【完結】虹色refrain   作:迷えるウリボー

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郁三視点
※喜多郁三




05 スカーレット・ベイビー

 

 

 山田リョウ先輩と俺、喜多(きた)郁三(いくぞう)が出会ったのは、なんてことない日の路上ライブだった。

 何の理由でその場所にいたかは覚えていない。いつものように、友達と一緒に放課後にバカ騒ぎをしていただけだと思うけど、その直後の出来事が衝撃的すぎて前後のことなんて頭から抜け落ちてしまった。

 四人で路上ライブをしていた、その中の一人。素人の俺でもわかるような、圧倒的な重低音が心臓を芯まで揺らした。

 音楽の善し悪しなんて、正直なところほとんどわからない。好みの曲はあるし、流行の音楽も追ってる。けどCDを集めるような人種でもなければ、聞くためのプレーヤーの機材にもこだわったりなんてしない。

 いつだったか、子供の頃に親に連れられた楽器のコンサート。観客みんなが無言になって奏者に注目して、次の瞬間指揮者がタクトを振る。その瞬間。管楽器やら弦楽器やらシンバルやらの壮大な音が振動となって体に襲いかかる。

 下北沢の雑踏。車の音、夕暮れの太陽の眩しさ、排気ガスの臭い、煩わしさ。そんなものがあるのに、この人が奏でる少し聞いただけじゃわからないベースの音が、俺を掴んで話さなかった。

 すぐに、そのバンドの──その人のファンになった。

 日々のライブを追っかけた。名前と高校のことを知った。

 そしてある時、バンドを解散したと聞いた。

 孤高の人だから、何かあるんだろうとは思った。でも、それだけで俺の熱は収まってはくれなかった。

 STARRYというライブハウスで、《結束バンド》がギターボーカルを募集中なのを聞いた。勢いに任せて──というよりほとんど記憶にないんだけど、『ギターやります!』と断言してそのバンドに飛び込んだ。

 勢いで、両親から二年分小遣いを前借りしてギターを買った。

 必死に練習したけどギターはうんともすんとも応えてくれず。一音もギターらしい響きを聞かせてくれなかった。

 少し下手、というのであればやり用はあったかもしれない。ところが文字通りまったくできない。

 そうして結束バンド初ライブの日。俺は逃げた。

 ──気が付けば、俺は逃げ出していた。

「──という、ことでした……ほんっとうにすみませんでした!!」

 後藤さんの案内で、彼女が所属するバンドメンバーがいるという下北沢駅近郊までやってきた。その時点で、嫌な予感がしていた。

 とはいえ、本当に通りすがりに山田リョウ先輩と伊地知虹夏先輩──俺が逃げ出したバンドのメンバーと遭遇してしまうとは。

 そして、なによりも後藤さんが言っていたバンドメンバーが彼らだったとは。嫌な予感、働いてくれよ。

 そうして、俺たちは再会してしまった。思わずわけのわからない、みっともない言葉をリョウ先輩に吐き出してしまうくらいには。

 一息ついて、四人全員でSTARRYの中に入り、事情を説明した。

 そしてSTARRYの中で、虹夏先輩、リョウ先輩に土下座する。ここまで連れてきてくれた後藤さんが俺の突然の行動にめちゃくちゃあたふたしているけど、今はしょうがない。

 後藤さんが所属するバンドこそが、過去俺が加入していた結束バンドだったんだ。

 つまるところ、俺は偶然が重なって不義理を犯したバンドメンバーのもとへたどり着いたのだから。音楽の技術もない、大した人間でもない。そんな俺が今できることは、土下座くらいしか思い浮かばなかった。

