刀と梅干とよっちゃんとわたし   作:眞山紗由美

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お城で事件発生。
さあ、何が起きたのか?


探偵のお稽古
第6章 探偵のお稽古 第1話 事件発生


刀と梅干とよっちゃんとわたし

 

第6章 探偵のお稽古

 

 第1話 事件発生

 

よっちゃんが、道場の朝稽古(あさげいこ)に来ない。私は、お城の鍛錬(たんれん)に来ないように言われる。

何があったのか?

 

こんな時、情報が集まるのはアソコだ。小料理屋の女主人の所。

私は、煮物を買いに行った。

「あら、Pちゃん、今日はイイ人、一緒じゃないのかい?」

ああ、あの性格のイイ、よっちゃんね。フフと笑ってごまかす。

「そりゃそうと、お城は大変らしいね」

きたきた、やっぱりおばちゃんは知っている。

「何でも“ハヤリ”で大変らしいよ」

「ハヤリって?」

「私も詳しくは知らないんだけどさ、ハヤリ(やまい)に次々にかかってるんだってさ」

えぇ?どういうこと?

(たと)えば、どんな風になってるの?」

「そうだね、あたしが聞いたのはね、例えば、お腹が悪くなるのが流行(はや)ったら、落ち着く間もなく熱が出るのが流行って、それも落ち着く間もなく、体がだるいのが流行ってとか、なってるらしいよ。ひどい人は、ずうっと寝込んでるんだってさ。大変なことだよねえ。」

これは大変!よっちゃん、大丈夫なのだろうか。かかってないかな?心配・・・。

もやっとした、嫌な黒い霧のような物が、胸に満ちる。

 

翌朝、稽古を終え、一人で梅水(うめすい)を飲んでいた。

あの儀式みたいな「すっぱ!」の言い合いがないと、イマイチ美味(おい)しさが足りないなと思いながら、梅をつまむ。

そこへ、聞きなれた声。

「Pちゃん!」

お~、よっちゃん~、今、考えてたところなのに。

梅を口に入れる寸前だったので、口の中がたぷたぷ。ごくりと飲み(くだ)し、つまんだ梅を振る。

よっちゃんは、手ぬぐいで口をおおって、入り口からこちらへは来ようとしない。それどころか、私を、

“そのままそこで”というように、手で制している。

「Pちゃん、変わりない?元気?」大きな声で聞いてくる。

「う~ん!」よかった、よっちゃん、大丈夫そう、元気そう。だけど、アタフタしている。

「梅、大丈夫?」

「おいひいよ~」お口の中であふれる物のため、変な言い方になる。

よっちゃんは、それだけ言うと、手を振って帰って行った。

 

梅?梅がどうしたんだろう?

何となく、引っかかりを覚えつつも、口に放り込む。

「すっぱ」一人で言う。何だかつまんない。

 

その日の午後、お城から検分(けんぶん)が来る。家の梅、私が祖父母宅から持って来た物、それを調べるそうだ。お城での鍛錬の時に、皆に“梅水”としてふるまっていたからだそうだ。

「これが、ハヤリ(やまい)と関係しているんですか?」疑われているようで、気分が良くない。そのせいか、たただでさえ野太(のぶと)く低い声がさらに低くなる。

「まだ、決まった訳ではありませんが、詮議(せんぎ)しています。」

はあ?梅だよ、梅!梅が腐るわけないじゃん。しかも、私、毎日食べてるし。ピンピンだし。

お役人さん達は3粒持って帰って行った。

 

その後も、ハヤリ病は落ち着かないらしく、5日()っても10日経っても、よっちゃんは来ない。私も鍛錬に呼ばれない。

『城下からは薬が消えた』と、噂が流れる。様々な種類の薬が、それぞれかなりの量ずつ、次から次へと、お城へ運ばれているそうだ。

(ため)しに、薬屋に行ってみる。

「すみません。家族が、具合が悪くて」

具体的に説明しようと、考えてきたことを言う前に、薬屋の番頭さんは、顔を曇らせながら小さな声で眉がくっつきそうなくらいにして、申し訳なさそうに言う。

「すみません。今、薬の在庫がほとんどないんですよ」

ふと、顔を上げて店内を見渡すと、なるほど、棚がすっからかん。

「この棚に、薬が入っていたんですか?」

「そうなんですよ。御覧(ごらん)の通りの有様(ありさま)です」

「残ってるのは?」

「女性の方の物です。月のモノに(かか)わる物とか、お産に関わる物とかで」

そうか、女人禁制だからね、お城は。そういうのが残るんだ。

「でしたら、仕方ないですね。すみません。ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ。あ、この(あた)りの薬屋、みんなこんな感じですよ。滋養のつくものを食べて、ゆっくり寝るしか、今は手がないですね。薬師(くすし)(※医者=薬師)も、不在です。どうしてもの時は、言ってください」

「ご親切にありがとうございました」

医者様も、お城に詰めているのか・・・。

 

状況を分析する。

 

お城では、次々に病気にかかっている。それは、同じ症状のものが続くという訳ではない。ある期間蔓延(まんえん)し、落ち着きかけた頃、また、異なる病気が蔓延する。

 

どう考えても、自然発生的なものではなく、作為的(さくいてき)なものだ。

と、言うことは・・・。

どうする?どう動く?策を巡らす。

 

月は、9月に変わった。

待ち人来たる。弥彦が、買い物に出かけて来た。

この子を待ってたんだよ。弥彦が来そうな時間に張り込むこと5日目。

「弥彦」と、小さく声をかけると、飛び跳ねて驚いた。

「P!」と言い、口を押さえる。ちょっと地が出ちゃってる。気を付けて。声が高くなってしまったね。可愛いけど。

「お城、大変なんだって?弥彦は大丈夫なの?」何だか顔が白い。

「私も、悪かったんだ。熱が下がらなくてね」

おでこに手を当てる。良かった、ちゃんと熱は下がっている。両手を見せてもらったが、爪も含めて黒ずみはない。目も充血していない。ほっとする。

 

病気の蔓延(まんえん)を狙って、なにがしかの毒物を不特定多数に与えるのなら、食べ物が手っ取り早い。

だが、もしも、一定の割合で、特定の物に毒を混入させていたのなら、弥彦が分からないはずがない。それに、お城には毒見もいる。

狙いは、お城の皆々、不特定多数。

死に至らしめるというよりは、病的な症状を蔓延させる。

病状が変化していることから、毒の種類が様々。

ということは・・・

毒物を、何かの食材に混ぜている。しかも、それは、毒の種類を変えながら、計算された少量。故に、犯人は単独、あるいは2人。

 

私は、この、自分が立てた仮説が、間違ってはいないという確信をもった。後は、実行。

「弥彦、お願いがあるんだけど」

 

この騒ぎで、城の出入りは厳重になっている。顔馴染(かおなじ)みの私でも、やすやすとは入れない。

で、商人のふりをして、荷物を持ち、弥彦とともに入る。

裏口の門番が変わったところで、弥彦が説明に行く。

「さっきの配達の方、今、帰りました」

交代したばかりの門番は、弥彦の言葉を信じ、名簿の名を消す。

 

こういう段取りだった。

ふふ、やった~!潜入成功。

私は、炊事場に隣り合わせた食料置き場に、身を(ひそ)めた。

ここは、弥彦の管轄(かんかつ)。誰もやって来ない。そして、戸板(といた)一枚で、炊事場と(へだ)てられているので、気配(けはい)がしっかり分かる。

 

さあ、いつでもおいで~。

戦闘気質に火が着く。




第6章 第2話 犯人は?
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