錬金術士は働きたくない!   作:天枷美春

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ちょーひさびさにつづきをかいてわたしはねむるのです。


7話

「…………此処、本当に黄昏以前に存在していた場所なの?」

 

 

扉を開けた先に広がるのは広い空間だった。

何に使われていたのかわからない機械の残骸、みたいなものも見える。

黄昏以前の遺産があることを考えれば、此処は確かにそう言った場所だったって思えるんだけれど、俄かには信じられない程度には変貌してる。

 

 

「この模様、っていうか様式? 儀式よね、それも召喚系統の」

 

「ご丁寧に祭壇まで有りますわ。それも、趣味の悪いオブジェと共に」

 

 

このフロアは元々は周囲にある機械を使った何かをする所だったんだと思う。

けど、ライラやアリアが言ったように今は『何か』の儀式が行われている場に変わってる。

祭壇を中心とした血で描かれた魔方陣、儀式を強化するように建っている骨のオブジェ。

何でこんなものが街の地下に眠っていたのかと頭を抱えたくなる。

 

 

「何か異質な存在が上に。もしかして、召喚された存在なのでしょうか?」

 

 

リンクの視線の先、祭壇の上空にソレは居た。

幾多の顔があり、人間や動物のパーツがあった。

遺跡には割と潜っているからわかるけど、アレは生物じゃない。

つまり霊の類なんだけど……

 

 

「じったいか、しているぞ」

 

「…………信じられんナ。そもそも霊、つまり魂の質量とは黄昏の直前ですら計測することが出来ない、理論のみが提唱された存在だというのニ」

 

「『目の前のアレが真実だナ……おおよそこのビルが沈んだのは黄昏と時を同じくしてと仮定しよウ。この床に描かれた召喚系の様式が今も起動していた場合、黄昏から今に至るまで邪魔されることな魔力を貯め続け、アレを召喚しタ……と言うのはどうダ?』」

 

「1000や2000の魂では済みそうにありませんね。もしかしたら、我々の手には余る代物かもしれません。地上に戻り、本部の高司祭さまを急ぎ派遣してもらうのも一つかと」

 

「そう簡単に地上に戻れるなら良いけどね」

 

 

勘の鋭いアリアじゃないってのに、嫌な視線を浮かんでいる霊から感じる。

ただ浮かんでいるだけで、何かをしている様には見えないのだけど、取り込んだ魂から形作られるその体のパーツ、主に無数の『目』が、こっちに向けられている。

そんな、嫌な感覚がひしひしと伝わってくる。

 

 

「では、身体強化の魔法だけでもかけておきましょうか」

 

「――――いや、それはナラトが出来るならやって欲しい。出来る?」

 

「『くふふ、勿論。ものまね士だからね』」

 

 

いつの間にかボクの笑い方までしっかりと真似するようになっていたナラトが、いつかのリンクみたいに魔法を矢継ぎ早に唱えてボク達の身体能力を強化する。

そして、ボクの意を酌んでくれたライラが浮かんでいる集合霊に弱体化の魔法をかけていた。

複数の存在であるって事に加え、精神力の塊みたいな存在だからあまり効果はなかったみたいだけれど、それでも十分やりたい事は出来そう。

 

 

「ねえ、念のためにアリアに聞いておきたいと思うけど、アレ突っ込んでくると思う?」

 

「…………思いますわ。今私が感じている視線は、ヒトと言うよりは動物のソレですの」

 

「じゃあ大丈夫かな? ティポット、霊木を浮かせてくれない?」

 

「べつにかまわんが…………ああ、うちこむのか?」

 

「そうそう。リンクのハンマーでフルスイングしてもらおうかなって」

 

 

魔法をリンクに使わせなかったのは、全力でハンマーを打ち込めるようにしてもらう為。

身体強化の魔法もあるし、打ち負ける事も無い筈。

ボクが霊木に魔力を込めれば効果も上がる。

後は目の前の集合霊が突っ込んでくるのを待つだけ。

本当、霊木を作りすぎておいて良かった。

 

 

「――――来ますわ」

 

「予想より動きが鈍いね?」

 

