推しの子 RTA 黒川あかねで「B小町の絶対的エース」取得 作:アクあか……いい……
ほぼほぼカット状態になると思います。
漫画とアニメ見よう!
かなちゃん。
有馬かな。
6才の私、黒川あかねの大好きな、同い年の天才子役。
大好きな理由は色々ある。
一言でまとめるなら「彼女の演技がキラキラしていたから」。
こうなると思う。
その日は、オーディションだった。
かなちゃんに憧れて、かなちゃんの様に髪を切ってもらって、かなちゃんが良くかぶっているような帽子をかぶって。
そして、同じオーディションに出ていたかなちゃんから聞かされた言葉は……。
「演技なんてどーでも良いの!」
「私はアンタみたいなのが一番嫌い」
どうして?
どうしてそんな事言うの?
分からないよ、かなちゃん……。
たくさん勉強すれば分かるのかな?
本屋で見かけたベストセラーって帯があった「人の心がよくわかる本」。
漢字は難しいし、内容も難しいけど、頑張って読んだ。
それでも、私は、かなちゃんのことを分からなかった。
もっといっぱい勉強すれば分かるようになるのかな?
かなちゃんの事、もっと調べればわかるようになるのかな?
私の真似なんかするな、って言われたし、また髪の毛伸ばしたほうがいいのかな?
お母さん「良く似合ってるよ。かわいい」って言ってくれたんだけどな。
でも、やっぱり、まだ、かなちゃんとお友達になりたい。
***
テレビでかなちゃんみたいにキラキラしている人を見かけた。
B小町のアイさん。
既に亡くなっている人みたいだけど……。
かなちゃんは私の真似なんかするな、って言ってた。
私もキラキラしたいなら、この人を参考にしたほうがいいのかな?
……けど、やっぱり私はかなちゃんの演技のほうが好きかな。
なにかヒントになるかもしれないし、今度、アイさんについて調べてみよう。
***
アイちゃんを調べるために買ってもらったB小町のライブDVD。
ライブの映像の中では、キラキラしたアイちゃんが歌って踊っている。
すごいなぁ……!
アイちゃん、すごい!
一番はかなちゃんだけど、二番目にすごい!
ダンスは、めいめいが、
歌は、ありぴゃんときゅんぱんのほうが上手。
けれども、アイちゃんのほうがすごくキラキラしてる。
どうしてだろう?
かわいいから?
表情の作り方がうまいから?
見せ方が上手だから?
わからない。
けど、アイドルになって、こんな風に私もキラキラできたら、かなちゃんと仲良くなれるのかな?
***
ある日、気になる男の子と共演することになった。
気になるといっても好きとかそういうのじゃなく、むしろ苦手な子だ。
性格とかじゃなく子役として苦手だ。
運よく手に入った「それが始まり」というかなちゃんとアイちゃんが出てる何年か前の映画のDVD。わくわくしながら見たら、かなちゃんが演技で同じくらいの子供に負けていた。
星野アクアくん、不気味な演技でかなちゃんの演技を負かしちゃった男の子。
……正直、かなちゃんが演技で負けたこの部分だけは忘れてしまいたい。
役者しながらアイドルしていいんだって思えたアイちゃんの部分はちゃんと覚えておくけど。
かなちゃんは、もっと身勝手で、かっこよくて、周りを食べちゃう様な演技をするべきだと思う。周りに合わせるんじゃなくて、周りに合わさせるような演技を見たい。
思い出して、ちょっとイライラしちゃう。アクアくんに負けちゃったかなちゃんの演技は嫌い。最近のかなちゃんの演技はもっと嫌い。
……だめだ、深呼吸して落ち着かないと。
しばらくしたら出番が訪れた。
アクアくんの演技だけど、すごいけど、思っていたほどではなかった。
演技をちゃんと作りこんではいる。けどそれだけで、周りにはなにも影響を与えないような演技だ。
あの映画の時の演技はまぐれだったのかな。
そんなことを思いつつ、星野アクアという名前は記憶の奥底へしまわれた。
***
しばらく、演技とアイドルのレッスンを続けてきて、どうも私は演技に向いているように感じる。
別に、歌とかダンスが下手というわけではないと思う。
けれども、とびぬけて上手いとも言えない。
よくもわるくも平均的とも言える。
ただ、歌とダンスのレッスンで上手くなっていく感覚は素直に楽しいと思える。
演技のほうは、色んな役になりきるというのはすっごく楽しい。
歌やダンスよりも褒められるのも嬉しい。
もっと上手い人は周りにいっぱいいる。
私も見習ってもっと上手くなりたい。
できれば、かなちゃんみたいにキラキラした演技がしたい。
けど、どうすればいいのかはわからない。
何が足りてないのかな?
