嘘つき2人   作:ヤエルマーク3

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第6話 さりなとルビー

 「せんせ、だぁいすき…もし…生まれ変わっても……きっと……」

 

 自分の命が終わる事を感じながら、声を振り絞り自分の最後を見届けてくれる想い人の研修医の青年に最後の言葉を告げ、命の灯火が消え永い眠りにつく筈だった少女『天童寺さりな』は奇跡に見舞われていた。

 

 「ママでちゅよ〜瑠美衣(るびぃ)

 

 4歳の時に脳に大病を患い、両親と住んでいた東京から親戚の住む遠い地方の病院に一人移されたさりな。両親も親戚も多忙を極め、長い入院期間数えるくらいしか見舞いには来ず、一人孤独の中自分を蝕む病と死の恐怖と戦う絶望の中、自分を救ってくれたテレビの画面から観ていた希望(アイドル)『アイ』が目の前に居るのだ。

 

 「かわいいでちゅねルビー!」

 

 入院服をも可憐に着こなすアイ。何故自分の最推しのアイドルが目の前にいるのか、何故宝石の名前を『さりな』という名前の自分に向かって呼ぶのか、何故同い年の自分をまるで赤子をあやす母親(・・・・・・・・)のように抱いているのか、何故死んだ筈の自分がこうして再び意識を取り戻しているのか、さりなには分からなかった。

 

 「(なんで)あう(どうして)……」

 

 アイに理由を聞こうとしても上手く話せず、伸ばした自分の手が視界に入るとそこにはミイラのようなあの痩せ細った腕ではなく、瑞々しい赤子(・・)の腕がそこにはあった。

 さりなはワケが分からず横を見ると、外はすっかり夜中で病室の窓が鏡のように室内の状況を写し出していた。

 窓から写る光景は、この世の物とは思えない程の美しさを放つ美貌のアイと彼女に抱かれるアイ似の赤ん坊である自分(・・)がそこには写っていた。

 

 「窓にママとルビーの可愛いお顔が写ってまちゅね〜」

 

 アイは窓に写っている彼女自身と抱いてるルビーと呼ばれる赤ちゃん、赤ん坊になっているさりな(・・・)に向かって赤ちゃん言葉で話かける。

 ワケが分からないまま病院の消灯時間になり、アイのベッドの横のベビーベッドにもう一人の赤ん坊と一緒に寝かされたさりなことルビーは混乱していた頭が落ち着いてきて、思考を巡らせ始めていた。

 

 (これってもしかして生まれ変わりって事だよね……)

 

 ルビーは部屋の中を見渡しながら月明かりで暗い室内でも辛うじて見える備え付けのカレンダーを確認する。

 

 (カレンダー……前に見た時から4年経ってる……)

 

 さりな、前世の自分が死んでから4年の月日が経っていることにルビーは驚きを隠せなかったが隣で眠るアイ、テレビで見た時よりも明らかに成長している彼女の美しい寝姿にそれだけの月日が経っている事も納得してしまう。

 

 (アイちゃん、寝姿も寝息も美しい……推しのアイドルの寝姿を目の前で拝めるなんて生まれ変わったかいがあったよ)

 

 アイの可愛らしい寝息に思わずときめいてしまうルビーは何故自分がアイの娘として生まれ変わったのか天井を眺めながら考える。

 

 (どうして私がアイちゃんの子どもとして生まれ変わったんだろ……もしかして選ばれた?)

 

 今は赤ん坊でもその中身は12歳の子供、生前不運な人生を歩んだ自分を哀れんだ神様に選ばれたのだと考えてしまうが、アイの子供として第二の生を得た事である疑問が生まれた。ルビーと隣で眠るアクアマリンの父親は誰なのかという疑問だった。

 

 (アイちゃんが眠る前に来たサングラスのおじさんは『父親は誰なんだ?』って聞いてたしなぁ)

 

 前世で入院していた頃にある程度は勉強しており、子供が出来る方法も当然知っている。

 サングラスの男が父親ではない事は先程の会話聞いてれば容易に分かる。窓に写っていたルビーの顔を思い返し父親が誰なのか知っている男性芸能人の顔と照らし合わせながら熟考し尽くしある結論に至った。

 

 (そうか……アイちゃんは処女受胎で私達を授かったんだ!)

