ありふれた闇に呑まれゆく   作:6LD

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観戦

「ああいた……彰吾」

「恵太! 探索お疲れ、どうだった?」

「順調」

「流石!」

 

 

 6番配信台で配信を見ていた彰吾に合流する。周囲の盛り上がりがすごいが……。

 

 

「佳境なのか?」

「うん? …ああ、佳境も佳境よ! かなりいいペースで最終フェーズに入ってるから今日はいけるぞ!」

 

 

 確保してくれていた席にありがたく座らせてもらう。

 

 「【アリエス・ケール/Aries kale】今日こそ越えます!『支配の塔』150層チャレンジ #5【おーぷんわーるど/Splashatter】」とのタイトルの下の大画面映像の中では、数え切れない程の……マネキン人形?を迎撃する5人PTが映っていた。

 

 最前列の盾を構えた獣耳が敵を集め、アリエスさんが着弾と共に爆発する矢を次々撃ち出して大まかに殲滅。爆発から漏れた敵は大剣を振るう女性が細かく叩き潰していく。

 

 獣耳に回復役の女性が回復魔法を撃ち込み、その横にはもう一人の獣耳の女性が座っている。あれは何をしてるんだろう? 疑問に思って彰吾に聞いてみると、

 

 

「あれはもう一人のタンクだね、負担を減らすために交互に前線に立ってるんだよ。同じようにアタッカーも今はアリエスさんが殲滅係だけど、魔力が尽きかけたらルディ……えーと大剣持ってる人が範囲殲滅役を担って、アリエスさんが魔力回復薬《マナポーション》を飲みながら打ち漏らしを落とす係に回る。そうやってサイクルして防衛の手を途切れさせないようにしてるんだ」

 

 

 と早口で説明してくれた。なるほど、それは合理的だ。

 

 それにしてもパーティ全員Pシーカー、しかも全員女性か。アバターだから、っていうのは失礼な話だけど当然美人なのもあって、必死で戦う姿でも見てて華やかだな。人気なのも頷ける。

 

 ……圧力が減ってきたか? もう一人のタンクの女性が交代で飛び出した辺りからなんとなく、人形の攻勢に陰りが見える気がする。

 

 それを見計らってかアリエスさんが指示を飛ばし、大剣の女性……ルディさんが集中して魔力を込め始める。そうなると当然アリエルさんの負担が増えることになるが……直前に飲んだポーションを活かしてのスキルの釣瓶打ちで寄せ付けない。あそこまで連打すると消耗が激しいだろうけど……。

 

 

『ルディ! 今!』

『全部持ってけ! 炎熱、殲空ーーーーッ!』

 

 

 直前に大きくバックステップしたタンクを追う敵戦列へ向けて、ルディさんの大技が炸裂した。横回転斬りに合わせた起きた熱風と連続爆発が大量の人形を巻き込んで吹き飛ばしていき、それに合わせてこちらの観客席も大いに沸いた。

 

 大技に巻き込まれなかった人形も次々に、糸が切れたかのように倒れ込む。

 

 

「勝ったのか?」

「いやあと少し! 前回はここで……!」

 

 

 その言葉通りアリエスさん他のメンバーが急いで集まり始める。それと同時に倒れ込んだ人形が引きずられるように移動し、徐々に一箇所へ集約されていく。

 

 

『障壁《バリア》、障壁《バリア》、障壁《バリア》、障壁《バリア》! お願い……っ!』

『今度こそ任せな! 展開、聖城壁!』

『防護領域ッ!』

 

 

 ヒーラーが大量の、タンク2人が巨大な壁を展開する。それと同時に集約された人形の塊から光が溢れ出す。嫌な予感がして目と耳を塞ぐと同時に、轟音とともに瞼越しの視界が真っ白になった。

 

 数秒の間を持って光が収まる。それと同時に、ゴトリというドロップ音。画面には荒い息を吐きながらも生存した5人と、1つの大きな魔石が映し出されていた。

 

 

『はぁ……はぁ……ッ! ぃやったぁぁぁぁぁっ!』

 

 

 メンバーへと飛びついたルディさんの叫び声と共に、こちらでも再び大歓声が木霊した。う、うるさい……。

 

 

「よっしゃぁぁぁ! おい見た!? 見た!? 遂にやったぞ!」

「お、おう、おめでとう……」

 