「『まあ、動物霊が多いみたいだから、どう動くか制御しきれないんじゃない? 個と言う存在ですら矛盾があってぶつかり合うのに、他の集合体のアレなんて尚更だよね』」

 

 

支配権が誰にあるかが解らない状態なんだろうね。

それでも、本能をむき出しにしながら此方に近づいてきてる。

 

 

「ここまではっきりと近づかれると、もはやテレフォンパンチですわ。思い切りカウンターを決めるのも一つですわ」

 

「おい。かぜのちからであとおしをする。うちだせるぞ、しゃていけんないだ」

 

「――――では、打ち抜きましょう」

 

 

リンクが持つ巨大なハンマーが、思い切り振りぬかれる。

空中に固定された霊木の真芯が捉えられ、そしてティポットの風の魔法でブーストと旋回運動が加えられて真っ直ぐに飛ぶ。

集合霊はよけない、いや避けられずに突き刺さる。

ちなみに、霊木を加工した灰だから(スピリット)にはよく聞くんだけれど、霊木単体だとそこまで効かないんだよね。

だから――――――

 

 

「ライラ、燃やして」

 

「了解。ってか、霊にそこまで火の魔法効かないし、一気に爆散させるわよ? 【エクスプロージョン】!!」

 

 

ボクの魔力に点火させる形で打ち込んだ霊木を一気に燃やして、そして爆発させる。

そう、霊木ではそこまで効果が無いなら退魔灰粉に変えてしまえば良い。

効果は絶大、集合霊の半分以上を消滅させ(けしとばし)、歪な球体だった体をいくつかの断片として千切る事に成功した。

 

 

「まだ動いている断片は、1つ……だけ? なんだろうね。本体とかあったりするのかな?」

 

「解らんナ。そもそも、アレは集合霊だから全てが本体だろうニ?」

 

『――――――――テ』

 

「話しかけて……いえ、何か呟いて居ますわ!」

 

『ウエテ、シニタクナイ』

 

『ヤメロ、オレハチガウ』

 

 

声の高さも響きも全く違うけれど、動いている断片は怨嗟の声を響かせる。

ボク達へ突き刺さる視線のようなモノはだいぶ減ったけど、今度は今度で耳が痛くなる。

 

 

『タスケテ』

 

『オナカガスイタ』

 

『イケニエヲ』

 

『ギシキヲ』

 

『シヌノハイヤダ』

 

「ッ…………祭壇に魔力が、魔方陣が起動してる!」

 

 

集合霊の声に呼応するかの様に、魔力が集まり、輝きを放つ。

たかが召喚の儀式といえど、この区画全てを使ったソレはもはや大規模な儀式と言う他無い。

そんな召喚に応じて現れたのは――――――――

 

 

「ライオン!? コレだけ大掛かりな儀式なのにただの動物を召喚ですの!?」

 

「いや、アリア()じゃないんだから、大型肉食動物なんか呼ばれたら結構辛いよ? 一般人には」

 

「『熊殺しも可能な女は放っておくのが良いよ、多分ね』」

 

 

さっき熊を殺したのはナラト()だけどね。

それにしても、この召喚の意味がやっと解った。

 

 

「これ、使い魔召喚(サモン・ファミリア)の魔方陣だったんだ……アリアが言うわけじゃないけど、コレだけ大掛かりな設備なのに、何で……?」

 

「だけど、費用対効果は十分よ。魔力が溜りやすい儀式設備の配置、大掛かりな魔方陣。それなのに呼ぶのは小さな群れ、数日もあれば同じことを繰り返せるわ」

 

「じゃあ、『アレ』は一体どこから――――――」

 

『ショクジ、ダ!』

 

『クウゾ! イキノコルタメニ』

 

『タスケテ』

 

『タスカッタ』

 

 

召喚されたライオンを見た集合霊の声に、歓喜とも呼べる声が入り混じり聞こえる。

そして集合霊の断片が群れへと襲い掛かるけど、体積が減った所為なのかさっきとは違って随分と軽快な動きになっている。

その内の数匹は逃げ出すことが出来たみたいだけれど、他は全て集合霊に飲み込まれ、その後には死骸だけが残っていた。

 

