【完結】虹色refrain   作:迷えるウリボー

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61 To see the future

 

 

 喜多郁三はちょっと困惑していた。

 恋人であるひとりを連れて自分の家にいる。自分にとっては初めての彼女だ。陽キャの郁三だって、決して緊張しないわけじゃない。母親にひとりのことを伝えているとはいっても。

 その母、久留代が家出中の自分にどうしてひとりを連れてくるようにしたのかもわからないし、どうして親戚一同が一緒に待ち構えていたのかも謎。

 さらに言えば、どうしてその中に同世代の従兄妹がいるのかだって謎の謎。

そして、ひとり、久留代、郁代が集まってしまった結果──

「郁代ちゃん、心湖代(ここよ)は?」

「お母さんは、今日はパスするって」

「わっわたし……! ききっ喜多くんとおおお付き合いじてましゅ、後藤といいますぅ!」

 何とも言えないカオスな空間が出来上がってしまっていた。

 久留代はよくわからない警戒をひとりにしているし、ひとりはひとりで久留代にめちゃくちゃ陰キャとひとり節を発揮している。そしてそんなことは構わずひとりにめっちゃくちゃ興味深々な様子だった。

(なんだ、これ)

 郁三は何とも言えない気分になった。

 女三人、男一人。微妙に居心地が悪い。

 閑話休題。

「改めて──あなたが本当に後藤さんなのね。《結束バンド》の」

「はっはい……きっきっ喜多くんとっそっその、お、お付き合い……」

「え、ええ……」

「でさぁ母さん……最初の『よくも郁三をたぶらかして』ってなんなの?」

「い、いや、それは」

 四人は、いつも喜多家が食事をするテーブルで向かい合っている。久留代の隣の席に郁代、郁代の正面にひとりだ。正面の陽キャに眼が眩しい。

 郁代はひょこっと顔を出した。少しいたずらっ気な笑顔を浮かべている。

「叔母さん、いっくんが家出した後、私とか佐々木さんに後藤さんのこと聞いたんですって」

「い、郁代ちゃん!」

「そしたら、後藤さんのこと『いっくんをたぶらかした性悪女』と思ったみたいで」

「母さん……」

 郁三の隣で後藤、昇天。郁代と次子が知り合いだ、ということに驚く間もない。

 久留代は盛大に慌てた。

「だ、だってね!? 貴方成績も落ちる一方、最近は殊更帰りも遅い、親に借金するわバイト増やすわ……私も心配してるのよ!?」

「だからギター練習してるし、スタ練とかミーティングで帰りも遅くなってるしって言ってるじゃん!」

 親子喧嘩(小)勃発。ひとりは意識を取り戻したものの怯える。

「母さん! ひとりちゃんのこと誤解してない!? 他に何疑ってるんだよ!」

「っ! この際だから言わせてもらうけどね! カッコいいカッコいいって言いながら借金の肩代わりして!? お金の貸し借りはデリケートなのよ!?」

「それはひとりちゃんじゃなくてリョウ先輩のことだよっ!」

「そういう事じゃなくてお金──うん? 後藤さんじゃない……?」

「そうだって!」

「きっ喜多くん……」

 ひとりは何も言えなかった。今でもリョウに尻尾を振ってるのは知ってるけど、お金の貸し借りもそれなりにあるのも知ってるけど……。

 どっちにしても、未だにリョウさんに大金を貢いでるのはちょっとまずいんじゃ……。

 久留代はリョウのことについて、郁三とひとりから話を聞くことになった。

 結果。

「そ、それじゃあその女が郁三に寄生してるってことじゃない!?」

「リョウ先輩はとっても素敵な女性(お人)なんだよいつもお世話になってる礼なだけだ!」

「貴方後藤(彼女)さんの眼の前で何言ってるのよ!?」

 山田リョウに脳を()かれている。もう治らない。

 親子の言い合いはその後数分続いた。

 その言い合いの中、置いていかれるひとりと郁代。

 郁代はにっこり、ひとりに笑いかける。

「うふふ。後藤さん、ごめんね? いっくんも叔母さんも熱くなったら止まらないから」

「あっあっいえ……」

 眼が見れない。ひたすらに笑顔で楽しそうな郁代だった。

 一通り喧嘩し終えてちょっと息が切れた郁三と久留代

「で、結局ひとりちゃんがそんな子じゃないってのはわかった?」

