錬金術士は働きたくない!   作:天枷美春

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1話

「小さな村なのに、雑貨屋があるんだねぇ」

 

「ええ。この村は、お嬢さんの様な旅の人が通る道でもあるからね」

 

 

海沿いの小さな村にある雑貨屋で、ボクは物資の補給をしていた。

成程、旅人が通る道と言うのも頷ける品揃えだ。

何時もはアリアも一緒に行っているのだが、全力の護衛をしてもらったので、先に休憩させている。

 

 

「必要物資以外もどうだい? お嬢さん達、結構儲かっただろう?」

 

「くふふ」

 

 

否定はしない。

野生の動物である大型草食竜、名前はブロスと言うらしいが、矢張り人の生活圏内には入って来ないらしい。

狩るには村から遠出しなければならないし、遠く成れば成るほどに危険な生物に出会う確率も多くなる。

家畜も簡単につぶせる物でもないし、中々に新鮮な物を食べる機会は少ないらしい。

保存食にしないで正解であったと思う。

勿論、同じような理由で素材の持ち込みも喜ばれた。

 

 

「血は流石に売れなかったけどねー」

 

「そう言った材料を必要とするのは魔法使いとか、その辺じゃないかな?」

 

「くふふ、違いない」

 

「でも良かった。今丁度この村には、旅の【魔法使い】さんが来てるんだよ」

 

「へー。じゃあ、運が良ければ売れるかも知れないね」

 

 

自分でもニヤリと笑っているのが解る。

一応、血も腐るので肉のついでに冷やしていたのが功を奏すかもしれないのだ。

 

 

「っさて。それなりの情報だったし、何か買って行ってよ?」

 

「えー、この村に滞在してれば解る事だしねー…………くふふ、取りあえず。この古そうな本を見せて欲しいかな」

 

 

軽口に軽口を合わせながら、一冊の本を手に取ってみる。

パラパラと流し読みをしながら、割と面白い内容である事を店主へと伝える。

 

 

「辞典なの、かな? 古くから伝わってる料理のレシピとか、この辺りの生物や魔物について書かれてもあるし、店員さん、何これ?」

 

「解らない、旅の人が使えないし要らないって置いていった物だしね。買うかい?」

 

「…………そんな、付加価値が下がりそうな事を。取りあえず、お幾らで?」

 

「サービスして、これくらいかな?」

 

「うん。高い」

 

 

相場が解らない品物なので、買える値段であっても値下げをしてみる。

其処には、自分には必要無い物だが、取りあえず情けで買ってやろうと店員に伝わる様にしてみれば、何か変化があるかもしれない。

何せ、店員からしてみれば使えなくて要らないと言う、聞くだけならゴミ同然であると他人の主観が刷り込まれている。

ボクに出来る事は、どれだけ安く買い叩けるかであった。

 

 

「お兄さんや、サービスしてそれだけってのは、必要とされてない物を売りつける金額とは言えないねー?」

 

「いやいや。君、これにちょっと興味を持っただろう? 別の旅人さんから必要とはされていなくても、君なら必要とするかも知れないじゃないか」

 

「惜しいね。確かに、興味は持ったけど、態々お金を出してまで欲しいって言う内容じゃ無かったかな、それがボクには多少有用でも」

 

 

半分嘘で、半分本当の事を言ってみる。

殆どは自分には扱えない内容であるのだが、一部は錬金術の内容も書かれていた。

と言うか、本当に雑多な内容が書かれてある本であり、割とマイナーであると自負する錬金術士も使える本であると言うのに、使えないと言った旅人はどんな人物であるのかと考えてしまう。

まあ、確かに相棒(アリア)の様に剣だけの人間には必要ないのかも知れないのだけど。

色々と考えながらも、どうなるか考えて居たら、横槍が入った。

 

 

「――――その金額なら、言い値で買うけど?」

 

「む」

 

