推しの子 RTA 黒川あかねで「B小町の絶対的エース」取得   作:アクあか……いい……

6 / 10
03裏 黒川あかねと苺プロ

 恋愛リアリティショーは無難に終了した。

 「あかねのアイの真似をしてる時の、目力的なのがすごくて、視線外せない」

 「あかねちゃん、かわいく、真面目で、頑張り屋、推せる」

 など、アクアくんの協力もあって、私、黒川あかね自身も割と好評で、カップル成立こそなかったものの番組も評判がいい。

 

 そんな中、苺プロの社長のミヤコさんと次の仕事についての相談をしている。

 

 「役者系の仕事っていうのは予想してたけど、有馬かなとの共演ね」

 「二人で稽古しても、かなちゃんのほうがうまいって思うくらいの実力があります。かなちゃん自身の力を示すことができれば、もっとかなちゃんにもいい仕事が来るはずです」

 「いや、私のことじゃなく、あんた自身の事を考えなさいよ」

 

 かなちゃんが自分のこと考えろって言ってくれてる。かなちゃん優しい。

 

 「カンフル剤が欲しいって言ってたのはかなちゃんじゃない。私個人としては演技とアイドルの仕事ができれば結構満足だし、ファンとしてかなちゃんの主演がまた見たいって思いが強いもん」

 「いや、まぁ、私としてはありがたいんだけどね……」

 「頑張ってはみるけど、仕事取れるかどうかは断言できないわよ」

 

 その時は、私の知名度が足りなかったということだろう。それは仕方ない。

 

 「わかりました。よろしくお願いします」

 

***

 

 私とかなちゃんとの共演が決まった。

 低予算の単発のネットドラマ、全高校にはそれぞれ法廷が存在し、そのうちの一つの高校の法廷を舞台に弁護士役と検事役が争うって内容だ。

 私がこういうのも何だけど、全学校に法廷って治安悪すぎない? 学生が弁護士と検事? よくこんな漫画かアニメみたいなおかしな設定の企画、原作なしで通ったね? と割といろんな疑問はでてくる。

 だからこそ、あまり一般知名度のない私と子役ではなく役者としての評価があまりないかなちゃんが採用されたって面もあるから何とも言えない。

 けれども、盛り上がり所の討論の部分は作った人の情熱が伝わるみたいだと台本を読んで感じたので、上手く演じて、いい作品にしたい。

 

 「まっさか、あんたとの仕事がほんとうにくるとはねぇ……」

 「んふふ、ほんとうに幸せだなぁ。いい演技して次に繋げないと……」

 「あんたはいつでも幸せそうね……」

 

 いつものように呆れた顔でかなちゃんが返してくる。

 

 「黒川さん、有馬さん、お願いします」

 

 スタッフさんが声をかけてくる。そろそろ本番の様だ。

 

 「かなちゃん、私、全力で行くから。」

 

 アイの他人の視線を集める目を意識しながら、かなちゃんに声をかける。

 

 「フン! 上等よ! 返り討ちにしてあげるわ!」

 

***

 

 本当の天才役者とは黒川あかねのような役者のことをいうのだろう。

 私、有馬かなは、自分のファンを名乗る黒川あかねと一緒に稽古した時にそう感じた。

 

 幼い頃は何も考えず好き勝手演技していれば皆から天才子役と言われた。

 人気が落ちてきて、私が天才じゃないと知って、私は周りに合わせる演技を覚えた。

 それでも、お父さんもお母さんも所属事務所も皆も離れて行ってひとりぼっち。

 わずかなファンが見ているのは、昔の私の面影だけ。今の私を見ていない。

 

 あかねが声をかけてきたのはそんな時だった。

 

 あかねが一番好きなのは昔の好き勝手演技していたころの私だということは話しているうちに分かった。この子も私の面影だけ見てるのかとも思ったけど、あかねはきちんと今の私を見て、評価してくれている。

 一緒に演技の稽古をして、幸せそうに笑うあかねを見て、ああ、この子は私のファンなんだって心から納得できた。

 