「ちょ、喜多くん。顔を上げてよ」

「そうは行きません、虹夏先輩。俺は……」

「少なくとも、土下座を望んでる人間はこの場にいないって」

 顔を上げる。虹夏先輩、リョウ先輩。それぞれいつもの優しげで、クールな表情だった。

「でも、突然音信不通になったから心配してた。最近は毎日お線香あげてたし」

 リョウ先輩、せめて殺さないでもらえると嬉しいなぁ。

「でもそっか……喜多くん、ギターできなかったんだ。あはは、なんか意外だなあ」

「え、虹夏先輩、それってどういう……?」

「喜多くんって《ザ・陽キャ》! って感じだから。もうほんとになんでもできるスーパーマンかと勝手に思ってたよ」

「いや……そんなんじゃ、ないですってば」

 そんなわけがない、俺からすれば。

「いや、むしろ評価は変わった」

 リョウ先輩はそう言った。彼女は仁王立ち、珍しい笑みを浮かべている。

「初ライブ前に逃げ出す……これぞ前代未聞のロック。音を聞け、じゃない。無音を聞けってことでしょ」

「いや、でも……」

「コンサートじゃ《4分33秒》なんて曲もある。それをロックでやるのは……まさに音楽界への挑戦」

「あ、あのリョウ先輩?」

「まあまあ、喜多くん」

 虹夏先輩が、わざわざ俺の目線まで腰を落として──地面にあぐらを書いて少し困ったようにへらっと笑った。

「リョウの変人思考は今に始まったことじゃないし。確かなのは、僕もリョウも気にしてないってことだよ。なによりも──」

 虹夏先輩が、後藤さんを見上げる。

「あの時は、なんとかなったからねっ」

「それって……後藤さんが?」

「あっはい……実はその時に、虹夏くんに誘われて……」

 詳細はわからないけれど、こうして今、虹夏先輩とリョウ先輩が今も笑顔でいて、それはつまり、最悪の未来にはならなかった、ということだ。

 体を持ち上げて膝を浮かせる。ようやくそれをしていいと思えた。罪悪感が完全に消えたわけじゃないけど。

「後藤さん」

「あっはい」

「ありがとね。二人を助けてくれて」

 と、俺。

「あっはい」

「ほんと、マジ救世主」

 と、虹夏先輩。

「うへへへぇ……」

 と、後藤さんがにやける。後藤さんってすぐに顔に出るんだなぁ。

 今度こそ、完全に立ち上がった。

「とはいえ……俺がいろいろ引っ掻き回しちゃったのも事実ですし。なにか、罪滅ぼしとかできないですか?」

「え? いやいやいいよ、そんな」

「ならこのベース20万するんだけど是非──」

「はいリョウ調子乗らないストップー」

 視線の端で虹夏先輩がリョウ先輩の頭を叩いた。いいなぁ……。

 と、そんなことを話しているところ、四人だけの会話に介入してきた人が一人。

「虹夏」

「あ、姉ちゃんどしたの?」

「ここでは店長だっつってんだろ」

 虹夏先輩に《姉ちゃん》と呼ばれたその人。先輩と同じ金髪でロングヘアーの女性。つり目で少し厳しい印象だけど、まさに《ザ・お姉さん》って感じの星歌店長だ。

「話は聞かせてもらった。今日ライブハウス手伝ってくんない?」

「あ、それいいかもね! 男手が欲しかったんだ」

「虹夏、背低いからね」

 リョウ先輩にプロレス技をかける虹夏先輩というひどい絵面を背中で無視して、店長さんは平然と俺に問いかけた。

「というわけで、バンドに迷惑をかけたってんならそれでチャラ。どう?」

「あ、あの……背後で凄惨な光景が」

「いつもの取っ組み合いだよ」

「は、はあ……後藤さんが慌てて溶け崩れているのは?」

「それはまあ……可愛いからいいじゃん」

 え、いいんですか?