「わ、私だってこんな可愛らしい子が来るなんて思ってもなかったんだからっ!」

 さらにひとりは昇天した。

 久留代は少し妄想が激しい感性の持ち主だった。夫と同じく公務員勤務で真面目なのだけど、こういう所だけは昔から郁三も呆れてきた覚えがある。

 その誤解が解けた今、久留代の前にいるのは一人息子と仲のよさそうな恋人だけだ。

「後藤さん……ごめんなさい、貴女のこと色々誤解してたわ」

 恥ずかしがり屋が過ぎるけど、本質的には普通の子。

 それが、久留代が最終的にひとりに対して感じたことだった。

 となると、借金の件が誤解じゃないことや、また別の心配が生まれてきてしまうのも事実なわけで。

「後藤さん……うちの郁三が迷惑をかけてないかしら?」

 これだった。贔屓目でなくても、郁三は顔が整っている。久留代は郁三と腐れ縁の次子とも連絡先を好感していて、彼女から学校での情報を聞くこともある。だから重度の女たらしであることも知っている。

 逆に郁三がひとりを毒牙にかけていないかが心配になってきてしまった。

「ただでさえ、今は家出なんてして伊地知さん宅にご迷惑をかけているのに」

「あっえっと……その……」

 ひとりは打って変わって落ち着いた久留代の様子に戸惑った。

 いよいよ、本当の意味での恋人の親との御挨拶だ。

「きっ喜多くんとは……バンドメンバーの勧誘の時に、知り合って」

「郁三にギターを手取り足取り教えてくれてたのね。本当にありがとう」

「本当だよ。ひとりちゃん、すごい上手いんだから」

「あっいえ……わ、わたしも、喜多くんにすごい助けられて」

 文化祭ライブ。そして路上ライブ。

「そう……ありがとう、後藤さん。こんな息子だけど、よくしてくれると、私としても嬉しいわ」

 綿毛になったり昇天したりしてるという状況には目をつむるとして、少なくとも息子をたぶらかす悪い女じゃなさそうだと、久留代は心の中でため息を吐いた。それは安堵でもあるし、同時に別の問題がまだ残っている。

「でも郁三。やっぱり、バンド活動を続けるのは反対よ」

「……」

 郁三の眼が細くなる。

 久留代がひとりと郁三を呼んだのは言うまでもない。誤解だったけど、郁三を追いつめたひとりを成敗すること。そして何よりも、バンド活動に迷走する郁三を説得するためだ。

「後藤さん。呼んでおいて申し訳ないけど、郁三と二人で話させてくれる?」

 

 

────

 

 

 郁三と久留代が二人で話す。親子同士の会話。

 その一方、ひとりと郁代は郁三の部屋に入って待機していた。

 ひとり、彼氏の部屋へ初訪問。ただし同行相手は郁代だ。

(喜多くんの部屋喜多くんの部屋キタクンノヘヤキタクンノヘヤ)

 喜多くんの匂いがする。

 あと、隣にいる郁代ちゃんもとてもいい匂いがする。

 ひとりの脳はひたすらに混乱していた。

「ほら後藤さん! そんな緊張しないで、たぶんどこに座ってもいいと思うから」

「あっはい」

 恋人の部屋にいるのももちろん緊張しているが、それ以上にキョドっているのは隣に郁代がいるからだ。

 結局、郁三の使ってるベッドに座るとか、椅子に座るとかそんなことはできずに向かい合って正座で座り合うことになった。

「改めて、私後藤さんとお話しするの、すっごく楽しみにしてたの!」

「あっハイ」

「いっくんから貴女のことも聞いて……ギター、すごく上手なんでしょう? いつか聴いてみたいわ!」

「あっ喜多くん……は、わ、わたしのこと、なんて……?」

 ひとりは郁代の鼻先まで目線を上げた。最初は完全に目線を合わせられなかったけど、ちょっとだけ近づいてきた。

 でもまだ直視はできない。ちょっと可愛すぎる。

 ひとりは思った。なんかもう、目の前にいるのは女体化郁三だ。

 郁代は言った。

「後藤さんのことを初めて聞いたのも最近だけど」

「はっはい」

「安心して! すごいのろけてたから!」

「う、へへ、うへへ」

 口のニヤケが抑えられない。

 喜多くんがわたしのことを褒めてくれる。べた褒めだって、わたしの彼氏が。

 そりゃもう、ひとりじゃなくてもニヤけるくらいだ。

「俺にはもったいないくらいの彼女だって!」

 ただ、その郁代の言葉には少し真顔に戻ってしまった。

 

──『似合わない』って思ってるのは、俺のほうなんだよ……?

