【完結】虹色refrain   作:迷えるウリボー

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 注意!
 本作は性転換・恋愛の要素を含んだ二次創作となります。ご注意ください。





OP 《青春コンプレックス》
01 colorful conflict


 

 

 自分の初恋がどんな風になるかなんて、今まで考えたことがなかった。

 生活は人並み。自宅は日本有数の観光地ってわけでもない、東京の下北沢にある。特別な要素があるとすれば、姉が実家でSTARRY(スターリー)ってライブハウスを経営していることくらいだ。

 僕自身は別に普通で頭は良くも悪いくもない。一応進学校には通っている、けど日本のトップにまで居座れるような頭脳じゃない。中学・高校共に帰宅部。これといって秀でることなんてない。

 けれど、小学生の頃からずっと続けてる好きなことはあった。ドラムを叩いている時間がそうだ。みんなと一緒に過ごしている時間は、落ち着いて、それでいて高揚する。心地がいい。

 昔馴染みと即席バンドを結成して、夢のために動きだす。それも考えなしと言われればそれまでの、熱意ひとつが原動力の行動。不運なことに、せっかく集まった三人目のギターボーカルは初ライブ初日で逃げてしまった。

 でも、そんな状況を救ってくれた子がいたんだ。

 ピンク色の髪を、たぶん最低限だけ手入れして、ピンクの色のジャージを着ていたその子は、傍から見ればちょっと異質だったとは思う。けれどその子を見つけたときの僕にはそんなことは頭になかった。ただ『バンドを続けたい』て一心で僕は動いて……まあ、その子はバンドメンバーになってくれた。

 強引な勧誘は、ちょっと考えなしの行動だった。けどそのおかげでバンドは続いている。で、四人目だって戻ってきた。

 

 そうして日々が移ろって、四人で始めてのライブをした。

 揃わない音色。乱れるリズム。震える声。白けた会場。

 静寂を切り裂いた鋼鉄の弦があった。華奢な女の子が、会場の視線全部を奪いにかかった。

 暗闇から色鮮やかな音と光が生まれる。みんなの呼吸が揃う。

 その子の俯き気味な視線はギターだけしか見ていない。動きも小さくて、ピンク色の髪が無造作に跳ねるだけ。その前髪に顔の露出が邪魔されて、火照った頬が少し見えるだけだとしても。

 

 あの瞬間、僕には君が、正真正銘のヒーローみたいに見えたんだ。

 

 

────

 

 

 かくれんぼするひとこのゆびとまれ! の集まりに入れないひとりぼっち。

 小学校の遠足で、先生と二人でお昼ご飯を食べるひとりぼっち。

 中学校。部活もはいらず、放課後は即帰宅。

 スマホに届くのは親からのメッセージか、クーポンのお知らせだけ。

 それがわたしだ。

 中学一年生の時、陰キャなわたしでも輝けるんじゃないかってギターを始めた。毎日六時間は練習した。

 高校生。そんなわたしがバンドを始めたのは、偶然というか、運命というか……。

 わたしを見つけてくれた人がいた。わたしらしくでいいんだよって言ってくれる人がいた。少しずつわたしも喋れるようになっていった。

 

 そして、わたしを見ていてくれた人がいた。

 

 文化祭。壇上から見下ろす大勢の観客。そんな視線が気にならない光があった。隣に立つ、わたしを消してしまうような強い光が。

 ギターの音が聞こえなくなる。観客なんて見えやしない。ドラムとベースの音が今はうるさい。

 そんな時、隣からギターの()がはっきりと聞こえた。 赤い髪がはねて、猫背になったその人は、楽しそうに笑っていて、口を開かずに教えてくれた。

 

『みんなに見せてよ。ほんとうはひとりちゃんが、すっげーかっこいいんだってことを』

 

 あの瞬間、あの人はわたしの心を掴んで離さなくなったんだ。

 

 

───

 

 

 かくれんぼする人このゆびとまれ! っていうと、たくさんの友達が駆け寄ってくる。

 小学校の遠足では鬼ごっこの音頭をとって、クラス中を巻き込んで公園を駆け回って、先生に怒られた。

 中学校。部活には入らなかったけど、運動神経がいい自覚はあったので遊び相手から練習試合までとにかく参加しまくった。サッカー、バスケ、野球、いろいろと駆り出された。

 毎日友達から、今日の予定を聞かれる通知が届く。遊び三昧。楽しいことばかり。

 それが俺……なんだけど、だからといって人生順風満帆とはいかない。

 友達みたいにスポーツ大会で優勝したわけじゃない。習い事でいい成績を収めたわけでもない。彼女だって生まれてこの方できたこともない。

 いたって普通の、いたって平凡な、代わり映えのない普通の人生だ。それが俺の十六年間だ。

 だから、変わりたいとは思っていた。希少で、非凡な、唯一無二に輝く人たちへのぼんやりとした憧れがあった。

 

 その人と巡り会えたのは偶然で、たまたま路上ライブでの姿を見ただけ。

 一目惚れだった。冷徹な青い髪に、憂いを帯びた瞳と、大きくて小さなシルエット。

 たぶん、あの瞬間に公言する『好みの女の子』像は確定してしまった。

 何もない自分でも、普通じゃない道を歩けるなら。

 

 俺は、あの人に近づきたい。あの人の隣に立てる俺になりたい。

 

 

────

 

 

 好きって言うな。むず痒い。

 好きだって言うけど、全然言葉の意味が違う。私の言葉の意味とは違う。

 過保護な両親から逃れたくてロックにのめり込んだ。

 結局親の態度は変わらなかったけど、音楽は好きになったし、いろいろ趣味も増えたからよかったと思った。

 けど、同じクラスの虹夏と関係が強くなったのは誤算というか、予想外だった。

 同じくらい年の頃からドラムを始めてた。自然と話すようになった。とはいえスタンスの違いか、生活リズムの違いか、とにかくいろいろ偶然が噛み合って直接バンドを組むことはなかった。

 私が他の人とバンドを組んでも、虹夏は応援してくれるだけ。

 だからだ。バンドメンバーと音楽の方向性で揉めて、解散しちゃったのは。

 まあ、仕方ない。方向性が違うことなんてザラ。よくあることだ。

 

『ねえ、暇ならベースやってよ』

 

 そんなことを言わないでよ。

 もう、音楽なんて嫌いになりかけてたのに。

 別に、すっごく好きってわけじゃないのに。

 

『だって僕、リョウのベース好きだし!』

 

 好きなんて言うな。すごく好きになっちゃうから。

 

 

────

 

 

 わ、わたしにとって、青春なんてコンプレックスでしかないけれど。

 でも、変わりたいと思える俺の大切な居場所だ。

 だから、私が私らしく居続けるために。

 今日も、僕たちは集まってバンドを続ける。

 

 

 

虹色refrain

 

 

 

 







 プロローグではありますが、少々あとがきを失礼します。
 本作は性転換の要素を含んだ《ぼっち・ざ・ろっく!》二次創作となります。
 きっかけは、某所であげられた《虹夏と喜多が男の結束バンド》というもの。見事に心にどストライクし、順調に脳を焼かれ、そして今に至ります。

 虹夏と喜多が男子学生になった結果、男女2名ずつのガチガチな結束バンドとなった世界。
 お目汚しとなるかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです。
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