 

 生まれ変わりがあるくらいなのだ、神話の処女受胎だって現実にあるものだと考えに至った。アイも父親は『ナイショ』と言っていたが本当は父親がいないんだと独りでに納得した。

 ルビーは横でスヤスヤと可愛らしい寝顔で眠る今世での双子の兄、アクアマリンに視線を移す。

 

 (お兄ちゃんか……)

 

 前世では一人っ子だった為、きょうだいというものに憧れのあったルビーは自分に兄が出来たということに感慨深い物があった。

 自分に血の繋がった兄が出来た事に思わず笑顔が浮かべるルビーはアクアマリンの頭を小さな手で撫でてあげる。

 

 (ま、精神年齢的には私の方がおねえさんなんだし、しっかり面倒見てあげなきゃ!)

 

 まだ16歳の若さで二児の母親になったなど傍から見ても大変なのは容易に想像が尽く。自我がしっかりしている自分はまだしも、アクアマリンは普通の赤ん坊。これからもアイを苦労させるだろうから自分が兄の面倒を見てあげなければと強い使命感じみたものを感じる。

 

 (いずれはせんせみたいにドルオタに……)

 

 いずれはアクアマリンもアイ推しのドルオタにしようと考えるとある一人の男性の姿が頭を過った。

 『雨宮吾郎』、あだ名は『ゴロー』。前世の自分が一人病室で寂しくしてた時に病室に何度も足重なく訪れてくれて仲良くなった研修医の男性。自分がアイの事を布教しドルオタにした第一号であり、一回り以上年上だが初恋の男性。

 

 (せんせ……元気かなぁ……)

 

 ここが何処の病院かは分からないが、吾郎は今でも前世の自分が息を引き取ったあの高千穂の病院に務めているのだろうか、死ぬ前に渡したあのキーホルダーを今でも大切にしてくれているのだろうか、あれから4年も経っているからもしかしたら他の女性と結婚してしまっているのではないかと考えてしまう。

 

 (……お母さんとお父さんも元気にしてるかな……)

 

 散々苦労をかけた挙句、親より先に死んでしまうなどと親不孝を重ねてしまった事に罪悪感を感じずにはいられない。窓から見える月を眺めながら前世で残してきた人達の事を考えていると急激な睡魔に襲われ眠りに付いた。

 

 

◇◇◇◇

 

 「―――みや先生が戻ってき次第、斎藤さんの方に連絡するよう伝えておきます」

 「よろしくお願いします。せんせに元気に二人を産めた事、私の口から伝えたので」

 

 ルビーが目を覚ますとアイの胸で抱っこされているのも驚きだったが、それ以上に今自分がいる病院の受付入口は前世で入院していたあの高千穂の病院の物だった。

 

 (まちがいない……ここ、私が入院してた病院だ)

 

 実家よりも長い時間過ごした病院を見間違えるはずの無いルビー(さりな)は周りを見渡し、自分の初恋の男性であるゴローを探すが彼は見つからない。

 前世で入院してた頃にお世話になった看護婦を数名見つけるが、まだ上手く話せずどんなに喋っても赤ちゃんのうめき声にしかならず、正体がバレないようフードを深く被ったアイにあやされながらアイはルビーとアクアマリン、所属事務所の社長であるサングラスの男と共に病院を後にする。

 

 「せんせどこ行っちゃたんだろ?」

 「さぁな。先生にも色々事情があったのかも知れないしな……」

 

 バスの奥の方の席に座り、少し暗い雰囲気で話す二人にルビーは不思議そうな顔でアイを見上げるがアイはそんなルビーに気付き、優しく頭を撫でる。

 

 「……私もお母さんかぁ〜あ、そうだ」 

 

 感慨深そうに洩らすアイは何かを思ったのかポケットからiPodに似た板状の機械を取り出した。

 

 「どうした?」

 「タイガにメール。今日の夜頃に帰るよって」

 「俺もミヤコにメール入れとくか……」

 

 アイと壱護その言葉に、何より二人が持っている物にルビーは衝撃が走る。

 

 (スゴイ‼ボタンの無いケータイだ‼)

 

 前世の時にニュースやバラエティなどで見た『近い将来に出来るであろうボタンの無い携帯電話』。前世の時は『使いづらそう』とか『落としたら割れそう』等と思っていたし、実物を見ること無く息を引き取ったが実際に実物を見て、使っている人間が目の前にいる。バスの中の他の乗客数人も、スマートフォンを見ている。

 さりなが死んだときには無かった物が、今では当たり前にある。バスの窓の外の景色はあまり変わっていないのに本当に死んでから4年もの時間が経っている事を実感させられる。

