戦乱の裏側で   作:鞍馬エル

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過去より(きた)る者
未来より戻りし者
現在(いま)を生きし者

それらがぶつかり合い、砕け散る
だが、砕け得ぬものもあった


 思いの行先

 フェリアより帰還したクロム達

 

そして、その時は訪れる

 

 

「ペレジア軍が侵攻してきただと!?」

 

「その様です

現在確認中との事ですが」

 

「ね、ねぇ。そこってマリアベルの実家の近くじゃない?」

 

「っ!?

まずいぞ、フレデリク」

 

クロム達は王都に帰還してペレジア軍侵攻の報を受け動揺していた

 

「と、とにかく防衛戦をしないとまずいと思います」

 

「分かったルフレ

フレデリク、リズ。直ぐに皆と出撃する用意を」

クロムとリズの姉であり、現在イーリスの聖王を務めているエメリナ

 

その先王、つまりクロム達の父親はペレジアに対して幾度となく侵攻戦を仕掛けていた

が、先王が没してエメリナが跡を継いだ事でイーリスはペレジアへの侵攻を止めている

 

 

それ故にイーリス側としてはペレジアとの衝突はないと思っていた節があったのだ

 

 

ペレジア王ギャンレルも今までイーリスに対して軍事行動を控えていた事もあって、イーリス側はペレジアと『停戦』したと思っていたのである

 

そんな事はない

ペレジアからすれば、勝手に殴りかかってきた相手であるイーリスが自分達の都合でそれを止めただけの事

ペレジア国民からすれば、何一つ終わってなどいないのだ

 

 

----

 

「馬鹿か、アイツらは」

 

「流石は頭の沸いたイーリスの連中だ

ギャンレル王が何とか国内で抑えてたのなんざ知らねえだろうよ」

 

それを監視しながら冷笑を浮かべるのはフェリアとペレジア出身の人物だ

 

フェリアとてそこまでまとまっている訳ではないが、それでも東西の王がそれなりの関係を維持しているからこそ問題なく存続出来ている

ペレジア出身の男からすれば、父親と兄をイーリスの言うところの『聖戦』て喪っている

商会に属しているからこそ、辛うじて自重しているがやはり負の感情を持ってしまうのは仕方のない事といえるだろう

 

別に彼等の雇い主である会頭とて、感情を制御しろとは言ったもののその感情を圧し殺せ

とまでは言っていない。と言うのも、会頭自身アカネイアにおける戦乱の際にその感情を部下達が持っていたからこそ窮地を脱した事があったりするからだったりするのだが

 

クロム達の監視

それは会頭の中ではかなり重要なものであり、それこそ大袈裟ではなく『世界の行く末』すら左右しかねない案件

 

 

故にこそ、人選はしっかりしている

寧ろ

 

「あの2人がしくじったか。あの2人でもしくじるなら仕方ないな」

と素直にあきらめるつもりだったりする程

 

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会頭のスタンスはペレジア、イーリスの2国での商売とフェリアやヴァルムにおける情報取集だ

アカネイアの時と比べて会頭の率いる勢力や影響力は遥かに低下している為に大局を動かせる程のものとなり得ていないのが実情ではあるが

 

 

とはいえ、である

 

 

会頭と呼ばれている男にとって、この世界はあくまでもオマケに過ぎない

 

彼が生きたのはあの戦乱続きの忌まわしくとも想いの残ったアカネイアの時代であり、その後の事については文字通り『知った事ではない』

誠に不本意な事であるが、ナーガによりこの時代への運ばれてきたからとて『世界滅亡』を防ごう

などという熱意は然程になかった

 

 

あくまでこの様な形で動いているのはイーリスの為ではなく、泥に塗れようが国民から石を投げつけられようが、それでもペレジアの為に努力し続けるギャンレルという男に対して少なからぬ共感を覚えたからだったりする

 

故にこそ、ペレジアの産業について多少なりとも力を貸した。その時必要だったからこそ、イーリスにおいてあこぎに稼ぐ事もした。その資金の幾らかをペレジア発展の為に動かしてもいたりするが、あくまでも気が向いた程度の理由でしかない

 

 

イーリス(原作主人公の勢力)が勝たねばならぬと誰が決めた?