 

 どうしても、喫茶店での言葉が頭から離れない。

 でも、事情を知らない郁代からすればそんなことはおかまいなしだ。

「後藤さんっ。私とも友達になってくれると嬉しいわ!」

「トットモダチ?」

「そう、友達!」

「それって、えっと、指と指を突き合わせる……?」

「それは映画でしょっ。トモダチじゃなくて友達! 一緒にカフェに行ったり、遊んだりしたいの!」

「あはは……はいぃ」

 ひとりはコミュ障。でも、この一年半で成長だってしている。

 《結束バンド》のメンバーと友達になった。ミーティングやバイトをするようになった。《SIDEROS》みたいな他のバンドとも交流が増えた。

 南海郁代。筋金入りの陽キャ。でも、郁三の従兄妹だからなのか。ひとりはどこか親近感や、暖かいものを感じて、郁代との連絡先を交換する。

 それはそうと、ひとりには気になることが一つ。

「えっと……南海さんは喜多くんのこと、《いっくん》って……?」

「ああ、それのこと……?」

 最初から気になっていたことだ。郁三は郁代のことを《いくちゃん》と、逆に郁代は郁三のことを《いっくん》と呼んでいた。

 陽キャで友達の多い郁三だから、ひとりも郁三がたくさんの友達から名前を呼ばれる場面を目撃している。けど虹夏だったり女子からは《喜多くん》、次子や男友達からは《喜多》と呼び捨て、あるいは先生のような目上の人からは《喜多さん》という感じだ。どれにしたって名前で呼ばれることはなかった。

 ひとりはもちろん、リョウも虹夏も郁三が名前で呼ばれることを嫌がることは知っている。

 そこでひとりは気づいた。

「も、もしかして……南海さんも?」

 ひとりの眼の前にはばつが悪そうな顔の郁代がいた。

「うん、私、下の名前は郁代(いくよ)だけど、あんまり好きじゃなくて」

 喜多くんと同じだ。ひとりの眼がガン開く。

「いっくんも同じで、それでいつの間にかお互いをあだ名で呼ぶようになったのよねー」

 なるほど、と思った。

 親戚に対して《喜多》《南海》と呼ぶのも変なんだろう。ひとりとしては郁代も郁三も可愛いしカッコいい名前だ、とは思うけれど。

 ひとりは自分の名前に、両親からもらった大事な名前だ、という以外の感情はなかった。《ぼっち》と呼ばれて嬉しかったのはあくまで友達がいなくてあだ名がなかったから、という理由が強かった。

 いっくん、いっくん……と心の中で数えていると、郁代が顔を覗き込んでくる。今度は眼をそらせない。

「もしかして、後藤さんも《いっくん》って呼びたい?」

「あ……」

 ひとりの顔が赤くなる。

「ふふっ……後藤さん、可愛いっ」

 《郁三》と、そう呼ぶのはひとりにはためらいや戸惑いや……色々な感情があった。恋人となったからには特別になりたい。とはいえ名前で呼ばれるのを嫌がる人に対してはためらいもある。でもリョウは郁三と呼び続けている……。

 そんな過程があっての変わらない《喜多くん》呼び。でも今日、新しい可能性がみつかった。

「親戚の私と恋人の後藤さんだけは《いっくん》……ん~、素敵ねっ!」

 郁代は手を合わせて喜んでいる。

 そうなったら──それだけの勇気は必要だけれど──嬉しい。

(南海さん……驚いたし、陽キャだけど、素敵な人だな)

 純粋にそう思った。

(喜多くんのお母さんも……なんか誤解されてたけど、許してくれたみたいだし)

 久留代も妄想癖はともかく、息子の郁三が大事だからこそひとりのことを警戒していた。ひとりとしては、実際自分は筋金入りの陰キャだし、そんな反応になっても申し訳ないとは思う。

 そして、そんな大事な息子のために、久留代は郁三のバンド活動に今も反対している。

(……)