 それから急激な睡魔に何度も襲われ、目を覚ましたらいつの間にか新幹線に乗っており、アクアマリンを抱いた女性、壱護の妻がいつの間にか合流しており、アイとその女性が一緒に周りを警戒しながら新幹線の多目的室に入る。

 

 「二人で入ったの誰かに見られたかな?」

 「大丈夫、誰も見てなかったわ。今のうちに早く……」

 

 壱護の妻、ミヤコは入口を警戒しながらアイのそれ(・・)を促す。

 

 「は〜い。アクア、ルビーごはんでちゅよ〜」

 

 小さな声で返事をするアイは服をずらし、美しい胸をさらけ出す。

 

 (まさか……授乳⁉そんな推しのアイドルのおっぱいを吸うなんて……⁉)

 

 まさか推しのアイドルが自分に授乳をしてくれる。推しのアイドルの胸に吸い付くなどルビー(さりな)にとってアダルティ過ぎ、ファンとしてもやって良いものなのかと一瞬パニックになるが、自身を蝕む空腹感に駆られてしまう。

 

 (そうだよ……私。今アイちゃんの赤ちゃんなんだ……それに病院にいた時もお腹減って無かったから、たぶんいつの間にか飲んでたって訳だし……)

 

 第二の生を受けてから意識がハッキリしたのが産まれて数日経っていた頃だった事を言い訳にしながらルビーは固唾を飲み、アイがさらけ出すそれにしゃぶりつく。

 

◇◇◇◇

 

 「ただいま〜」

 「おう……ルビーはどうした?なんか惚けてる感じだぞ」

 

 授乳を終え、多目的室から戻ってきたアイとミヤコに壱護が気付くとアイが抱っこするルビーの表情に心配そうにする。

 

 「ルビー、おっぱいたくさん飲んだからお腹いっぱいになっちゃったんだ〜」

 

 アイは楽しそうに説明するがルビーの陶酔しきっているのはまた別の理由だった。

 

 (アイちゃんのおっぱい……なんて甘美で背徳的な味なの……)

 

 推しのアイドルに授乳される、そんな背徳的な行為に精神年齢が思春期のルビーは思考回路がピンク色一色になってしまっていた。そのまま満腹になった事とまた急激な睡魔に襲われ再び眠りに付いて次に目を覚ましたら、いつの間にか新幹線を降りており、何処かの建物の前にいた。

 

 「やっと着いたね」

  

 先に建物の玄関に入っているアイは伸びをしながらそう言い、ルビーとアクアを抱いたミヤコからルビーを受け取る。

 

 「ったく……こんなのは二度とごめんだからな」

 

 壱護は疲れ切った顔で吐き捨てながら玄関を閉め、赤ん坊を抱きながら階段を上がるアイとミヤコが体制を崩さないか後ろで警戒しながら階段を上がる。

 

 「ただいま〜!いやぁ~長旅だったよ!」

 「おかえり……」

 

 元気よく扉を開けるアイがリビングに入るとそこにはエプロンを掛けた一人の少年が呆れた顔で出迎える。

 少年はかなり整った顔をしており、黒い髪と琥珀色の瞳、カッコいいと思ってしまう特徴的な声をしており、道行く女性が思わず振り向いてしまうような存在だったがルビーがその少年に抱いた感想は別の物だった。

 

 (この子どこかで会ったような……どこだっけ?)

 

 どこかでこの少年と会った記憶があるルビーは前世の記憶を辿りながら考えるとある出来事を思い出す。

 

 『君、アイのファン?そんなに喜んでくれるくらい好きなら、あの子も喜ぶよ』

 

 (この子、B小町のライブでガチャの玉拾ってくれた子だ)

 

 前世(さりな)の時、体調が良かった時に一度だけ『B小町』のライブに行けた時にメンバーのキーホルダーのガチャガチャでアイのキーホルダーを当てた際、興奮のあまりガチャ玉を落としてしまったのを拾ってくれ、さりなのアイに対する興奮具合に嬉しそうにしていた同年代の少年。その時の少年が高校生くらいに成長した姿で目の前にいるのだ。

 

 (この子、アイちゃんの関係者だったんだ……どういう関係何だろ?もしかして彼氏?父親じゃないし……)

 

 推しのアイドルと同年代で親しげな異性の男子、処女受胎で生まれた自分達に父親なんて居ないから、『父親』という候補は外れるが『彼氏』という候補は残る。

 自分も女だし、初恋を経験している女性であるためアイドルが恋愛をすることには肯定派のルビー(さりな)だが、いざ推しのアイドルが同年代の異性と楽しげに会話している姿を真近に目撃してしまうとどうしても関係性を勘ぐってしまう。