 

それが会頭の今の行動原理である

 

 

ましてや、イーリスの未来の王女であるルキナは男にとって禁忌ともいえる行動(マルスの名を騙る事)をした事により、ただでさえ理想主義という意味で相容れないと思っていた男のイーリスに対する心象はスカイダイブの如き勢いで急降下している

未来においてならば、致し方ないと男も渋々納得しよう

 

が、現在はまだ(・・)ギムレー復活は成されておらず対処は可能

 

 

因みに既に商会やその協力者などの奮闘により、ルキナや彼女と共に未来からこちら(過去)に来た者達も一部の所在は掴んでいる

…更に

 

「…まぁ、別に構わんさ

が、そうするのであればアレ(・・)を使わせる訳にもいかんだろうよ」

 

イーリス聖王国の南部

そのある地に謎の施設がある

 

 

異界の門

 

この大陸は勿論の事、時代すら超えた者達と出会う事の出来る施設

本来ならば、クロム達の力になるものであったが男が中途半端にこの世界の知識を持っていた事がクロム達にとって悪い方に働いた

 

「例え本人達でなくとも、影法師の様な者である

であれば、その力は決して侮れぬ

少なくとも、イーリスの。そして聖王エメリナの理想の為に戦うという立場を取るのであればその力を渡す訳にもいかぬよ」

 

男は即座に異界の門周辺における掃除(・・)を行なった

大陸各地にいる行商人アンナとも話をした上で、異界の門については会頭がその管理を任される事となったのである

異界の魔符についても会頭が所持しており、クロム達の行動如何によっては提供するかもしれない

 

 

そして、少し時は流れる

 

 

----

 

「…ぐ、此処は何処だ?」

 

「お目覚めですか?ギャンレル殿」

 

「…どういう事だ?」

 

「聖王エメリナ

向こう見ずの小娘と侮っておりましたが、アレの最期は確かにペレジアを

…いえ、ペレジア将兵の心を動かしたのでしょうな」

 

本来であれば、イーリス聖王エメリナの死によってクロム等は動揺

撤退戦を強いられる

 

筈だった

 

 

----

 

「どうやらクロム王子の軍師とやらは随分信を得ていた様で」

会頭としても意外ではあった

 

姉であるエメリナの死に激昂するクロムと動揺するリズ

その結果、クロム自警団は一時的に行動不能になり、そこをペレジア軍が攻め立てる事で彼等は敗走するであろうと彼もまた考えていたのだから

 

が、どうにもイーリスの天馬騎士団の生き残りがそれなりにいたらしく彼女達は己が命を捨ててでもギャンレルの首を獲らんとペレジア本陣に突撃を敢行

エメリナの投身自殺という大凡予想も出来ない事態に衝撃を受けていたのは何もクロム達だけではなかった

結果として、彼女達はその命を尽く喪いはしたもののペレジア軍の指揮統制は一時的に麻痺。そこをイーリス軍師ルフレは強襲する事によりペレジア本陣は大混乱に陥ったのである

 

更にギャンレルの側近としていたダークペガサスのインバースは独自の判断で戦線を離脱

王の腹心の敵前逃亡という事態を目の当たりにしたペレジア将兵は抗戦すべきか撤退すべきかで迷う事となってしまう

 

更に悪い事は続き、当初の予定ではイーリス残党を追撃する筈であったペレジア将軍ムスタファーはこの混乱を察知する事に時間を要してしまい、苦境に立たされたペレジア兵達は近くにいる筈の友軍が自分達を助けないと見て士気崩壊

ギャンレルが陣頭指揮をとろうとするも、時に既に遅くペレジア軍の混乱は最早国王であるギャンレルであっても収める事が出来ないレベルへと拡大してしまう

 

