカードの紐づけを行うために受付へと来たが……。

 

 

「……少々お待ちください」

(まあこうなるよね)

 

 

 ステータスカードを確認した受付の人がどこかへ連絡し始める。学生ライセンス取り立てで10Fしか潜ってないのにこんなレベルになってる人いたらそれは怪しまれて当然だろう。とはいえ俺も何も知らないからこれはどういうことだと聞かれても困るが……。

 

 受付の人はすぐ戻ってきた。

 

 

「お待たせいたしました。紐づけが完了しましたので、ステータスカードとライセンスをお返しいたします」

「ありがとうございます……えっと、スキルとレベルの件については……」

「この後はお時間はございますか?」

 

 

 ……これは、断れない空気だな。絶対に逃がさないぞという圧を感じる。まあ大丈夫だけど。

 

 

「ありがとうございます、ではこちらの方へお越しください」

 

 

 通されたのは医務室。ダンジョンでの怪我などは専門の治療が必要な場合があるため、大きな支部では必ず病院顔負けの病棟が併設されている。ノビノビ動画と提携しているので、支部の広場と同じく無料で探索者の配信が見られるのが特徴だ。

 

 一般病棟としても使えるから普通の怪我で入院した人でもダンジョン配信目当てにここへの入院を希望をしたりとか、数年前に疫病が流行った時には稼働率がすごいことになってたとか聞いたことがある。

 

 医務室では採血や機械を使った検査、そしていくつかの質問が行われた。質問の方は体調に問題あるかとかダンジョン内での挙動に何か異常は無かったかとか、簡単に答えられる物だった。

 

 検査はすぐ済んだが結果が出るまで時間がかかるとのこと。一旦彰吾と合流しに行くか、まだ配信を見てるだろう。

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