帆布に描くぎじゅつ   作:Aa_おにぎり

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第弐拾弐話

不穏な空気の流れる新帝国ホテルの宴会場。そこから非常用に使われる非常用階段を、さくら達は駆け降りていた。

 

「よっ……と」

「ほっ……!!」

 

階段を一っ飛びで降り、さくらと愛結は階段を降りる。

カラニットと共に移動する不審な男を追いかける為にさくらは冬歌の指示通り三個下の四七階からエレベーターに乗る。

 

チンッ!!

 

ちょうど運良く近くにあったエレベーターが到着し、さくらはエレベーターに乗り込む。

 

「冬歌、エレベーターに乗ったわ」

 

そう電話で言うと、冬歌から返事があった。

 

『了解、そのまま一階のホールに行って。最悪途中で止まったら元の階に戻って』

「分かった」

 

そう言い、エレベーターのボタンを押すとさくら達の乗るエレベーターはそのまま勢いよくエレベーターは下がり始める。

 

 

 

 

 

エレベーターを降りて行く中、さくらは冬歌と連絡を取る。

 

「それで、どうすれば良いかな?」

『そのまま一階に降りたら階段でロータリーを確認、車が無かったら駐車場に移動して」

「了解」

 

そう言うと、冬歌はさくらに言う。

 

『私も、沙耶香さんと追いかけるわ』

「分かった」

 

そう言って連絡が切れると、ドレスの中にこっそりと開けたポケットに携帯を入れる。

 

「こうしておけばバレない」

 

そう言って縫い目に沿って隠されたポケットを見て愛結は半ば唖然としながらさくらに言う。

 

「そんな改造をして居る方は初めて見ましたわ……」

 

そう言うと、二人を乗せたエレベーターは一階に到着し、二人はエレベーターを降りて遠目でロータリーに車が来ていないかを確認していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そして、さくら達が一階に降りた頃、冬歌は階段を登って宴会場のさらに上、屋上に登っていた。

手にはお互い預けていた鞄の中に仕舞っていた拳銃を持っていた。

 

「居た?」

「いや、周囲に不審な車無し」

「って事はあるとしたら地下ね……」

 

そう言い、屋上から覗き込んで車がいない事を確認すると、沙耶香の持っていた携帯から連絡が入る。

 

『沙耶香様、地下一階にエレベーターが降りて来ました』

「ロータリーには?」

『一台もありませんでした』

 

そう言い、車は居ないと把握すると沙耶香は冬歌に言う。

 

「ねぇ、もしカラニット・イェニネルが誘拐されたとするなら……」

「えぇ、面倒な事になるでしょうね」

 

そう言うと、冬歌は沙耶香に言う。

 

「沙耶香さん、下に行ってもらっていいですか?こっちは出て行く車を監視しておきます」

「えぇ、分かったわ」

 

そう言うと沙耶香は屋上から出て行く。何せ相手は自分たちの先輩であり、何より世界有数の軍需企業の御令嬢。そんな人物が誘拐されたとあれば国の恥ともなる。

帝都同時多発テロがあったと言うのに、また事件とあったら今度こそ日本の権威は失墜してしまうかもしれない。それは自分たちにとっても都合の悪い事実であった。だから冬歌達はホテルでこんな変な時間に会場を後にするカラニットの行動の違和感に敏感になっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ロータリーを確認したさくら達は動いているエレベーターを確認すると地下の駐車場に移動するのを確認した。

 

「行こう」

「えぇ」

 

そして、二人は駐車場に移動するとそこで息を殺しながらカラニットを探す。

 

「(何処だ……?)」

 

さくらは見回すと、遠くの車のガラス越しに移動するカラニットの姿を確認した。

 

「居た……」

 

そして、愛結は後ろにいる男がカラニットに拳銃を突きつけているのを見た。

 

「はぁ…やれやれ、嫌な予感は的中するものですね……」

 

半ば呆れたように言うと、さくらはそんな二人を見ながら呟く。

 

