帆布に描くぎじゅつ   作:Aa_おにぎり

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第弐拾肆話

カラニットの誘拐事件に巻き込まれたさくら達を救出した冬歌と沙耶香は港の倉庫を走っていた。

 

「それで、この後はどうする?」

 

この扉の先にはカラニットが居る、そしてその周りには彼女を誘拐した者達の気配が複数ある。どう制圧するべきかと聞くと、冬歌は答える。

 

「一撃で制圧して、尚且つ大きな揺動が必要ですが……」

 

そう呟くと、沙耶香はそこでふと思い付くと、倒した誘拐犯の持っていた装備からMK3手榴弾を手に取った。

 

「こいつを使おう」

「中に先輩がいるのに?」

「こいつは破片手榴弾じゃないから、爆圧さえ防げば行ける」

 

そう言う沙耶香の意図に気付いた冬歌は半分呆れたように沙耶香に言う。

 

「はぁ、万が一間に合わなかったらどうするんです?」

「それ以外に方法があると思うか?」

「……はぁ、仕方ありませんね」

 

そう溢すと、沙耶香は手榴弾のピンに手を掛ける。

 

「……行くぞ。三カウントだ」

「はい」

「1…2…3!!」

 

その時、ピンを抜いた手榴弾が部屋に投げ入れられると、その瞬間に冬歌はカラニットを視界に入れて障壁術を展開する。その瞬間、投げた手榴弾が爆発して周囲に衝撃波が広がり、誘拐犯が吹っ飛んだ。

その瞬間、部屋に入った二人は相手が爆発で怯んだ間に銃弾を叩き込んだ。九粍拳銃弾と十二・七粍拳銃弾は誘拐犯の体を撃ち抜き、一人ずつ確実に倒していた。正直沙耶香が此処まで人を撃つ事に抵抗がないというのも驚きだが、今の状況では有難いと思っていると、一人が叫びながら持っていたM16の引き金を弾く。

 

「この…帝国主義の犬どもがぁぁぁあああ!!」

 

そう叫びながら頭から血を流している黒犬の獣人は銃を乱射する。思わず物陰に隠れてしまうと、沙耶香は思わず毒吐く。

 

「チッ、これじゃあ接近は難しいか……」

「問題ありません」

 

そう言うと冬歌は弾薬をリボルバーに装填するとそのまま元の位置に戻して障壁術式を展開しながら飛び出ると両手で拳銃を構えた。

 

……ダァァン!!

 

「あっ……」

 

発射されたマグナム弾は獣人の頭を貫通、弾ける柘榴の果実の様に吹き飛んでいた。

 

「これで最後ですか?」

「あぁ、その様だな……」

 

そう言い、沙耶香は横に倒れた遺体を眺めると、カラニットは冬歌達を見て驚いた声を上げていた。

 

「貴方達……!!」

「無事で何よりです。先輩」

 

そう言い、冬歌はナイフを持って縄を切ると、そのままカラニットを立たせる。

 

「さぁ、行きましょう。出る準備は出来ているので……」

「分かったわ」

 

そう言うと、三人は先ほど隠れる様指示をしたさくら達の迎えに行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

さくら達を迎えに行った、冬歌達は倉庫の通路で三人の前に立つ影を見た。その影を見た時、思わず冬歌は叫んでしまった。

 

「っ!!さくら!!」

 

すると、愛結も捕まっており、沙耶香達は息を呑んでしまうと二人の後ろに立っていた影を見て冬歌は途端に目が険しくなる。

 

「そこまでするか……貴様ら!!」

 

すると、二人の後ろにいた少女達は冬歌を見ながら言う。

 

「そりゃそうでしょう」

「ウチら目的はアンタだし……」

 

そう言うと、黄色い髪と青い髪を持つ自分たちと同い年に見える少女達はさくら達をそのまま引っ張って奥に消えてしまった。

その瞬間、冬歌が殺気だった様子で追いかけていた。

 

「っ!!追いかけろ!」

「……」

 