 

 彰吾のこんなハイテンションは中々見ない。ダンジョン攻略配信というのは本格的に見たことが無かったけれど……ずっと応援している人からすれば感動も一入ってことか。

 

 

「いやー生で見れてよかったー……」

「来れてよかったな。まだ見ていくか?」

「いや、大体ボス戦のあとの人って疲労で動けなくなってダンジョン内にまだ残るから、そろそろ行こうか」

「ああ、っと」

 

 

 と言って席を離れたところで、館内放送によって呼び出しが入った。どうやら検査が終わったようだ。

 

 

「すまん、ちょっと行ってくる」

「今のお前? なんかあったのか?」

「後で話すよ」

「そう? まあいってらー」

 

 

 彰吾を置いて再び受付へ……行きたいのだが凄い混み様だ。さっきのアリエスさんのパーティが突破できそうだったから集まってきてたのか?

 

 人込みをどうにか抜けて受付に番号札を渡すと、再び医務室へ通してもらう。中では先程俺の診察をしてくれた医者と、探索者協会の職員が待っていた。

 

 

「えー、健崎惠太さんですね。検査の方が終了いたしましたので、その結果と今後についての対応をお話しに参りました」

「はい」

「結論から申し上げますと、惠太さんの身体に異常は見られません。他の同程度のレベルの探索者と比較して、ステータスカードに書かれている相応の血中魔力濃度。肉体の状態も同じようにそれに合わせたものに適化されており、これも問題ありません」

 

 

 ……レベル181の探索者としては問題無い、と。それはつまり……。

 

 

「よって問題としては、なぜ初めての探索を行ったばかりの健崎さんのレベル181という数値となっているか」

「わかったんでしょうか?」

「一切わかりませんでした」

 

 

 心の中でずっこける。そんな気はしていたけれども、真面目な顔で言われると面白い。……でも、実際のところは笑い事ではないんだよな。異常の原因も影響も対処法も、何もわかっていないってことなんだから。

 

 

「恐らくは黒塗りのスキルの影響である、と言う事自体はできます。前例は少なく、明らかに異様ですから。しかし断言もできません、確たる証拠もまたありませんから」

「『ダンジョン』、『スキル』、そして『魔力』。技術の進歩により研究が進んでも、根本的な部分は全くわかっていないのが現状です」

 

 

 悔しそうに言葉を零す職員。協会ではダンジョン絡みに関する研究も行っているが……そっちの畑の人だろうか。

 

 ただ薄情な話だが、正直なところ俺にとってはどうでもいい。大事なのは今後のことだ。

 

 

「えっと、俺はどうなるんでしょうか?」

「ああごめんなさい、私の愚痴については興味ありませんよね。院長の見解の方は如何ですか?」

「万一のことを考えて、健崎恵太さんの探索活動を今後全面的に禁止、そうでなくても制限すべきというのが1つの意見です」

「えっ!?」

 

 

 いや、それは困る。なるべくすぐにお金を稼ぎ始めたいし、就職もしくはそれができずともフリーランスの探索者として、このレベルとステータスがあればかなりの稼ぎをあげられるはず。それを捨てるのはあまりに惜しい。

 

 

「落ち着いてください。医者としてはなるべくリスクを避けていただきたいというのは本音ではありますが、あくまで健太さんご自身が自身のことを最優先で考えるという前提の下の1つの意見にすぎません。ですよね?」

「はい。探索者協会としましては、何か体調の変化などの影響が出ましたらすぐに報告をしていただくという条件付きではありますが、恵太さんの探索に特別な制限をかけるつもりはございません」

「ありがとうございます。 えっと、制限をかけない理由というのは……」

「申し訳ありません、それはお答えできません」

「は、はい」

 

 

 とりあえず探索活動の禁止は無いようでほっとする。

 

 でも俺の事情とかを加味しない場合、黒塗りスキルの詳細が一切わからない……例えばこの黒塗りスキルが時限爆弾みたいなものだったりとかで多くの人々を危険に晒す可能性があるから、ある程度詳細が判明するまで制限をかけたい……というのもわかる。

 

 逆にむしろダンジョンに潜り続けないと危険という可能性も確かにあるけど……協会がなんで一切の制限をかけないという方針にしたんだろう?

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