 

姉の無念を晴らさんと怒りに燃えるクロムと自軍の混乱をなんとかせねばならないと気を散らしていたギャンレル

純粋な個人の力量においてならば、ギャンレルがクロムに負ける道理はなかったが混乱の中にある状況はクロムに勝利をもたらした

 

 

----

 

 

が、クロム達の幸運もそこまでであった

一部のペレジア軍内において粗暴と揶揄されていたギャンレルに心酔する竜騎士団が戦場に乱入

竜騎士に対して有効な弓を扱えるヴィオール、魔法使いのミリエルにリヒトにサーリャ。制空権を争えるのは天馬騎士のスミアと天馬騎士団の生き残りであるティアモだった

 

如何にペレジア本陣が混乱し、国王であるギャンレルを倒したとしてもそれでペレジア軍が滅ぶ訳でも降伏する訳でもない

 

 

国王の率いる本陣が最早機能しない事を上空から確認した竜騎士達はその怒りを下手人であるクロム達にぶつけるのは当然の事だった

 

結果、クロムはギャンレルに重傷こそ負わせたもののトドメをさすには至らずイーリス国内へと撤退する事となる

 

 

会頭はそれなりの魔道の使い手としても知られており、治療の杖も扱える事をペレジア軍の者は知っていた。その為に会頭が急遽呼ばれたのである

ペレジアにもそれなりに使い手はいるにはいるが、その指揮をとっていたのが逃亡したインバースである事からペレジア軍の者達は信用すべきではないとの判断を下している

 

 

----

 

会頭の治療により意識を取り戻したギャンレル

彼は国王として、またペレジア軍の総指揮官として事態の把握をすべく口を開いた

 

「…つまりペレジアはボロボロって事か?」

 

「残念ながら。現在も王に従っているのは作戦前の3割にも満たない数と聞き及んでおります

加えて残った者達は声高にイーリスへの復讐戦を叫んでいる始末」

 

「…それだけじゃねぇな?

要らない気遣いは無用だ。さっさと話せ」

 

明らかに目の前の男が言葉を選んでいる事を察したギャンレルは会頭に話す事を迫った

 

(暗愚王、ね

確かにやり方は乱暴なところは多々あるが、少なくともペレジアはこの男の元で多少なりとも聖戦の傷を癒せたのも事実

卑民の身から王にまで成り上がるなぞ、それこそ尋常な事ではない

…ペレジアの者達はそこら辺理解してるんだろうかねぇ。間違いなくこの男もまた傑物だと言うに)

会頭はそう内心ため息をつくと

 

「実は、ですな」

 

 

----

 

 

ギムレー教団

邪竜ギムレーを信奉するペレジアに本拠を持つ集団であり、その影響力はペレジア国内において、決して無視し得ないものとなっていた

 

が、彼等を『破滅主義者の集まり』としか会頭は思っていない

そも竜という者は力の化身というよりも、力の暴虐

彼等にとって、人という生き物は贄や娯楽の為のものになったとしても決してそれを統治しようだとか、共存しようなどと考える者は稀

 

旧アカネイアにおけるナーガ率いる神竜族くらいだろう

アカネイアにおける動乱において、暗黒竜メディウスがその暴威を振るわなかったのはドルーアのガーネフ司祭がメディウスの完全復活に手間取ったという面もある

 

 

 

別の大陸においては、暗黒司教マンフロイは確かに暗黒神ロプトゥスを復活させる為に大陸で暗躍。結果としてロプトゥスの器としてユリウス皇子を捧げる事で復活を成している

が、一方でマンフロイはロプトゥスに対抗し得る唯一の手段でもある『ナーガの書』と呼ばれる魔導書やそれを使えるであろうユリア皇女を自身の手駒としてもいた

 

此処で重要なのは、ユリア皇女をマンフロイは手元に置いた(・・・・・・)という事

真にロプトゥスによる暗黒の世界を是とするならば、手元に置く必要はない

殺せば聖者ヘイムの血統は失われるし、セリス公子が血統を遺しているとはいえ、彼の子供は直系となり得ない

つまりヘイム直系でしか使えないナーガの使い手はユリアさえ除けばいなくなるのは明白だった

 

もし万が一セリスの子供にその資格があったとしても、その子供がナーガを制御出来る様になるまでどれくらいの時間がかかるだろうか?

