いつもの学校の風景が、そうじゃないように感じてしまう。
2年生になって、教室が今までと違う場所になったから?
ギターの師匠で、支えなきゃならない友達が同じクラスになったから?
1年がたって、自分が少しだけ成長したように感じるから?
違う、どれも違う。
(誰かに振られるって……こういう気持ちになるのか……)
ホームルームの後、ひとりと郁三がほとんど毎日のように自主練で使うようになった空き教室。郁三はそこで席に座って、ふて寝しながら考えていた。
もちろん少し前、リョウを励まして、自分の気持ちを伝えた時のことだ。
郁三は1年に一度は女子から告白されてきた。小学校低学年の時は「足が速くてカッコいい」とか。高学年の時は「優しくて、カッコよくて好きになった」とか。中学の時は、同級生に2回、上級生に1回、下級生に1回。恥ずかしそうに、自分に想いを告げてきた女子たちのことはよく覚えている。
数が多いとはいえ、人間関係に真面目な郁三は、どの告白に対しても真面目に真摯に答えてきた
『まずは付き合って、それで気持ちが動くかもしれないよ』という意見があることは十分承知してる。でもそれなら尚更応えられるはずがない。好きに慣れなかったら、付き合った子を弄ぶことになる。好きになったのなら、『好きじゃなくなったから振る自分』という可能性が自分の中で芽生えて、それを殺してやりたくなる。
「はー……ブーメランかよ」
それだけに、リョウが『郁三の気持ちに中途半端な私が応えられるはずがない』と言った時、郁三は昔の自分に、昔自分が断ってきた女子たちに全身を引き裂かれたような気分を味わった。
(リョウ先輩は虹夏先輩が好き、か。そりゃ、俺なんかの気持ちに応えられるわけないもんなぁ。きっと、俺のためを想って──)
いや、そうですらない。リョウの中にある虹夏への想いは、ブラックホールみたいに重い。郁三はそれを肌で感じ取った。どうして、今まで気づかなったんだと自分を殴りたくなるくらいに。
あの時、「リョウ先輩の気持ちが変わらないように、俺の気持ちも変わらない」と言った。それは本当だ。けど、その言葉が自分に重くのしかかる。
「……好きなんだ……リョウ先輩のこと、本当にさ」
自分に向かって、独り言を吐く。
郁三は、誰かに対してそう見えることのないように振る舞おうとして、隠しきれないくらい落ち込んでいた。
そして考えるのは、そこからどうすべきなのか。
(辛いけど……気力がわかないくらい体調に響くし……きっついけど。でも、この気持ちは本当のことだ)
幸い、郁三は比較的メンタルお化けだった。もちろん、振られた。辛い。相応に傷ついた。でも意識は切り替えている。リョウの力になりたい……それが今の郁三の本心だ。
けれど。
「俺……リョウ先輩を応援できんのかな」
振られた状態で、何もなかったかのように、リョウの近くにいれるのか。
「リョウ先輩は……虹夏先輩に告白、できるのかな」
二人の間柄が小学校からの仲だっていうのは知っている。以心伝心の様子が羨ましかった。そうだとしても、リョウは今まで虹夏に想いを告げることがなかった。それがどうしてなのか、というのはわからないけど。
もし、仮に。虹夏が自分に対して頑なに明かさなかった想い人が、前の郁三の予想に反してリョウなのだとしたら、二人は自覚がないだけの両想いだ。そうなれば、郁三や、ひとりや、彼らを知る人たちに協力でも取り付けられればうまくいきそうだ。
そうでなかったら。リョウが……あそこまで取り乱すほどの何かを抱えたリョウが、虹夏に想いを伝えられるのだろうか。
「リョウ先輩と虹夏先輩が
──二人をちゃんと、祝福できるのか? この俺が。
「……るせぇ」
嫌な感情が蓋から跳びかけた。全力で押し返した。
虹夏は頼れる先輩だ。俺なんかを迎え入れてくれた。今となっては真意もわからないけど、男二人の時はバカ騒ぎしてくれる数少ない先輩で、困った時にリーダーとして指針になってくれた。虹夏はきっと、恥ずかしくて認めたがらないかもしれない。けど郁三は想っている。虹夏のことを《親友》だって。
──親友に好きな人を掠め取られて、悔しくないのか? 憎くないのか?
