ありふれた闇に呑まれゆく   作:6LD

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「高尾ダンジョン上層でゴミ拾いしながら雑談とか質問回答とかする」

「お、缶ゴミ! ほんと、高尾ダンジョンはすぐゴミが増えるねー」

 

"山に捨てるのは駄目だからってダンジョンに捨てるカスほんま許せへん"

"探索中に捨てるやつもいるだろうし、ほんまひでぇな"

 

「ほんとにね! どのダンジョンでもそうだけど、ゴミは入口まで持ち帰ってゴミ箱に、みんなはポイ捨てしないでねー」

 

 

 高尾ダンジョンは有名な登山ルートが近くにあるから人の出入りも多く、また特例としてモンスターの出ないダンジョンの一部エリアを一般客に解放していることもあってダンジョン内の捨てられたゴミが他所よりも多い傾向にある。それをボランティアとして回収しながら雑談する配信枠を取っているのだった。

 

 平日昼にも関わらず15人も見てくれている人がいる、ありがたいことだ。もっと有名な人だとこの時間に1,000人とか10,000人とか、すごくたくさんの人に見てもらえてて、それはすごいなぁとも感じてしまう。人気的にも、お金的な意味でも。

 

 でもそれはそれとして、今ここを見に来てくれている人がいるんだからそっちをまずちゃんとしないとね。

 

 おっと?

 

 

Kta:"お邪魔します、初見です"

"こんにちは"

"こんにちはー"

"初見さんだ!囲め!"

 

「ケーティーエーさんいらっしゃい! 配信見てくれてありがとう!」

 

 

 この名前のアカウントは見たことない、ガチの初見さんだ。偶然発見したのかな? ありがたい限りだ。

 

 

Kta:"質問歓迎ということなので、ダンジョンについて質問しに来ました。いいでしょうか?"

"すごい純朴"

"眩しい"

 

「質問オッケー! お気軽にどうぞ!」

 

 

 返答すると、コメント欄の流れが止まる。他の視聴者さんが質問の邪魔にならないようにコメントを止めてくれている。こういう気遣いできるような人が見てくれていてありがたい限りだ。

 

 ……ちょっと質問が来るまで長いな? と思い始めたところでポンと長文がコメント欄を埋めた。

 

 

Kta:"自分は現在高校生です。母親が長期入院した為、負担をかけないためにもお金を稼がなくてはなりません。そのためそれとは関係無く最近取得した学生用探索ライセンスを活かしたいのですが、魔石の換金は未成年なのでできません。調べたところ、荷物持ちのバイトならば自分でも出来るかもと思ったのですが、他におすすめはあるでしょうか。"

 

 

 ……。

 

 

"ッスゥーー……"

"お、おう……"

 

「き、急に重い話を振られると温度差で風邪引きそうに……とりあえず、これはダンジョンとか関係なく、あんまり身の上話をネットでしないほうがいいよ……ひょんなところから身バレ……えーっと、個人情報に繋がるかわからないからね、ほんとに……」

 

Kta:"わかりました、気をつけます"

"素直だ……"

 

 

 こんな重い話題を振られるとは思ってなくて動揺してしまった。えーと、学生ライセンスでできるダンジョン絡みのお金稼ぎかぁ。色々あるけど……。

 

 

「とりあえず、僕としてはあんまり荷物持ちのバイトはおすすめしないかなぁ」

 

"えっ"

"マ?"

"そうなの? あんま詳しくないんだけど"

 

 

 ダンジョンで手軽にできるお金稼ぎは荷物持ちがおすすめ!って大々的に宣伝してるサイト、結構あるから釣られやすいんだよね……ああいうのってメリットしか書いてないから。

 

 

「メリットについては大体皆知ってると思うから省いてデメリットなんだけど。まず致命的な点として、今荷物持ちって需要と供給が釣り合ってないんだよね」

 

 

 ここが大きな問題点なのだ。荷物持ちのバイトは確かにメリットがいくつもある。だからこそ、応募する人だって数多い。なんせおすすめって色んなサイトで出てくるし、探索者協会開発のアプリ使えばマッチングで気軽に応募できるしね。

 

 翻ってその荷物持ちバイトを募集する側なのだが、これって実はそんなに多くない。まず企業やプロチーム所属、もしくは自分のような配信者なら自前の信頼できる人を連れて行く。知り合い同士で組んでるパーティなら、誰が来るかわからない荷物持ちを雇うよりパーティ内で相談して所持物をどうするか事前に決めることの方が多い。

 

 バイトを雇うことが多いのはソロやインスタンスパーティくらいなのだ。荷物持ちって1パーティに1人でいいから、雇う側より雇われる側のほうがかなり多いんだよね。

 

 

「荷物持ちのバイトの相場って1時間ごとの定額+その日稼いだ額の0.5割くらいになるんだけど、雇った側がソロじゃあ稼ぎはたかが知れてるし、パーティだったとしても腕と連携に結構左右される。その上でそもそもマッチングできない日すらあるって考えると、お金稼ぐという意味ではほんとに効率良くないんだよね」

 

Kta"なるほど"

"はえー"

"知らんかった……"

"そういや日曜だとダンジョンの周りのサ店でイライラしながら端末弄ってるやつたまに見るな、あれ荷物運びのマッチング待ちなのか"

 

「そうそう。それに雇う側もそれを知っているから、払う報酬で足元見てそれがトラブルになったりとか、あと単純に荷物持ちってつまんないから、荷物運びはほんとにおすすめできないんだよね……」

 

 

 それでもマッチングさえすれば戦わずして資金と経験値増えるから、別にマッチングしなくてもいいやって日に暇つぶしついでにやるにはそれなりに便利なんだけど……。ケーティーエーさんは結構切羽詰まってるようだから、まあ合わないよね。

 

 

"世知辛いなぁ"

Kta"それでは、おすすめは他にあるんでしょうか?"

 

「うーん……正直に言うなら、探索者って未成年がお金を稼げるようには出来てないんだよね」

 

 

 知識が少ないとか非致死性ダンジョンにばかり潜っていると忘れがちだが、ダンジョンの探索は自分の身の程を弁えないとすぐに命の危険に晒される怖い場所だ。そういう場所から子供の命を守るために、協会は様々な制度で未成年探索者の探索を制限している。

 

 魔石の買い取りが禁止されているのもそうだし、探索できるダンジョンも事前に取り決められていて、武器や探索に必要なアイテムも、値段がかからないとはいえ貸し出し品以外は認められていない。

 

 

「なので、正攻法でダンジョンでお金を稼ぐというのはちょっと厳しいかなぁ……配信者やってる身だからあえて言うけど、学生配信者とかもトラブルとか考えるとおすすめできないし。学生の間にDランクダンジョンと非致死性ダンジョンの30Fをソロ踏破してれば卒業後は引く手数多だから、難しいけれどできるならしておけば金払いのいいところに入社出来るんじゃないかな。あまり力になれなくてごめんね!」

 

Kta:"参考になりました、ありがとうございます"

"俺も普通に参考になったわ、やっぱ中々楽は出来んな"

"学生でDランクダンジョン抜けられるやつ中々おらんけどね"

 

「参考になったなら幸いです! チャンネル登録高評価よろしく! さて、それじゃあゴミ拾いを続けていきますよー」

 

 

 求められた答えは返せなかったけど、ケーティーエーさんの家庭の状況が良くなってくれれば幸いだ。探索者協会も、こういう例外事項の場合だけでも融通利かせてくれたらいいんだけど、やっぱ難しいのかなぁ。

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