 あんたにファンだって言ってもらえて、私なんかと一緒にいて幸せそうに笑う姿を見て、私がどれほど嬉しかったことか、どれだけ救われたのか。あんたにはきっと分からないだろう。

 

 私が磨いてきた技術をほんの数回で身に着けるその才能へどれだけ嫉妬したか、見るべき所がなくなったと判断されて捨てられるんじゃないかとどれだけ恐怖したか、あんたお得意のプロファイリングでもきっと分からないだろう。

 

 

 

 そして、今、本番が始まろうとしている中、あかねがいつからか演技中に使うようになった星の様な強さを持った目が強烈な存在感を放つ。そしてその目が叫んでいる。

 

 ――かなちゃんの全部を見せて!

 

 ああ。やってやろうじゃない。

 ファンの期待に応えるのが演者ってものよ!

 

 これが、誰かに認められたくて、誰かに褒められたくて、誰かが傍にいてくれたらそれでいいみっともない「有馬かな」よ!

 

 それでも、絶対にあんたに負けたくない「有馬かな」よ!

 

 あんたの期待に応える自分でいたい「有馬かな」よ!

 

 私のこと、好きなだけその目に焼き付けなさい!

 

 

***

 

 「んふふふ、ふふふっふふふ。かなちゃんの演技最高だったなぁ。太陽みたいにキラキラして。ふふふ」

 

 あかねが控室で上機嫌に笑っている。撮影が終わってからずっとこの調子だ。

 

 「こっちは滅茶苦茶疲れて、もう動くのもしんどいのに、あんたは元気そうね」

 

 私の言葉に、あかねは笑いを止めて意外そうな視線を向けてきた。

 

 「なによ?」

 「かなちゃんが弱い所見せるなんて珍しいね。大丈夫?」

 

 あかねの前じゃあ、すごい私で、あかねが憧れる私でいたかった。

 でも、あの演技のあと、弱い私も認めてほしいって思った。

 あかねなら、大丈夫って、自然とそう思えた。

 

 「……別にいいじゃない。あんたは推しのキレイなところしか認めないタイプじゃないでしょ?」

 「たしかに、そうありたいとは思うけど……でも、友達としてはかなちゃんが弱いところ見せてくれてちょっと嬉しいかも!」

 「……相変わらず、あんたはいっつも幸せそうね。」

 

 いつもなら呆れた笑顔を浮かべるところだけど、今はちょっと幸せな笑顔を浮かべていたと思う。

 

***

 

 「ねぇ、あかねちゃん、マ……アイの演技ってどうやってるの?」

 

 B小町としてのレッスンの休憩中にルビーちゃんが尋ねてきた。ルビーちゃんは割と歌やダンスでアイの真似をした時に、アイのことママと言いそうになる。

 触れるに触れられないし、これ、大丈夫なのって思うけど、頻度は下がってきてるから大丈夫と思いたい。

 

 「私の場合は、アイについてひたすら調べることから始めたかな。どういう性格で何が好きで、何が嫌いなのか、とかね」

 「並みのアイ推しよりアイに詳しそう! 私もできるかな?」

 

 ルビーちゃんは明るくそういうが、正直ルビーちゃんにはあまりお勧めできないんだよね。

 

 「私のやり方で、重要なのはアイについて知ることなんだ。きれいな部分もアイが見せたくないだろう部分も含めてなるべく多くのことをね」

 「アイが見せたくないところ?」

 「最強で無敵のアイドル、なんて言われても人間だからね。どうしてもそういう部分は存在するよ。アイはとても上手く隠していたけど、ふっとした時に出るそれを集める。アイのファンとしては、愉快なことじゃない。私がやっておいてなんだけど、同じこと自分はされたくないな、とも思うよ」

 

 割とこれでもオブラートに包んだつもりだけど……それでも厳しかったかな? ルビーちゃんの母であるアイが愛ということをよくわからなかった、なんて考察は流石に言えないし、調べて、たどり着いてほしくないから警告の意味を含めて言ってみたんだけど……。

 

 「マ、アイは……、アイは、いろいろ苦しいこともあったのかな?」

 

  明らかにママって言おうとしてたよね。割とショックだった?