「……黙れよ」
嫌な感情に悪態をついた。
虹夏にだったら、リョウを、好きな人を安心して託せると思う。託せるなんて少し大げさな言葉だけど。
応援だってできる。頼れる先輩たちが仲良くいることは、素晴らしいと思う。
けどもし、虹夏がリョウを選ばないのなら。
虹夏には虹夏の人生がある。それはそれで仕方のないことだ。虹夏には虹夏の好きな人がいる。『リョウ先輩のため』なんて免罪符で、虹夏の気持ちを踏みにじることはできない。
もし、そうなったら。リョウはきっと悲しむ。リョウの恋が悲しみに終わる。
──そうなった時。俺は、もう一度リョウ先輩に想いを告げられるのか?
「俺は、リョウ先輩が好きだ」
クールな見た目が。華奢な姿が。憂いを帯びた瞳が。透き通った声が。自堕落な普段の様子が、甘えんぼな本心が。仲間想いな本質が。
(俺が好きなリョウ先輩は、そんなリョウ先輩らしいリョウ先輩だ)
だから思う。
リョウが虹夏を諦めた結果、リョウが変わってしまうのなら。立ち直れたとしても影が落ちるなら。
そこに付け入る自分は、本当にリョウを好きでいる資格があるのか?
自分がリョウのことを諦めて応援するということは、自分が好きなリョウでいて欲しいと願うことだ。
自分がリョウのことを諦めないで、彼女に想いを告げるのは、決して見たくなかった彼女の表情を見ることになる。
郁三はリョウが好きだ。でも好きなリョウでいて欲しいのなら、諦めなきゃならない。
「……くそっ」
郁三は振られたショック以上に、その矛盾に悩んでいた。
ひとりに大見栄張って「リョウ先輩は俺が励ます」なんて言ったくせして、この体たらくだ。
どうすればいいんだろうと、郁三は思う。
ひとりは、虹夏と話すことはできたのか。
お互い連絡をできるような状況でもなかったし、クラスメイトがいる場所でできるような話でもなかった。それにひとり自身、あからさまに何かがあったような表情をしていた。
「そういえば……ひとりちゃん、遅いな」
今日は確かに自主練の日だったはずだ。元々無理は承知だけど、虹夏やリョウ、なによりひとりに追いつくために、スタジオ練習がない時でも練習したいとひとりに言っていた。ひとりも快く応じてくれたから、学校での練習は日課と化している。
ホームルームが終わった時、ひとりに声をかけた。一緒に自主練をするのだから、教室まで一緒に行こうと思った。そうしたら、なぜか次子が野良犬を払うような目つきで「しっしっ」とかやって、ひとりも「ちょっと用があって……先に練習しててもらえませんか?」というので、郁三は渋々そのお願いを聞き届けた。
「何か当番とかあったっけ? 手伝えたのにな」
誰かと一緒にいたい気分だった。郁三の中で、いつも変わらない、カッコいいひとりが見れるから、たくさん一緒に練習したいと思っていた。
ロインでメッセージ。『時間かかりそう?』と一言だけ。
数分後にまたロインを開く。自分のメッセージは既読すらついていない。
「……なんかあったのかな」
試しに、直前まで一緒に何か話していた次子にもメッセージを投げた。
数分後、もう一度だけロインを開く。既読すらつかない。
いよいよ業を煮やした郁三は、スマホと財布だけ持って、他の道具は壁際に立てかけて空き教室を出た。
新学期が始まってまだ1日目。今日校内に残ってる生徒なんてほとんどいない。自分の教室に戻るまで、ほとんど時間はかからなかった。3月までの癖があって、つい1年の教室に足が向かいかけたけど。
自分の、恐らくひとりがいるであろう教室の近くまでやってくる。教室の扉は締まっている。
『後藤……本当にそれでいいのっ?』
次子の声が聞こえた。
(なんだ、二人でいたのか)
どうして、そんな仲間外れにするようなことを。ちょっとだけムッとしてしまった。
ただ、教室の扉を開けようと取っ手に手をかけた時、その感情はどこかへ吹き飛んだ。