消えてしまった冬歌を追いかけて慌てて沙耶香も走り出すと、カラニットは先ほどの冬歌の表情を思い返していた。

 

 

 

 

 

二人を追いかけて行った冬歌は倉庫内の大きな場所に到着する。

 

「出て来い!クワト!ノーヴェ!」

 

そう叫びながら銃を手に持つと、上の通路から返事があった。

 

「此処にいるよ〜」

 

そう言って通路から降りてくると、冬歌は睨み付けながらその黄色髪の少女に聞くと少女は答える。

 

「おーおー、怖い事……」

「…さくらはどうした?」

「あそこにいるよ」

 

そう言い、指を指した先で倒れているさくらと愛結を確認した。こいつらの事だから危うくと思っていると、降りて来た青髪の少女が冬歌に言う。

 

「やれやれ、君も意固地だねぇ……戻る気は無いのかい?」

「あるわけ無いだろう……」

 

そう言って即答すると、少女達は残念な様子で冬歌を見た。

 

「そうか…戻らないなら。こっちも強硬手段を取らせてもらうよ……!!」

 

そう言うと、黄色髪のクワトは手を前に出すと冬歌は初めて見る術式を見た。

 

「っ!?」

 

その瞬間、冬歌のいた場所に雷の様な音が聞こえ、地面が焦げ付いていた。

 

「なんだ今の音は!?」

「うわっ?!」

 

追いかけて来た沙耶香とカラニットが思わず避けると、そこには穴の空いた壁とそこから漏れる水があった。

 

「ちっ、奴等新しい術式を…「術式じゃないよ」っ!?」

 

咄嗟に、クワトの攻撃で腕を組むと、そのままクワトはナイフを持って打撃を加える。

腰、腹、腕、足と徹底的に行動を抑えてこようとするクワトに若干冬歌は押されていた。すると、そこに沙耶香が横蹴りを喰らわす。

 

「狼八代!!」

 

そうして、鍛えられた横蹴りに咄嗟にクワトが後ろに飛ぶと、冬歌達と一旦距離を取った。

互いに一瞬の静粛が生まれると、冬歌は後ろにいたカラニットに言う。

 

「すみません。先輩はさくら達の事をお願いします」

「分かった……」

「……沙耶香さん。あの二人の対処を一緒にお願いして良いですか?」

「えぇ、良いわ……」

 

そう言うと、冬歌は付けていた眼鏡を外してそのまま投げ捨てていた。冬歌の行動に思わず沙耶香は目を見開いて驚くと、冬歌は対峙する二人の少女を見ていた。

みるみる黒い髪が雪色へと変わり、天藍色の瞳を見てカラニットも驚きの色を示したが、さくら達の安全の方を優先して上に続く階段を登っていた。

 

「相手は実力者です。気を抜いたら……死にますよ」

 

つまり、呪具で色を塗るくらいの霊力すらも惜しいのかと納得しながら二人を警戒するも、同時に高揚感が溢れて来た。

 

「っ!!なるほど、面白い。その方が生きている心地がするわ……」

 

沙耶香は不敵に笑うと拳銃片手に拳を握って戦闘状態に意識を持って行った。虎の獣人なだけあって戦闘力は高めで、その拳は装甲車ですら凹ませることが出来る。接近戦は最強な種族だと感じていると、冬歌は沙耶香に忠告する。

 

「二人は目で座標を固定します。なので……」

「接近戦を仕掛ければ良いのね?よし分かった」

 

そう言うと、沙耶香は持っていたモーゼルを冬歌に渡す。

 

「こう言う時は拳に限る」

 

武闘派だと思いながらも、沙耶香の特性上その方が最強だと感じて冬歌は言う。

 

「後ろから援護します」

「あいよ、頼むぜ」

 

そう言うと、対するクワトとノーヴェも不敵に笑みを浮かべ、一瞬間を置いた後に沙耶香が足を思い切り蹴った。

 

「ぜあぁぁあっ!!」

 

叫びながらクワトの顔面に殴りかかると、彼女はその攻撃を避けるとそのまま沙耶香の腹に足蹴りをするが、沙耶香は余裕そうに言う。

 