 

「………………なるほどな。あれは、たましいをくって、そんざいをおおきく、したのだな」

 

「つまり、今に至るまで召喚しては喰らい、召喚しては喰らいと延々と続けていたのですね」

 

「何千単位の魂量では済まないわけだね。黄昏後からずっと続けてきたなら、成程十分な数になる。逃げ出した動物もこのビルに住み着いたって事か」

 

「『で、人間霊と動物霊だけ、そりゃあ弱い訳だよ。この地が死霊で溢れかえる前に見つけれて良かったねぇ』」

 

「ええ。やるべき事は儀式の破壊、その前にアレを何とかするのも必要ですわね」

 

『――――タリナイ』

 

『ハラガ、ヘッタ』

 

『マダクウゾ』

 

『タスケテ』

 

『マダ、クエルノガ、アルゾ』

 

 

向うもボク達を『食事』として認識したみたい。

あらゆる視線が、得物を狩るソレとしてボク達に向けられる。

けれど、けれど今度は受け取る意味も変わってくる。

 

 

「アレがボク達を食料としか思って居ないなら、それは既に動物や魔物と同じ……っていうか、狭義ではスピリット体は魔物の一種だよね」

 

「何か崇高な目的で呼び出された存在かと思って焦りましたわ。狩るか狩られるかで考えるのは、今の時代の節理。ですわ」

 

「あいてはまもの、ぶっとばそう」

 

 

臆することなくそれぞれが武器を構え、退魔灰粉を振りかける。

実に頼もしい。

アリアなんかは、汚れるのも構わずに全身に被り、集合霊へと向かって走ってく。

いや、本当に頼もしいね。

 

 

「ちょっ! 待ちなさい! 触られたライオンが死んだの見てたでしょ! かなり強力な【エナジードレイン】使ってるのよ!」

 

「だから全身に振りかけたのですわ! エナジードレイン対策、十分に効果は、あり、ます、のっ!」

 

 

あろう事か集合霊を右足で蹴り抜いてよろめかせた後、背負っていた大剣で抜刀切りを行い袈裟懸けで切り裂いた。

いや、うん、ボクのアイテムを信頼してくれるのはうれしいけど、かなり危険な事をやっているのには気づいてほしいね。

 

 

『オオオオオオオ!』

 

『イタイ』

 

『キズツイタ』

 

『タスケテ、タスケテ……』

 

『コロサレル』

 

 

更に二つに分けられた集合霊から怨嗟の声が再び響く。

が、止まっては居られない。

直ぐにボク達も魔法でアリアの援護をしないとね。

 

 

「『ウゴイテイルノハ、ヤハリカタホウカ。ナニカヒミツデモアルノカ?』」

 

「何故敵の声真似をすル。我々の内の誰かで良いだろウ」

 

「『声を発する連中が相手ダ。万が一に言葉が通じるのであれば、騙す事も出来るとは思わないカ?』」

 

「やれるかどうかも解らない事を急にやろうとするのはあまり感心できません。とりあえず、動かせるのは一つだけみたいですね。逆に、くっ付けばまた動き始めるという事ですから、浄化できる私は他の断片を浄化しましょう」

 

「『手伝います。ええ、ものまね士ですから』」

 

 

霊の浄化に関しては、流石にエクレシアの神官であるリンクにしか使えないと思ったんだけど、ナラトはそれでも使えるみたい。

此処まで来るともう、ものまね士と名の付いた胡散臭い何かにしか思えないね。

 

 

「「時の歩みに背きし邪なるモノよ、神の光の下に在りし時へと還れ【ルミエール】」」

 

 

声も魔力も完璧にシンクロしての詠唱は目をつぶるともうどっちが本物なのかが解らないね。

それで、唱え終わるとその名の通りルミエール(小さな光)が燈る。

蛍のように淡い輝きを放つ光で、断片となり散らばっている集合霊は浄化されていく。

でも、本体には全く効果が無いみたいで、変わらずに襲いかかかってくる。

 

 

『サカレル、イタイ、イタイィ』

 