『自分の気持ちを、諦めることになるんだよ?』
「──ぇ」
自分の今の悩みとシンパシーを持つ言葉。次子の緊迫した声色。それで勢いよく開けようとした自分の手が止まった。漏れ出た空気は、発音にならないほど小さい呼吸になった。春になって日の入りが遅くなったからだろう、放課後でも、まだ郁三の存在を夕陽が告げることもなかった。
だから教室の中の
次子が話している先は──
『いいんです』
ひとりの声。壁一枚を隔てているにしては、いつもと違ってあまりにもはっきりと聴こえた、ひとりの決意の声。
郁三の手が、動かない。
『そっそれでも……わたしが喜多くんを好きなのは変わらないから』
「──ぇ」
手が、冷たくなる。
肺が、きゅっと締まる。
扉の向こうのひとりの言葉に。
郁三は、動くことができなかった。
『わっわたしの、喜多くんへの気持ちは……変わらないから』
────
「わっわたしは……喜多くんの気持ちを、応援したいって思うんです」
ひとりと次子は他のクラスメイトがいなくなるまで適当な世間話をして待って、二人だけになった教室で本題に移った。
ひとり自身、自分のことを話すのは苦手で、そしてどこまで結束バンドの現状を明かせばいいのかわからない、と言うこともある。だからどうしても時間がかかった。
郁三がリョウを好きなこと。
自分が郁三を好きなこと。
喧嘩をしたのかもわからないけれど、鎌倉の時に先輩二人も遊びに来ていて、それ以降どこか結束バンド全体の様子がおかしいということ。
そして郁三がリョウに対して、行動しようとしていること。
ひとりの話を最後まで黙っていた次子は、少しずつその相貌を緊迫したものに変えていって、最後には盛大なため息をついた。
「……修羅場」
「……」
「いや、レディコミかって」
「……あぅ」
「なんか、すごいことになってるなぁ」
次子はそれしか言えなかった。決して他人事だとか、どうでもいいとか思っての淡白な返事じゃない。完全にどう返せばいいかを迷って出た声色だ。
「喜多も、あのバカ……タイミングが悪すぎでしょ」
次子はひとりに好感を抱いていて、ひとりのことを応援している。その気持ちに立ってみれば、どうして今行動し出したんだと思わずにはいられない。
ひとりは自分が知ってるすべてを話したわけじゃない。虹夏の気持ちを、無関係の次子に話すこともできなかった。リョウの虹夏への感情というのはあくまで郁三の予想だから、それを話すこともできなかった。
けれどもしそうだとしたら、わたしたちはそれぞれが戻ることのできない時計みたいに、誰かを好きでいる。そんな風にひとりは考える。
けど、次子はひとりよりは人の機微によく気づく。ひとりが言わなくても、自分が知らない虹夏とリョウの関係性を、なんとなく想像している。
下手に手も足も出すことができない、地雷だらけ、一度締めたら緩めることができない結束バンド。それが今の四人の関係性だった。
ただこうすればいいとか、こうしてはだめだとか、アドバイス一つでよくなるような状況じゃない。
「それで……後藤はどうするの?」
「こっこの何日か……ずっと、考えてました。どうすればいいのかなって」
虹夏に差し伸べられた手を取って、そうして入った結束バンド。
リョウと郁三がいて、虹夏がいて、ひとりがいる。友達がいなかったひとりにとって、結束バンドは何よりの宝物になって、三人との時間は何よりかけがえのない時間になった。
いつか虹夏に話したひとりの夢。ギタリストとして、みんなの大切な結束バンドを最高のバンドにすること。それがひとりの今の目標になった。
ぽいずん♡やみの一件があって、その想いはより強くなった。そしてみんなで未確認ライオットでグランプリを獲ろうと決めた。それぞれの夢の方向性が違っても、同じ目標に向かって頑張っていける。ひとりはそれが何よりも嬉しかった。
「……なのに」