 ひとりは尋ねた。

「あ、あの……南海さんは、喜多くんの家出のことは……」

「ああ、そのこと? うーん……確かに急なことだけど、いっくんだったら珍しくないなーって思うわ」

 郁代は首を傾げた。同世代だからか、そこまで驚いてないらしい。

「それに私も、最近のいっくん、連絡するのと遊ぶのも減ったけど、でもすごい楽しそうに《結束バンド》や後藤さんのことを話すのよ」

「あ……」

 郁三が本当にそう思ってくれているのなら、嬉しい。

 そしてその大事な想いが、久留代にも伝わってくれたら……。

「だから、私の意見は叔母さんとは違う。でも親子だもの。ちゃんと話し合わないとね」

「わ、わたしも……二人が喧嘩したままは嫌だから」

 ひとりは勇気を出した。

 今、手元にギターはない。でも大事な気持ちを伝えるために。

 観覧車の頃の、そしてライブ審査の後の時みたいに。

 勇気を、出した。

「わたし、喜多くんのお母さんと、話したいですっ!」

「後藤さん……うん! 行きましょ!」

 二人して立ち上がる。

 ひとりが初対面の郁代に少しの暖かさを感じたように。

 郁代も、不思議と頼もしさを覚えた。

 

 

────

 

 

「もう一度言うわ。郁三、バンドは辞めなさい」

「……俺は絶対に辞めない」

 リビング。郁三と久留代。二人の間の空気は冷たい。

「再三になるけど、学生の本文は勉強よ」

「確かに成績は下がってるけど、追試で受かってる。卒業もできるから、問題ないだろ」

「卒業さえできればいい、というわけじゃないでしょう。仮に卒業して大学には進まないとして、その後はどうするつもり?」

「バイトはしてるし、《結束バンド》は絶対有名になる。すぐに問題は」

「その《結束バンド》のことにしたって、私が聞いても細かくは教えてくれないじゃない」

 郁三が家出をする前に、二人は一度喧嘩している。だからお互いの意見はわかっている方だ。

 説得する久留代としてはもう一度、というチャンス。郁三にとっては、同じ話を蒸し返されて少しだけ鬱陶しくはある。

 郁三は実際、ひとりのことやリョウのことなど、恋人や友達としての《結束バンド》のことは話している。ただ、実際バンド活動としてのことはそれほど話していなかった。

 それが二人の確執に繋がっている部分もある。

「わからない不安な、不安定な進路を選ぼうとしてる……お母さんには貴方がどんどん悪い方向に向かってるようにしか見えないわ」

「……」

「彼女さんもいるし、今お世話になってる伊地知さんも大事な友達だっていうのもわかる。だから友達に会うのをやめろ、とまでは言わない。でもバンド活動だけは反対」

「なんで母さんが反対するんだよ」

「私が反対しないなんて、そんな風に許されると思っていたの?」

「俺の人生だろ。母さんに反対されようが関係ない」

「関係ある。家族だから心配してる」

「……だからっ」

 郁三は頭をかいた。平行線だ。

「大学に行ってちゃダメなんだよ! そんな暇はないんだっ」

「……それはギターがもっと上達しなきゃいけないから、と言ったわね?」

「そうだよ。そう言ってるじゃん」

「じゃあ、郁三の言う通り私の方が考えなしだったとして、どうしてそれを私が納得できるように説明してくれないの」

「……母さんがわかってくれないって」

「だから言ってるじゃないっ。貴方は今独りよがりで、勝手に物事を決めてる! そうじゃないの!?」

「っ……」

 郁三が口をつぐんだ。

 今までの喧嘩じゃ、郁三は言いたいことをいつも言っていた。

 それが今、久留代の言葉に止まった。

「何よりも」

 その理由は──

 

「後藤さんやバンドメンバーに迷惑をかけてるような状況で……それでも選ぶ道が、本当に正しい道だって言えるの?」

 

