帆布に描くぎじゅつ   作:Aa_おにぎり

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第拾捌話

学業院人質事件の時に冬歌が助け出したカラニット・イェニエルと言う人物からパーティーの招待状を受け取った冬歌達は学校を後にするとそのままさくらの実家まで行く事になった。何気に初めて行く友人の家を前にして冬歌は思わず寄り道をする。

 

「友人の家に上がるなら菓子でも買っておかないと…」

「別にいらないよ。そんなのうちには…」

「でも、礼儀ってもんがあるでしょう?」

 

そう言いながら帰り道の途中で冬歌は寄り道をした洋菓子店でクッキーセットを梱包して渡してもらう。

人の家に上がる時には何かしら菓子折りを持って行くのがマナーだと徹底的に言われて来た冬歌は菓子折りを買って、そのままさくらと共に街を歩く。

 

 

 

ここ最近は焼死体事件も起こらず、現状は平和な帝都。警察の数が少し増えた様な気もするが、仕方ないと思いながら冬歌達は地下鉄を乗り継いでさくらの家へと向かう。

やはり父の出迎えに負担をかけていると申し訳なさを感じていたのだろう、ここ最近のさくらは少しだけ元気が良かった。仲のいい家族なんだなと思う一面であった。

 

 

免許を持って居る為、さくらと私はほぼ常に拳銃を携帯して居る。さくらはワルサーP99c、冬歌はトーラス・レイジングブルModel.500。

さくらは携帯性のある小型拳銃だが、冬歌のは明らかにデカすぎる大型拳銃だ。何せ、対術師用に世界一威力のある.500S&Wマグナムを改造して刻印弾仕様にした代物だ。普段はゴム弾を装填して居るが、一挿弾子だけ実弾が入っている。

いつもは腰に巻いて居るポーチの中に五クリップが入っており、既に装填されて居るのも含めて三〇発の12.7mm刻印弾を持っていた。

学校側にも申請はしてあり、この前の人質事件から書類も冬歌の時比べて段違いで簡単に許可された。

 

「それでどうしよっか!!」

「そうだね……こう言うのは?」

 

移動中の電車内で冬歌とさくらは携帯でドレスの写真を見ながら今度のパーティーに着て行こうと考えて居るドレスを選んでいた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

冬歌達が招待されたパーティーで盛り上がっている頃、都内の服飾店で沙耶香と愛結は色々なドレスの試着をしていた。

様々な関係を持って居る沙耶香だが、本気で親友としての関係を持って居るのは愛結だけだった。

元々、親同士が友人で幼いときから会っていたと言うにもあるのかもしれないが、沙耶香と愛結は幼馴染だった。

だから、沙耶香は自分が招待されたパーティーに愛結も誘っていた。愛結の交流を広める為でもあるが、沙耶香にとってはもはや慣れた社交界であった。

 

十六歳になった途端に社交界デビューをし、既に祖父や父に言われて何ヶ所かの軍需企業や個人の開いたパーティーに参加していた。

相変わらず虎寺家の娘だからと言って家の名前に寄り添ってくる奴らを交わしながら沙耶香は内心萎える光景を思い返して居ると、愛結が試着したドレスを沙耶香に見せる。

 

「どうですか?」

「うん、よく似合って居ると思うよ」

 

そう言い、青系のドレスを試着する愛結にそう言い、今度出るパーティーに合う服を選んでいた。

今は私的な時間、沙耶香としては愛結に変な敬意を払って欲しいとは思っていないが、癖が出てしまって居ると思いながらモヤモヤとした感情を持っていた。

 

「沙耶香はどうするの?」

「ん?私は使い回すからいいわよ」

「まぁ、この前新調したばっかりか……」

 

そう言うと、愛結は先ほど試着したドレスを購入するとそのまま仕立て屋に回して店を出ていた。

私の場合、何もしなくても人が寄ってくるのでパーティーに参加するだけでいいのだが、愛結の場合は別だ。正直、私がパーティーのよく顔を出すのは愛結の為と言ってもいいかもしれない。幼馴染の為であれば沙耶香の気も楽になるし、何より愛結の為にもなる。

お願いしても大体着いて来てくれるから、沙耶香もパーティーを楽しむ事ができた。

 

「はぁ、こう毎度毎度パーティーに参加するのも面倒ね……」

 

そう呟きながら沙耶香は次に参加する予定のJMCのパーティーの招待状を見ていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

現在の国際情勢はもっぱら次のロシア大統領選挙にあった。

親北中派と言われているエルドリアン・シコルスキーがロシア大統領になれば。北中に武器が流れ、第五次国共内戦が起こる可能性が高いと言われていた。

 

亜細亜連合に中華民国は加入していない。理由は簡単で、常に中華人民共和国と戦争状態でその状態で亜細亜連合に加入すれば亜細亜連合は戦争に巻き込まれてしまうからだ。

 

