ドラゴンクエストXI 二次創作外伝 ~失われし時に呼ばれて~ 作:高橋ヒナタ
プロローグその2。
過去へと戻る回です。
─デルカダール地方・キャンプ地─
デルカダール城を出て南下しイシの街へ向かう際に
丁度その道のりの中程にあるキャンプ地。
元々秘境の村だったイシの村が平和になってから
「勇者の出身地」だという点もあってすぐに街となり
このキャンプ地は少し需要が落ちたのか
利用者は少なくなっていた。
「うん。静かでいいね」
キャンプ好きなおじさんが1人いる程度なキャンプ地に
イレブンは満足気に頷く。
「だいぶ怪しい事をするからの」
「早く始めましょ」
だが今回はそれは好都合。今からこのキャンプで
「モード切替」なる謎の儀式を実行するのだ。
誰かに見られるのは少々避けたい。
「じゃあまず…女神像に祈る」
イレブンは儀式の方法が書かれた本を手に取り
説明に従って儀式を開始する。
どこからともなく声が聞こえる…
(神に導かれし迷える子羊よ…ようこそ、我が主の庭へ)
それは、とても聞き馴染みのある声。
女神像に祈りを捧げ旅の安全を願う時によく聞く声だ。
ここでイレブンはある文言を口にする──
「神の目に映る僕らの姿を"二度"別の姿に変えたい」
すると、いつもとは違う返答が帰ってくる。
「──
貴方がたには、時を遡って成したい事がある…と」
いつもであれば「これまでの行いを告白し──」だったり
「神のお告げが聞こえます──」と来るのだが
今回は全く違うセリフが返ってきたのだ。
「時を遡る?!」
「それってアレか?前イレブンが言ってた──」
突然女神像から告げられたキーワードに
イレブンを含む全員が驚く。
如何に様々な魔法があろうとも、時を遡る魔法など
古代から語り継がれる神話にすらそうそう出てこない。
イレブン達一行が知っているのは、かつてイレブンが
亡くした仲間を救うために一度だけ使った──と
邪神撃破後に語った「時のオーブ」ぐらい。
もっとも、その時のオーブの力にも限りがあり
勇者のチカラと「勇者のつるぎ」を以てしても
過去へ送れたのはイレブンただ1人。
それが原因で、未来世界に6人の仲間を残すという
悲痛な決断をせざるを得なかったのだ。
それをイレブンから聞かされていたカミュ達7人も
実際に時のオーブのチカラを使ったイレブンも
まさかそんな時間遡行の方法があるなど
思いもしなかったのである。
「女神様!それってアタシ達も過去に戻れるのかしら?」
シルビアが女神像の声に一番肝心な部分を尋ねる。
仮にこれで戻れるのが勇者だけなのであれば
わざわざ時間遡行を行う必要は一切無い。
「貴方がた勇者の仲間達は、遡った時期によって
然るべき場所へと戻されてしまいますが
再び出会う事はきっと叶うでしょう」
なんと、仲間たち全員が遡れるというのだ。
過去へ遡った時の仲間たちの居場所も問題は無かった。
仮に成人の儀式の日に戻った場合、カミュは恐らく
デルカダール城の牢獄に飛ばされるのだろう。
救い出すなり自力で出てくるなりいくらでも出来る。
「持ち物はどうなんだ?消えちまう物とかさ」
今度はカミュが質問を投げ掛ける。
今持っているアイテムは持って行けるのか?と。
ひかりの大剣やはてんの月輪といった強力な武器や
けんじゃの石のような便利なアイテムが
持って行けるならかなり旅が楽になるからだ。
「運命にまつわる重要なものは元の場所へと戻ります。
貴方がたが持っている『オーブ』なども
時の流れと共に然るべき地へと戻るでしょう」
「あー、なるほど…」
所謂「だいじなもの」はほとんど持ち運べず
その時期に応じた場所に戻るのだそう。
デルカダールからの逃避行を始めた時期であれば
たとえば「レッドオーブ」はデルカダール神殿の祭壇へ
「テオの手紙」や「まほうの石」は
勝手に戻るものと思われる。
「これは凄いわねぇ」
なんと、信じられないほど綺麗に過去へ行けるらしい。
だいじなものは物語を追う過程で集め直せばいいし
高い能力を保ったまま物語を追う事が出来る。
世界の時そのものが巻き戻るため、過去へ遡った事で
取り残されてしまう者も出さずに済むのだ。
とここで、グレイグが声を上げる──
「イレブン。俺は…過去へ戻りたい」
「ひょっとして…ホメロス?」
「あぁ」
グレイグが過去へ遡る事を望んだ理由とは
かつてデルカダールの双頭の鷲として
グレイグと共にデルカダール王に仕えていた