 沈黙。

 久留代は郁三を見続ける。郁三も同じだ。久留代を見続ける。

 でも、郁三の目線は弱々しい。

 そんな時、リビングを訪れる足音に気づいて二人とも振り返った。

「郁代ちゃん、後藤さん」

 久留代と郁三。二人の眼の前に立つ。郁代より前に出たひとりは、両手をぎゅっと握って。

 でも、ひとりの言葉で二人に伝える。

「後藤さん、どうしたの?」

「そのっ……ライブっ。一度だけでも、観てくれませんか?」

「ライブ?」

「ひとりちゃん……」

「わ、わたしも、喜多くんが家出したことと、その理由は少し聞いて……」

「そう。貴女は郁三の意見に賛成なのかしら?」

「わ、わたしは……」

 ひとりとしては、郁三にも言ったようにもったいないと思っている。大学に行けない自分の代わりに、一つの青春を楽しんでほしい。

 でもそうなったら郁三にすり寄る女の子が増えるかもしれないと、その意味では心配だ。でもそれは自分の勝手な気持ちだ。

 ひとりの意見は変わっていない。戸惑いが多いというのが正直なところだ。

 それを聞いて郁三は沈黙を続けた。

 でも、ひとりは久留代の意見に同調して反対しているわけじゃない。

 ひとりが想うのは。

「わ、わたしは、言葉も下手だし……変なことを言っちゃうし」

 思い出すのは。

「でも、想ったんです。だから、いろんな方法で、お互いが想ってること、話したい」

 郁三の意見。久留代の意見。

「しっ進路のことはお家の問題だから、わたしが口を出すのはおこがましいけど……」

 それが、ただ一方的に話すだけなら、どちらの意見にも反対だ。

「喜多くんの気持ちも、喜多くんの大事な考えだから、本当に決めるのは喜多くんだけど……」

 だから、二人がもっとちゃんと、落ち着いて話し合うためにも

「喜多くんがどんなことをしてるのか……そっそれを観てから話すのでも、遅くないと思います……!」

 

 

────

 

 

 ひとりの精一杯の説得は功を奏した。

 久留代も反対意見をとる立場として簡単に譲れないものもあった。でも、そこでちょうど帰ってきた郁三の父親や、郁代もひとりの意見に賛成した。

 郁三の父親は一番落ち着いていた、というのがひとりの印象だった。

 郁三は、母親とお互いに話し合って、それまでは進路についての話を切り出さないことを条件に、一度家に戻ることになった。これだけは、郁三を除く全員が一安心した。

 ひとまずの方針が決定して、ひとりとしても勇気を出した甲斐があったと思った。まだ郁三と久留代のわだかまりは解けていないけど、それでも郁三が家出を続ける──そんなことだけはなくなって、大きくため息を吐いた。

 そうしてスケジュールを確認して、久留代や郁三の父──(みのる)は年末最後のライブに来ることになった。

 《未確認ライオット》の時のように、《結束バンド》として頑張る時。

 ただ、予想外のこともあった。それは、郁代の存在。

 

「じゃあ私、一足先にいっくんたちのライブ観てくるわ!」

 

 一足先に郁代が向かうライブ。それは自主企画のクリスマスライブ。

 まだまだ続く波乱の予感──

 

 

 

 








★サブキャラプロフィール☆

《南海郁代》
 《結束バンド》メンバー、喜多郁三の従兄妹。郁三の母である久留代、その妹の娘。ちなみに母親(久留代の妹)の名前は心湖代(ここよ)という。
 東京在住だが、喜多家とは別の区であり、郁三とは学校も異なる。郁三・ひとりと同学年。郁三と同じく絵にかいたような陽キャで、友達も多いし、やっぱりイソスタフォロワーも超多い。スポーツ万能、成績優秀。
 ひとり曰く《女体化喜多くん》。視界に入れるのが恥ずかしいくらいには笑顔が眩しくて可愛い。
 従兄妹である郁三とも仲が良く、お互いの友好関係が多いため頻度は少ないけど、たまに会って遊ぶ仲。何よりも二人の間柄を表すものは名前。郁三(いくぞう)と郁代(いくよ)。二人して名前にコンプレックスを持っていて、いつからか互いを《いくちゃん》《いっくん》呼びするのが暗黙のルールであり信頼の証となった。母親にルーツを持つ名前、家族仲はいいけどこれだけは許せない。
 ちなみに久留代と心湖代曰く、遠く離れた地方に二人のはとこの伊麻代(いまよ)がいて、その三人娘の名前は逸美(いつみ)、明日菜(あすな)、京華(きょうか)という名前だとかなんとか。







タイトル解説

《To see the future》
歌:レン(楠木ともり)
アニメ『SAO オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』第一期EDテーマ

 《To see the future》。最近第2期 SAOオルタナティブGGOが放送されていましたね。本編はじっくりかっちり観ているわけではないですが、リアルの人間とゲーム世界のアバターという二つの面を持つ世界において、主人公レン/香蓮は身長を、その他の人物もリアルとゲームで大きく異なる性格や容姿を持っていました。そんな本物と偽物の自分を歌った曲のようにも思います。
 タイトル直訳は《未来を見るために》。拙作でも郁三の進路の話、ひとりと郁三の関係性の話と、停滞してばかりではいられない状況になりつつあります。

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