帆布に描くぎじゅつ   作:Aa_おにぎり

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第弐拾参話

カラニットの誘拐に巻き込まれてしまったさくら達。静かな夜のある部屋の中で二人は暇つぶし代わりに先ほどの話の続きをしていた。

 

「狸道さん、先ほどの続きをお聞きしても?」

「?」

「ホテルで、お聞きした。何処まで会社の事を考えているのか……」

「あぁ、それね……」

 

愛結に聞かれ、さくらはあの時ホテルで言おうとした事を思い返しながら答える。下手に嘘をついてもどうせこの人物には気づかれて面倒なことになってしまうから、なるべく思った事を口にしていた。

 

「そうね…私は、元々親から弟に会社を継がせると言われて来たから。あんまり、会社の事を思ったことはなかったかも……」

「そうですか……」

 

さくらの話を聞き、今度は愛結が答えた。

 

「まぁ、嘘をついても気づかれるでしょうから、敢えて本当のことを言いましょうか」

 

さくらと同じ事を考えていた愛結は悔やむように自分の親の経営する会社の事を話す。

 

「今の狐山家具店は別の人が経営しているんですよ」

「え?どう言う事?」

 

思わぬ話にさくらは聞いてしまうと、愛結はすんなりと答えてくれた。

 

「文字通りです。私の父は少し前から体調が悪くて、代わりに代理の社長を務めている副社長が今は会社を仕切っています。ですが、その人物が会社を仕切り始めた途端、会社は無理な方針転換をし出した……」

「それってまさか……」

 

さくらはまさかと思うと、愛結は頷いた。

 

「えぇ、ここ最近の関東進出はその方針転換によるもの。利益拡大を狙っての行動ですが、リスクが大きすぎる代物です。貴方と言う大きなライバルがいるから費用対効果が悪いと何度も言ったのですが……体調の悪い父では止められませんでした」

「……」

 

確かに、今まで棲み分けが決まっていた会社がいきなり勢力を拡大して来たとは思っていたが、まさかそんな理由があったのかと思っていると愛結は自分がしたいと思っている事をさくらに言う。

 

「私は、今の副社長を引き摺り下ろしたいと思っている。少なくともこんな無謀な利益拡大を止める為に……。あの会社は我が家が代々受け継いで来た会社。あんなよそ者に潰されてたまるものですか……」

 

そう言い、愛結は自分が思っている以上に会社に対しての想いが強いのだと感じていると、愛結はさらに続ける。

 

「だから私は沙耶香様には感謝しているんですよ。私を多くの社交界に連れてくれて、私の印象を残してくれている。嬉しい限りです」

 

そう言うと、愛結は沙耶香とは幼馴染であることなどを話した。その話を書き、さくらは思わず自分の家族の事を思い返す。

あの父親が体調が悪くなるなんて余り考えられないが。もしものことを考えた場合、思わずゾッとなっしまった。勝手にライバル社参入に警戒心を剥き出しにしていたが、まさかそんな裏があったとは……

 

「……ごめん」

 

思わずそんな言葉が漏れてしまった。それは今までの敵視したことへの謝罪であったが、そんなさくらに愛結は答える。

 

「いいえ、ライバル同士で睨み合うのは世の常です。寧ろ貴方は心優しい人なんだと、今の一言で分かりますよ」

 

そう言うと、二人は縛られたまま空を眺めていた。二人とも、必ず助けに来てくれると自信を持って言える人がいるからこそ、心の余裕があった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ーーー目標視認」

「あの倉庫か……」

 

ガントリークレーンの上で、冬歌と沙耶香が双眼鏡を使って視線の先にある港湾にある倉庫を視認する。

二人の乗ったバンに刺した発信機で此処まで来た二人は黒色のタクティカルスーツに着替えていた。

あの後、

 

「親父に連絡して、知り合いの部隊を派遣してもらう事になりそうだ」

「相手は反政府組織、円滑に動いてくれると良いですけど……」

 

すると、横にいた沙耶香が冬歌に言う。

 

「だからこそウチらが行くんだろう?」

「そうですね……」

 

そう言うと、冬歌は耳にイヤホンを付けると沙耶香に言う。

 

「では、行きましょう」

「ええ、了解」

 

そう言うと、二人は互いに拳銃を片手に持ってクレーンを降りて行った。

 

 

 

 

 

時は少し戻り、さくら達が連れて行かれたところまで戻る。

ホテルの屋上から飛び降りて合流した冬歌はそこで沙耶香に提案する。

 

「沙耶香さん、発信機でどこに居るか分かります。いつ出ますか?」

 

そう言って携帯に映る地図アプリを見せると、沙耶香は冬歌に言う。

 

「今は何時だ?」

 

そう答えると、二人は不敵な笑みを浮かべると、冬歌は沙耶香に聞く。

 

「ちなみに相手は?」

「知らんが、まぁ…碌でなしだろうな」

「人を撃った事は?」

「この前のテロ事件」

 

そう言うと、冬歌は沙耶香に手を差し出しながら言う。

 

「では、行きますか」

「このままで?」

「そのつもりでしたが……」

 

そう答えると、沙耶香はやや呆れた様子で冬歌に言う。

 

「はぁ…動きにくいドレスで行くのは愚の骨頂。せめて着替えてから行くわ」

 

そう言うと沙耶香は携帯で電話を入れる。

 

「……あぁ、私よ。至急二着用意して」

 

そう言って電話を切ると沙耶香は冬歌の手を取りながら言う。

 

「此処に寄って頂戴、そこに必要なものは揃って居る」

 

そう言って、携帯の画面を見せると冬歌は苦笑気味に沙耶香に言う。

 