「今の私たちは丸腰。拳銃でも持ってこれは良かった……」

「お相手さんから奪うと言うのは?」

「そんな映画じゃあるまいし……」

 

そう言うと、さくらは遠くからカラニットを見ていた。いますぐにでも助けたいと思うが拳銃相手にもしカラニットはが撃たれたり、まだ仲間がいる可能性があると思うと動けなかった。

 

そして、ただ傍観するわけでもなく、愛結は携帯で沙耶香に連絡を入れる。

 

「沙耶香様、カラニット嬢は地下三階の駐車場に居ます。黒いバンで、番号は……」

 

そう言い、電話をしていると沙耶香から返事が来る。

 

『了解、今そっちに向かっているから。愛結達はそこから動かないで』

「畏まりました」

 

そう言うと、愛結は電話を切らないまま仕舞うとそのままカラニットの動向を監視していた。

そして、カラニットが車に乗せられた時、さくら達は後ろから誰かに叩かれそのまま倒れてしまった。

 

「うっ!?」

「っ!?」

 

そして、そのまま倒れた二人を見下ろすように黄色と青の髪を持つ少女達が見ていた。

 

「やれやれ、爪が甘いわね」

「雰囲気から目標の関係者かしら?」

 

そう言うと、二人はさくら達を担ぐとそのままからニットを乗せたセダンに向かうと車に乗り込む。車内ではぐったりと横になっている様子のカラニットが居た。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「くそっ!!まだか……」

 

エレベーターに乗りながら、沙耶香は焦っていた。理由は簡単で、愛結が何者かに気絶させられたようだったからだ。呼びかけにも応じないことから、沙耶香は銃を持って駐車場に向かっていた。

そして、地下三階につくと沙耶香は駐車場に飛び出して愛結達を探すと、駐車場の柱の下に愛結の携帯が落ちていた。

 

「これは……」

 

その時、駐車場にスキール音がして遠くのバンが走り出すのを見た。そして、うっすらと見えたスモークガラスに愛結の影が見えた。

 

「っ!!逃すかぁっ!!」

 

そう叫び、沙耶香は出入り口の方に先回りすると突っ込んでくるバンに向けて銃を撃つ。九ミリ弾でタイヤを撃ってみるが、弾かれてしまった。

 

「民間車のくせに軍用タイヤなんか履きやがって!!」

 

タイヤがダメならエンジンだ。しかし、流れ弾が中にいる愛結に当たる可能性を考えると引き金を引けなかった。

 

「ちぃっ!!」

 

沙耶香は接近してくるバンのタイヤを集中的に狙おうとするが、豪速球で突っ込んでくるバンに思わず避けてしまった。

 

「くそっ!!」

 

走り去っていったバンを眺めながら、沙耶香も追いかけようとしたが、バンは走り去ってしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

さくらが何者かに襲撃を受けたのは冬歌も把握しており、駐車場から出てくる車を屋上から警戒していた。

 

「あれか……」

 

そして冬歌はスキール音を聴き分けて、出て来た黒いバンに照準を合わせるとそのまま銃の引き金を引いた。

発射された特殊な弾丸はそのままバンの屋根に当たると針状の機械が杭のようにめり込んでいた。

 

「これで何処でも場所がわかる。後は……」

 

すると、沙耶香から携帯で連絡があった。電話に出ると、そこでは沙耶香が慌てた様子で冬歌に言う。

 

『狼八代、愛結達が……』

「えぇ、こちらでも見ました」

『だから早く追いかけないと……』

 

電話越しでもわかる焦り声の沙耶香に冬歌は落ち着くようにさやかに言う。

 

「分かっています。だから一旦落ち着いてください。作戦を考えます」

『作戦?何をするつもり?』

 

沙耶香はそう冬歌に聞くと、彼女は答える。

 

「車に発信機を撃ち込みました。これでいつでも追いかけられます。なので……」

 

