ギャンレル君に光を届けたい
多分、恐らく、きっとね
…忌々しいほどに青い空である
此処がどこであるか?
などと言うのは余りにもしようもない話だ
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時間遡行による歴史改変
確かにあの地獄は決して認め難い現実であった事は認める
…アレが自分達の創り出した世界の最期と考えれば些か以上に不愉快だが、それもまた一つの結果だというのならば認める他ないだろう
嘆き、苦しみ
それらと戦い、抗いそして勝ち得た者がいるならば、その逆
抗いながらも、負けて地に伏した者もまたいるのだから
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それにしても忌々しきは
時間遡行などという最大の禁忌を犯してまでも、未来に拘るとは
…選択肢のあった連中と違い、俺は
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此処がイーリスだろうと、ペレジアだろうが、フェリアだろうがヴァルムだろうがさして関係はない
…俺が守ると決意した者達や国は最早遥か過去のもの
陛下や姫様達の未来を守った後、私は刑場の露と消える
…筈だったのだ
なのにまた
「〇〇〇〇。貴方に救ってもらいたい世界があるのです」
「や、知らんので。早々に帰してもろて」
「…ですが」
「此方としてはすべき事はしたはず
英雄王勝利の為にそれなりの事をしたと自負しているが?」
「…」
「私はあの2度に渡る戦乱を商人として生き延びた
アンリの末裔であるかの人物に対して、それなり以上の支援を惜しまなかったと思う。事実、かの御仁は闇に堕ちたハーディンとメディウスを打ち倒した
これ以上、何をしろと?」
「実は遥か未来
竜族の生き残りが世界を滅ぼすのです」
「それはそれは大変ですなぁ
しかし、それはその時代に生きるもの達の問題かと愚考しますが、如何?」
「…ではお願いします」
この、クソドラゴンが!
説得をやめて実力行使しやがるつもりかよ!!
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てな訳で俺は今此処にいる訳ですわ
や、ホント嫌になりますねぇ
最後に『邪竜ギムレー』とか言ってたから、多分『覚醒』だと思うけどさぁ
既に20年以上昔の事なんざ、そこまで覚えている訳なかろうよ!!
確かファルシオン継承してるから、アリティアの血筋の様な気がするんだが
メモもあの戦争時に廃棄したから、殆ど覚えてないんですわ。これが!
一応、護身用に習得した魔法は
…
使えますね。武器もある
勿論使わないにこした事はないのですけども
戦える商人なんざ、
いうて、所詮は素人の真似事
精々金を稼いでまた商会でも立ち上げますかねぇ
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イーリス王国とフェリア、ペレジアにおいて商いを行なう商会があった
名を『アニドケマ商会』と言い、僅か数年の間に台頭してきた商会である
商会などと言っているが、実際には基幹要員は僅か数名しかいない小規模な組織
しかし、国家を跨ぐというある意味異質な商会でありアニドケマ商会は貧困に喘ぐ地域のあるペレジアにおいては低価格で
逆に豊かなイーリスにおいてはペレジアよりも高い価格での取引を行なう事としていたりする
本来ならば問題視されるものであったのだが、イーリスとペレジア両国の関係が悪化して久しい今となってはそれを理解している役人などはいなかった
正確にはペレジアのギャンレル王など一部のペレジア関係者こそ把握していたが、イーリスでどの様な商売をしようともペレジアに害がなければ無視出来なくもない話だ
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「どういうつもりだ?」
ペレジア王ギャンレルは商会の会頭を呼び出し詰問する
「私が願うは争乱の芽を出来る限り摘み取る事にございます
…恐れながら申し上げますと、イーリスの現女王のなさり様ではイーリス
「…続けな」
圧を加えながらの質問にも平然と返す会頭を見て、ギャンレルは『話を聞く価値がある』とみなし続きを促した
「彼の国はその勢力や影響力に反して余りにも脆弱な軍事力しか持ちえませぬ