「で、どうするの? やるの? やらないの?」

「じゃ、じゃあ……やります!」

「よし」

 即席アルバイト、開始。

 

 

────

 

 

 俺は高校一年生になったばかり。バイトなんてしたことがないけれど、人と関わることは好きだし、スポーツもそれなりにやってきたから体力には事欠かない。

 ライブハウスのバイト。室内の掃除、機材や備品の整理。多くは知らないけど今日は確かに忙しいとのことで、店長さんの指示の下馬車馬のように働いてみる。

 そうしているうちに「お前、使えるなぁ」と店長さんに言われ、「喜多くん愛想いいし受付もやってみる?」と虹夏先輩に言われ。

 対象的にリョウ先輩と後藤さんの女子二人はなぜか定位置から動かないなんていう不思議空間になっていたけれど。

 まあ罪滅ぼしとしてのバイトであるわけだし、女子二人の負担を減らせるのであればよしとする。そもそも俺はリョウ先輩が推しなわけで。

「おーい、喜多くん、ぼっちちゃんからドリンク教えてもらって!」

「あ、はい!」

「うーん、いい返事だ。リョウもぼっちちゃんも静かだからさぁ」

 虹夏先輩に近寄る。

 それにしても、何度か耳にして気になっているのだけど……。

「虹夏先輩」

「うん?」

「《ぼっちちゃん》って、後藤さんのことですか?」

「うん」

「なんか、その……火の玉ストレートが過ぎません?」

 後藤さんの名前は知っていた。というか、学年の同級生はだいたい知っている。後藤さんが引っ込み思案……を倍がけして二乗したような性格というのはここまでのやり取りでわかったけど。