──わたしが恋をして。それをよりによって虹夏くんに話して。虹夏くんはわたしなんかを好きでいてくれたのに、わたしが虹夏くんを裏切った。
──喜多くんは、自分の気持ちを抑えていた。そんな風には見えなかったけど、確かにリョウ先輩の本当の心の中に踏み込むことはずっとなかった。
──なのに、わたしは考えなしに最低なことをした。
鎌倉の後の一か月。結束バンドは死に体で。
虹夏は空元気で。リョウはいつもより無口で。郁三もその空気を感じ取って。ひとりも実力を出せなくて。
このままじゃ、ひとりの夢は叶わない。結束バンドは崩壊する。
このままじゃ、リョウはやりたいことができなくなる。結束バンドは自分らしい音楽ができる場所だったのに。
このままじゃ。大好きな郁三の頑張りが無駄になる。結束バンドで頑張りたい、もう一度挑戦したい、自分を変えたい。その想いが全部無駄になる。
このままじゃ、虹夏の夢が終わってしまう。星歌の分まで有名になってSTARRYを有名にするという、一緒に叶えることで恩返しをしたいと思った夢が。
このままじゃ、嫌だ。
だから。
だからどうすればいいのか、ずっと考えていた。
虹夏の、リョウの、郁三の力になるためにはどうすればいいか。
そして、決めた。
「わたしはっ……リョウ先輩を好きでいる喜多くんを……応援しようと、思うんです」
次子にとっては、半ば予想していた答えだった。
これだけの重荷を前にして、緊張で文字通り爆発するような奴が、そう簡単に要領のいい選択ができるわけがないから。
こういう時は、逃げるか、想い人に突貫するか、起こす行動は両極端だ。
そしてひとりは逃げることを選んだ。
それ自体はひとりの選択だ。怒りもしない、咎めもしない。
でも。
「後藤……本当にそれでいいのっ?」
次子は問いかけた。
郁三を好きになる女子も、いろんなタイプがいる。単に面食いで動こうとするのもいれば、郁三のことを本気で好きになるのもいる。
ひとりは後者だ。
「自分の気持ちを、諦めることになるんだよ?」
本気の気持ちを前にして、その燻ぶりがある中で、ただ想い人の幸せを願って行動するなんて、辛くて辛くてたまらないはずだ。
「いいんです」
ひとりは力なく笑った。
ひとりは郁三のことが好きだ。結束バンドのメンバーと話すことに緊張しなくなった時、郁三はカッコよくて、自分を慕ってくれて、自分をカッコいいと思ってくれているのだと知った。学校でもバイトでも、いつでも自分のことをよく見てくれている郁三が、この上なく大好きになった。
──喜多くんの眩しい笑顔を見ていたいから。
──喜多くんと一緒にいられるのは、結束バンドがあるから。
──結束バンドがないと、喜多くんと一緒にいられないから。
──ずっと一緒にいたい喜多くんは、リョウさんのことが好きだと言って隠さなくて、普段は優しい虹夏くんと年頃の男の子みたいに騒いで、リョウさんに郁三と言われてしゅんとして、そうしてわたしに笑ってくれる喜多くんだから。
──だから、喜多くんがリョウさんに想いを明かしたって。それでもし、リョウさんが喜多くんの想いに応えたのなら、それが、わたしが見ていたい、喜多くんのとびっきりの笑顔だから。
「そっそれでも……わたしが喜多くんを好きなのは変わらないから」
「後藤……」
もちろん、郁三をあきらめて虹夏の想いに応えて──なんてことを考えているわけじゃない。郁三がリョウを好きなのと、虹夏がひとりを好きなのと、同じように。ひとりも郁三のことが好きだから。
リョウを想う郁三を応援することが、郁三への想いを諦めるという意思表示じゃない。
でも、虹夏とリョウが笑顔でいないと、ひとりの結束バンドは完成しない。
「だから、わたしはやらなくちゃいけないんです。喜多くんのために、リョウさんのために、虹夏くんのために、できることを」
もし、郁三がリョウを励ますことができるなら、それでいいじゃないか。