加えてイーリス正規軍は王都付近の防衛が主任務となっておりまする。かの御仁の治世が真に行き渡っているのであれば、或いは国内も平穏なのでしょうが」
「はん、汚れを知らない娘にそれに
しかも、下に居る連中の中にも女王のやり方に不満を持ちながらそれを押し隠している奴等がいるときた」
ギャンレルは不快げに吐き捨てる
「辺境ともなれば、王都の、女王の影響力の届きにくい所はありましょう。そこでは女王の知らぬ所で苛政を行なっている役人もいるとも聞き及びます
最近になって、クロム王子が自警団なるものを作ったとも聞きますが」
「足らねえだろうな
寧ろ、それで明確な差が出ちまう。挙げ句、ペレジアやフェリアに逃れようとする賊崩れが大量に出てるんだからどうにもならねぇ」
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クロム自警団
最近になって、イーリス国内の賊徒退治などに女王の弟であるクロム王子と妹姫リズ王女らが中心となって成立した組織だ
だが、いかんせんイーリス王国軍が行なっていた治安維持を代行するには余りにも規模や兵力などが不足しており、あくまでも『対症療法』といったところである
領民からすれば
「襲われてから助ける」のではなく、「襲われない様にして欲しい」のが本音であろう
更にどうしても兵力の不足や軍備の不足から展開できる部隊数にも限度があり、報を受けてから駆けつけたとしてもある程度の被害が出た後という事になる
王都付近であれば、騎士団長フィレーネの指揮する天馬騎士団が迅速に展開、対応するだろう。勿論賊とてそんな危ない所で襲撃するはずもないが
強い者と戦わず、弱い民から強奪するのが奴等のやり方。そうやって彼等は生き延びてきたのである
クロム自警団の
大半は徒歩移動をする者達であり、到着までの時間がかかるのは自明。到着する時間がかかればかかる分だけ被害は増える
あくまでもイーリス国内の賊徒が個別に動いているからこそ対応出来るのであって、仮に賊徒を率いられるだけの人物が中核にいて指揮をとったとなれば危うい
そして更に面倒なのが、被害を受けた者達への補償だろう
何せイーリスの治世、女王エメリナの統治体制は盤石であると思っている辺境のイーリスの民からすれば『何故自分達が賊の被害に遭うのか?』という疑問が尽きない事だろう
外側から見れば『万全の統治?…はっ』と鼻で笑う事請け合いだが、少なくとも女王のやり方をイーリスの民は支持している
まぁ、その結果としてイーリスは北方フェリアや西方ペレジアとの国境付近に大量の賊徒を抱え込んでいる訳だが
イーリスの軍事的空白は他国の賊徒達にとっても好ましいものであり、女王に即位した彼女の政策を知った彼等は先ず疑った
当然だろう
国家間の戦闘だけが騎士団などの仕事ではない。寧ろ平時においては治安維持、つまり自分達の様な賊徒に対する対応こそが相手の主任務となるのだ
それを縮小すると言われたところで、自分達を誘き寄せる罠ではないか?と疑う者もいた訳である
が、理性的な判断ができる者ばかりであるはずもなく、それなりの数の賊達がイーリスを目指した
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元々生まれながらに賊となっている者は殆どなく、何らかの事情で賊となった者が大多数
イーリスやフェリア、ペレジアにおける賊とは山賊や盗賊を意味する事が多い
山賊はある程度の規模となると、ねぐらと呼ばれる拠点を持つ
そこに
エメリナ即位僅か後に動いた者達はねぐらを持たぬ、本当の意味での賊ではなく『そうしなければ生きられなかった』者達だった
フェリアにせよ、ペレジアにせよ、イーリスにせよ
全ての民を救うのは困難だ
ましてや、ある程度高い地位にある者達ならいざ知らず、一般民衆全ての所在を把握する事など不可能
故に救援物資を送ろうにも『どの位の量が適正なのか』統治側も分からないのだ
支援は必要だとしても、備蓄物資も無限ではない
それなりに
だが、民衆の移動というのが厳罰化されていないイーリスなどにおいて『何処にどの位の人数がいるのか?』というのは到底制限できないから把握も不可能
そうなれば『前例に倣う』他なく、仮にその集落や村の人口が減っていれば問題ないのだが、増えている場合問題となる
加えて、ペレジアにおいては国王ギャンレルによる徹底的な
特にイーリスのそれは酷いものであり、ギャンレルと話をしている会頭も商人仲間から話を聞いているが
「…大丈夫なのか?