 

 「そうだね。でもステージ上では皆に愛されるアイドルであろうとしていた。私はそう思ってる」

 「うん。……私にはあかねちゃんと同じやり方は難しそうっていうのはわかった。教えてくれてありがとう」

 「いいよ。同じB小町の仲間だもん」

 

 ううう、やっちゃったかな。きまずいよぉ……。

 

***

 

 

 「あかね、アイのこと、今は、どのくらいわかってるんだ?」

 

 二人っきりの苺プロの部屋でアクアくんが尋ねてきた。これはプロファイリングでできることというよりも隠し子に気付いているかどうかの問いかけかな。素直に答えようか。

 

 「本名は星野アイで、いいのかな?」

 「そうだ。想像の通り、俺とルビーはアイの隠し子だ」

 

 アイに隠し子がいるという設定、兄妹そろってアイを推すというより信奉している、斎藤ミヤコさんが保護者なのに星野姓、アイの苗字は非公開からつなぎ合わせれば、そうするのが自然と思ってた。けど、ルビーちゃんがママ呼びしかけることが結構あったから、確信に至った。

 

 「今、俺は父親を探している。過去、アイはララライのワークショップで恋をしたという話を聞いた。そのため、ララライの昔の役者の中に父親がいるのでは、と考えている」

 「私に父親探すのを協力してくれ、というわけかな?」

 「その通りだ」

 

 アクアくん、あったこともない父親には興味ないタイプに思える。むしろ、アイを放置したことに怒りそう。いや、アイの殺人事件は、協力者の存在が疑われていたね。

 

 「……父親が、アイの引っ越したばかりの新居をストーカーにばらしたと思っている?」

 

 少し目を見開いた後、彼はすこし自嘲するような笑みを浮かべて答えた。

 

 「……どうだろうな」

 「過去の稽古の記録映像みて、アクアくんかルビーちゃんに似た雰囲気のある人を調べる程度ならしてもいいけど、当時、未成年ならロクに罪に問えないよね。どうするの?」

 「……さてな」

 

 言葉を濁した。直接的に復讐するつもりかな。

 父親が怪しいってことに対しても、言葉を濁さず、嘘ついてそれらしく振る舞えばいいのに。アクアくんが頼む側だからか、嘘をなるべくつかずにいようとするところは嫌いじゃないけど……。

 なんというか、復讐に向いてないよね。

 

 「調べはする。するけど、未成年の場合は、アクアくんにその人の名前は告げない。直接的に復讐なんてされたら、かなちゃん悲しむからね」

 「……すまない。調べてくれることに感謝する」

 

 そういって、アクアくんは頭を下げる。

 彼は復讐をするには甘すぎる。確信が得られるまで決して直接的な行動に及ばないだろう。そして、一人で何年前もの殺人犯が死亡している事件の殺人示唆を確信するなんてまず無理だろう。

 おそらく、彼自身それを理解した上で、止まれないんだろうな、という同情心がある。

 

 「法の裁きを与えるとか、かなちゃんが悲しまない範囲なら好きにしてくれていいよ。私も誰にも言わない。ただし、私がかなちゃんに悪影響があるって感じたら、ミヤコさんに言うし、復讐自体を止めにかかるよ?」

 「わかった。善処する」

 

 かなちゃんさえ幸せならそれでいい。結局はそれに落ち着く。

 ただ、同情心はあるから、過去の稽古映像を見るという程度の調べものくらいはしてあげてもいい。 

 

 その後、調べた結果、アクアくんによく似た人、カミキヒカルは未成年だった。それらしい人はいたけど未成年だったとアクアくんに報告すれば、能面のような顔で感謝する、と頭を下げてきた。

 

***

 

 「ジャパンアイドルフェスへの出演も決まったことだし、そろそろB小町のセンター決めなきゃね」

 

 MEMちょがいきなりカメラをセットしてからそんな提案をしてきた。

 

 「いや、あかね一択でしょ?」

 

 かなちゃんがさも当然のようにいった。

 

 「え、私?」

 「アイをあれだけ上手く真似できるし、私も異論ないよー」

 「私も異論なし」

 「え、え?」

 「はい。というわけでジャパンアイドルフェスでセンターを務めるのは黒川あかねちゃんです!」

 