それで結束バンドが、また元に戻るのなら。
結束バンドのために、傷つけた虹夏に、自分なりの方法で、手を差し伸べたい。
──わたしは、虹夏くんが見つけてくれた、ギターヒーローだから。
「わっわたしの、喜多くんへの気持ちは……変わらないから」
「けど、後藤……」
次子は思う。
それは、諦めることと同じだ。
悔しくて、辛くて、いつかその気持ちに蹴りが付けられるまで、拷問をずっと受けるのと同じだ。いや、もしかしたら一生引きずることだってあるかもしれないのに。
「さ、ささささん。《星座になれたら》、覚えてますか」
「秀華祭で披露した2曲目でしょ? 覚えてるよ」
「あっあれがわたしの、喜多くんへの気持ち、なんです」
結束バンドだから生まれた《星座になれたら》。
でも、わかっていたんだ。
そうだ。
そうして、ひとりの想いを聞いた次子が、何を言えばいいのかわからなくて、沈黙を選んだ時。
次子のスマホから、通話の通知を教えるバイブレーションが生まれた。
「こんな時に……喜多からだ」
「喜多くんから?」
「あいつ、業を煮やして探し回ってたな。ロインのメッセージが結構来てる」
「あっ……わたしも、でした」
次子は通話を始めた。
「もしもし、喜多? うん、今、後藤と一緒に教室にいるけど」
ひとりはじっと、様子を伺う。
「ああ、後藤の用事は済みそうだけどさ。悪いけど、もう少し──」
「ささささん」
「──え」
「きっ喜多くんを……呼んでもらえませんか?」
「……あのさ、後藤が話したいことがあるんだって。喜多、教室来れる? ……わかった」
次子は通話を切ってスマホをしまった。
「……すぐ来るってさ、喜多」
「あっありがとう、ございます」
「後藤、なに言うの……?」
郁三は二人を待たせることはなかった。いつもギターを練習している空き教室からやって来たにしては、速すぎるくらいの時間しかかからなかった。
その違和感を次子は感じ取って、ひとりは気づかなかった。
「ひとりちゃん……来ないから心配したよ」
教室の扉を開けた郁三が、真っすぐひとりのもとへやってくる。
「きっ喜多くん」
「喜多……?」
「さっつー、サンキュ」
「う、うん」
郁三が、腐れ縁の次子にしか気づかないような、ほんの少し、ほんの少しだけ硬い表情で。
「ひとりちゃん、話があるんだって……? どうしたの」
「さ、ささささんに……今の結束バンドのこと、話してたんです」
「……そうなんだ」
郁三を前にして、ひとりは笑った。
「喜多くんがリョウさんを励ますように……わたしも、虹夏くんを励ましたい」
「……ひとりちゃん」
「喜多くんを応援したい」
覚悟を決めて、ひとりの瞳から、流れるものがあった。
「リョウさんに、リョウさんらしくいて欲しいって伝えたい」
「ひとりちゃん」
「後藤……」
「だから……」
笑顔に、涙が煌めく瞳を添えて。ひとりは言った。
「きっ喜多くんの、力を、貸してくださいっ……」
涙に煌めく瞳を添えて。ひとりは笑った。
悲しそうに、優しそうに、愛おしむように……儚げに。ひとりは、笑った。
「みんなが信じた……結束バンドで……皆で、グランプリを取りたいから」
笑うひとりは、誰の眼から見ても可愛らしくて。
誰の眼から見ても、儚くて。
そんなひとりに。郁三は。
「…………うん」
ただ、一言。そう返した。
X年後……ファン1・2号による結束バンド恋愛アンケート
Q13 喜多郁三に、何の曲を捧げたい?
ひとり「星座になれたら」
虹 夏「あのバンドかなあ。カッコいいし」
リョウ「グルーミーグッドバイ」
郁 三「自分にかぁ。……光の中へ、かな」
《光の中へ》を、誰に向けて歌いたい/演奏したい?
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ひとりちゃん
-
虹夏くん
-
リョウさん
-
郁三くん
-
虹夏ちゃん
-
郁代ちゃん