ホメロスという男を救いたいからであった。
「あいつを死なせたのは…俺の力不足だ」
「…なるほど」
ホメロスは、ロトゼタシアの支配を目論んだ魔王
「魔王ウルノーガ」の策略によって心の闇を煽られ
最後には魔物に身をやつしてしまった男だ。
双頭の鷲として常にそばに居ながら、そんな心の闇に
気付くことが出来なかった──グレイグはそれを
魂だけの存在となって彷徨う
長いこと悔やみ続けていたのだ。
それを、自分たちの手で命さえも救えるとなれば
喜んで過去へ行くとグレイグは覚悟を語る。
『──それでは、過去へ戻りますか?』
女神像が改めて問い掛けてくる。
これに「はい」と答えれば、本当に過去へと戻り
再び物語を始めることが出来るだろう。
イレブン達はお互い顔を見合わせて覚悟を決め
その決定をグレイグへと託す──
「あぁ!俺たちは過去へと戻るぞ!」
『分かりました。…さあ、行きますよ…!』
グレイグが「はい」を選んだ瞬間、世界が光につつまれ
イレブン達8人以外の時が全て巻き戻っていく。
「勇者のつるぎ・改」や6色の「オーブ」など
運命にまつわるものが光となって飛んでいき
戻る先の時間の正しい位置へと戻される。
『間もなく時の巻き戻りが終わるでしょう。
貴方達の健闘を祈っていますよ──』
世界を包む光が更に強くなっていき
イレブン達8人はお互いすら見えなくなっていく。
そして、全てが巻き戻る─────
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「……………!」
イレブンが目を覚ます。
「ここは…」
イレブンは心地のいいそよ風が吹く草原に寝転んでいた。
ゆっくりと体を起こすと、"巨大な岩"が視界に入る。
「神の岩のふもと、か」
故郷であるイシの街の近くにある巨大な一枚岩が
神の岩であり、イレブンが16歳の時に成人の儀式として
幼なじみのエマと共に登った覚えがある。
(体がだいぶ縮んだな…何歳頃だ?これ)
時を遡る前までは20歳ちょっとだったため
かなり感覚が違う。思わず転びそうになった。
出会った直後のベロニカも同じ状態だったんだろう。
彼女の場合はもっと体格が変わってしまった訳だが。
「あ!いたいた!イレブン~!」
「ん…エマか」
体を少し動かしていると、イシの街もといイシの村から
橙色のバンダナが特徴的な少女が駆けてくる。
20年近く彼女の姿を見ていると、多少年齢が違くとも
彼女が幼なじみの「エマ」であると理解出来る。
その外見から察するに、恐らくは14歳位だろうか?
個人的には成人の儀式まで戻ると思っていたが
意外と過去へ戻されていたようだった。
「こんな所にいたのね?探したのよ」
「すまない。ちょっと体を動かしにね」
エマはかなり心配そうな表情を浮かべている。
神の岩はこの時期だと「時折魔物が現れる」として
勝手に立ち入るのは控えるよう子供たちは
言いつけられているんだろう。
「僕は大丈夫だよ。少ししたら帰るから」
旅やら国務やらで培った大人としての会話スキルを生かし
エマを落ち着かせる。勇者王なんかをやっていると
「分かったわ。ペルラおばさんにも伝えておく」
「うん。ありがとう」
エマはイシの村へと戻って行った。
「……よし」
エマが視界に入らなくなったのを確認したイレブンは
すっと左手をかざし、手の甲を眺める──
(…おぉ!"
数年前に「とある人物」に託した時に手から消え
久しく目にしていなかった、手の甲の"アザ"。
大陸の中心で煌々と輝きを放つ命の大樹に選ばれた
勇者であることを示す紋章だ。
成人の儀式の日にこの紋章のチカラが目覚めたことで
イレブンの旅は始まる事になる。
だが、今下手に勇者のチカラを晒してしまうと
その旅の過程が色々と狂いかねないので
イレブンは左手にそっと手袋をはめた。
勇者の紋章の存在を確かめたイレブンは
ひとつ確かめねばならぬ事を確認する。
それは、逆行前の世界で積み上げた戦いの経験。
腰に掛けた「ふくろ」から装備品を取り出す。
取り出すのは大剣の「ひかりの大剣+3」と
片手剣の「はやぶさの剣・改+3」。
まずはひかりの大剣から装備してみる。
「うん。問題なく動ける」
14歳の少年にはやや大きなひかりの大剣だが
両手剣と剣神のスキルを極めたイレブンにとって
手首のスナップや体重移動で剣を振り回す事など
容易いことだった。
「……つるぎのまいっ!」
イレブンは つるぎのまいを おどった!