それよりもロプトゥスやそれを従う者達が大陸を闇の時代に落とす方が遥かに早い

 

つまりロプトゥスによる闇の支配を是とするのであれば、洗脳したとは言えユリアを手駒にする必要など存在しない

殺せばそれで良かったのだ

それをしなかったと言うことはマンフロイ自身、ロプトゥスの支配をどこかで完全に受け入れられなかったのではないだろうか?

 

 

エレブでは人に絶望した悲しき男が大陸を竜に渡すべく大きな戦いを引き起こしたが、それはそのまま人という種族の終焉をも意味しかねない危ういものだった

 

 

----

 

ギムレー教団の教主ファウダーは確かに術者として素晴らしい力量の持ち主だろう

が、その程度(・・・・)で倒せる程に邪竜ギムレーとやらが弱いとは会頭には到底思えない

一度復活を許してしまえば、その暴威を止めること能わず

それが竜というものなのだ

 

「…つまりなんだ

国王である俺が死んだとアイツが喧伝して、よりにもよってギムレー教団の教主が次の国王となった、と?」

 

「ですな

既にペレジア軍は軍としての統制を欠き、此処に居る者達の様な者は稀かと」

 

クロム自警団追撃戦はギャンレルを殺された報復戦として苛烈を極めた。しかしながら、ペレジアの誇る竜騎士団はその中で壊滅。更に追撃の為の部隊を率いていたペレジア軍きっての理性派であるムスタファー将軍らも遅れながら参戦するも結果としては戦力の逐次投入という形となり、戦死した

 

 

イーリス側を圧倒していたペレジア軍であったが、決して軍組織として完全に機能していた訳ではなく良くも悪くもギャンレルがいたからこそ成り立っていたのである

 

更にインバースの率いていた魔道部隊の多くは教団の者であったらしく、混乱の中で姿を消していた

 

 

「わからねぇな

なら、なんでお前は此処にいやがる?

お前は商人だ。利益にならねぇ事に力を尽くす理由などねぇ筈だが?」

 

「ギャンレル殿()

 

「あん?」

ペレジア王でなくなった自分に態々目の前の男が協力する理由が分からないギャンレルは直接それを問いただそうとした

 

「邪竜を信仰するアレらが本当に邪竜を扱い切れるとお思いですかな?」

 

「…さてな

が、道理が通じる相手と考えねぇ方が利口だろうよ」

 

「仰る通り

…少しばかり昔噺を致しましょう

地竜族と神竜族いうものがかつてこの大陸におりました

この大陸には元々人は居らず、竜族の住まう所でした。しかし竜族の力は衰え始め、少しずつではありましたが種としての存続に危うさが言われる様になったそうです

そこで一部の竜族は人に姿を変え、人という種族が生まれた

元は同じ種族でありましたが、そこには明確な力の差が存在する様になるとある時地竜族は人を滅ぼさんと牙を剥きます

それを危険なものとして神竜族の長ナーガらは地竜族に対抗。地竜族はその戦いに敗北します

しかし、そのナーガもまた死ぬ時が来ました

地竜族の抑えとなっていたナーガが死ねば地竜族がまた動き出さんとも限りません。それを危惧したナーガは剣と聖王の盾を残しました

これらはラーマン神殿に保管される事となり、平和は守られると思われた

…ところが、とある人間がこのラーマン神殿に忍び込みこの剣と盾を盗み出します

その剣と盾を男は売り払い、更に3つの祀られていた強力な武器を手にします

メリクル、パルティア、そしてグラディウス

それら3種の神器と共に男は国を建国。その国こそがアカネイア」

 

「アカネイアだと?

