良い感じの能力を貰い転移したが 現地民の方が強い……   作:勇気の遊技

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ハカノ村での生活録
釣りをしに、川へとゴー


 

 目覚めたら、目の前に鉄の鍋があって、そして、小さな少年が石を持ってその鍋を……バカやめろ! 

 オレはもう起きて

 

 キィンと音が鳴り響いた。

鼓膜破れるかと思ったよ。

 超至近距離でねぇ、やられるもんだから。

 はぁ、不幸だ。

 そう考えてながら村を歩いていると。

 

「転移者様? パンを焼いたのですが、毒味がてら食べていただけないでしょうか? 村の皆さんは食べてくれなくて……転移者様、食べてくれます……よね」

 

 真っ黒なパンをバスケットに入れた、前にオレを治療してくれた女の人が目の前にいた。

 ……正直オレの勘が、これは食べるべきでは無いと言っている、だって、周りの村人達、隠れてこの人のパン……? の毒味をやり過ごそうとしてるし。

 おい、村長、あんたが止めてくれよ……ちょ、待て逃げるんじゃないっ!

 

「転移者様……?」

 「い、いえた、食べます食べますとも。当然ね、うん頂きます一つ下さい」

 

 ざくっ、がりっ、ぐちゅ。

 パンからどう考えても出ない音が出た後に、パンから汁が出て来た。

 それは苦くて、当然、不味かった。

 でも、目の前の女の人は期待に満ちた眼差しでこちらのことを覗いてる。やめてくれ、不味いなんて言おうとも思っては無いけども、不味いと思っていることが申し訳なくなるからさ……。

 

 オレは何とかそのパンを完食した。

 何も感じなくなった舌と引き換えに。

 

 「そんなにお腹が減っていたのですね……まだまだありますよ、もう少し食べますか?」

 「あ、結構です……それに、仕事があるので」

「そうですか……」

 

ごめんなさい……でも、あれを二つも食べたら今度こそ味覚が死ぬ。

 オレは、その場を立ち去ることにした。

 仕事もあるしね。

 うん、仕事あるし、仕方ないよね?

 

 「転移者様には好評だったのに、どうして他の人は食べないのかしらね? あなた達も隠れずに、少しは出て来てはどう?」

 「やばい、逃げろ!」

 

その後パンらしきものを口に含んでいる、泡を吹いた男達が発見されたそうだ、なむなむ。

 

 川は美しい水が流れて、そこを泳ぐ大小様々な魚達を狙う鳥どもやその他の動物が割拠している戦場と動物界ではそうなっているが、村人達にとっても、川とは重要な場所である。

 野菜を冷やし、魚を取り、体を冷やすこともできる……そんな利便性を備えた自然の場所が、川なのだ。

 そんな川に、オレは来ている。

 釣竿と、魚を入れるための容器を持って、ここに来た。

 つまり、魚を取ってこいと言われたのだ。

 頑張りますか。

 

───────────────────────

 

 あかん、取れない。

 三時間程待って取れた魚は一匹のみ。しかも小さい……。

 これは不味いぞ、凄い不味いぞ。

 焦ってしまっていると……

 

「それじゃあ、取れんよ。お前さん」

 

 村長がやって来た。

 少し見とけ、と言うと村長はオレの釣竿を取って、そして竿を振った。

 釣り針が、川の中に入っていく。

 そのまま、少し待っていると……「んっ」

 釣竿が揺れて、魚が掛かったことが分かる。

そうしてしばらく格闘していると……魚が取れた。

 

「分かったか? これが、釣りだ。落ち着いてやるんだよ、焦ってはいかんよ」

 

 また呼びに行くとだけ言うと、村長はさっき釣った魚を容器に入れた後、釣竿を返して元来たであろう道を帰った。

 

「焦っては、いかんか。うん、そうだな、落ち着いて……やりますか」

 

 もう一度、今度は焦らずゆっくり、落ち着いて釣りをする。

 

 「…………」

 

川のせせらぎと、小鳥の鳴き声が聞こえる。

 ……前の世界では中々感じることの出来なかった平穏がこの世界にはある、それは守れる範囲で何とかしたいな。

 

 そうしていると、竿が震える、魚が来た!

 釣竿を強く引いた……魚も勿論生きる為に必死に抵抗する。

 手強い、大物だ。

 だから、オレも奥の手を使わさせてもらうことにした。

 魔力を手に一点集中させる……

 『力を寄越せ』【筋力強化】(パワー・バルク)

 強化された腕力により、魚を遥かに上回る力を得た。

 つまり! 魚、お前を捕まえれると言うことだ!

 

 うぉぉぉぁぉぉ!

 

 

 バキッと言う無情な言葉が鳴る。

 瞬間頭に流れる、存在しない記憶。

 

 「魚が取れたぞ!」

 「デケェな!?」

 

 村のみんなも大喜びで、凄いぞ! と褒めてくれた。

 魚は、捌かれて刺身となった。

 プリプリな赤色のその身は、口に入れるとふわりと噛む必要もなく溶けら様に食べられる。

 更に、その身に醤油をかけると、益々美味しくなっていく。 

 あれ、醤油?

 何で異世界に醤油が……あるの?

 いや探せばあるかもしれないけども…………。

 あぁ……そうか、これは現実では無いのだな。

 現実へと……段々とゆっくりと戻っていく。

 

 「え……」

 

 結局、その日は魚を一匹しか取れなかったよ……。

 

───────────────────────

【夜の村】

 

 「なんじゃぁお前さん、一匹しか取れんかったのか! 笑えるなぁ」

 「すいませんでした」

「いやいや、問題は無いよ。最初はそう言うものさ」

「ありがてぇ、ありがてぇよぉ」

 

優しさが染みるよぉ……魚一匹しか取ってないのに、優しいなぁ。

 

 「お前さんだけじゃなくて、他の村人も釣りに行ってるから大丈夫よ……まぁ、一匹しか取れんかったのはお前さんだけだがな」

 

 そういうと、村長はガハハ! と笑う。

 オレも、もう笑うしかなかった。苦笑いである。

 

 村には、何だか、優しい雰囲気が流れていた。

 




魚って美味しいですよね。
生まれて初めて刺身を食べた時のあの感動よ。
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