『タス、ケテ…………』

 

「面倒な事ダ。動物霊らしき存在は切り離してやれば消滅すると言うのニ」

 

「じみちに、けずっていくのがいいだろう。じゅんとうに、よわくなっている」

 

 

斬って、抉って、貫いて……そして千切って浄化を繰り返すことで圧倒的だった規模も、エナジードレインの力も弱まってきている。

リンク達にルミエールを続けて貰えば、確実に倒せる相手になっている。

 

 

「……………………やっぱり、違和感がありますわ」

 

「んー……集合霊が、分裂しても一つしか動かない事?」

 

 

多少は話す余裕も出て来たのか、アリアが珍しく戦闘中に関係なさそうな話をしてくる。

確かに、集合霊の性質としては結構おかしいと言える。

集合霊は、名前の通り霊が集合することによって形作られる魔物で、レギオンと呼ばれている。

あくまでも集まっているだけだから、個々に分裂することも可能で、複数に分かれてこちらに襲い掛かってくる事もある。

でも、目の前の集合霊にはそれがない。

 

 

「ソレもありますが、叫ぶ声こそ複数で、様々な声が聞こえますわ。ですが、ですが一つだけ何度呟いても同じ事を言っている霊が居ますの」

 

「ああ、『タスケテ』とか言っている奴だナ? 確かに音声的には同一存在ダ」

 

「集合霊なのですから、その状況に応じた我の強い魂が叫ぶと言った事ならば解りますわ。ですが、食事を見つけたときも『タスケテ』と言うのはおかしくありませんの?」

 

「成程。そう言った特定の状況下で強く応じる魂を、押さえつけて顕現することが出来る個体…………?」

 

 

俄かには信じにくい話だけれど、レギオンに『核』となる存在があるのかもしれない。

全ての魂を一つにとどめておける程の。

 

 

「とりあえず、助けてって言ってるんだから、助けてあげようよ」

 

「そうですわね」

 

 

勿論、ボク達に出来る事は消滅させることだけ。

退魔灰粉を振りまきながら斬る事幾回か、ついに変化が見えてきた。

 

 

『オ、オオオ…………アタ、タカイ……』

 

「やっとレギオンらしく、別れても行動する様になってきましたね」

 

『コレで……やっト…………おわ、ル…………』

 

『終わらせテ……クレぇ』

 

『どこの国のヒとか、知ラナいが……感謝、スル』

 

「本体らしき存在以外ハ、随分と未練はなさそうだナ」

 

 

悪意があってこちらも仲間に引きずりこもうとしているんじゃ無くて、逆に彼等は消滅してがってる。

と言うか、既に摩耗し切っているだろう筈の自我が残ってる。

ボク達の事を、認識してる。

 

 

『……………………愚カナ選択を、しまシた』

 

『全テハ。アノ日から始まったノデしょう』

 

 

ぽつり、ぽつりと、魂が消滅しながらも分割された霊は語りだす。

本体から発せられた怨嗟の声とは違う、歓喜に咽ぶような声で。

 

 

『ここハ、見ての通リ。多くの人ガいる場所でした』

 

『とてモ頑丈デ。この様ニ災害デ沈んでも、問題が無イくらいには』

 

『コこハ娯楽施設ハ、十分でした、エエ。娯楽だけハ…………』

 

『だケレど、希望ハアリまセンでした』

 

『パンドラの箱……地獄の釜。狂った世界ニ染まるノハ、時間の問題デした』

 

 

有体に言ってしまえば、話を聞く意味なんてない。

むしろ、聞いて居るつもりもない。

軽くなったのか、段々素早くなってくる本体を叩く事が先決で、彼らは千切れて勝手に消滅していくだけの魂なんだから。

それでも何か、自責の念に縛られて、まるで誰かに懺悔を聞いて貰いたいのか勝手に喋っている。

 

 

『狂人ガ……イエ。我々も最早狂っテいたノデしょう。生贄ヲ捧げ、この世のモノならざる存在ニ、願おウと』

 

『選ばれタのは。唯の少女。何事もナイ、唯の…………』

 