何を言ってやがる」

目の前の男の話にギャンレルは疑問を持つが

 

「今しばらく

後で疑問には答えられる限り答えます故」

 

「…ちっ

分かった。続けな」

ギャンレルは卑民の身から国王にまで成り上がった男だ

故にこそ、無知蒙昧ではいられないと思い様々な事を学んだ

 

その中には当然の様に敵国であるイーリス聖王国の知識なども含まれていた

 

「後々建国王として伝えられる事となる初代国王アドラ一世は盗人だったという事ですな

しかし、アカネイアは致命的なミスをしました

まだ大陸に多く居る竜族をマムクートとして迫害したのです」

 

「…聞かねぇ名前だな」

 

「それはそうでしょうな

既に彼等の殆どは姿を消す事を選んでおりましょう

マムクートは竜族の力を竜石と呼ばれるものに封じており、それが無ければ人にすら容易く狩られるものでした

かつてのアカネイアにおける二度の動乱。その際にもかのマルス王子に協力したのは火竜族のバヌトゥと神竜族のチキとチェイニーと私は記憶しておりますな」

ギャンレルの言葉に苦笑しながら答える

 

「あん?

…いや後にしてやる。続けな」

ギャンレルは会頭の言葉に違和感を覚えたが、まずは話を聞くべきと判断し続きを促した

 

「有り難き

さて、かつて大陸の覇権を握っていた竜族がたかが人如き(・・・・・・)に弾圧されている状況

黙っていると思いますかな?」

 

「無理だろうよ

元々人との共存に異を唱えていた地竜族とやらは間違いなく反発するだろう」

ギャンレルは卑民から国王までのし上がった

が、それを快く思わない連中は沢山いたからその辺りの感情の機微には疎くない

 

「そうですな

当時のアカネイアは聖王国を名乗っておりましたが、地竜族のメディウスを中心とした者達が後にドルーア帝国を名乗り、アカネイア聖王国を滅亡させます

その後、アンリという若者がファルシオンを手にメディウスを倒します。が、討伐ではなくメディウスの力を削いだだけであり、封印の様なものであったと」

 

「完全に滅ぼせなかったか」

 

「元々強大な力を持っているのが竜というもの

竜族やマムクートと呼ばれ力が衰えたとしても我等人間に比べればその力は強力無比なものでありましょうて

まぁ、かの剣もまた盾と共にラーマン神殿に保管されていたそうですが」

 

「…おい、まさか」

 

「おや?察しが良いですな

左様です。この盾こそがイーリスに伝わる炎の台座と呼ばれるものですよ

アドラ一世は宝玉を売って財を成したのです」

 

「…呆れたもんだ

で、その宝玉は飾りではねぇんだろうが

人が作ったなら装飾って事もあるだろうが、竜族。しかも地竜族の脅威に対する武器と共にある盾に嵌め込まれている宝玉

何か意味があって然るべきだろう?」

ギャンレルはそう訊ねる

この男はその答えを知っている

そう確信しながら

 

「まいりましたな

民は貴方を『暗愚王』と言っておりますが、アカネイアの貴族どもやニーナの小娘やグルニアの唾棄すべき裏切り者より余程しっかりしておられる

私が当時の様な立場であれば、間違いなく貴方に全力の支援をしたでしょうな」

会頭と呼ばれている男の手放しの賛辞だった

 

「はっ

お前の賛辞なんざ初めて聞いたぜ

しかし今の俺は何も持たぬ元国王(・・・)だ」

ギャンレルは己のした事が間違っているとは思っていない

 

政治は結果が全て

 

己が理屈のもとで行なったペレジア統治

それにより戦災に喘いでいたペレジアという国家は確かに立て直せたかも知れない

しかし、そこに住まう者達がそれを実感出来ないというのであればギャンレルの統治は失敗したといえるだろうし、ギャンレルはそう考えていた

 

