良い感じの能力を貰い転移したが 現地民の方が強い……   作:勇気の遊技

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ハカノ村に帰って……

 ハカノ村に帰る為に馬車に乗っているところだ。

 馬車の中から見える景色はとても綺麗で心が落ち着く……。

 気のせいかは分からないが、昨日はアルバートがどこかに行っていた様な気がするかもしれない……。

 まぁ、そんなことはどうでも良い。

 今考えるべきことは、今後冒険者として何をどうするかだ……。

 何をどうするかって言うのは簡単なんだ……やることは見つかってる。

 ダンジョンを探索したり、色んな街に行ったり。

 まぁ、色々だ。

 

 アルバートは今のところ、こんな揺れている馬車の中なのにうたた寝している、羨ましいぜ……。

 はぁ。

 ハカノ村の門が見えてきた、そろそろ降りないとね。

 アルバートを起こす為の準備をしてから、周りの景色を見る。

 美しいな。

 そんなつまらない事を思いながらも、オレは色々と今後について考えていた……。

 

 だけども、一つだけ重大な問題があるのだ……。

 それは、アルバートのことだ。

 アイツは恐らく、いや、絶対何かを隠している……。冒険者としてなるとき、アイツをどうすれば良いのかそれが、分からない。

 見たんだよ……アイツの力を。

 

 オキシ街に来てから少し経って、ラナさんと共にダンジョンに探索に来ていた時のことだった。

 ダンジョンに入った瞬間、魔物・魔獣がアルバートに飛びかかって行った……それも、10体ほど。

 いきなりの事にオレは反応出来なかった、ラナさんは出来た様だが……遅かった、魔獣・魔物の牙に爪がアルバートを襲わんと振りかざされる。

 が、それは届かず。

 アルバートが一瞬で切っていたからだ。

 氷の剣、アイツが言うには【冬虫夏草】と言う名前らしいが……何で、虫に寄生する菌の名前を氷の剣につけてんだと思ってはいたものの……。

 それでも、あの強さはただものでは無い。

 絶対、この世界でも上位に入るほどの力があるだろう……なら、何故ハカノ村の近くの山にいたのかが分からない。

 旅の途中だったり……するのかもしれない。

 旅の途中ならば、オレもついて行ったりしても良いかな……? いや、辞めておこう……ついていける気がしない。

 そんな事を考えているうちに、馬車の運転手から「着いたぞ」と言われる。

 まぁ、難しい事は後で考えとけば良いだろう……。

 今もスヤスヤ眠っているアルバートの近くで、オキシ街でこれまた購入したお玉と鍋を使ってアレをする。

 起きろよ〜。

 鍋をお玉で叩きまくった。

 鍋が叩かれるたびに鉄の良い音が鳴る。

 ……寝ているアルバートにとっては不協和音だった様だが。

 

「うるさい……おい、サトウ」

 ごめーんと棒読みで言った後に、馬車を降り、ハカノ村の門の前に立つ。実に一日と三時間ぶり……別に、感慨深くはないけども。

 

 門が重たそうに開く。

 

 さぁ、これからどうしようかな。

 

───────────────────────

 川はやっぱり、いつ見ても美しい。

 そんな事を思いながらも、オレはアルバートと共に釣りをしていた。

 村長が行けって言うから仕方なく、ね。

 まぁでも悪い事では無い、アルバートと二人きりになれたから……これで、アイツの秘密について聞ける。

 

「なぁ、サトウ」

「なんだよ、アルバート」

「私が秘密を持っている事、知っているか?」

「…………何となく、知ってはいる」

 

 アルバートは緩やかな流れの川に垂らした釣り針を見ている。

 つまるところ、何も言わなかったのだ。

 でも、ここで下がっていては秘密は知れない……だから思い切って、聞いてみることにした。

 

 「……アルバート、秘密を教えてくれないか? もちろん、報酬は弾む」

「私は金では釣れないぞ」

 

ダメだったかと思ったその時、アルバートはさっきの言葉にこう付け加えた。

 

「魚を私より多く釣ったなら、教えよう……ふっ、良い条件だろ? 悪くは無いと思うが……」

「受けよう、その勝負」

「そうでないとな」

 

熱い戦いが今! 始ま…………るわけない。

 秘密がかかっていても、ただの釣りだからな。

 生き餌に魚が掛かるのを待って、掛からずに生き餌が弱ったらまた新しいのに交換して、たまに釣る。

 そうしているうちに時間はどんどん経っていき、気付けば太陽は沈みかけてただでさえ赤いのに、さらに厚化粧をした様に真っ赤になった。

 

 現在の容器の中の魚の量は、オレがアルバートより2匹多い。

 アルバートは3匹だ。

 

「まだ、負けてはいない」

 「怖いね、このまま逃げ切りたいけど……」

 