ひかりの大剣を一対の光の双剣へと変え
華麗なつるぎのまいを舞い踊る。
単独のボスから雑魚モンスター掃討まで
イレブンの戦闘を支える強力な攻撃だ。
「さて…」
イレブンは装備をはやぶさの剣に持ち替え
すーっと大きく深呼吸すると
両手で握ったはやぶさの剣に風のチカラを宿す。
チャキッ───
そして、右手に持ち替えたはやぶさの剣の向きを
くるりと変え、逆手で握る。
この技はイレブンにとって地味に貴重な広範囲攻撃。
これから始まる旅では沢山の魔物達を薙ぎ倒して
邪神ニズゼルファを叩きのめしに行くのだ。
これが使えると厄介なモンスター達をやっつけるのが
だいぶ楽になるというもの。
「空裂斬ッ!」
イレブンは
逆手に握った剣を回転させながら振り抜くと
目の前に凄まじい風のチカラが吹き荒れる。
これは、本来この時点では絶対に使う事の出来ない
「勇者の技」。しかも、伝承にある勇者ローシュと、
同じく伝承にある賢者セニカの、ふたりのバングルから
託されたチカラが無ければこの勇者の剣技は
「勇者のつるぎ」系列の剣でなければ扱う事も出来ない。
だがイレブンは、時を遡る前と何ら変わらない威力の
勇者の剣技をはやぶさの剣で扱うことが出来た。
「……いいね…。これなら…たくさんの命が救える」
邪神ニズゼルファと魔王ウルノーガ以外にも
人々の平穏を脅かす存在は沢山いる。
そんな脅威をより多く退ける──と、イレブンは
はやぶさの剣改を力強く握りしめながら
改めて覚悟を決め直したのだった。
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「──イレブン!ちょっと手伝っておくれ!」
「今行くよ母さん!」
村へと戻ったイレブンは母ペルラに呼ばれて
庭で飼っているニワトリ達のエサを運ぶ。
「すまんがこっちも頼めるかの」
「あいよダン村長!」
イシの村の村長ダンに呼ばれ、今度は民家の屋根の
壊れた部分の修理に駆り出される。
「一気に頼もしくなったのうイレブンは」
力が強くなり一気に頼もしくなったイレブンは
村の様々な仕事に引っ張りだこだった。
イシの村は現時点ではデルカダール王国にさえ
存在を認知されていない小さな秘境の村なため
イレブンという強力な男手は貴重だったのだ。
「僕は旅に出たいからね。体力をつけておくんだ」
「そうか!お主は本当にテオに良く似ているのう…!」
村のみんなには「成人したら祖父テオの夢を継いで
旅に出たい」と語り、16歳になった時にスムーズに
村から出る事が出来るようにしてある。
これからの戦いを少しでも有利に運ぶための鍛錬も
旅をする為の体力付け、と理由作りが出来る。
ダン村長はテオの夢を追うイレブンの姿を見る度に
かつてトレジャーハンターとして名を馳せ
数年前に亡くなった彼の祖父テオの面影を思い出し
とても嬉しそうな、懐かしむような顔になる。
(あそこでヘルコンドルに襲われない可能性もあるし
何なら今の僕ならヘルコンドルくらい勇者のチカラを
使わずに追い返せるだろうからね…)
あの時は、一緒に神の岩を登っていたエマを守るため
火事場の馬鹿力的な形で「デイン」を放ち
勇者のチカラを目覚めさせた結果、旅をすることになり
長い長い旅へ出る事になるのだ。
だが今のイレブンは、適当にメラミでもぶちかませば
ヘルコンドルを焼き鳥にして食ってしまえる。
何ならヘルコンドルが来ない可能性だってある。
そうなった時、下手に引き止められてしまわないよう
理由作りをしておいたのだ。
「──お~~~い!イレブーン!」
そんな時、村の入り口から1人の村人が駆けてきた。
「イレブン、お前に会いたいって奴が来てな」
「僕に?」
村入り口の門番を務めている彼が言うには
どうやらイレブンを知っているという2人組が
この村を訪ねてきているというのだ。
何も聞かずに村へ通すわけにはいかないため
一応は村の入り口で待って貰っているが
何やら「俺の知っているイレブンならすぐ分かる」と
そんな事を言っているらしい。
「…分かった。会ってみる」
(誰だ?こんな"時期"に…)
イレブンは村の入り口へと向かいながら、その2人組が
誰なのかを考察する。
"前回"は、このイシの村を訪れる
少なくともイレブンが旅に出るまで現れない。
グレイグは将軍としての仕事があるだろうし
シルビアは恐らく旅芸人の仕事で
ベロニカとセーニャは
前回彼女たちと出会ったのは
カミュは
可能性があるなら、旅をしているロウとマルティナ。
そう思って村入り口へと向かい───
「…えっ!?何で"今"ここにっ?!」
「よぉ。…ここがイシの村だ」
「へー…ユーシャの住む村にしちゃ質素だな」
信じられない人物達がそこに立っていた。
とりあえず、全員が過去へ戻りました。
読者様の中には「ラムダ増殖」を繰り返し
一品ものを複数個持っている方もいるかと思いますが
ここでは基本的にそれらアイテムは一点のみとして
扱います。が、私自身が増殖利用プレイヤーなので
もしかしたら個数を間違える可能性があります。
その点はご容赦ください。
ラストでイシの村を訪れた「2人組」に関しては
次回からエピソードを描いていきます。
…誰が来たかは何となく想像つくかな?