 そんなルビーの考えなど露知らず、少年はミヤコからアクアを預かりながらアクアを哀れむような瞳で見詰める。

 

 「愛久愛海(アクアマリン)……アクアマリンかぁ……」

 「タイガ〜なんでそんな可哀想な物を見る目で私の愛息子を見つめるのかなぁ?」

 「お前の狂気じみたネーミングセンスで苦労するだろうこの子達の将来を不安に思ってるだけだ」

 

 その名前が悲劇と言わんかのような声を洩らす少年にアイは張り付いた笑顔で聞き返すがタイガと呼ばれる少年は不敬にもアイのネーミングセンスを愚弄するような事を口走った事にルビーは憤慨する。

 

 (はぁぁ!?何言ってんのコイツ⁉確かにちょっと風変わりかもだけどアイちゃんが真剣に考えた名前にケチ付けるの⁉)

 

 アイのネーミングセンスを貶すタイガと呼ばれる少年に思わず抗議の声を上げるが「あう!あう!」とただの赤ちゃんのうめき声しか出せなかった。

 

 

◇◇◇◇

 

 (はぁ〜アイちゃんいいにおい〜ここがあたしの理想郷、オギャバブランド……なのになんでこの子がいるの⁉)

 

 四人が夕飯を食べ終えた後、再びアイからの授乳を受けて何処か意識がボンヤリしていたアクアは授乳を終えるとすぐに寝てしまい、道中さんざん寝てたせいで全然眠く無かったルビーは自分を抱っこしているアイの柔らかい胸と彼女から漂う良い香りを堪能していたるのだが、この客間にいるタイガに不満げに視線を移す。

 

 「で、どうするんだ父親の事?この子達には教えるのか?」

 「この子達がパパの事を知りたいって言ったら教えないとだよね……難しいなぁ〜」

 

 何か訳知り顔で話すタイガの言葉に悩むアイにルビーも気を落としてしまう。

 

 (そうだよね。処女受胎なんて普通はありえないしね……どう説明すれば良いか分からないもんね……)

 

 自分の中では処女受胎で生まれた事が確定しているルビーは思案を巡らせ顔を顰める。アクアが大きくなって父親の事を聞いて来た時にどう説明したらいいのかを考えていると、

 

 「あ、そうだ」

 

 アイは何かを思い付いたらしくルビーを支えてる手とは逆の手でボタンの無い携帯、『スマホ』を器用に操作し始める。

 

 「なにしてんのお前?」

 「この辺りの病院調べてるの。もしこの子達が熱とかケガしたりした時にすぐ連れててあげたいし」

 「隠し子なんだからそこは壱護さんかミヤコさんに……あれ?付き添いの保護者って代理人でいいんだっけ?」

 「それにさ、もしこの子たちが何か大きなケガや病気をしたらすぐに駆けつけられるようにもしたいしさ」

 

 アイの言葉にルビーは一瞬、前世の両親の顔が過ぎり思わずアイの顔を見上げると少し憂い下の表情を浮かべる彼女の顔が視界に入った。

 

 「私さ、まだお母さんと一緒に暮らしてた時にけっこう高めな熱出してさ、「このまま死んじゃうんじゃないか」って子供ながら思ったんだ」

 「そうか……」

 

 顔を顰めるタイガに自身も前世で似たような経験があったルビーはアイの当時感じたであろう死の恐怖に共感してしまう。

 

 「そんな時でもお母さん、男の人の所に行ってさ……その時そばに居てほしかったんだよね私。寂しかった」

 

 『ごめんなさいさりな。お母さんもうお仕事に戻らないと……』

 『ううん、お仕事大変ですもんね……お仕事、がんばってね』

 

 入院して片手で数えるくらいしか見舞いに来なかった両親。大好きな母は来てもすぐに帰ってしまっていた。両親が多忙なのは分かっていた。だから引き止める事が出来なかった。けど本当は側にいてほしかった。甘えたかった。一人で病室に居る時間が寂しくて、心細くて、何より怖かったから。

 

 「……もしこの子達が大怪我とか難病になってもそばに居てあげたし、寂しい想いをさせたくないんだ」

 「……もし、その子達の怪我や病気が近くの病院、東京以外の病院じゃ治せないって言われたならどうする?」

 「その時はアイドル辞めて、その病院の近くで部屋とお仕事探すよ。お母さんだもん。子供が不安な時は支えてあげたし甘えさせてあげたいんだ」

 

 ルビーの心境など知らずに強い意志の籠もった表情で自分の意思を口にするアイ。彼女のその言葉にルビー(さりな)の中に深く突き刺さる。

 

 「うっ………ふぁぁぁ!ぁぁぁぁ!!」

 「おっと⁉どーしたのルビー。おっぱい飲みたいの?おしっこかうんち?」  

 「お前の子供達に対する姿勢に心打たれたんじゃないか?嬉しかったんじゃないか?」

 「そう?そうだったらいいなぁ」

 

 タイガは茶化すように部屋を出て、アイは嬉しそうに頭を撫でてるがルビーは泣き続ける。

 

(側に居てくるれるんだ!!甘えていいんだ……!!)