と半ば冗談で本拠をイーリス国内から移すべきか考えている程
国のトップである女王や王族がしっかりしていて、殆どないに等しいイーリス騎士団やクロム自警団がどれだけ奮闘しようとも
それに対して、全く
尚武の気質が強いフェリアならば、東と西の王の武勇である程度統制も効く
ペレジアはギャンレル王が悪名を背負う覚悟を以て国の成長を妨げる連中を始末した
それに対してイーリスの女王エメリナは基本方針として『人を信じる』事を信条としているらしく、とにかく臣下の仕事を疑おうとしない
それは素晴らしい事だと会頭もギャンレルも思わなくもない。が、理想論に浸る女王。姉である女王の方針に疑問を持ちながらもそれを口にする事なく、
心ある者は女王の方針に対して異を唱えるが、
それでも女王や王族からの信頼があれば何一つ問題なかったが、何せ年若い女王やそれよりも若い王子や王女にそんな精神的余裕はなかった。結果として彼等は王国の中枢から弾かれる事となってしまう
そうでない者達も自分達の居場所がないと思ってしまえば離れる他なくなる。結果、イーリスの。そしてこの大陸の平穏こそがイーリスの発展に繋がると考えていた役人達は王城を後にするほかなかったのである
当時イーリス聖王国軍に属していながら、女王の方針により職や立場を失う事になった者達も当然城を去った
何か有れば駆けつけるつもりのある役人達と違い、己が騎士としての誇りすら解そうともしない女王に対して元イーリス王国軍の者達の失望は大きすぎた
故にイーリス聖王国軍再建となったとしても、その参集に応じたいと思う者達はごく一部となってしまう
彼等はペレジアとの戦闘や領内の治安維持などに従事し、少なくない犠牲も出している。それでも彼等が危険を承知の上で戦い抜いて来たのは名誉欲の為だけでは決してない
彼等なりにイーリスという国を愛し
イーリス王家に忠誠を誓っていたのだから
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若手の中にはクロム王子の自警団に入団する者もいたが、自警団はあくまでもクロム王子の提案した『クロム王子の私兵部隊』であり、イーリス王国軍ではない
加えて、クロム王子やリズ王女は個人としては好ましい人物であったが一国の王族として考えたならば全く以てどうしようもない人物ともいえる
その上、この2人に付けられたフレデリクもまた実直なのは評価出来るが『イーリスの次代を担う王族』に仕えているとは思えない程に意識が欠けている様にしか思えない
故に彼等はイーリス王家を見限ったのである
忠誠を誓っていたが、その忠誠は無条件に捧げられるものではない
『忠誠を誓うに足る人物』でなければならないのだから
勿論、一度王国軍から離れた後帰参しようと考えていた者達もいたが、イーリス王都から離れたところの惨状を見た彼等にその選択は無かった
騎士団長となったフィレインらも奮闘しただろうが、圧倒的に数が不足していた。如何に機動力において比類なきものであるペガサスナイト達とはいえイーリス聖王国全てをカバーするのは無理である
元々エメリナの前の歴代聖王(ペレジア側からすれば悪逆非道の王だが)による戦争によりペレジアはかなりの打撃を受けていた
とは言え、戦争に傾倒していたイーリスに比べればペレジアは『どうやって国民を食わせていくか?』を重視していた為に国内の疲弊こそあったもののそれだけだったが
が、人的被害はかなり受けていたが為にイーリスに対するペレジア国民の憎悪は並ではない
イーリス国内ではようやく聖王としてエメリナが支持されているらしいが、ペレジアからすれば憎悪の対象でしかなかった
幾らイーリス側、聖王エメリナが綺麗事を言ったところで度重なるイーリス軍の侵攻によりペレジアの人間が死んだ事実は変わらない
ペレジアの大半の人間にとってイーリス聖王国への憎悪を持つ事は寧ろ自然な事であった
現在の国王ギャンレルはそんな連中をなんとかなだめ、暴発しない様に尽力している
軍の規模としたならばペレジア軍はイーリス側を圧倒できるだろう
が、それがどうしたというのか?