「……空を飛ぶことに驚かないんですね」

「上空200メートルから飛び降りて来た時点でもうね……」

 

そう言って沙耶香は新帝国ホテルの赤色灯を眺めていた。まぁ、そりゃそうかと思いながら冬歌は今は時間が命だと言う事で沙耶香に言う、

 

「では行きましょう。手は離さないでくださいね」

 

そう言うと、冬歌は地面を思い切り斜め方向に蹴るとそのまま二人の体は空に上がって行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そして、寄り道した虎寺家の知り合いのガンショップで沙耶香達は黒いタクティカルスーツ、それも軍用の物に着替えていた。

 

「パーティーの参加者はもう気づいて居るでしょうね……」

「それはもう、後で貧血で倒れたとか言い訳すれば良い」

 

コンテナの隙間を縫いながら二人は倉庫に向かうと、そこで沙耶香が冬歌に聞く。

 

「どうすんの?相手の目的がカラニット・イェニネルの殺害の場合だったら……」

「そうするなら、ホテルで殺していますよ。どこかに部屋に連れ込んで一発で終わります」

 

そう言って、二人は倉庫に接近すると冬歌は沙耶香の来ていたタクティカルスーツの背中部分に持っていた人形を貼り付ける。

 

「これは?」

 

いきなり何かを貼られた沙耶香が問うと、冬歌は答えた。

 

「人型です。それがあれば私の霊力に反応して小銃弾を弾ける程の障壁魔法が出来ます」

「おぉ、さすがは術師ね……」

「寧ろ、沙耶香さんの霊力が少なすぎるんですよ」

 

そう言い、冬歌は呆れた様に言うと沙耶香がそこで突っ込みをかける。

 

「寧ろ狼八代は体力無さすぎるだろう」

「そのための霊力ですよ」

 

そう言って反論すると冬歌達は目標の倉庫前に到着する。

 

「此処があの倉庫です」

「よし、行くか……」

「見張りは四人、どうします?」

「静かに飛んで一発で仕留める」

 

そう言い、二人は頷くと冬歌と沙耶香は手を取るとそのまま同時に脚を蹴る。

 

「1…2「…3!!」」

 

そして空に上がった二人はそこでそのまま重力に引かれて倉庫の屋根に降りると、持っていた拳銃を持って同時に二人撃ち抜く。

 

「うごっ!!」

「がぁっ……!!」

 

一瞬で二人を制圧し、残った二人が異変に気づいて増援を呼ぼうとしたが……

 

「逃さん……」

 

そう言い、消音器付きのモーゼルで頭を撃ち抜いていた。

沙耶香は正確に頭を撃ち抜き、冬歌はでかい球だからどこか当たれば致命傷になって相手は死んでいた。

一瞬で屋上を制圧した後、沙耶香は冬歌に言う。

 

「じゃあ、よろしく頼むよ。狼八代」

「……」

 

そして、冬歌は地面に札を置き、その上に手を当てるとそのまま目を閉じて感覚を研ぎ澄ました。

 

「(目標、建物全体。さくら達の気配は……)」

 

普段から接触して来たから分かるさくらの感覚を探ると、一瞬で見つけられた。

 

「沙耶香さん、そこから北に行った真下にある窓辺の部屋です。部屋には誰も居ません」

「了解した」

「ただし入口に護衛が一人います」

「問題ない」

 

そう言うと、沙耶香は冬歌の手を取るとそのまま冬歌は、先ほど拳銃を打った時にも使った消音術式を窓に掛けると沙耶香はそのまま勢いをつけて窓を蹴破って中に入った。

 

「沙耶香様!!」

「無事だったか…良かった……」

「冬歌!!」

「さくらも無事で良かった……」

 

そう言って、沙耶香の後に続いて部屋に入るとさくらはホッとした様子で冬歌を見ていた。

 

「さて、ちょっと待ってろ。縄を切る」

 

そう言うと、割れたガラスの破片を使って沙耶香は二人を縛っていた縄を切ると、冬歌達は確認する。

 

「怪我は…無さそうね……」

「えぇ、縛られていただけだから……」

 

そう言って二人の無事を確認すると、冬歌は沙耶香を見ながら言う。

 

「じゃあ、次は……」

「えぇ、カラニット・イェニネルを探そう」

 

そう言うと、さくら達はやや驚いた様子を見せたが、冬歌は二人に言う。

 

「了解……二人とも、どこかに隠れていて」

「わ、分かった」

「了解です」

 

そんな訳で倉庫の見えにくい場所に隠れると、冬歌は忠告する。

 

「いい?何があっても私達が戻ってくるまでそこを動かないでね」

「うん」

「じゃあ、後で戻って来るから」

 

そう言うと、冬歌達は銃を持って冬歌は片手に札を持つとそのまま壁に手を当てて周囲の気配を感じていた。

 

「……目の前に一人だけ。周囲に敵影無し」

「直ぐに出る」

 

そう言い沙耶香はドアノブに手をかけると、そのままドアを小さく開けて隙間から撃ち抜いた。

 

パシュッ!!「ダァッ!?」

 

一発で頭を撃たれて倒れると、そのまま二人は部屋を出て行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

部屋を出た冬歌達はそのままカラニットのいるであろう部屋を探す。

到着まで時間がかかる上に面子から色々と面倒な事になる軍隊よりも、少人数だが術師と言うアドバンテージを持つ冬歌と行動した方が何かと楽だと沙耶香は感じていた。

 

「此処ですね……」

 

今まで、冬歌の術で敵の居場所を炙り出して隠れたりして此処まで来た。

この先の大きな部屋の中にカラニットが椅子に座っているらしい。そこまで分かるのかとやや驚きながらも、沙耶香は冬歌に作戦を聞いていた。




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