年甲斐にもなく──
この言葉の意に対して、少しばかり納得もしてしまう行動をとったものだと思い返してみる。
あれから一日と歩を進めつづけていると、前方の丘の向こうに土煙を上げる何かが視界に入る。
まだまだ、遠くにあるのだが、何かしらが移動している。
しかも、土煙を上げるという事は、移動する何かは、速度がかなり速い。
となれば、速く走る場合といえば、獲物を追っているか、獲物が逃げているか、そのどちらかであろうと。
ならばと"確認してみようじゃないか"という好奇心にかられるのは、一人旅をしている中で、あまりにも変化が乏しすぎる景色と情景であったのが悪い。
つまりは、致し方ない事であろうと。
そうして、到着してみれば、移動が終わった先で人が倒れ伏せておる状況であった。
それよりも、右目の視界に入ってきたモノに、驚くよりも疑問が走る。
──これは……なんだ?
"神性さ"を一応は感じる程度というか、残滓というのが正しいぐらいの微弱すぎるものを持った、巨大な
"聖"なのか"邪"なのか、"悪"なのか"善"なのか、それすらも見いだせないぐらいに小さく感じたために、権能すら無いだろうと。
生体なのか魔術の身体なのかよくわからないが、頭のあるべきところに目が無く、細長い首?胴体?に、歪に手足が生えているという代物であった。
その大きく開かれた、口と思しきところに、"魔"の力場が発生しているのが確認できた。
──こりゃぁ、でかいのを放つ間際といったとこか?
──ならば……
"神性さ"を幾分か感じ取れるならば有効であろうと、
"ヴォン!!"
と吠えてみれば、思惑はみごとに的中。
相手は"魔"の力場が無散しては、その巨体を停止させていた。
──動きが"完全に"止まるとは、やはり低位か、はたまた"混ざりもの"か……
──まぁ、どちらでも悪く思わんでくれよ?人助けを優先させてもらうのでな
相手の構造を見切っては、首元と思われる場所へと飛び上がる。
そして、腰に差してある数打ちの無銘刀の鯉口を切っては、一閃
やった事はといえば、"斬れる場所を斬る"という、基礎にして基本な事。
──どんな存在であろうとも、斬れる場所というのは存在する。
──その箇所にならば、数打ちの無銘刀であろうと……この通り。
巨大な
わかり切った結果に、振り向くこともせずに、血はついてはいないが、残心を兼ねての血振るい動作と共に、元の鞘の中へと戻す。
──うぅむ、今まで以上に斬れたのぅ……
と、今までの身体の動きとは違ったが、それでも身体が覚えていた動作で斬れたことに、さすがに驚き半分、うれしさ半分といった気持ちになる
だが、やはり考えても致し方ない事を割り捨てる。
──それでは、約一週間ぶりの人との接触といきますか。
人恋しいというのを感じてしまっていたために、少しばかりにも気持ち昂っていた事に今更ながらに築く。
その感情に、多少なりともの恥ずかしいというものがあったが、それを払拭するように指で帽子を持ち上げて、相手を確認する。
そこには、確かに人と思われる存在がいたのだが、見たこともない鎧甲冑に身を纏っており、その小柄な大きさからは、子供か?と思わされた。
──こんな小さな子が?いや、種族的に小さいモノもいるだろうが……
少し敬称に悩んだが、言霊に感情を載せて会話をすることにした。
『怪我ァないか?"坊主"』
「あ、あぁ、助かっ……た」
──よし。
──言霊は通じるならば、言語は感情はあまり変わらないといったところか。
そう判断してみるも、相手はどうやら怪我をしたのか、はたまた腰を抜かしているのか、いまだに立ち上がろうとしていなかった。
『立てるか?』
「え、あ、ああぁ」
こちらの差し出した左手に驚いてはいたが、素直に手に取り立ち上がれるのならば、問題はないだろう。
ただ、そんなに大きくもないというのが印象的だったが。
さてはて、新たな出会いと洒落込もうではないかね。