「うんまあ僕もそう思うんだけど……」

 虹夏先輩が頬をかいて困ったように笑う。

「当の本人が気に入ってるんだよ、《ぼっちちゃん》。あと、リョウ命名」

「あ、なるほど」

「その納得はどっちに対して? ことによっちゃ人のこと言えないぞ」

「あはは。とにかく、ドリンクですね? 行ってきます!」

「はいはい、いってらっしゃい」

 呆れた様子の虹夏先輩に背を軽く叩かれて、ドリンクカウンターにいる後藤さんのもとへかける。

「後藤さん、ドリンク教えて!」

「はっはいっ」

 慌てふためきながら、あーだこーだと教えてくれる後藤さん。

 苦手そうなバイトをどういう経緯か……いや、俺が原因か。結果的にバイトをすることになった。

 後藤さんのギターも、とても、上手だった。

 どうしてバンドをやっているのか、と気になる。後藤さんの様子を観察してみる。

 コーヒーを淹れる後藤さん。あ、目があった。

 にへへへへ、と笑う。てかコーヒーがこぼれて後藤さんの手に──

「後藤さん!? 手! 手ぇ!」

「うへへへへへへへへへ」

 壊れたおもちゃのように笑い続けるカウンターから後藤さんを引き剥がして、急いで水道に突っ込んだ。

 三分後、後藤さんもようやく落ち着いてくれた。

「あっす、すみません喜多くん……」

「よかった、大やけどにならなくて……」

 虹夏先輩から借りた救急キットを使って、一応の処置を施す。ちょっと冷やすくらいでよかった。

 その手をまじまじと見て、少し失礼だったと離す。もうすぐ客入りの時間らしい。二人して辺りの荷物を片付けながら、改めて聞いてみた。

「後藤さんってさ、どうしてバンドをはじめようって思ったの?」

「えっどっどうしてですか」

「うん。どうしてなのかなって」

「……世界平和を目指して」

「おお、意識高い!」

「うへ……あ、そうだ、喜多くんは……」

「俺?」

「喜多くんの目当ての先輩って……」

 学校で話したことだ。よく覚えてたな。

「あー、わかっちゃうよね。うん、リョウ先輩のことなんだ。前のバンドで演奏してるここを見かけてさ」

「えっ前のバンド……?」

 身の回りの片付けを終えて、俺と後藤さんはカウンターに並んだ。

 もうSTARRYの中の客入りは多く、既にいつでもライブができるぐらい場は温まりつつある。

 俺の憧れの人は、視界には見えない。受付にいるらしい。

「ちょっと浮世離れしたところとか。それに、楽器が様になってて。それで気づいたらバンドの世界に飛び込んでた。その結果がこれだけどね」

「すっすごい行動力ですね……」

「それに……バンドって、なんか家族みたいじゃん」

「か、家族……?」

「そう、家族」

 本当の家族以上に一緒に時間を過ごして、夢や目標を一緒に追いかける。友達というには濃密で、でも家族としては繋がらない、強固な繋がり。

 それはとても特別で、唯一無二の関係性にも見えた。

 そしてだからこそ──

「やっぱり、俺はまだバンドには入れないよ」

「え……」

 後藤さんが、少し表情を曇らせた。最初、後藤さんが俺に声をかけてくれたのは自分のバンドに入って欲しいってことだった。

 そしてそのバンドは、リョウ先輩がいる結束バンド。

「一度、逃げ出したんだ。そんな人間は、だめだよ」

 少なくとも、今は。

 ざわめきと共に、ようやくSTARRYの今日のライブが始まった。

 重低音で全体を支えるベース。快活に導くドラムの音。主旋律が彩るギター。どうしたって笑顔だって分かる観客の歓声と、七色の光。

 この輝きの中に、俺はふさわしくないと、思った。

 

 

────

 

 

 罪滅ぼしが終わる。

 STARRYという箱の、輝かしい時間はあっという間に過ぎ去った。

 客が全員出て行って、機材やらの後片付けも終えた後。ここまで来ると疲労もそれなり。虹夏先輩がいるとはいえ、確かに男手はあっても足りないことはない職場だと思った。

「今日はこれで終わりだ。お疲れさーん」

 まだパソコンとにらめっこしている店長さんが、俺含めてバイト全員にそう言った。

 制服を着なおす手が、少し重い。ゆっくりと鞄を手にかけて、今度こそくつろいでいる結束バンドの三人に声をかけた。

「……みなさん、今日はありがとうございました!」

 それぞれ、声をかけてくれる……というか、はっきり返事をしてくるのは虹夏先輩くらいだけど。

「結束バンドのこと、陰ながら応援してます。いつか、また聴きに来ますね!」

 そうだ。いつか、またここに来よう。

 STARRYの出口に向かう。階段を登る。

「き、喜多くんっ……!」

 後ろから、予想外に大きすぎる後藤さんの声。

 振り向くと同時にどんがらがっしゃんと大音量。後藤さんがコケてモップやらゴミ箱やらを盛大に散らかしていた。ご丁寧に機材を隠すカーテンも踏んづけてミノムシみたいになっちゃって。

 急いで駆け寄った。俺だけじゃなくて、虹夏先輩とリョウ先輩も。

「後藤さん、大丈夫?」

 ここにくるきっかけは、後藤さんだった。バンドに来て欲しいというお誘い。

 もしかして、まだ俺を誘おうとしているのか。

 ミノムシ後藤さんは、もごもごと喋ってる。ごめん、聞き取れない……。

「ほらほらぼっちちゃん、体起こすよ。リョウ、手伝って」

「ほーい」

 二人に起こされて、後藤さんは辛うじて正座姿勢になった。俺も心配になって屈んでいるので、後藤さんと同じ目線になっている。

 後藤さんは一向に目線を合わせてはくれないけれど、何を言おうとしているのかはわかりやすいくらいだった。

「ありがとう、後藤さん。気持ちは嬉しいよ。でも今の俺なんかじゃ……」

「わっわたしも、まだまだ全然、バンドらしくできなくて……完熟マンゴーだったし」

「完熟マンゴー……?」

 なんだ、それ?

