そして、語られるPの生い立ち。
いつも、明るく何の悩みもないように見えるPですが・・・。
また、昨晩のアノ事は、どう解決するのか?
少しシリアス要素アリのお話をお楽しみください。
刀と梅干とよっちゃんとわたし
第4章 お泊りのお稽古
第4話 Pの生い立ち
戻ると、よっちゃんも
お礼を言うと、よっちゃんは
お腹が空いているのかな?急いでご飯やおかずをよそう。
「頂きます」と、二人で言った
「あっ!おばちゃんの誤解、
よっちゃんは、
「それにしてもこのお漬物、芸術的だよ」
きゅうりと
「う~ん、相手が止まっていると、切りにくいんだよねえ。ちょっと、動いてくれると、ココって、切れると思うんだけど」
よっちゃんは、思い切り笑う。
「それって、かなりヤバい
でも、本当のことなんだけど。
片付けて、掃除まで一緒にしてくれた、よっちゃん。
何か、今日は、やけに笑顔が優しい。
昨夜、今朝と
何となくモヤるので、やっぱり誘った。
「
あぁ楽しい、よっちゃんと打ち合っていると楽しくてたまらない。
みんなは「二人の打ち合いは、まるで舞を舞ってるようだ」とか言うけど、この一体感は何だろう?
終了後、いつものように道場の入り口の階段に腰掛けて、汗を拭いながら
一生懸命鳴く蝉の声、風に揺らぐ木の葉の間から差し込む光が、地面にキラキラ揺れる。
「
音と光で頭がクラクラしたせいか、何故か、誰にも話したことのない話を始めた。
その日、母が妹を産んだ日、私は嬉しくてたまらない気持ちで、赤ちゃんと母を見に行った。
「また女か」吐き捨てるように言うと、その場を離れていった父。
母の顔は真っ白で、ハアハアと大きく息をするから、布団も大きく揺れていた。
お
子ども心に、尋常ではないことを察する。
「母様・・・」そっと呼びかけると、母は、うっすらと目を開けた。
「P・・・Pは…お姉ちゃんに…なった…ね」
「母様、桜が、桜が、もう咲くよ。見に行こう、みんなで行こう。赤ちゃんも、一緒に」
「P、強く、生きるのよ・・・自分・・・を、信じて・・・」
母は、目を開けているのに、私が見えないのか、
その手を
「母様、Pとまた、匂袋つくりましょう。そうだ、お風呂で背中を流してあげるよ。母様に教えてもらった石鹸使って」
「P・・・いい子ね・・・大好きよ・・・妹を・・・・・」
母の手から、力が抜けていく。
「母様?母様!!母様ぁ!!!」
私の大きな声で、赤ちゃんを抱いたお産婆さんが、慌てて戻って来る。
それから、医者様が呼ばれた。
曾祖父が、祖父が、祖母が、次々に家族が部屋に集まってくる。
ただ一人、父を除いて。
鳥がせわしなく朝を
ポツリポツリと咲き始めた桜に見送られ、母は旅立った。
直系の第一子である私は、曾祖父から剣術を仕込まれていた。
おむつも取れないうちから、曾祖父の営む道場に通わされ、礼儀作法や言葉遣い、心構えを徹底的に叩き込まれたのだ。
走ったり、跳んだり、体は鍛えられたが、刀は持たせてはもらえなかった。
ようやく持たされたのは5歳になって、母の死の直前だった。
嬉々として木刀を振るう私に、曾祖父も祖父も「筋が良い」と褒めてくれていた。
それなりに父は、少し目をかけてくれるようになった。
しかし、義弟が生まれ、事態は一変した。
継母は初めから私達を、好ましく思っていなかったが、あること無いこと、父に吹き込むようになった。「こんなワルイ事をした」「ヒドイ子」
父が、私達を見る目が鋭く、冷たいものになっていった。
そのうち、私達の体にはいつもどこかに
ある日、それは起こるべくして起きた。
目の前で、二歳の妹を父が
自分の事は我慢できても、許せなかった。それに、ここまで我慢してきたことも
次の瞬間、妹の声で我に返った。
「
父の喉元で木刀は止まった。
「お前、親を殺す気か…」
怒りに燃えて見
私と妹は、祖父の家に預けられた。
しかし、私達にとって、そこは天国だった。
曾祖父、祖父母、妹、私の5人で、安心と笑顔の中で、時が過ぎていった。
私には義弟がみんなで3人できたが、下の二人とは妹が嫁に行くまで会ったことがなかった。
私は、15で師範となり、大人の男相手にも、稽古をつけた。
妹は、父の策略で、13歳で嫁に出された。相手は15歳の
何が、どこで、こうなったのか。