***
私は、誰かについて調べることをずっと続けてきた。
中学生になってようやく壁を打ち破ったというか、本当の意味でプロファイリングができるようになってきたという実感を持てた。
ただ、何かについて深く知るというのは、決していいことだけではなかった。
アイのキラキラしたもの。あれは計算づくの作られたもの。それはいい。
私の演技だって作られたものとしか言えない。
舞台の上で作られた自分を見せる。演劇とかアイドルとか、きっとそういうものだ。
アイのプロファイリングを進めていくとどうしても隠し子がいるとしか思えない。もちろん、何の証拠もないことだが、感情のラインなんかを考えるとピッタリと当てはまる。当てはまってしまう。
アイドルの私生活なんてどうでもいい、舞台の上、画面を通じて、綺麗なものを見せてくれれば……。
そう思っていたはずなのに、意外と衝撃を受けている。
プロファイリングを通して、アイの家庭環境は恵まれたものではないと知っている。
その私生活はけっして、キラキラしたものでないことは感じていた。
でも、それでも、どこかで、キラキラして完璧であって欲しいと思っていたみたいだ。
ファンというのは、私は勝手だなぁ……と自分に呆れて、渇いた笑いが出た。
なんかちょっと落ち込んじゃったから、昔のかなちゃんの演技見て元気もらおうかなと席を立とうとした時にふと気づいた。
――私もかなちゃんに勝手な理想を押し付けてるんじゃない?
違う!私はかなちゃんのこと、好きだもん。
――昔のかなちゃんの演技は好きだけど今のかなちゃんの演技は嫌いでしょ?
抑えてるかなちゃんが間違ってるんだよ!かなちゃんの演技はもっと凄くて、太陽みたいに輝いてて……。
――かなちゃん自身が抑えることを選んだのに、ただのファンがいうのはおかしくない?
だって、だって、輝いてないんだもん。前の演技のほうがすごいのは間違いないよ!
――すごい演技ではなく周りが求める演技をしているんでしょ?
周りが求める演技より周りに合わさせる演技のほうがいいよ!
――かなちゃんが自身で選んだ演技ではなくて、私という周りの人間に合わせた演技をしてほしいのね?
違う!違う!違うの! かなちゃんは……有馬かなは! もっと、もっと……
ファンの私とどこか一線を引いた私が言い合いしている。
考えがまとまらない。
気持ち悪い。
その日はぐちゃぐちゃの思考のまま眠れなかった。
***
すごく時間はかかったけど、ようやく少しは落ち着いた。
結局のところ、黒川あかねはどうしようもないほど有馬かなの厄介ファンなのだ。たぶん、一生厄介ファンのままだろう。まずはそれを自覚しなければならない。
でも、かなちゃんに迷惑をかけるのは絶対間違ってる。
絶対に、絶対に、嫌だ。
だから、「私個人はこう思う」のスタンスを崩さない。
どうしようもないほど、またあの周りを食べちゃうような演技が見たいけど、絶対に押し付けはしない。
なるべく否定だけでなく、理解をするようにする。かなちゃんの抑えた演技は嫌いだ。嫌いだけど、ただ抑えただけじゃない。相手に光を当てるような技術が使われた演技だ。かなちゃんの今の役で周りを食べちゃう演技をすれば、全体が滅茶苦茶になってしまう。そこはちゃんと理解しないといけない。
かなちゃんの歌はあまり好きじゃなかった。周りに合わせるような演技になってきた時になんで歌なんて……、って思ってたからかもしれない。
でも、改めて聞いてみると2枚目、3枚目とどんどん上手くなっていってる。努力してるんだ。そう思うとなんだかちょっと好きになってきた。
……頼んだら、CDにサインくれないかな?
