どこまでも続いている、使われているのが数少ないだろう道。
数少ないと分かるのは、うっすらと道とわかるぐらいの痕跡を残し、うっすらと砂が被っているためだ。
また、二本ということで、
つまりは、車輪かそれに相当するものがついている荷車的な何かが存在するという事でもある。
荷車があるという事は、モノを運ぶ何かと、それを引く動物なりがあるはず。
物流もあれば、引くモノを飼育なり管理なりする文化や文明があるという事でもある。
──少なくとも、文化や文明は一定以上はあるという事だな。
──だが、それにしても使われなさ過ぎて砂埃がつもっている……
──となると、あの場所は廃村となったとみるべきだろうか?
そうして、赤茶色と大小さまざまな石を眺め見、時折、上空を飛び去って行く大きな飛翔物らしきものを目にする程度で、生物とよべるものをみていない。
──虫ぐらいはいてもいいぐらいなのだがな
飛翔する小さな虫や地を這う虫など、環境が変わろうが見かけない事はなかった。
それなのに、それらを見かける事がいまのところない。
風音だけが、砂埃をまとって吹き抜けていくだけだ。
そんな、周囲の違いを不思議に思いながらも荒野という荒野を歩き続けた。
* * * *
一日、二日、三日、夜になれば久方ぶりの就寝に入り、朝になれば型稽古をして、頭と身体を起こしては一日が始まる。
その間にも、色々と確認はしている。
一番の違いといえば、"術"は使えるが"法"となる物が使えない。
厳密にいえば、内包に存在する分から使う"術"や一部の"法"には問題はないが、外延に存在するモノを素とする"法"と一部の"術"は使えないでいた。
──前にいた世界においても、そういう"場所"はあったが
──この世界全体がそうなのか、それとも……
考え事をするには打って付けともいえる一人旅。
長く生き抗い続けたためか、体質が変わっていったのか、飲食というものを、そんなに必要にもならなくなっていたこの身体、今更ながらにこういう食料が見当たらない時は助かるものだなと、考えを新たにしてしまう。
──ライラがいたときは、あれを食え、これを食え、健康がどうだこうだと……
そんなこんなの思い出ふり返しながらも、周囲を観察し、推測し、憶測しては確認をしながら、ゆっくりと歩を進めていたが、それまで見慣れた道に変化が訪れたのは、五日目の昼ごろだった。
──分かれ道?いや、本線にぶち当たったといったところか?
自分がいままで歩いていた道は、この道にぶつかる様になっていた。
そして、その交差点となる場所には、金属の立て看板が背よりも高い位置に存在し、矢印と共に文字がかかれてある。
だが、それよりも気になったのは"新たな道"である。
──石?というよりは、粘土?違うな……
──だが、それらしきものを敷き堅められては、道を作っておる……
"白い道"とでもいうのだろうか、石と白い粘土か何かで敷き詰められ、なおかつ固められたそれに出くわす。
杖で軽くたたくも、その感触からかなりの堅さが見て取れる。
──ふむ、ここまで堅いとなると、重量物を運ぶためとみれるが……
帽子のツバを指で押し上げては、遠くまで伸びている白い道を覗き見る。
その道は左右に、これまた遠くまで伸びており、遠くは陽炎のごとくゆらいでいた。
遠くに何かがみえることもないために、頼りにするのは看板かと、その看板を眺め見るも
──文字は……やはり読めぬか……
──言葉ならば、何とかやりくりする方法はあるのだがな
異界の文字とでもいう文字という恰好であり、何が記載されているかが分からない。
まぁ、文字が読めない、言葉が通じないは、前の世界でもよく経験した事でもある。
その反面、言葉というものは理解できる。
なぜなら、言葉には魂が宿るから。
その為、人が何かしらの感情を踏まえ発せられた言葉というものは、きちんと理解できる様になっていたからだ。
さて、
とりあえずは、こういう看板は目的地となる場所の地名を記載してあるという事は、そこに何かしらの目的となる何かが、例えば、街などあるという証左でもある。
──ふむ、どちらに進むべきか‥‥
"
そうなると、とられる手立てといえば
──運任せに限るな
手に持つ杖を立てかける。
そして、手を離した杖が重力にひかれるままに倒れこむのを眺め
──うむ、こちらだな
倒れた杖を拾い上げ、さきほどまで杖が倒れていた方向に視線を向けては、再び歩き始めた。
──吉と出るか凶と出るか。それも一種の醍醐味ではあるな
年甲斐もなく、意気揚々を再び歩を進め始める。
その背中をその先を、お天道様だけが知っているかのように照らしていた。