ショピングモールの前で、俺はイオリを待っていた。
正直に言おう。結構心踊っている。
風紀委員会に入ってからというともの、あまりイオリと遊ぶ機会がなかった。彼女とは中等部からの仲だ。当時はよく休日に遊びに出掛けていたりしていたが、最近は休日もパトロールや訓練やらでそんな機会が少なかった。久しぶりの友人との買い物、思わず笑みがこぼれる。
「何でそんな怪しげに笑って立ってるの…?カリヤ…」
「うわっ!イオリいつからそこに!?」
「今来たばっかりだけど…なんか挙動不審だよ?」
「いや、別になんでもない」
考え事をしていると、気付いたら来ていたイオリに驚く。
「ほら、行こう!」
私服姿のイオリを目の保養にしつつ、ショピングモール内に入る。
「先にそっちの用事済ませるか?俺の買い物はいつでもいいし」
「じゃあそうする」
そう言ってイオリはスタスタ歩いていく。置いて行かれないよう俺も着いていくが、イオリはその性格からか歩くのが速い。
しばらく歩けば、イオリが立ち止まる。どんな店かと見てると、そこにあったのは、
「カフェ?イオリの用事ってここ?」
「そう」
一言そう言うとイオリは店の中に入た。俺も置いていかれないよう着いて入る。
何か特別に飲みたいものでもあるのかと思ったが、意外にもイオリが頼んだのは普通のコーヒーだった。
とりあえず俺も同じものを頼む。
少しの沈黙の後、イオリが口を開いた。
「怪我は大丈夫なの?」
「ああ、まだ痛む所もあるけど普通に生活出来るレベルだよ」
「ならいい」
「…………で、用事ってなんだ?コーヒー飲みに来たわけでもないだろうし、まして俺の怪我の具合聞くためにわざわざって事でもないだろ?」
「あー…そうなんだけど…」
どうも歯切れの悪いイオリ。彼女らしくもない。暫くの沈黙の後意を決したかのように彼女は俺の目を見た。
「カリヤ…お前………風紀委員の転覆を狙ってるのか!?」
「へ?なんの事?」
「とぼけるな!アコちゃんが最近お前の行動が怪しいって、最近やけに重要業務に携わろうとしたり、この前は委員長と話した後怪しげな笑みを浮かべてたって言ってたぞ!」
「ちょ、落ち着いてイオリ、銃を向けないで」
【⠀〇月●日 (日) 】
今日はイオリとショピングモールへ行った。
集合してそうそうカフェに連れて行かれ、イオリから予想もしなかった質問をされた。
結論から言おう。
アコ先輩が俺の最近の行動を見て誤解していたらしい。俺は業務を手伝おうとしていただけだし、委員長に褒められて普通に喜んでただけだ。
だか、それを見て怪しんだ先輩は、俺と仲のいいイオリに何か企んでないか探って貰おうとした。詳細をイオリに説明した所、混乱した彼女が暴走したという事だ。
アコ先輩は意外と疑心暗鬼な所がある。自分にとって予想外な事があると直ぐにテロだとか言い出す事も時々ある。
そしてイオリは猪突猛進な所がある。さり気なく人を探ったりするのには向かないタイプだ。
アコ先輩には俺から直接連絡して誤解を解いた。
元々真面目には働いていたから丁寧に説明したら直ぐに誤解は解けた。
でもエデン条約が近づいている大切な時期にそんな紛らわしい事をするなと怒られた。
理不尽である。あの横乳め……
と、愚痴はこのくらいにして銃剣についてだが、なかなか高性能で頑丈なものが手に入った。何でもミレニアムのエンジニア部が作った、最新技術が詰め込まれた超高性能ナイフらしい。
何故ミレニアムの生徒が作ったものがゲヘナのショピングモールに売られているのかは知らないが、いい買い物をした。これだけで出掛けたかいがあるというものだ。