「仰りたい事は理解出来ますな

されど、かの英雄王(マルス)とて当時商人どもからは『盗賊王』と揶揄されておりましたのをご存知ですかな?」

ファイアーエムブレムをニーナより託されたマルスは各地の戦闘において宝箱を開けていたりする

 

戦費の確保

敵の物資を減らす

 

その様な意図があったとしても、マルス達に隔意を持つ者達はそんな事(・・・・)を考慮しない

する訳がなかった

 

 

当時その様な行為を行なうのは盗賊であり、言い換えれば『卑しい身分の者』がする事とされていた

故に同じ事を一国の王子(後の戦争では国王)でありながら行なうマルスに対して侮蔑したのだ

 

 

 

----

 

アカネイア王国再興を掲げたマルス達

アカネイア皇帝ハーディンを倒す為に兵を挙げる事になったマルス達

 

アカネイアに反感を持つ者達はマルスの動きに警戒し

アカネイアに利益のある者達はマルスを歓迎した

 

 

などという事は決してなかった

 

アカネイアに利益のある者達にとってもマルス達の動きは邪魔(・・)でしかなかった

正確にはマルス達の求めるもの

 

『ニーナ王女を頂点とする新体制』

これが彼等にとって非常に都合が悪い事だったのである

 

 

----

 

アカネイア聖王国

アカネイア王国

一度滅んで再興された筈の国家

 

ところが、そのアカネイアにおいて大きな影響力を持っていた商会は変わらない

何故か?

 

 

かの商会はアカネイア聖王国成立において大き過ぎる役割を果たしたから

と世間では思われていた

 

だが、その実態は何のことはない

アカネイア聖王国初代国王アドラ一世が宝玉を売った相手なのだ

つまり、アカネイアという国が盗賊行為の果てに生まれた事を彼等は知っていたし、その確たる物証すらキチンと保存していたのである

 

 

盗賊行為、しかも神殿にまで忍び込む様な男であったアドラ

宝玉の出どころなど言える筈もない。当時竜族はまだ大陸に多かったのだから

ましてや人間との共存を選んだ神竜族の長であるナーガの遺産ともいえる物をアドラは盗んだ

 

これが露見すれば、アドラがどれだけ大きな力を持とうとも怒りに燃える竜族により滅ぼされるだろう

当然、それを買い取った側までその罪は及ぶと考えたとして不思議ではない

 

 

だが、その宝玉は魅力的な輝きを放っていた

当然だろう。竜族にとっての秘宝クラスのオーブなのだから

 

アドラは何とかして宝玉を換金する為に様々な商会を訪ねて回った。ファルシオンやメリクル、パルティアやグラディウスは手放せない

国を興す為の武力の象徴だから

 

そして商会を訪ねる事を繰り返せば、その内噂になる

 

 

当時はまだよく言って中規模程度の商会はその宝玉の話を聞き、アドラを自拠点に招き歓待した

酒を飲ませ、女をあてがいアドラの機嫌を取ったのである

 

そこまでの厚遇を受ける事のなかったアドラの口が緩んでしまったのも仕方ない話と言えるだろう

 

 

『神殿から盾を盗み出した。その宝玉を売りたいと思っている』

そして

『国を興したい』

 

当時商会の長だった人物はこの話に賭けた

負ければ族滅すら有り得るだろう

 

だが、仮に国を興す事が出来たならば?