戦闘、休止、戦闘、大休止とズルズル続いている戦闘状態で、南北中国は黄河を中心に分裂していた。

日本の真横で戦争が起こる為に時折南シナ海にミサイルが落っこちることもしばしば……お陰で海軍や海上警察は迎撃ミサイルを搭載して警戒を続けていた。おまけにEEZ内で違法操業する北中の漁船を拿捕すると北中の軍艦が出て来てレーザー照射をしてくる始末。ドンぱちまでは行かないが、そんな事もある為。南シナ海で掘削中の海上油田は常に海軍が警戒をしていた。

ロシアとはエブリデイ警戒態勢のイェルサレム共和国は起こるかもしれない第四次樺太上陸作戦に備えて警戒をしていた。

 

かく言う日本もロシア大統領選挙には警戒をしていた。この選挙の行方で朝鮮共和国や満州共和国に本格的に軍隊を送る可能性があるからだ。

立地的にロシアと北中に挟まれて居る満州共和国は同時進行を受ければ間違いなく負ける。いくら工業力があるとは言え、物量で押し負ける未来しかない。

そしてもし、満州共和国を北中が吸収した場合。中華民国は苦戦を強いられることになるし、亜細亜連合の経済にも大きく響く事になる。

工業化を達成し、凄まじい経済発展をして居る満州共和国は重要な生産拠点であった。日本が西太平洋の長になったのも満州共和国の工業力に後押しされた結果であった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

カラニットに招待されたパーティーに参加する為の衣装を探す為に、冬歌はさくらや社交界になれて居るさくらの母である蘭子を引き連れて沙耶香達とは違う服飾店に来ていた。

 

「到着〜!」

 

タクシーを降りてさくらが最初に降りると、半分呆れた様子で冬歌と蘭子が降りる。

 

「全く……」

「さくら、子供じゃないのよ」

 

そう言い、蘭子はさくらに注意を入れながらタクシーを降りる。今回、パーティーに招待された二人はパーティーに合う衣装を手に入れる為に服飾店でパーティー用の衣装を探すのだった。

一応、冬歌には母から貰った着物があるのだが折角だしドレスも買ってみようかなと思って冬歌はわざわざ着いて来てくれた蘭子に感謝しながら店に入る。ここは蘭子さんの知り合いが経営して居るそうで、蘭子さん曰く帝都一の腕を持って居るらしい。

 

そして店に入り、さくらと私は早速店の中でサイズを測られ、自分に合う服を選んでいた。ベースとなる生地や色、さらには装飾まで細かく指定でき。どうしたものかと思って居ると、さくらは早速試着したドレスを見て好みの柄を選んでいた。

 

今回はパーティーということであまり派手なのもどうかと思いながら、同じAラインのドレスを選び。さくらはタスカンレッド、冬歌は藍色のドレスを選んでいた。

 

その後、色々と刺繍を選んだり髪の装飾はどうしようとか色々とさくらと話していた。

まだ、耳に穴を開けたりとはしていないが、いずれはイヤリング的なものもするのかと思いながら刺繍をお互いに選んでいた。

 

ドレスを選んでいる時、さくらはドレスを見ながらふと冬歌を見て思ったことを口にする。

 

「うーん……冬歌はドレスよりも着物の方がに合いそうだね」

「え、そう?」

「う〜ん……何となくだけどドレスのギアギラしたあの雰囲気よりは、着物の落ち着いた見た目が何と無く似合いそう。この前の花火大会の時の冬歌の浴衣姿もよく似合ってたしね」

「さくらがそこまで言うなら浴衣にしようかな……」

 

冬歌はさくらに着物の方が似合って居るからと言われてそう答えると、さくらは自分の意見を否定する様に言う。

 

「いやぁ、でも一旦ドレスを着たのを見てちゃんと判断した方がいいから。ドレスも買っちゃおう!」

 

そう言い、蘭子さんの手筈のお陰で明後日には仕立てが完了するらしい。

さすがは家具店、色々な商工業の人と関わりがあるだけにこう言う横のつながりも有るのかと認識しながら冬歌達は店を後にしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

もうすぐ二学期が始まる。流石は学業院と言う日本の上層階級が集まる学校だと思いながら冬歌は店を出るとそこでさくらと別れる。

 

「また明日ね!」

「えぇ、また明日」

 

そう言うと、さくらはついて来てくれた蘭子さんと共にタクシーに乗って行く。

家具店と言う一定の需要があって、様々な業界と繋がりがある家の子と友人になった私はある意味で運が良かったのかもしれない。

 

今の私は狼八代という素顔を隠して学校に通って居る。まぁ、公爵家が一度二人も通って居るのが分かったらそれこそ内戦が起こるだろうな。

まぁ、元々伝統的に我が家は表に出ないし、母が普通の学生として楽しんで欲しいと言われた為に私はお値段のかかる呪具をわざわざ掛けて上社冬歌という仮面を付けていた。

と言っても、ほぼ素の状態でさくらと接して居るから別にそんな変わるとかはないのだが……

 

さくらと行く、パーティーがどんな物なのかを想像しながら冬歌は今日は珍しく家まで列車を乗り継いで歩いて帰っていた。




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