イーリスとの戦争に勝った場合、ほぼ間違いなくイーリス王家を滅ぼす事になる
そうなれば、ペレジアが旧イーリス領を統治せねばならなくなるだろう
確かにペレジアはそれなりに富を蓄えてはいる
が、それでも決して他国にまで施しを与えられる程に豊かではない
更にイーリス残党が高い確率で残ってしまうだろうし、それらの人間がフェリアに支援を求めないとも限らないだろう
ペレジアはイーリスにとって侵略者であり、敵なのだから
が、そうなればいよいよこの大陸の戦火は鎮まる事なく燃え広がる
これがペレジアであったとしても、必ずイーリスに対する禍根が残るだろう
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イーリスからすれば矛を収めれば終わった話としたいだろうが、怨恨というものが早々消えるはずもない
会頭とてペレジアで商売している故にペレジア国民の鬱積した感情の深さは理解出来なくもなかった
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かつてアカネイアにおける大戦の理由の一つに『アカネイアを頂点とした体制への根強い不審』があった
今でこそ商会の長、会頭だがあの戦争が始まる10年ほど前まではしがない野盗崩れの人間
山賊や海賊を狙って金品を奪い、それを元手にして商いをしていたのが彼である
であればこそ、各国の商人がアカネイアの在り方に不満を持っていながらも
故にこそ、彼等はアカネイアの復権を目指すアリティア軍に対して非協力的だったといえるだろう
「アカネイアの連中はまだしぶとく生きている
ニーナ王女には申し訳ないが、これでは協力したところでもう一度アカネイアを中心とした時代に戻るだけ
ならばドルーアによって完膚なきまで破壊され尽くすべきだろうよ」
アカネイアの貴族や商人に対して不満を持つ者、特に商人達は表向きアリティアのマルス王子に協力的な姿勢を見せつつも誰もが決定的な一言をこぼす事はなかった
つまり、
「
と言ったニュアンスのものであった訳である
のちに
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怨恨とはそれだけ根深いものであり、容易く人を狂わせるものなのだ
イーリスからすれば済んだことかも知れないが、ペレジア国民はそれを覚えている
現国王ギャンレルが一部から『暗愚王』などと揶揄されているのも、イーリスが王国軍をほぼ解体してイーリスの護りがほぼ消滅したという絶好の機会にも関わらず、一向に攻め込まない事も理由だった
勿論、王国軍という決定的な戦力を手放したイーリスに負けるつもりはギャンレルにもない
やるからには勝たねばならないのだから
しかし、ペレジアがイーリスに勝ったとしてそれで終わる話ではない。必ず何らかの手段を講じてイーリスをどうにかせねばならなくなる
隣接する国家の不安定はペレジアにとっても不利益しか齎さないのだから、旧イーリス地区の平定は必須
…まぁ、イーリスペレジア間の国境を完全に封鎖出来るならば放置するのも一つの手段ではあるだろうが
仮にペレジアがイーリスまで治めるとなれば当然荒廃したままでは統治など出来たものではない
そうなると『ペレジアの資産や労力』を注ぎ込んでイーリスの復興をせねばならないだろう。それでイーリスが臣従すれば良いが、その復興したイーリスが『反ペレジア』の者達によって奪還される可能性もある
それではペレジアが流した血や注ぎ込んだ物が全て無駄になる。そして、これはそれなりの確率で起こり得る話
となればイーリスとの戦争なぞペレジアにとって『百害あって一理なし』という話となろう
故にギャンレルはイーリスとの戦争に対して乗り気ではないのだった
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「んで、イーリス国内の様子はどうなってる?」
「王都付近ならば嗜好品も売れますな
が、辺境に行けば中々」
「売れねぇか」
ギャンレルは会頭の苦い表情を見て察した
「売れなくはありません。が、食料や武器の需要が
防具すら持たぬ者が戦うと言うのには唖然とする他ありませぬが」
「正規兵を大幅に減らした弊害だな、そりゃ
賊はどうだ?」
「あまり申し上げたくはありませぬが、ペレジアやフェリアに比べると多いかと
とは言え、その大半は流民や農民上がりの食い詰めた者。手にかけるには多少良心が咎めはしますな」