「へえ、だとさ。嬢ちゃん、どうする?」

 

 

黒いローブにとんがり帽子、一目見て魔法使いを、ボクは想像した。

この店員が言っていた魔法使いとは、きっと彼女の事であろう。

と、そんな事はどうでもよく、言われた金額は正規の値段。

つまり、この状況からその辞典らしき本を買うには値段を釣り上げる必要がある。

そう考えて、ボクは――――――

 

 

「いや、買い手が見つかってよかったね、店員さん?」

 

 

即座に諦める。

この時点で行ってはならない事は、客同士で値段を釣り上げてしまう事。

最悪な事を考えてみれば、店員と魔法使いがグルである可能性もある。

確かに錬金術のレシピを逃す事は多少の損失かも知れないが、其処まで本腰を入れて覚える必要もない。

それに、簡単な材料くらいは今見て覚えた。

分量等は、調合しながら覚えていけば良い。

だから、簡単に諦めて見せた。

 

 

「あら、冷静ね。欲しい物なら、もう少し欲を出すかと思ったけど」

 

「別に欲しい物じゃ無いしね。オークションは勘弁さ……それに、君はその本が欲しいんだろう?」

 

「欲しいけど、この店員の言い値じゃ買えないわ。元々旅人なんて、お金を稼ぐ方法は少ないしね…………この店員には世話になったから、多少お財布を潤わせてあげようかなって思っただけよ」

 

「くふふ、それは残念。で、そう言う事だそうだよ、店員さん」

 

「はぁ…………どっちに転んでも、売れると思ったのになぁ。じゃあ、この値段でどうだい?」

 

「――――――まだ、高い」

 

 

くふふ、ボクは、容赦は、しない。

この交渉が終わる頃、魔法使いの娘にはドン引きされたし、店員も涙目であったけど、結果本は買えたので、万事良しとする、まる。

 

 

 

 

 

・・・・・・

「アリアー? アリアー?」

 

「何ですのー?」

 

「お客さん」

 

 

キャラバンに戻ってみても、アリアの姿が無かったので呼んでみる。

どうやら武器を磨いて居た様で、大剣を担いで現れた。

因みに、お客さんとは先刻の魔法使いである。

 

 

「アルフライラ・アンニール。お客さんって紹介されたけど、貴女の所のキャラバンについて行きたいの」

 

「私はアリア・エストレシアですわ。同行? ええ、構いまわせんわよ」

 

「早っ!? この娘がアンタが許可したらキャラバンに居れても良いって言ってたけど、そんな簡単に入れても良い訳?」

 

「なら、尚更問題ありませんわ。団長は、私でなくてレティですもの」

 

 

アリアのその言葉にとても驚かれている。

確かに、見た目的にも、喋り方的にもお嬢様っぽい人物が現れれば、このキャラバンを取り仕切っていると思うのも不思議ではない。

と言うか、未だにボク自身が何で団長なのかが不思議でならない。

 

 

「くふふ。ま、これでキャラバンに入団おめでとうって感じだけど。何で入りたかったか聞いて良い?」

 

「…………普通、それは先に聞いておくものよ………………その本よ」

 

「ああ、コレ?」

 

 

ボクが買った古書をアリアへ説明しながら見せる。

動物や魔物の生態がそれなりに書かれているので、アリアも興味深そうに読んで居る。

あのアリアですらそうなのだから、余計にこの本を置いていった人物は本当にどんな人物なのかと考えてしまう。

 

 

「アンタがどの部分に興味を持ったか解らないけど、私にとっては貴重な魔導書で、そして料理のレシピ本と言う訳」

 

「料理?」

 

「自己紹介が完全じゃ無かったわね。私はアルフライラ・アンニール。魔法使い、そして料理人よ!」

 

「…………毒でも盛られそうな恰好ですわ」

 

 