「そんな甘い攻撃で通用すると思うか?」

「チッ、これだから亜人は……」

 

そう言うと、クワトは沙耶香と殴り合いの戦闘をしていた。すると後ろでは青髪のノーヴェが指で銃の形をしながらクワトに言う。

 

「援護する!!」

 

そう叫んだ時、ノーヴェは反射的に顔を避けると真横を弾丸が通過し、壁に大きな穴が空いた。おおよそただの銃弾じゃないと思って反射的にその方を見ると、そこにはトーラス・レイジングブルを構える冬歌の姿があった。

 

「貴様の相手はこっちだ!!」

「フッ……そうかい。ゼーロが相手ですか……ならば!!」

 

その瞬間、ノーヴェの指先に小さな水の塊が生まれると三発連射し、冬歌も沙耶香から受け取ったモーゼルを持って撃ち返していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

倉庫内で接近戦と撃ち合いが行われている中。流れ弾を喰らわない様にしながらカラニットは倉庫の上の通路を進むと、視線の先に倒れているさくらと愛結を見つける。

見たところ怪我もしていなさそうなので、カラニットは二人に近づくと、頬を軽く叩いて起こした。

 

「ほら、起きなさい二人とも」

「…んぁ?」

「……ん…」

 

軽くビンタされ、目を開けたさくらは意識がはっきりとすると勢いよく体を起こした。

 

「っ!!さっきの女は?!」

「此処は……?」

 

そう言って慌てて体を起こすと、そこでカラニットが起きたさくら達に言う。

 

「落ち着きなさい、二人とも」

「先輩?!」

 

さくらが目の前にいるカラニットに驚いていると、下からとんでもない銃声が聞こえて思わず二人は何事かと思ってしまった。

 

「気をつけて。下で戦闘が起こっているから……」

「戦闘?!」

 

そう言って、柵越しに恐る恐る下を見るとそこではナイフを持って殴り合いをしている沙耶香と自分を襲った黄色髪の少女と、雪色の髪を持った少女が青い髪をした少女を撃ち合っている光景が広がっていた。

 

「誰?あの子……」

 

上から見ているから顔まで見えなくて誰なのか分からなかった。少なくともあんな髪をした人物はいたかと思っていると、柵の鉄板に何かが当たったような音が聞こえて思わず頭を下げてしまった。

 

「急いで降りるわよ。撃ち合いに巻き込まれるわ」

「は、はい……」

 

さくらは何処に冬歌が居るかも分からない不安が渦巻いていたが、何処かに入るだろうと思いながら頭を下げて倉庫の通路を移動し出した。

 

 

 

 

 

さくら達が移動する頃、下の荷物の積まれた倉庫では沙耶香とクワトは殴り合いをしていた。

 

「であぁっ!!」

「ゴフッ?!」

 

接近戦で殴り合いをしている中。沙耶香はクワトの鳩尾に一発殴りを入れると、クワトは口から涎が溢れながら後ろに飛んでいく。

このまま畳み掛けをしようと接近して拳を下にやるが、クワトは身体を横に転がして避けると持っていたナイフを沙耶香に向けて投げる。沙耶香は投げられたナイフを避けるが、その隙にクワトは体制を立て直していた。

 

「っ!!痛ったぁ……さすがは虎寺家の娘。一発の攻撃が重いや……」

 

そう言ってクワトは殴られた鳩尾を摩った後に構えていた。

 

「だけど、まだ倒れるわけにはいかないんだ」

 

そう言うと、クワトは構えの姿勢を取ると、その後足を思い切り蹴ったが。速度が先ほどと違った。

 

「(早いっ!!)くっ!!」

 

どんな仕組みかは分からないが、沙耶香は先ほどよりも早く移動するクワトに若干対処が遅れてそのまま周りの荷物を潰しながら後ろに飛んでしまった。

 

「さぁ、第二ラウンドと行こうか」

 

体から軽くスパークが出ながら、クワトは沙耶香を見ていた。




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