イクノディクタス、好きだ
早く実装して下さい
さするって有意義なのかもしれない話。
これは貴方と私の話。
すやすやと寝息を立てる私の担当をしているトレーナー。彼のメガネの隅の曇りを拭きながら、彼の岩石のように硬い文体のトレーニングメニューを整理する。擦り合わせという行為は有意義だ。なぜなら、欠点を埋めることが出来るから。
「んあ……」
ふと、件の彼がソファの上で寝がえって、私の方を向く。いつもは真面目な瞳をしている彼も、こうなるとだらんとしていて、どうも愛くるしくて胸がきゅっとする。穴を開けられたような気分がして、そこがスースーする。
「イぅノ……」
私の名前らしきものに耳が立ってしまう。尻尾が空を切る音がする。でも大丈夫。これくらいは聞き慣れた。また、私の栄光の瞬間を夢見ているのだろう。その健脚を維持できているのは貴方のお陰なのだから、夢以外でもたまには私に夢見てほしいものだ。
「すきらぞ……」
尻尾が逆立って、耳が羽ばたいている。今、金槌を打たれたら簡単に曲がりそうなくらい顔が熱い。急に夢を見せてくるではないか。やめてほしい。無理は承知だが「午後5時仮眠中に君に愛をささやく」とでもスケジュールに書いてほしい。貴方という石の輝きに私まで狂ってしまう。私に鉄の輝きがあるのなら、貴方には石のような乱反射する煌めきがある。それを自覚した上で発言してほしい。そうしないと、今彼の頬に伸びつつある私の腕を止める事は出来ない。
「んにゃ……」
「わっ!?」
だからスケジュールに無いことはしない方が良いんだ。いい加減学んだ方がいい。いや、痛い程学んだハズなんだが、彼の輝きに捕らわれると調子が狂ってしまう。腕を引かれて、玉石の寝ているソファに倒れ込みそうになる。そして、狂ってしまった私は、彼と手を繋いで、そのまま擦り始めた。同じ手という部位なのに、ココまで違うのかと思いながら、同年代の胸囲を見てそんなものだったとも思い出した。やれやれ。
擦り合わせるのはいいことだ、自分の知らない相手の考えが理解できるし、なによりそれは、温もりに満ちている気がして。
これは君と僕の話。
すやすやと寝息を立てる僕が担当をしているウマ娘。彼女のメガネの隅の曇りを拭きながら、彼女の鉄のように硬い文体のトレーニングメニューを整理する。擦り合わせという行為は有意義だ。なぜなら、欠点を埋めることが出来るから。
「ん……」
ふと、件の彼女がソファの上で寝がえって、僕の方を向く。いつもは鋭い瞳をしている彼女も、こうなるとふわっとだらんとしていて、どうも愛おしくて胸がきゅんとする。何かが刺さるようで暖かいような気分がして、そこが痛む。
「トレーナー……」
僕の事らしき音に、立たない耳が立ってしまう。無い尻尾が空を切る音がする。でも大丈夫。これくらいは聞き馴れた。また、僕の事を夢見ているのだろう。その僕がずっと傍に居ることができているのは君のお陰なのだから、夢以外でもたまには僕に夢見てほしいものだ。
「……いかないで」
彼女の尻尾が力無く揺れて、耳が寂しそうに羽ばたいている。神よ、貴方は急に彼女に悪夢を見せてくるではないか。やめてほしい。無理は承知だが「午後5時仮眠中に悪夢を見るのでアフターケアをお願いします」とでもスケジュールに書いてほしい。君という鉄の輝きが錆びてしまうのは惜しくて仕方がない。僕に石の輝きがあるのなら、君には鉄のような済まされた煌めきがある。それを理解した上で神は夢を見せてやってほしい。そうしてくれないと、今、君の水の伝う頬に伸びつつある僕の腕を止める事は出来ない。
「んゃ……」
「わっ……」
だから衝動に突き動かされない方が良いんだ。いい加減学んだ方がいい。いや、学んだハズなんだが、君の輝きに捕らわれると調子が狂ってしまう。腕を引かれて、インゴットの寝ているソファに倒れ込みそうになる。否、倒れ込んで横に並んでしまった。そして、悪夢に光を見いだした彼女は僕の腕をがっちり捉えて離さない。ただの腕だというのに、まるで僕の全身そのものを抱き締めるようにぎゅうっとして取れない。赤茶色の血のようなあのサビのようにしつこいくらいに取れない。僕はすでに君から離れる気など無くて、人生が君の生活に溶接されている気で居たのに、離れるな、なんてワガママにも程がある。やれやれ。
でも、擦り合わせるのはいいことだ、自分の知らない相手の考えが理解できるし、なによりそれは、安らぎに満ちている気がして。