帆布に描くぎじゅつ   作:Aa_おにぎり

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第参拾弐話

一〇月二四日

 

その日、学業院ではとあるイベントが始まった。

そのイベントとは、年に一度行われる学園祭であった。このイベントは大々的に外部から人を招き入れる事もあり、結構な人がやって来る。

生徒たちの親や入学希望者、卒業していった先輩などなど。実に多くの人がやって来るこのイベントだが、碌でも無い奴が来る事もあるわけで……

 

「ねぇ、姉ちゃん。君の教室って何処にあんの?」

「え、えっと……」

 

校舎の端っこで金髪で髪を染めた男が同級生にナンパをしていた。そして、困惑でその女生徒は動けなくなってしまっていた。

すると、そんな女生徒に一人の生徒が近づくと、その男に声をかけた。

 

「お兄さん、ちょっとこっちに来ようか」

「あぁ?何だよお前h……っ?!」

 

するとそこには仁王立ちする様に沙耶香が威圧する様にその男を見ていた。元々身長が一七〇糎以上ある沙耶香は一般人の男相手でも十分通用するデカさを誇っていた。

すると、その男は沙耶香を見て怯える様に慌てて逃げ出していた。

 

「しっ、失礼しましたぁぁぁぁああ!!」

 

そう言って逃げ出した後、沙耶香はそのまま呆れた様にその場を去って行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

今日は待ちに待った学園祭。みんなが楽しみにしていた学校行事であり、心待ちに……

 

 

 

 

してる訳ねえだろうがクソッタレ!!

学園祭?一年に一回の大イベント?そんなものクソ喰らえ!!

こちとら裏方で大忙しだわ。大体シフト表守れや馬鹿野郎!!おかげでこっちは人手不足だよ!!

 

レトロ喫茶を始めている冬歌達のクラスでは、和服と袴を組み合わせた格好で脚にブーツを履いて店の中を行ったり来たりしていた。

何せ、予想以上に人が多く、捌き切れていない現状があった。今、さくらが慌ててクラスメイトを呼びに行っているが、もうこっちは限界だよ!!

 

「くそっ、こんなに人が多いなんて聞いてないわよ……」

 

裏のキッチンでそう愚痴りながら冬歌は生クリームを絞ってプリンアラモードを作る。正直店で食った方が美味いだろうにと思ってしまうが、これで儲かるのだから何も言えない。

因みに値段設定したのはさくらだ。流石は商人の娘、計算が早い上にちゃっかり儲かる様な良い値段設定をしていた。店の作り込みも結構しっかりやったお陰で大繁盛しているよ。お陰でこっちは死にそうだが……

 

「はい!五番テーブルの!こっちは一〇番テーブル!!」

 

出来上がったプリンアラモードを出して、クラスメイトに運ばせると冬歌は次に注文の多いドリンクのヘルプに入る。山の様に並んだ伝票を確認して一種類に専念して抹茶ドリンクを作り出す。

一種の戦場と化している教室の台所で、冬歌はひたすらに裏方で仕事を捌いていた。

 

 

 

そして少しした後、さくらがクラスメイトーー一部は首根っこ掴まされていたーーを連れてきてクラスメイト全員で仕事を捌き始めた。

 

「ごめん、遅くなった」

「ちょっとこっち手伝って!!」

「了解」

 

あぁ、これで少しはマシになる。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「あぁああ〜〜…つっっっかれたぁ〜……」

 

あれから少し経ち。人が落ち着いてきた教室の中で、冬歌は肩で息をしながら呟く。

すると、さくらがまかないで作ったタピオカミルクティーを冬歌に手渡す。

 

「はい、お疲れ様」

「えぇ、ありがとう……」

 

そして受け取ったタピオカを飲むと砂漠に雨が降った様な感覚になりながら休憩をしていた。

 

「まさか、あそこまで人が多いなんて聞いてないわよ……」

 

そう呟くと、さくらが携帯を触りながらこうなった理由を言う。

 

「なんか、ネットで話題になっていたよ。誰かが投稿したのが話題になってたよ。ほら」

 

そう言って、ネットに上がっている写真を見せると冬歌は思わず恨めしい目をしながら呟く。

 

「全く…自分の個人情報を曝け出して何が楽しいんだよ……」

「おぉ、落ち着いて。ねっ?」

 

相当な恨みがこもっているなと思いつつ、さくらは休憩に入った冬歌の腕を引っ張る。

 

「さて、行こうか冬歌。色々見て回ろうよ」

「えぇ、そうね」

 

そして、冬歌は息を整えるとタピオカ片手に学校を見に回り始めた。

 

 

 

学園祭は外部から多くの人を招き入れるほぼ唯一の機会だ。入学希望者は説明会やらがあるのでまた来る事ができるが、それ以外は来ることがで生きない。女子校と言う特性上、やっぱり変態やスリもそんな客に混じって来るわけで……

 

「きゃーっ!泥棒よ!!」

 

遠くでマダムがそう叫び、こっちに近寄って来る一人の青年が片手に鞄を持って走っていた。突然の事に何事かと思いながらも、対応できずにどんどんスリ男は離れていく。

 

「はぁ〜…全く、碌でもない事を……」

 

その光景を目にし、冬歌は呆れたようにその男の通るであろう道の横に立つと男が走ってきた瞬間に足を出して転ばせた。

 

「うあっ?!」

 

そしてそのままスリ男は空中で三回転するとそのまま植えられていた木に激突してそのまま気絶してしまった。一体何があったのかと騒めく人達であったが、すぐさま警備員がやってきてスリ男はドナドナされて行った。