【⠀〇月◆日 (月) 】
今日学校に行ったらアコ先輩が委員長に怒られていた。
どうやら昨日の誤解の件が、委員長にバレたようだ。
アコ先輩は委員長には頭が上がらない。それは誰が見ても一目瞭然で、ゲヘナ生徒からは風紀委員長の犬と揶揄される程だ。
委員長が俺の為に怒ってくれているのを見ると少し嬉しいが、自業自得とはいえアコ先輩が俺関連で怒られてるのを見てしまうとあまりいい気持ちにはならない。
子犬のように縮こまっているアコ先輩を気遣いつつ、委員長に俺にも誤解される用な行動があったかもしれないと、フォローを入れて置いた。
委員長にあなたも怒っていいと言われたが、あのアコ先輩を見てそんな事はできない。
というか俺は元々アコ先輩や委員長の負担を減らしたかったのだからそれは本末転倒になってしまう。
俺は大丈夫だと真剣に伝えたら、ちゃんと分かってくれた。
やっぱり委員長は良い人だ。多くのゲヘナ学生は委員長を怖がるがやっぱりそんなことは無い。むしろ根は本当に優しい人なのだろう。
【⠀△月★日 (火) 午前 】
さっき学校へ着いたら出張へ行く委員長とすれ違った。軽く挨拶したら返してくれた上頑張れと激励を送ってくれた。嬉しい。
でも何に着いて頑張れなのだろうか、もしや委員長は俺がアコ先輩の業務を手伝おうとしている事に勘づいているのかもしれない。
流石元情報部所属の委員長だ、組織の末端である俺みたいな平委員の行動も見逃さない洞察力。そこに痺れる憧れる!
でも安心して欲しい、いつか委員長の仕事も少なくして残業なんてしなくていいようにしてみせます!
そういえばさっきアコ先輩に呼ばれていたんだった。委員長に激励されて直ぐにアコ先輩を待たせ時間を取ってしまっては、次に委員長に合わせる顔がない。
急ごう。
【⠀△月★日 (火) 正午頃 】
初めて一人での任務を任せられた。
しかも委員長からの推薦だ。本来なら委員長が解決する予定の事件だったらしいのだが、俺ならできると任せてくれたらしい。おそらくこの前の学食占領事件を一人で収束させた実績をかってくれたのだろう。
そんなところから委員長の仕事を減らす事に繋がるとは思ってもいなかった。
これなら爆発で全身丸焦げになって銃剣を折ったのも全部込みでおつりがくるくらいだ。
委員長の期待を裏切らないように、いつも以上に気合いを入れて仕事に取り掛かろう。
肝心な任務の内容だが、なんとゲヘナ自治区外での仕事だった。それもブラックマーケットだ。
何でもゲヘナ学園の女子生徒の初等部時代の卒業写真がブラックマーケットで出回っているらしい。
俺の仕事はその流出先を確認した後、出来る限り写真を回収。そして流出した元を探る。ブラックマーケットで起こったことだから任務遂行に手段は問わないらしい。
この任務を遂行すれば、委員長が行かなければならない難しい任務やアコ先輩が片付けなければいけない書類業務も任せられるようになるかもしれない。
頑張ろう。
風紀委員メンバーからの評価1~5
イオリ 5
カリヤへの印象:親友。中等部時代からカリヤの真面目さをかってかなり信用している。だからこそアコから話を聞いた時混乱して暴走した。
アコ 3
カリヤへの印象:有能な後輩。仕事も人間関係もそつなくこなすカリヤを評価している。でも委員長に害が及ぶなら容赦はしない。
ヒナ 3
カリヤへの印象:優秀な風紀委員。一人で美食研究会を撃退したと聞いてそんな人材が今までどこに隠れていたのかと驚いた。
チナツ 3
カリヤへの印象:真面目な先輩。仕事熱心なのはいいと思うが怪我しているなら安静にしていて欲しいと思っている。