婚礼の前夜
「守ってあげられなくて、ごめん」と、むせび泣く私に
「姉様は、ずっと私を守ってくれたじゃない」と背をさすってくれた妹。
婚礼の日、スキを見つけ、相手の男の脇腹に脇差の
「妹を不幸せにしたら、オマエを切る。決して忘れるな。覚えとけ」
妹は17歳で初めての子、女の子を産み、今は、昔の
継母の最初の子は、師範となるべく修行を積んだが、剣士には向いていなかったそうだ。次の一つ下の子も同様。一番下の子は“化ける”のを、待たれている。
妹の婚礼の日、初めて、下の二人と会った。十歳になった一番下は、初対面で私の顔を見るなり「怖い」と言いながら、わんわん泣いた。
「何が、どんな風に怖いのか言え」と、詰め寄ると
「体の周りの空気」と答えた。
この子は翌日から、曾祖父と祖父と私がやっている道場に、稽古に来るようになった。最低の父親だが、私の剣の腕は認めていた。私も、親を打ってしまった後ろめたさがある。
「Pちゃん、もう、一人で、何も
話し終わった私に、よっちゃんが顔を向ける。
何て優しい目、優しい声で話すの?包み込むような感じ。
そして、いたわるような、
でも、残念ながら、言葉の意味がよく分からない。
「Pちゃんは、母様が本当に大好きだったんだね」ポツリと言う。
あんなにうるさかった蝉の声が止まった。鼻の奥がきゅんとして、返事に困る。
はっとして、最も聞きたかったことを、聞いた。
「よっちゃん、昨夜・・・」
よっちゃんは、少し、もじもじしながら答えてくれた。
「うなされる声がしたんだ、Pちゃんの。
びっくりして、様子を見に行ったら、ちゃんとお布団に入ってたから、帰ろうとしたの。
そしたら、『行かないで』って、手、伸ばされて。
どうしようって思ってたら『待って、行かないで』って」
「えっ?ちょっ、えっ?そ、そう言ったんだね、私」
「うん。夢でも見てるのかなと思ったけど、Pちゃん目開けて、僕を見てたし、凄く悲しそうで苦しそうだったから、つい、その手を
そしたら『
「よっちゃん、あの、あのさ・・・」
「で、Pちゃんの隣に引き込まれてちゃったんだ。
Pちゃん『私を離さないで』って、きつく抱き着いてきて、その後・・・後・・・あの言葉を・・・」
よっちゃんの声が、だんだん小さくなっていく。
そして、耳まで赤くなっていく。
これは、いけない!大変だ!勢い込んで、必死で話す。
「よっちゃん、ごめん、ごめん、ごめん。あのね、夢、夢を見てたの、母様の。
母様が遠くに行ってしまおうとしてて、私、母様を連れ戻したくて…それで」
「それで?」よっちゃんは、戸惑っているような顔をしている。
「うん、それで、『行かないで』って、手、伸ばしたり」
「手、伸ばしたり?」
「『傍に居て』って、引っ張ったり」
「引っ張ったり?」
「う、うん。そ、そして、あ、あの・・・」これ以上は、恥かしくて言えない。
しばし、重い沈黙。
だが、ちゃんと説明しないと!だから、声をひっくり返しながら、必死で続きを
「は、は、本当にごめん。夢、見てたのに、目、開けてたとか、コワイよねえ~。
笑っちゃう!変だよねえ~。
母様の夢ね、たまに見て、うなされちゃうんだよねぇ、ハハハぁ。
いい歳してんのにねえ~ハハ~。
ハッハッハッ、忘れられないんだよねえ、母様のこと、ハハハ~~~何年
笑うしかない、もう、笑うしかない。笑って
私のカラ笑いが
再び、耳をつんざくように、蝉が鳴き始めた。もう、何を言っても聞こえないほど。
訳の分からない気持ちを振り払うために、水桶の中の梅を、こちらを向いて言葉を失っているよっちゃんの口に押し込んだ。
突然で驚いたろうに、
「すっぱ!」
いつものリアクション。
よっちゃんも私に、梅をくれる。
「すっぱ!」そして二人で笑う。
ま、いっか、今回のところは。誤解は解けた?
向こうを見ているよっちゃん。右のほっぺが、梅でぷっくり膨れている。
チカチカと太陽は、夏の盛りを告げていた。
少しして、叔父が帰宅。台所の惨状を見て、私に「台所立ち入り禁止令」を言い渡す。
「
そこまで、よっちゃんは付き合ってくれて、帰っていった。
次は第5章 乗馬のお稽古 第1話 よっちゃんがお見合いをした
です。
8月21日(月)お昼ごろ投稿予定です。
物語は、いよいよ後半になります。
お楽しみに。