ありふれた闇に呑まれゆく   作:6LD

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AC6チャプター1最終ミッションから進めなくなってオワオワリ


発生

「そういえば、瑞希ってなんの武器を使うんだ?」

 

 

 施設内に入り学生用の貸し出し申請を行いながら、ふとそんな疑問が浮かんだ。

 

 

「あー……んー、あとでのお楽しみってことで?」

「すぐわかるんじゃ?」

「そうだけど、せっかくだし実物見せたいなーってね」

 

 

 あとでねーと女性用受付に駆けていくのを見て首をかしげる。そんなに秘密にするようなものでもないと思うが……。

 

 まあいいかと気を取り直して申請書を提出し更衣室へ向かう。前回ボス戦で使った手袋が割としっくり来たので、今回は格闘武器……手甲を選択。自分のステータスなら攻撃力の補正が低い格闘スキルでも十分なダメージを出せるし、取り回しの良さを優先した形だ。

 

 ホールに出て瑞希を待ちながら軽く準備運動する。その間にふと周りを見てみると、何やら新鋭の装備で固めた人たちも散見された。

 

 

(あの大剣は見たことある、Satsuma Safeguardの最新モデルだ)

 

 

 確か新宿支部の建物の中で中刷り広告になっていた。最近生み出された新しい合金を使っているからか0が3つの6桁の数字が並んでいて自分には関係ない世界だと思っていたが……。

 

 前回の探索で手にしたお金が約11万円。かの大剣を持っている人は4人パーティっぽいから、2人で分けた俺よりも半分になると仮定しても5万円以上。C級探索者ともなれば現実的に届かない範囲では無いってことか。

 

 上位の探索者は収入も支出も多いと聞くが……ううん、どうにも想像のし辛い世界だ。

 

 

「惠太! お待たせ!」

「瑞希、待ってないが……武器は?」

 

 

 声をかけてきた瑞希の姿を見て首をかしげる。というのも、探索用のかばんは提げているものの、武器らしいものを何も持っていないからだ。俺みたいに手甲を付けているわけでも無いから格闘でも無いんだろうし。

 

 

「へっへっへ~、気になる?」

「それはまあ、それだけもったいぶられたらな」

「正解は……これ! バーン!」

 

 

 両手を背中に回して取り出したのは……。

 

 

「二丁拳銃?」

「そ! あたし探索者歴そこそこ長いから色んな武器試したんだけど、最近はこれがすっかり手に馴染んじゃって。見たこと無いでしょ?」

「ああ、結構びっくりした」

「ほんとかなー?」

 

 

 けらけらと笑いながらくるくると両手の拳銃を回す姿は確かに様になっている、慣れているというのは本当のようだ。

 

 拳銃を始めとした銃器はあんまり探索者の武器として人気が無い。人間用の弾丸をそのまま撃っても火力が足りず、専用の弾丸は費用対効率が悪く、魔力銃はリロードの際に精密な魔力操作が必要で戦闘中難しい……らしい。本で読んだ付け焼き刃の知識だが。

 

 ひとしきり満足したのか背中に回していたホルスターをわざわざ腰に付け直した。そこまでして驚かせたかったのか。

 

 

「そこまで自信満々なら期待していいんだな」

「ふふふ、背中はお任せってね。行こ!」

 

 

 そんな会話をしながら町田ダンジョン1階に歩を進めようとしたその時だった。

 

 ズン、という縦揺れが一つ。俺や瑞希だけじゃなくて他の探索者や職員も態勢を崩している者がいるってことは俺にだけってことは無い、間違いなく地面が揺れた。

 

 

「なんだぁ……?」

「おい、これ!」

「なんだ?」

「どうなってる!?」

「待機している自衛隊に連絡!」

「観測庁にも!」

「ダンジョン内の探索者に即時帰還信号もだ! 急げ、早く!」

 

 

 困惑する探索者と対照的に大慌ての職員。なにか尋常じゃない事態が起きたことはわかる。

 

 

「瑞希、いったん離れよう」

「う、うん!」

 

 

 一旦ダンジョン入口前の広場から離れて壁の方に寄る。他の探索者たちは……同じように困惑したままの人、メンバーと何かを相談する人、成り行きを見守る人……職員のところへ詰め寄っている人もいる。

 

 

「今の振動は!?」

「おい職員さん! 何が起きてんだよ!」

「落ち着いてください! 押さないで!」

「落ち着いてられるかよ!」

「早く説明して!」

 

 

 質問が詰問に変わり、詰問が怒号に繋がるまでは早く、雰囲気はどんどん物々しくなっていく。

 

 不安になりながら様子を窺っていると、やがてメガホンを手にした職員が前に出てきた。

 

 

「『えー、皆様落ち着いてください! 町田支部防衛・救難班長の峰田から今から状況をお伝えします! 先ほどの縦揺れに合わせ、ダンジョン内魔力濃度が約214%を観測しました!』」

「にひゃくじゅ……っ!?」

 

 

 瑞希が思わず裏返った声を出した。214%って……スタンピードがいつ発生してもおかしくないラインが200%だから、それを突破したことになる。

朝ニュースを見せてもらった時に150%を突破していて、その前は確か12時間で10%くらいずつ伸びてたらしいから……俺たちが来る前に160%くらいになってたと仮定しても、一気に引き上がりすぎている。まさに突然の異常事態。

 

 

「『これにより、観測庁から間もなく警戒レベル5が発表されます! B級未満の探索者は即座に避難を開始してください!』」

「はあ!?」

「ふざけんな! 丸損じゃねぇか!」

「俺らはわざわざ飛行機で飛んで来たんだぞ! 金返しやがれ!」

「『繰り返します、B級未満の探索者は即座に避難を―――』」

「お、おい見ろ!」

 

 

 避難指示を呼びかける職員と詰め寄る探索者、そして状況は更に急速に動いていく。

 

 一人の探索者が指さしたのは町田ダンジョンの入り口である穴を押し広げ、ゆっくりと巨大な腕が這い出して来るのが見える。

 

 日曜日に何度も倒したそれ。

 

 

「チェイサーゴーレム……!」

「スタンピードが来るぞぉぉぉーーーーー!」

 

 

 誰にとってもそれは突然に、避難や戦闘の準備すらできてない混乱から始まった。

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