【マジカルシェフ】と、アンニールは名乗ったが、風貌だけ見ればどこが料理人なのであろうかと、失礼にもボクは思ってしまった。

それはアリアも同じであった様だ。

勿論、ボクは分別を弁えているので多少うろたえても口には出さない。

表情には出ているかもしれないが。

 

 

「酷い事を言うわね。コック帽に、調理器具が収納できるローブ。旅をするには丁度良い恰好じゃない」

 

 

ローブは兎も角、とんがり帽子はコック帽であったらしい。

まあ、魔法使いでもあるのだから間違っていないと納得しよう。

 

 

「兎に角! 私はその本のレシピを求めてキャラバン入りした訳!」

 

「ああ、うん。良いよ、解った。正直な所、この本には様々な知識活用術(レシピ)があるみたいだからね、共有しながらってのは解る話さ」

 

「所で、アンタは何が気になった訳?」

 

「君と似た様な物さ。ボクは錬金術士、日常生活をちょっと便利にする程度のね」

 

「あら、魔法使いは一応間に合ってたのね」

 

「んーん、ボクはあくまでも錬金術士だから、初級魔法を適当に使う程度しか出来ないよ。例えば、今回みたいにお肉を新鮮なまま保存したりね」

 

「アレ、初級魔法の応用だったのね。目から鱗だわ」

 

 

成程、アンニールは頭は固くないようだ。

初級程度の実力で何が出来るかを考え、手のひらに冷気を作り出している。

次からは、保存とかは任せても良いのかも知れない。

 

 

「ふーん。二人以上で行動できる事の強みね。魔力って、休んだりしないと回復出来ないから魔法を使い続ける訳にもいかないし」

 

「一応、スタミナ回復の薬とか、魔力回復の薬とかのレシピは知ってるし、作れるけど。アレは薬草類が生えてる森とかじゃないと作るの難しいんだよね」

 

 

今言った様な物は、交易で売らない物のリストに入れている。

まだまだ駆け出しの冒険者だとボク達は理解している。

どんな危険が待ち受けているかも解らない、命より大切なものは無いのだから。

 

 

「内陸はまだ豊かだけど、その分強力な生物や魔物も多い。海は海で危険には変わらないけど、成程、其の境界線上を行くので在れば道には迷わないわね」

 

「そう言う事。まあ、このまま歩いて居れば大きな街にぶつかるかも知れないしね」

 

「後は、最近の事ですが、この地域の生物や魔物なら、私一人でも大丈夫だと言う事が解っていますわ」

 

「アリア、君基準で考えられても困る」

 

「骨だから、軽いのですわ」

 

 

だからと言って、一体どこに自分の身長もある大剣を片手で振り回す人間がいるのだろうか。

もう少し、割と異常な身体能力に気づいてもらいたいね。

ほら、アンニールも冷や汗を流してる。

 

 

「で、でも。それなら海に出ても良いんじゃない?」

 

「んー、どうだろう。外洋に出なければ、大丈夫かな?」

 

「モスが移動できる場所なら問題ありませんわ。砂場だと、いざと言う時に逃げ辛いので選ばなかっただけですので…………と、言いますか。レティ、貴女が団長なのですから、どうするかは決めてくださいな」

 

「それもそうだね。じゃあ、人数が増えて3人になった事だし、1回海に出てみようか」

 

 

海沿いを進むことに変わりないけど、ボク達は海に出る。

大丈夫、無茶はしない。

それでも、無茶をしないと決めていても、予想がつかない地に、ボク達は心を躍らせる。

 




人物紹介

アルフライラ・アンニール
種族:人間
役割:魔法使い/料理人or料理人/魔法使い
すっげーアラビアンな名前になった料理人兼魔法使い。
キャラコンセプトは、アーシャのアトリエのウィルベルさん。
役割の所は左がメインで、右がサブって設定してたけど。
彼女の場合は両方とも極めたい感じの人。
まあ、まともなの此処までだね、多分。
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