 3人がパチパチパチと手を叩く。

 

 「センターに選ばれた今のお気持ちを一言!」

 「え?ええ? あ、足を引っ張らないように頑張ります?」

 「ということで、センター決定の報告でした!」

 「え? ほんとに決定なの? なにこれ? え? え?」

 

 「【B小町】いきなりセンター決定を告げてみた」というタイトルで投稿された短い動画はアワアワしてるあかねちゃんかわいいなど、意外と好評らしい。私は恥ずかしくて見れていない。

 

***

 

 私、有馬かなは、B小町のメンバーとして歌やダンスを練習に取り組んでいる。

 アイドルが自分には向いてるとは思えないが、苺プロには、役者としての仕事を取ってきてもらった。

 だったら、与えられたアイドルという仕事もキチンとこなさなくてはならない。

 そうはいっても、疲れるものは疲れる。

 他メンバーほど、アイドルに対しての熱意もない私はベランダで風にあたっていた。

 

 「どっからあの元気は湧いてくるのかしら?」

 「楽しさから、だと思うよ」

 

 私の一番のファンが独り言に対し、そう答えを返してきた。

 

 「かなちゃんは、アイドルになった事、後悔してる?」

 「後悔はしてない。アクアに押されたとはいえ、自分で決めたことだし、アイドルになったからあんたと共演できたもの」

 

 あの時の役者としての時間は最高に楽しくて、自分の全てをカメラの前で見せつけたという感覚を得た。役者として大きく成長したとも思う。

 

 「あんたCDにサインくれなんて言ってきたから知ってるでしょうけど、なんで流行ったのか分からない「ピーマン体操」以降のCDって全然売れなかったからね。どうしても歌は抵抗感が消しきれないのよ」

 

 期待に応えられなかった時の失望まじりの目、冷え切った会場というものの苦しさは中々言葉にできないものがある。

 

 「……きっと、カメラの前に立って演技するくらいの気持ちで丁度いいんじゃないかな?」

 「演技?」

 「不安や緊張を飲みこんで、纏わりつくような空気の重さを振り払って、長くて重い一瞬を演じる。演技ってすごく精神的につらいところがあるよね。けど、前の撮影の時のかなちゃんは、「私を見ろ」ってキラキラして、楽しそうだった」

 

 小さく、ふふ、とあかねが笑って言葉を続ける。

 

 「私って歌の時はアイの演技しながら歌ってるんだし、もう一人くらい一緒に演技してくれる人がいてもいいんじゃないかな?」

 

 そうおどけるように言ったあかねの眼差しには、強い好意とほんの少しの心配がこもっていた。

 ファンに心配されるわけにはいかないという気持ちと、友人として心配してくれて嬉しいという気持ちが入り混じる。

 

 「……そうね。演技の勝負なら私は負けないわよ」

 「私だって、負けないよ」

 

 そうね。ステージだって演技の舞台。だったらやってやれないことはないはずよ。どこからか湧いてきた元気と一緒に、私はレッスン室に戻っていった。




・あかねのアイプロファイリングについて
原作でも割となんでもわかってる感があるから
アイが愛がわからないとかも理解してそう。
小説の「45510」とか見る限り、ライブ配信とかでのインタビュー動画とか転がってるみたいだし、ああいうの見たら、あかねちゃんなら察しそうなイメージ。

・あかねの重曹ちゃんプロファイリングについて
今作では、憧れというフィルターが特にきつくかかってるから
細かい所でズレがあるんじゃないかなーと思ってます。
憧れは理解から最も遠い感情だよ。

・アクアの復讐とあかねの推測のズレ
アクアは前世の宮崎と東京で同じストーカーを唆したとかで、父親が確定と思っている。
だから、それを知ることができないあかねの復讐を実行するのは無理だろうって推測がズレる。殺すために芸能界に入った発言を聞いたら実行すると推測するだろうけど……。

・アクアへのあかねの協力
命助けられてないので、原作と比べるとかなりあっさり対応。
それでも、同情心で簡単な調べものくらいはするかなーというイメージ。

・アワアワあかねちゃん
かわいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。