 

 あの病室で一人、孤独な毎日を送り母親にすら甘える事が出来なかった。『そばに居てあげたい』その言葉だけでもルビーにとってはあの時の孤独を解かすような救いの言葉だった。

 

◇◇◇◇

 

 アイの娘として転生してから数日が経った日の夜中、アイとアクアが寝静まった後、ルビーはアイのスマホをその小さい手で器用に持ってリビングに移動する。

 生まれ変わって数日が経ってからこの身体に変化があった。赤ん坊の身体だからか強い眠気はときよりあるが、最初の頃のあの急激な眠気が襲って意識が飛ぶ事は無くなり、少しだけなら立って歩く事も出来るようになった。なにより、

 

 「ママのエゴサしなきゃ」

 

 前世の時のように流暢に言葉を話せるようになった。少なくともまだ乳歯すら生えてない生後一ヶ月未満の赤ん坊には本来無理だ。

 ルビーは盗み見て覚えたアイのスマホのパスワードを小さな両手の人差し指で解除し、ツイッターから『アイ B小町』を検索し始める。

 

 「さてさて〜ママのファン達のツイートはっと」

 

 斎藤家の客間の一件からルビーの中でアイの呼び方は『ママ』になっていた。あの言葉もだが、この数日アイと母娘として接して、子煩悩で優しい彼女の姿にアイの娘として生まれ変わった事にルビーはファンと云う事を抜きにしても誇り高かった。

 

 『このセンターの女の子めっちゃかわいいよな!』

 『なんか一際目がいくんだよなこの子』

 『アイだけでチームの顔面偏差値底上げしてるよな』

 

 「皆分かってる〜!」

 

 同志(ファン)達のアイに対する好意的なツイートにルビーはご満悦な表情を浮かべているとあるツイートを見つけた。

 

 『性格悪そう』

 『アイ=目立ちたがりのわがまま女』

 『メンバー格差えぐい。アイだけ贔屓露』

 

 「はぁぁぁ⁉何いってんのコイツら⁉」

 

 アンチによるアイを貶すツイートに、ルビーは隣の部屋でアイとアクアが寝ているを忘れ、怒声をあげながら両手の人差し指でアンチのツイートに反論ツイートを打ち込む。すると、アンチの一人が反応しそこから壮絶なリプ合戦へと発展していく。

 

 「はぁ死ねよ??ママの才能と美を理解しない類人猿が……!パフォーマンスの質で格の違い明らかでしょ!!運営に贔屓されるのはもはや必然なんだけど!」

 

 打てば打つ程に屁理屈で反論してくるアンチ、仕舞いには『アイとか加工しなきゃただのブスじゃん』等と実物のアイを見たことも無い人間のツイートに更に怒りを爆発させる。

 

 「どうせテメェブスなばばあだろ!鏡見てからもう一回同じ事言ってみろぶ―――す!」

 

 電池残量の少ないスマホに向かって叫ぶルビーはリプ合戦に夢中になってこちらを見ている存在に気付いていなかった。流石に観ていられなくなったのかその赤ん坊(・・・)はルビーに声を掛ける事にした。

 

 「お前、もしかして俺と同じか?」

 「え……」

 

 アイのものとは違う子供の声に反応したルビーが声の方を振り返るとそこには自身の今世の双子の兄であるアクアマリンが立っていた。

 アクアと自分以外には誰もリビングには居ない。先程の声はアクアの物だったのだろう。だが、生後一ヶ月も経たない赤ん坊が立ってしゃべっている。そんなあり得ない光景を目の前にしてルビーは、

 

 「赤ん坊がしゃべった!キモ―――ッ!」

 「お前もだろ」

 

 叫ぶルビーに冷静なツッコミを入れるアクア。この時お互いは知ったのだ。自分だけでなく双子の片割れも自分と同じ転生した人間だと云う事を

 

 

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