そうして、もう少し時間が経って完全に太陽が沈んだ時。

 オレ達はまだ河原にいた。

 釣りはもうとっくに終わって、今はアルバートの秘密を聞き終えたところだが……そ、そ想像以上だったよ。

 

 明かされたのは、自分が法王国の第六王子『ルイ・フロスト』であること。

 魔王軍との戦いに参加し、そして倒した魔王軍の幹部によりどこかへと送られてあれよあれよと放浪する内に、ハカノ村の近くの山に来て、そしてオレと出会ったこと……。

 そして、最後にこう言ったんだ。

 

「楽しかったよ、サトウ。本当に、ありがとうな」

そして、どこかを見つめたと思ったらいきなり……

「レッド……いるんだろ」と草むらに向かってアルバートは言う。

 

草むらから出てきた大男は、アル……ルイの前で跪き、オレに対してこう語った。

「自分は、法王国第八王族護衛部隊隊長……そして、あなたと同じ転移者、レッド・スピーチこと『山本昌』です。ルイ王子をお引き取りに来ました」

「久しぶりだな、レッド。……ああ、残念だけど、お別れだな。サトウ」

「…………そうだな」

「……引き止めないんだな。意外だ、『行くな!』 とかでも言うとは思ったんだが……」

「……馬鹿言うんじゃない、アンタには国民がいる。アンタを心配するであろう、国民がいる……だから。寂しいけどよ、引き止めはしないんだ……」

 

 ルイは、深く俯いた、そしてこう、話した。

 

「そんな者なんて誰一人として、いないよ」

 

 は? と思った……。

 

「私は……誰の子か分からないらしい、母が夫と寝た次の日に、今は滅んだメチョウシ王国の特殊部隊によって拉致されて……三ヶ月程経って、奪還作戦が行われて……それで、帰ってきたらお腹が大きくなっていたんだ……だから、父の子であるかもしれないし、どこか知らない、誰かの子なのかもしれない。だから、皆、私の事を避ける。心配も期待もされなかったよ……レッドとサトウ、アンタ達以外には」

 

 何も、言えない。

 だから、黙る事しか出来なかった。

 

「出来るものなら、ルイの名を捨ててアルバートとなりたい……そして、サトウよ。お前と、もう一度……冒険がしてみたかった」

「そう……か」

「ルイ王子……お時間です」

 

ルイにレッドの手が伸びる、その手には魔法陣が現れていて……転移魔法かもしれないが、あの手がルイに触れたら……恐らく、オレは二度と会えない。

 そう思ったその時には、既にレッドの行動は終わっていた。

 レッドは手をルイに触れたが……何も起こらずにむしろニコッとした顔でこっちの方を向いてくる。

 

「ルイ王子、あなたは自由です」

「……なんだと?」

「はぁ?」

 

 レッドはいきなりよく分からないことを言ってきた。

 どういうことだよ。

 

「ルイ王子、佐藤健二。教えてあげましょう、なぜ、ルイ王子が自由なのか……いえ、もう王子では有りません。王子の証である英雄の剣【冬虫夏草】はもう貰いましたから、後はこれを使って戦場で死亡したというカバーストーリーを作っておきますね……じゃ用は済んだし、帰ります」

 

それだけ言い、レッドはどこからか出した門を潜って帰って行った。

 

「……」

「…………」

「ま、まぁ、良かったですね! うんっ!」

 

オレらは、何とも言えない感情を抱きながら……ハカノ村へと帰って行った…………。

 

 余談であるが、あの後ルイからアルバートへと名を変えたアイツは。

 いつもは全く持って飲まない酒を大量に……馬鹿みたいに飲みまくって、そして酔っ払って村の少女を口説いていた……。

 

 はぁ、どうしようかなぁ。

 

 

 

 まっ、明日のことは明日考えればいっか。

 そう思いながら、ベッドの潜って今日も寝るのである。

 瞼を閉じれば……だんだんと、ゆっくり、でも着実に眠くなる。

 おやすみ。

「おやすみなさい、ご主人様……私も、寝ます」

 戦鎚なのに寝るんだ、と思いつつも寝ようとしたが、いや妖精宿ってるってセンコ自身が言っていただろ、と思い出しつつ……やっぱり寝た。

 

 外での賑やかで、温かい声は、オレにとって安眠導入剤だ……。

 

───────────────────────

あたり一面に広がる草原、微かな風。

 またかよ、と思っていると。

 遠くから声が響いた。

 美しくて、でも可愛らしい声。

 そう。

 

「佐藤健二くん! お久しぶりだね!」

 

また、ロリ神の所へとやって来た。

 

 「またかよ……」

 

もう、それぐらいしか言えなかった。




あと二話ぐらいでハカノ村での生活録は終わりすね。
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