刀と梅干とよっちゃんとわたし   作:眞山紗由美

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柿崎影家との死闘の後、Pは、よっちゃんとも刀のお稽古。
そして、その後・・・。


第2章 お城でドキドキ初稽古 第2話 よっちゃんともお稽古

刀と梅干とよっちゃんとわたし

 

第2章 お城でドキドキ初稽古

 

 第2話 よっちゃんともお稽古

 

「よっちゃん?」

かっきーが置いていった木刀を差し出す。

「Pちゃん、ごめんね」

「相手、して」

「ごめん、つい」

「だから、相手して」怒ってなんかないよ、の意味を込めて、笑顔を向ける。

 

二人で構える。

 

よっちゃんはいつものように、ふわりふわりとかわし、さり気なく攻め込んでくる。

木刀の打ち合う音が場内に心地よく響く。

 

「そう来たか、ならばこっちか、と、見せかけて・・・」

よっちゃんとは、まだ、数える程しかお手合わせ願えていないが、いつも“勝負”という範疇(はんちゅう)の外へ行く。何だか別の世界へ抜けていく感じだ。だから、つい、心の中でよっちゃんに声をかけながら打ち込んでしまう。

これもまた、私にとっては初めての体験だから、尚更(なおさら)空中に浮かぶような感覚がして心地(ここち)よい。

時に踏み込み、時に退(しりぞ)き、揺れるように()ぎ、飛ぶように払い・・・

 

「そこまで!」今度は、叔父が割って入る。

「お前らは、キリがないからな」

「まるで、(まい)のようだな」景継様も、声をかけてくださる。

 

よっちゃんと私、二人、声をたてて笑いながら壁際に座る。

その途端(とたん)、私の道着をかすめながら、風とともにしゃがみ込んで来た人がいた。

かっきー。

「よっちゃんで、(いや)したろ」

耳元で(ささ)やき、去っていく。

その後ろを、小姓が私に頭をぺこりと下げ、ついて行った。

かっきーとの試合、悪寒(おかん)がする程の緊張感を、よっちゃんと刀を交えることで意識的に、払い落したのだ。

図星!さすが柿崎!

 

何事(なにごと)かと、驚き顔のよっちゃん。

「どうしたの?」

私は、体ごとよっちゃんに向き直る。

「楽しい!よっちゃんと打ち合うの!」素直(すなお)に言ってしまう。

「僕も!」よっちゃんも、体ごと私の方を向く。

本当に、笑顔がよく似合う。よっちゃんの笑顔を見ると、心も体もホコホコしてくる。

 

直後、次から次へと、手合わせを願い出られる。

私は、刀を交えながら、クセを直したり、足の運びを助言したりした。

 

よっちゃんも、次々に相手を()われている。

実力者であることが、認識されたのだ。

オマエらの目はフシアナか?!

この日、二度目の(つぶや)き。

 

一区切りした頃を見計(みはか)らい、場外へ出た。中は蒸し暑く、そのせいで、ホントおっさん臭がハンパない。

風に当たろうと、廊下(ろうか)を進もうとすると、よっちゃんの声。

「Pちゃん、お疲れ様!」

私は、不思議に思った。そこは、陽は当たっていないのに、どうしてよっちゃんは陽射しの中にいるように見えるのだろう。

 

何やかやと話していると、かっきーがふらりとやって来る。

「よっちゃん、P、邪魔(じゃま)

はっ?邪魔って・・・それにPって、Pって今、呼び捨て?

戸惑(とまど)っていると、よっちゃんが教えてくれる。

「かっきーは、今から、ここで昼寝するんだ」

へ?昼寝?そして、こんな、廊下?

 

「ごめん、かっきー」よっちゃんが、小声で言う。

見ると、もう、目、閉じてる。

寝息も聞こえてきた。

「もう、寝てる?ね、よっちゃん」(うかが)いながら小声でよっちゃんに聞く。

「うん、寝てるね」

「よね、もう寝たんだね」

「うん、寝たんだね」

二人でクスクス笑ってしまう。

 

確かめようと近づくが、こらえきれずに噴き出して、二人とも笑い声がもれてしまう。

「よっちゃん、P、邪魔!」

さっきより大きな声に、二人、驚く。

「まだ、起きてた?」息の声で、よっちゃんに確かめるが、肩が(ふる)える。

「まだ、だったね」よっちゃんも体が震えてる。

こらえきれず、クククと声が()れる。

 

「よっちゃんっ!Pっ!邪魔っ!!」

予想外に大きな声に、びっくりして、飛び退()く。

すかざず、よっちゃん、

「逃げろ!」

私達は(きびす)を返し、走り始める。

 

よっちゃんに手を引かれ、廊下を走る、走る、走る。

次第(しだい)におかしさが込み上げて来て、笑う、走りながら笑う。

廊下を走りきり、曲がった所で、どちらからともなく手を離し、止まる。

 

二人して、そこへ、へたり込むが、笑いが止まらない。

笑い過ぎて、お腹とほっぺたが、異常に痛い。

苦しくなって思わず仰向(あおむ)けに寝っ転がると、よっちゃんも、ごろっと寝っ転がっていた。

頭を並べるようにして、よっちゃんのは向こう、私のはこちら側、という感じで。

 

はあはあと、胸が大きく波打つほど、大きく息をついていると、よっちゃんが半身を起こし、こちらへ顔を向ける。

「おっかしいねぇ」

私も起き上がる。

「ホント、もう、たまらん」

二人でまた、()き出す。

 

予想外に、よっちゃんの顔が近かった。

落ち着いたはずの鼓動(こどう)が、戻ってくる。

走ったからね、笑ったからね、だから、こんなにドキドキしてるんだ。

なぜか、私は一人ごちる(※独り言を言う)。

そして、納得(なっとく)する。




第3章へ続く。
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