「それ、と……喜多くんの、左手」

「左手?」

「……指の先がすごく固くて」

 言われて、自分の左手を見た。後藤さんがなにを言っているのか、俺にはよくわからない。

 考えずに思い出したのは、悔しい記憶。

「それって、リョウ」

「ん。練習たくさんした証」

 経験者二人は、逡巡もなく答えた。それは、俺が思い出したことと一緒だった。

 虹夏先輩が、俺と後藤さんを立ち上がらせる。

「喜多くんも、結束バンドを一緒に盛り上げてよ!」

「いや、でも」

「リョウとも話してたんだよ。結束バンドの四人目は、喜多くんを戻そうってさ」

「それって……」

 リョウ先輩を見た。サムズアップしてた。ちょっと嬉しい。

「ちなみに、どうして?」

「り、理由はいいんだよ、深く考えなくて」

「虹夏が『男が僕だけだと寂しい』って」

「リョウの発案だろ!?」

 本気の追いかけっこが始まった。俺と後藤さんは何も言えず、十秒後くらいに店長さんが本気で先輩たちの頭を叩いたことで収まった。

 後頭部から蒸気が出てはいるけど、表情だけは虹夏先輩もいつもの優しげなものに戻って言った。

「なによりも、さ。喜多くんが逃げ出したから、今ぼっちちゃんがここにいるわけだし」

 俺がきっかけ。俺、が。

「僕もずっとバンドやりたくて、引け目を感じるのも、それでもまだ憧れちゃうのもわかるんだ」

 飛び込んで、逃げ出して、後ろめたくて、憧れて。

「今ここに僕たちがいるのは、諦めたくなくてもがいた結果。ぼっちちゃんもそう。リョウだって、ね?」

「ん」

「リョウ先輩……」

 後藤さんのことも聞いた。虹夏先輩が動いて、後藤さんがここへ来た。

 諦めたくない。

「リョウだって、喜多くんに戻ってきてくれるのは嬉しいもんね?」

「スタジオ代もノルマも4分割」

「先輩分のノルマを貢げる、と?」

「その理屈だと僕とぼっちちゃんにも貢いでるけどね」

「でも俺……ギター、弾けないし」

「そこはほら、うちにはギターの先輩がいるわけだし。ぼっちちゃんがギターを教えればいいんじゃない?」

 そういえば、それは元々後藤さんに頼んでいたことだった。

「ぁぅ……ガンバリマス」

 そう、後藤さんが自分を上目遣い……みたいな感じで見上げてくる。みたいというのは髪の毛のせいで目線がわからない、という。

「──ありがとう、ございます」

 後悔は消えない。後ろめたさがある。虹夏先輩の言うとおり、憧れも消えない。

 この輝きの中に、俺はふさわしくないと、思った。でも輝いている人たちが、俺に手を差し伸べてくれている。

 悩みに、悩む。けれど。

 それを払うことなんてできない。だから。

「もう一度頑張っていきます。結束バンドのギターとして」

 リョウ先輩が、ふっと笑った。虹夏先輩が、満面の笑みになる。

「よーし、4ピースの結束バンド、結成だ!」

「これでよし」

 ハイタッチをする先輩二人。喧嘩したりと仲がいい。

 自然、一人取り残されて、でも控えめに喜んでいるらしい後藤さんに目が向いた。

 いろいろあっても、俺はこの場に還ってきた。それは、後藤さんがきっかけだ。

 後藤さんが──いや、違う。

「ありがとう……ひとりちゃん!」

「え、なんで名前っ……」

 彼女は、急になんか顔を崩した。

 どうして呼び方を変わるのかって? それは──

「言ったじゃん、『バンドって家族みたい』って」

「あっはい。……え!?」

 それにぼっちちゃんって言うのは少し申し訳ないし……。

「だから、虹夏先輩だし、リョウ先輩だし、ひとりちゃんだよ!」

「あへぇぇぇぇ」

 今度こそ、俺は結束バンドに入ったんだ。

 

 

 

 

 

 

~後日譚:ひとり&郁三in某所~

 

「でも、俺いくら練習してもベースみたいな音しか出なくてさ、ギター」

「えっ……そっそれベースなんじゃ」

「まったく、ひとりちゃんも失礼だなー。ベースって、弦が四本のやつだろ? 俺のは六弦。ほら、これが俺のギター」

「……」

「ひとりちゃん?」

「げっ弦が六本のもあります……」

「……え?」

「これ、多弦ベースです……」

「ゑ……?」

「……」

「……」

「あっえっぃ喜多くん……?」

「……なけなしの全財産と二年分の借金がぁぁぁ」

「きっ喜多くん……」

 後日、喜多郁三の多弦ベースはリョウが買い取った。リョウは無一文になった。

 

 

 

 





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