電話で話しながら冬歌は駐車場入り口にいる沙耶香を確認すると、屋上の端から距離をとって少し助走をつけて一気に走り出す。

そして、そのまま冬歌は飛び降り自殺をするかの如く屋上から飛び降りる。

ある程度の所で冬歌は持っていた札を使用すると、加速していた体は一気に速度を落として地上で電話をする沙耶香の真横に降り立った。

 

「一旦状況を整えながら移動しましょう」

「っ!?」

 

そう言い、上から飛び降りて話して来た冬歌に沙耶香は仰天していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……んぁ」

 

さくらはうっすらと目が上がる感覚を覚える。自分は確か、地下の駐車場でカラニットを見ていたはずだ。だけど、視界には小汚い部屋があった。灯は月明かりのみで、薄ぼんやりとだがここが何処かの建物であることは分かる。

潮の香りがすることからここは海が近いのだろう。

 

そう感じていると、真後ろに誰かいるのが分かった。反射的に動こうとしてしまうと、後ろからよく知る声が聞こえた。

 

「痛っ……」

 

声を上げた愛結にさくらは現状がどうなったいるかを把握しようとした。

 

「どうなっているの……?」

 

すると、愛結はさくらが目を覚ましたのだと把握すると彼女に言った。

 

「ようやく、お目覚めですか……」

「ようやくって……」

 

そう言い、さくらは後ろ手で縛られているのだと分かると、軽く手を動かすと愛結が言う。

 

「無駄ですわ。かなり頑丈に縛ってありますから」

「……」

 

何も聞こえない、うっすらとしか視界も見えないこの現状にさくらは何故か不思議と追いついてしまう。あの、学校でテロリストに人質になった時のように……

 

「……はぁ」

 

思わずため息が漏れてしまうと、そんなさくらに愛結はやや疲れた様子で言う。

 

「よくそんな落ち着いていられますわね」

「よくある事よ。一周回って落ち着くって奴」

 

すると、愛結は呆れたようにさくらに話し掛ける。

 

「だからって、この状況でそんなこと言えますの?」

「それはあんたも同じでしょう。こんな会話が成立している時点で……」

 

さくらと愛結が話しているその時。月明かりで見えた扉の奥から話し声が聞こえて来ると、さくら達のいる部屋の前で立ち止まった。

何か話しているようで、二人は耳を立てて聞いていた。

 

『おい誰だ!計画に無い二人を連れて来たのは!!』

 

男と思わしき人物が怒鳴ると、居るであろうもう一人が答えていた。

 

『仕方ないだろう。目標の監視をしていて、尚且つ増援を呼んだ厄介な連中だ』

『だったら!あそこで置いてけば良かった話だろう!!』

 

そう言い、喧嘩になっている様子の二人の人物の話を盗み聞きしていると部屋に男達が入って来た。

 

「ったく、面倒ごとを増やしやがって……。って、もう起きてんのかよ……」

 

そう言い、入って来たのは猫の獣人。それもハチワレ型の白い髪を持った男だった。さくらと愛結はその男を睨むと、やれやれと言った様子でさくら達に言う。

 

「おっと、レディに怒らせちゃ余らんな……。済まねぇ」

 

そう言って男は椅子を引き寄せて座ると、さくらが最初に聞く。

 

「貴方達は誰なの?先輩を誘拐なんてご大層なことをしていたけど……」

 

すると、その男はさくらの話を聞いて納得した上で言った。

 

「なるほど、そいつぁ悪いことしたな。あの女の後輩とは……」

 

すると、次に愛結がその男に聞く。

 

「貴方達は何者?彼女を誘拐して、何をするつもりなの?」

 

そう聞くと、男は愛結を見て面白そうにしながら答えた。

 

「それは無理だな。幾らお嬢ちゃんでも、これは秘密だ」

「そう…釣れないのね」

「言いたいのは山々だがな……」

 

そう言うと、その男は席を立って部屋を出ていく。

 

「じゃあな、縄を切るのは仕事を終えた後だ」

 

そう言うと、その男は消えていった。




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