ピーマン体操以降は売上ガックリ落ちたから、かなちゃんの中では黒歴史扱いかも?
***
高校は陽東高校の芸能科にすることにした。
今の中学校から高校への進学も考えたのだけど、出席率の問題もある。芸能科だとある程度日程の融通も効くとのことだ。
あとは、どうにも浮いているというか……。仕事で休むことや早退や遅刻があるとちょっと周りの目が気になる。文句を言われない成績はキープしているつもりだが、どうしても先生とかにも迷惑がかかってると思う。
入学式を終え、クラス分けで教室に向かうと、隣の席には、有馬かながいた。
かなちゃん! かなちゃん! 久しぶりの生かなちゃん!
制服のかなちゃんも最高にかわいい。
これは、チャンスだ。声をかけて一緒に稽古をする仲になれたら……
「んふふふ……」
おっと、声に出ちゃった。
「何よ、気持ち悪い笑いしちゃって……」
「久しぶりにかなちゃんに会えたからね」
「ふん、見てなさい。今に主演とって見返してあげるわ」
「役者として最近出演作ない」って挑発に取られちゃったのか、返答はトゲトゲしいものだった。けれど、もう少しキレ味が鋭い返答をしてくるはずなんだけど……。
私も私で、手が震えそう。やりたい役を片っ端からかなちゃんに取られたのはいまだに後を引くものがある。
「ねぇ、かなちゃん、この後、二人でカラオケにでも行かない? 話したいことがあるんだ」
「いやよ。一人で稽古してたほうがまだマシだわ」
「よかったら、稽古、私が付き合うよ?」
「はぁ?」
口が悪いのは知ってるけど、その馬鹿を見るようなすさまじい顔でのリアクションは酷くないかな?
「……劇団ララライの天才役者様は思ったよりも暇なのね?」
うーん、ここは挑発返しでいいかな? 乗ってくるはず。
「“元”天才子役様ほどではないよ。別に演技で負けるのが怖いっていうならいいけど?」
「いい度胸ね。後で吠え面かくんじゃないわよ!」
***
「で、話って何よ?」
カラオケの一室でかなちゃんが問いかけてくる。
「たまに一緒に稽古しない、ってお誘いだよ?」
「なんでよ? ララライの人と稽古すればいいでしょ?」
かなちゃんは不機嫌そうにそっぽを向いてジュースを飲んだ。
「だって、私はかなちゃんのファンだから……。一緒に稽古したいって思うのは変かな?」
「嘘ばっかりついてんじゃないわよ!私のどこが好きなのよ!?」
かなちゃんは少し声を荒げてそう言う。
「最初に見たのは、小学校に行く前だったかな。眩しく輝く太陽みたいな演技見てファンになった。しばらくして周りに合わせて、周りを輝かせる演技になったけど、それだって色んな工夫をしているのはわかる。あとは頑張り屋なところも好きだよ。ピーマン嫌いなのに「ピーマン体操」の時いっぱい食べてたのとか凄いなって思うよ」
グッとうめき声を上げて、かなちゃんはうつむいて沈黙した。
「………絶対、公言したことないはずだけど、どこで知ったのよ?」
「ファンだからいっぱい見たよ。だから気が付いたの」
「……ああ認めるわよ! 一応、あんたは私のファンなんでしょうね!」
ヤケクソぎみに顔を赤くしながらかなちゃんは叫んだ。
「かなちゃんは周りに合わせるところあるから、最近、全力で演技できていないよね。抑えるんじゃなくて全力で演技したいって思いもあるんじゃないかな? 私は全力で演技してるかなちゃんがみたいの。それに、私、最近かなちゃんが共演した人より上手いって自負はあるよ」
「……ああ、そう。私と勝負したいのね。それはとても楽しそうな提案だわ」
感情がにじみでた口調から一転、落ち着いた口調とともにかなちゃんが牙をむくようにとてもイイ笑顔をした。
写真に残したかったが流石に自重した。
演技の時は録画するつもりだし、もっといいものが撮れるから我慢。我慢。