世の中にはばかも居るものだと思いながら、冬歌達はそのまま何事なかったかの様に学園祭回りをしていた。

 

 

 

 

 

数十分後

学園祭の行われている中、体育館裏で冬歌と巡回の時間を終えた沙耶香が合流し。冬歌の片手には眼鏡が握られていた。

 

「沙耶香さんは霊力が有りませんからね。これでまずは霊力不足を補わないと……」

 

そう言い、冬歌は前に沙耶香と港湾地区に突撃した時と同じように沙耶香の背中に人形を貼り付け、冬歌の霊力を使えるようにしていた。

そしてそのまま沙耶香は眼鏡をかけると、みるみると髪と目の色が変わっていった。虎の獣人の特徴である金髪メッシュの入った髪から、真っ黒になり、目の色は黒色から琥珀色になっていた。何と言うか……

 

「黒猫の獣人みたいですね……」

「猫も虎も似たような物だろう。同じ猫科だし……」

 

そう言い、変装をした沙耶香は冬歌にそのまま挨拶を済ませると、冬歌は沙耶香に注意を入れる。

 

「眼鏡を外したり人形を取ったら変装が崩れるので注意してくださいね?」

「あぁ、分かった。ありがとう。学園祭が終わったら返す」

 

そう言うと、沙耶香はそのまま体育館から去っていった。体育館の中からは音楽部の弾く、ロックな音楽が響き渡り、会場は絶好調な雰囲気に包まれていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

冬歌達が学園祭で盛り上がっている頃、政府はとある事件の対応に追われていた。

 

「急げ!!情報をできる限り集めるんだ!!」

「くそっ、まさか此処までやるとは……」

 

資源環境庁では、東支那海油田の占拠事件解決の為にどうするべきかを考えていた。首相官邸では緊急で会議が行われ、集めた情報をまとめていた。

 

「現場に向かった海上警察は?」

「接近しましたが、銃撃を受けたそうです」

「……」

 

報告を聞き、会議室の上座に座る首相は唸り声を上げ占拠された石油リグの映像を眺める。

 

おそらく、石油リグを占拠したのは北中の特殊部隊であると推測されている。と言うか、確実にそうだろう。

近年のエネルギー不足に喘いでいる北中は何としてもエネルギー源の確保が急務であった。最近は特に新ロシア大統領就任で警戒していたが、予想以上に動くのが早いと思っていた。東支那海油田は日本や南中の二カ国の共同会社で経営しているが、その内の日本が管理している石油リグが今回占拠された。占拠した部隊からの要求などは今までで一切無く、衛星写真から北中の港から油槽船が出航準備が行われているのも確認されていた。

 

「やっている事が海賊じゃ無いか……」

 

思わず、首相を務めている葦塚秀俊はそう溢してしまうと、周りの大臣らも思わず苦笑してしまっていた。

確かにそうだ。やり方は完全の海賊のそれだと思ってしまいつつも、この情報がもし国民に流れた場合の事を想定していた。

 

「部隊は如何だ?」

「既に沖縄から特殊部隊が向かっております。総理のご決断があれば、直ぐに作戦を行えます」

「そうか……」

 

人質となっているのはリグを管理する職員一〇名、人質の安全が最優先だ。場所は既に特定済み。後は乗り込むだけだが……

 

「総理!!」

「何だ?」

 

すると一人の部下が駆け込んで来て、国防省大臣が呆れた様子で問いかけると、驚きの情報を持ってきた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数時間前

東支那海上空

 

石油リグが占拠された情報が秘匿されたまま、日本空軍のF/A-18Jは訓練のために警戒区域に指定された空域を警戒飛行しているとレーダーに一機の不明機を捉えた。

 

「ん?」

 

警戒空域である事は事前に公開済みであるはずだが、間違えて飛んでいるとかと思いながら無線で警告する。

 

『こちらは日本空軍。当空域は訓練中の為、飛行制限空域に指定されている。速やかに現空域を離れられたし』

 

そう言い、呼びかけるも帰ってきたのは砂嵐の音だけであった。

パイロットは警戒し、いつでも撃てる状態にしながらレーダーの影に接近しながら沖縄の基地に連絡する。

 

「こちら、普天間04。不明機が制限空域を飛行中。無線で呼びかけるも、応答なし」

 

しかし、無線が不通で砂嵐の音しか聞こえなかった。

 

「……」

 

ここら一体がジャミングを受けていると言う事実に一気に意識は戦闘状態に移行した。下では訓練が行われているなんて言うが、このパイロットは訓練中だと言うのが嘘だと思っていた。上のお得意の隠蔽工作かと思いながら、パイロットは操縦桿を握る。

不明機が戦闘機じゃなかったらおそらくこのジャミングで居場所を見失って飛行しているものかと思われるので、飛行禁止空域から離れるよう誘導するだけだ。

 

 

 

そして、レーダーに映る不明機が段々と近づくと、それが民間の中型プライベートジェットであると認識した。

そしてそのまま視認距離まで近づくと、コックピットにハンドシグナルを送って誘導を行っていた。敵では無いようで、向こうのレーダーが使えなくなっている事実も把握した。

 

「(全く、上の隠蔽気質には困ったもんだ……)」

 

誘導途中、パイロットが思わずそう溢すとジェット機に先導して空域から離れるように誘導していた。

そして空域から離れた時点でプライベートジェットを見送っていた。




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