『ソウだ……! 俺が、オレがアノ、ガキを贄に……神デモ悪魔デも良い! オレを俺を俺をオレを助けテくれる存在に祈っタんだ!!』

 

 

消えていく魂に混じって、ひときわ強く自己主張する狂った魂がいる。

言動からしても、この騒動の原因の一人。

 

 

「死にたくないっていう祈りが合わさって、今の今まで残れる儀式が完成したってわけね。自業自得じゃない。それに、願いは叶ってるわよ肉体こそ死んだけど、魂は殆ど不滅に近かったし?」

 

『嫌ダ! もういやダ! 死ぬんだ! 俺は死ぬんだ!! 天国でも地獄デモ、どこでも良い。俺はモウココはイヤだ!!!』

 

「くふふ。良かったね、また願いは叶うよ。尤も、皆昇天してるんじゃ無くて、魂ごと消滅してるんだけどね」

 

『良い! ソレで良い。兎に角……もう…………イヤだ……………………』

 

 

随分勝手な物言いだけど、最後まで喚き散らしていた魂も拡散した。

残るのは、無駄な魂をそぎ落とした女の子が一人。

もう、助けてと叫ぶような声は聞こえないけれど、しっかりと目の前には居る。

 

 

「…………随分とおとなしくなりましたわね」

 

「『まあ、先ほどまでの状態、惨状カ。アレは本能で生きる【動物霊】に、ソレを糧として生かされ続けた【人間霊】の意識が、彼女に融合していたからナ。そりゃあ煩わしイ』」

 

「アンタ、意外とよく知ってるのね。物理学者とも聞いたけど」

 

「『何、伊達や酔狂でものまね士をしている訳じゃないサ。色々みてきタ、そして色々と知っているだけダ』」

 

 

正直、その機械音声をどうやってものまねしているのかが不思議でならないけど。

いまはその問題は置いといて、目の前の問題をどうするべきか考えなくちゃいけない。

とりあえず、話しかけてみる。

 

 

「で、君どうするの?」

 

『わた、し?』

 

「おー…………やっぱり他の連中と同じで意思疎通も出来るんだ。うん、君」

 

『……………………生きたい』

 

 

もう既に死んでる存在に、生きたいと言われた。

いや、無理難題が過ぎる。

 

 

「消滅する気はないの?」

 

『嫌。やっと、痛くなくなった、煩くなくなったのに』

 

「リンク、神官様的にはどうするのさ」

 

「え、えっと。問答無用……と、言うわけにも。魂が悪霊へと変化した訳でもありませんし、先ほどの方々と違って、摩耗して消滅した訳でもありませんので…………後、本人の同意がなければ、送れませんし」

 

「うへー…………取りあえず、一緒に来る?」

 

『…………うん』

 

「まったく、アリアのキャラバンには変なのがどんどん増えるよ」

 

「お待ちなさい、キャラバンマスター(団長)は貴女ですわ。そして、その変人筆頭に言われたくありません」

 

 

ティポット(妖精)加入あたりからなんかまともに人が増えていない気がする。

まあ、別に犯罪者集団じゃないから別に良いんだけど。

 

 

「所で、アンタ此処の召喚陣を作動させてたみたいだけど、コレまだ使えるの?」

 

『出来る。やる?』

 

「いや、やらないわよ。誤作動があるとまた問題が起こるから壊したいんだけど」

 

 

ライラの言いたいことが何となく解った。

この儀式用魔方陣、確かに祭壇を中心として広がってるんだけど、どこまでが魔方陣の範囲なのかが今一わからない。

 

 

『大丈夫。祭壇を壊せば止まるよ……元々の始まりは、あのテーブルだけだったんだから』

 

「……そう」

 

 

何時かの昔、自分がイケニエに捧げられた場所だって言うのに、とても落ち着いた声でこの娘は言った。

その祭壇にはもう骨すらなく、儀式の核となるその場所は寂しい限りだった。

 

 

「で、どうやってあのテーブルを破壊するつもり? 簡素なテーブルとは言えど、長年の魔力に晒されて私程度じゃあ傷一つ付けれれそうにないわよ?」

 