そう嘯く会頭
とは言え、会頭とて賊相手に温情をかけるつもりなどない
どの様な事情があれど、賊は賊
奪うと決めた連中にまで差し出す手を彼は持ち得ないのだから
「…けっ、面倒な事になるかもしれねぇな」
「恐れながら『例の連中』も動いているとも聞きます故。近頃の奴等の動きから考えますに」
「…色々動きやがる、か」
ギャンレルは不愉快そうに吐き捨てる
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例の連中とはペレジア国内にいる『邪竜ギムレー』を信仰する集団『ギムレー教団』
「邪竜ギムレー?んなもんいたか?」
と会頭はとぼけた事を宣っていたが、さもありなん
彼にとっての脅威は『暗黒竜メディウス』であり、『皇帝ハーディン』やそれを支持する連中などであった
ついでに言えば、彼がやりこんでいたのは
が、いかんせん目の前の何よりも除かねばならぬ脅威への対処に全力を注いだが故に他の事についてまで詳しく記録を残す事はなかった
アカネイアにおける戦役について記したメモもとある時期に廃棄しており、後は頼りになるかならぬか分からない朧げな記憶頼り
故にこの時点で会頭となった男はギムレー教団の危険性を正確に把握している訳では決してなかったといえるだろう
「…で?海の向こうはどうなってやがる?」
「覇王ヴァルハルトなるものが国を動かして以降、ヴァルムの勢いは止まる事を知らぬと聞いております
尤もいきなりこちらの大陸への侵攻するのは些か考え難いものではありますが」
「っち、面倒な奴が王になったもんだ」
『覇王』ヴァルハルト
この大陸より西にあるヴァルム大陸の諸国家を猛烈な勢いで平定しつつあるヴァルム帝国の王である
その実力は確かなものであり、武勇に優れる武人を多く有するソンシンですらヴァルム帝国の前に敗れ去る程
最早西の大陸におけるヴァルム帝国の優位は揺らぐ事はないだろうと会頭は判断していた
「んで、そいつらはこっちに来ると思うか?」
「…あり得る話かと思っております
確認させたところによると、ヴァルム帝国の支配下に入った港町において
ヴァルム帝国のある西の大陸においてヴァルムに対抗するのはそれこそヴァルム帝国に滅ぼされた国の残党
ヴァルハルトの軍師であるエクセライの性格を考えるに、まとめて始末するのではないかと思われる
元より大量の船舶など必要としないのは明らか
となれば、ヴァルムは他の大陸への出兵を企図していると考えて間違いないだろうと判断しても早計ではないだろう
「ちっ、こちとら竜騎士もいるにはいるが厳しいか」
ギャンレル自身個人の武勇に優れているし、彼が率いているペレジア軍とて脆弱ではない
が、さりとて話に聞こえるヴァルム帝国の騎士達を相手にして終始優位に戦えると思う程にギャンレルは楽天家でも楽観視するつもりもなかった
「よし分かった。何か変化があれば知らせろ
時間をかけたらヴァルムに轢き潰される可能性があるってなら、イーリスには悪いが早々に消えてもらうとするか」
ヴァルム帝国の侵攻が俄に現実味を帯びてきたと判断したギャンレルはイーリスに対する今までのスタンスを変える事とした
何せこのままではヴァルムにより全てが滅亡する可能性も出てきたのだから
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「はてさて、どうなる事やら」
ギャンレルの元を辞した会頭はため息混じりで呟く
(…とはいえ、邪竜ギムレーか。ギムレー教団
調べてみる必要があるかもしれんな)
彼とて遥か昔に2つの戦乱の中で生き延びてきた者
例え過去の知識は朧げとなろうとも、その嗅覚は確かなもの
今まで通り商いをしつつ、決定的なミスが起きない様にする
などと大それた事をするつもりなどない
元より、今生きている事自体が完全に想定外なのだ
「精々踊るとしますか」
アニドケマ商会のトップである男は不敵に笑うとその場を後にした
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ギャンレルと会頭の話し合いの僅か後、クロム自警団に新たなメンバーが加わった
名前はルフレ
記憶喪失の少女でありながら、不思議と戦略に詳しい
物語はここから始まる
基本会頭は自己満足でしか動かないので、かなり酷薄な人物
元より『強盗』スキルなんてものを持っている人だから仕方ないね