第1話 初登城そしてかっきーと初稽古
私が叔父の所に来てから3日後、お城に挨拶に行くことになった。失礼にあたらないようにと、
「
何と、そんな所だったのかと、驚いた。
当日、
今日の朝稽古で会うのは2度目だったのに
「よっちゃんって呼んで。Pちゃんて呼んでいいよね。それと、タメ口でね」と、にこやかに念押しされた。面倒くさかったので、つい「いいよ」と言ってしまった。
よっちゃんは、子犬や子猫といった小動物を
よっちゃんは、笑顔で手を振ってくれるので、私も手を振ると、叔父にたしなめられた。
どうやら、よっちゃんが座っている辺りにはお城の
えっ?その中によっちゃん?
やっぱりよっちゃん、偉い人だったんだ。今までの接し方を振り返って、ちょっとまずかった?大丈夫?と、少し不安になる。
上杉謙信様がいらした。頭を下げる。
「ごめんね、お待たせしたね」
顔を上げると、驚きの声を上げられた。
「これは、また、可愛らしい女の子でしたか!」
「可愛らしくはないですが、女です」何か?
頭を下げ、答えるとよっちゃんが噴き出す様子が伺えた。
「師範がお見えになると言うことでしたので」直江兼続様が言葉を
あ、この方がかの有名な「愛」の
「いいじゃない。
“師範”ということで、私にお城勤務の方々に稽古をつけさせようと考えたようだった。
叔父は、剣の道では、名を輝かせた達人である。その叔父の道場での“師範”ということで、イカツイ男の人をイメージしてしまったのだろう。
「戦場に、女、男は関係ありません。かの巴御前も戦場に
私は、多少イラつきながら、はっきりと告げた。
「えっ?Pちゃん、
「これまで、何度も出ております。
よっちゃんが、
謙信様の柔らかい声が響く。
「では、お願いしますね」
“殿の英断”てヤツだ。兼続様も甘粕景継様も驚きの様子が
私は、稽古着に着替えた。
よっちゃんは待っていてくれて、鍛錬場へと案内してくれた。
大きな声が聞こえてくる。一歩、鍛錬上に踏み込む。
「くさっ!」思わず鼻を押さえる。
よっちゃんがフフフと笑う。
「男臭いでしょ。道場と違って、おじさん達だもんね」
兼続様が皆を制し、私を紹介してくださる。まず、叔父。
「お久しぶりです」もう何度も来ているんだな。みんなと
「ぱら流師範Pと申します」
そこへ影継様に連れられて、
「あっ、かっきー~」よっちゃんが、ニコニコ笑顔で迎える。
チラとこちらに向けた男の目を見た時、背筋が凍った。何という殺気・・・。
「柿崎影家、かっきーだよ。そして
「小姓?」
「うん、かっきーのね」
女人禁制の城に男
ムフフ、これは面白いぞ。
私は、自分のせいで場の空気が悪くなっていることも忘れ、ニマニマしながら、神棚へ参り、準備運動、そして持参した自分の木刀を取り出し、素振りを始めた。
場のどよめきは、増していた。何に対して反応しているのか、気にはなったが、どうでもいい。体を作るのが先だ。
一区切りしたところを
「まずは、お手合わせを。
タイミング良く、柿崎様が立ち上がる。
「では、かっきーと」
りょーかい。柿崎様は何か
待てよ、柿崎、柿崎って・・・あの、柿崎、よね。泣く子もビビる、戦場の猛獣。私の記憶では、今の
「柿崎様にお相手して頂けるなど、光栄です」これは本心。
なぜか、身震いする。武者震いか・・・。
「それでは、よろしくお願い致します」
静かにそう言うと、かっきーはにやりと笑う。斜めがちな顔の向き、そこから
すんげーいい男。こんな場でなければ、恋に落ちそう。
礼をし、
だが剣に対する思いが、私のそれとは明らかに違う。私は剣に、生きる道を見出した。ということは、かっきーは、死ぬ道を見出した・・・そのように感じた。
かっきーには、呼吸さえも見とれない。そう、この剣の達人の男は、刀を構えながら既に死の世界にいるのだ。ならば、命をぶつけるのみ。
「始め!」兼続様の声が響く。
上下左右、角度、位置を変えながら連打するも、打ち返されたり、避けられたり。本気なのか、遊ばれているのか・・・。いや、冷静になれ、勝機は必ずある。
かっきーの息が見えてきた。待った
「Pちゃん!頑張れっ!あっ、かっきーも」
よっちゃんの声が場内に響く。
かっきーの向かって右の脇腹の空気が
「そこまで」
兼続様が止める。
しまった、つい、体が動いてしまった。あそこで踏み込んだのは
「いや、待ってください!今のは」
勝負無しを求める私の声を、かっきーの
「オレの負け、あんた、つえーな」
気付けば、四半時(※約30分)の試合だった。
謙信様にお声かけ、頂く。
「お見事でしたよ。かっきー相手にあそこまで戦えた人を、私は知りませんよ」
恐縮して、はっと、頭を下げるのが精いっぱい。
よっちゃんは、かっきーに走り寄り、しきりに頭を下げている。そこへ謙信様が後ろからかっきーの肩に手をかける。
「かっきー、お疲れ様。いいものを見せてもらったよ」
かっきーは、
そうか、謙信様が大好きなんだね。そして、よっちゃんのことも。意外に素直な人。かっきーって、上手く感情に
ほっこりとした思いに包まれながら、私は汗を拭った。
第2章第2話へ続く