「……………………買っておいてよかったよね。火薬」

 

 

まあ、腐っても黒色火薬。

その破壊力の低さには正直脱帽したいレベルだけれども。

まあ、道理を無理で押し通してしまうのが錬金術師(ボク)の役目だしね。

 

 

「アリア、剣を貸して」

 

 

黒色火薬では足りない。

アリアの馬鹿力でも多分無理。

だったら、黒色火薬から爆発と言う要素だけを抜き出して、アリアの剣に付与してやれば届く。

そう、大釜をライラに転送してもらって、黒色火薬とアリアの剣を錬金すれば。

 

 

「完成! アリア、ぶった切って!!」

 

「はいですわ!!」

 

 

毎回思うけれど、その細腕のどこに力があるのだろうか。

自身の身長程もある大剣を右肩から担ぐ様に構え、深呼吸をしている。

これが本気になったアリアの大剣の扱い方。

まるで力を大剣へ移すように、動きが止まる代わりに絶対とも言える一撃を対象に叩きこむ。

突っ込んでくる獣にも最大威力で難なく行うアリアだ。

ましてや動かぬテーブルなど、失敗するはずもない。

 

 

「一…………二…………せやああああああああああああ!!!」

 

 

振り下ろされた一撃が、祭壇を纏う魔力へと到達する。

普通は弾かれるんだろうけど、アリアを舐めて貰っちゃ困る。

そのまま魔力の防御をぶち貫いて、ボクが付与した爆発の力と共に、祭壇に届けばいい。

アリアの力が全て、内側か崩壊させる力へと変換される。

一瞬光ったかと思うと、後は砂みたいに細かくなって崩れていった。

 

 

「…………レティ。貴女意外と恐ろしい物を作りますわね」

 

「人には向けない様にね」

 

 

とりあえず、問題ごとは終わったし帰ろう。

この幽霊少女の話も聞かないといけないし。

 

 

 

 

・・・・・・

「長く潜っておられましたが、無事で何よりですな」

 

「いやはや全くだね。とりあえず新しい娘も増えたし」

 

「ベル様、でしたかな?」

 

『うん……ベル=ニケ。お話に聞いたずーっと昔(黄昏前後)に幽霊になったの。色々とあったから、色々と出来るようになったわ』

 

 

召喚の触媒にされたからなのか、今でも召喚術は可能らしい。

加えて、色々な生物と融合したから動物や魔物の事は良くわかるらしい。

 

 

『ごめんなさい。迷惑をおかけしたみたいで』

 

「何の何の。大事になる前に全てが終わって有りがたい限りです。それに、自身に非が無い事で謝るのはお止しなさい」

 

「くふふ。()()()()も消えちゃってこの話は終わりって事だよ、ニケ」

 

『うん…………』

 

 

子供の癖に、変なところでマセてるね。

まあ、言っても10歳くらいしか変わらなさそうだけど。

 

 

「さて。お疲れでしょう、今日はゆっくりと休まれてはいかがですかな?」

 

 

気を使ってくれたのか、司祭様が話を変えてくれる。

司祭様にしても、孫みたいな年齢の少女が、悲しそうにしているのはアレなんだろう。

 

 

「そこまでしてくれるのはあり難いね」

 

「いえいえ。お礼もありますし、それに私もその昔は旅をしたものでして。冒険の話というモノには年甲斐もなく――――」

 

 

成程、どうやらこの老司祭様は、そう言った話が好きな様だ。

泊めるついでに話でもと言った感じだろう。

だったらボクらも話をするのはやぶさかじゃないと言うわけだ。

 

 

――――そうして、長い長い一日の出来事は終わっていくのだった。

 




人物紹介

ベル=ニケ
種族:幽霊(元人間)
役割:召喚士/ブリーダー

錬金術士の物語って言ったら幽霊少女必須やろ!!
いや、必須かどうかは知りませんが、元ネタ問われたらそんな感じです。

名前がね、中々決まらないんだコレが。
武器何にするか未だに決まってないのが怖いところ。
たぶん、召喚したモノをぶつける戦いですよ多分。
この話が続くかは本気で置いといて。
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