 

 

そして長はアドラに『売買の証』を書くように求め、アドラもそれを書いてしまった

…その結果、アカネイア初代国王が『神殿から盗み出した盾の宝玉を外して商会に売った』という紛れもない汚点の証拠が残ってしまう事となる

 

アドラは自身の恩人でもある商会を重用し、アカネイアの貴族となった者達もそれに追従した

そしてアドラは自身の罪を暴けるであろう竜族を危険視する

商会もまた竜族が此方に牙を剥きかねない状況を良しとせず、竜族を危険視する様な空気を作っていく

 

竜族の勢力を弱め、社会的な地位すら奪い去る事によりラーマン神殿の宝を盗んだ(買い取った)という事実を有耶無耶にしたかったのだ

 

 

 

仮にこれを竜族達が知れば怒りを露わにしたとしても可笑しくない

だが、アドラ一世は何を狂ったか『宝玉を外した盾』をファイアーエムブレムとしてアカネイアの至宝としたのである

 

更にメリクル、パルティア、グラディウスは配下の信用できる者達に与えた

そう、ラーマン神殿からの盗品を臣下に与えるという暴挙に及んだという事

 

しかし、事情を知る者達は沈黙を選んだ

何故か?

 

 

自分達の祖先が偉大なる建国王から与えられた武器が実は盗品、しかも竜族が人を守る為に拵えたものである事をいざという時の為の切り札としたのだ

 

アドラ一世として戴冠した後、商会長はそれとなく『王直筆の書面』である事を認めさせる

アドラ一世はアカネイア聖王国を建国した為か直筆の書類が保存の魔法にて残されている

 

 

…つまり、『売買の証』が王直筆のものである事を証明できる事になった訳だ

 

 

そしてアカネイアにとっての忌まわしき記憶はアカネイア王家でこそ『秘中の秘』とされていたが、その商会の上層部はそれを握り続ける

 

更に商会長の子孫達は商会を受け継ぐだけではなく、それを発展させる事に成功した

原動力となったのは『アカネイア貴族との交渉(への脅し)』だったが

 

彼等は色々な商会に分かれていく。しかし、何処もこの秘密は共有していたのであった

 

マルスを『盗賊王』と揶揄したのも彼等アカネイアの秘密を知る者達であり、ニーナ王女(盗人の後継)が知らぬとはいえファイアーエムブレム(罪の証)をもってその様な蛮行を許可した

という事に対する最大の皮肉だったのである

 

 

----

 

「…」

ギャンレルは絶句した

それもそうだろう。アカネイアとはこの大陸の国家の根源ともいえるもの

それがまさか盗賊行為の果てに成り立ったものなどと

 

「ギャンレル殿を卑民と宣う連中に聞かせてやりたい話です

…まぁ残念な事にその物証は消えていた様ではありますが」

会頭は飄々と言い捨てる

 

「笑えねぇ話だ

まぁそれは置いとくか

…戦力はどの程度残ってやがる?」

 

「竜騎士は数える程

地上部隊なら20数名くらいかと

今回ばかりは我等も全力で支援する他ありますまいて」

ギャンレルの問いに答える会頭

 

「はっ、その程度の戦力しかねぇか」

 

「悲観する事もありますまいて

かの英雄王マルスとて、タリスで旗揚げした時はアリティア騎士団の生き残り程度でしたぞ?それを考えれば余程に恵まれているかと」

 

「そうかよ」

ギャンレルは薄く笑った

 

「既に連中はクロム王子以下イーリス軍に船を提供

ヴァルム大陸へと向かわせたと」

 

「…なるほどなぁ」

薄く笑っていたギャンレルの笑みが壮絶なものに変化する

 

「あの船はペレジアの民の血や汗で作られたものだ

ファウダーやギムレー教団如き(・・)が好き勝手にして良いもんじゃねぇ

手伝え。奴等の手足を少しずつ削ぎ落とすぞ」

 

「…いやはや、まさかアカネイア以来私が武器を振るう事になろうとは思いませなんだ

よろしゅうございます。久しぶりに悪鬼羅刹と呼ばれていた頃に戻るとしましょうか」

 

このギャンレルと会頭の話し合いの後

アニケドマ商会は動かしうる戦力全てをペレジア辺境にある隠し砦に集結させる

更にペレジア軍の逃亡兵などを密かに募り始め、ギムレー教団に対する牙を研ぎ始めた

 

 

ギャンレルとしては誰が国王でも構わないと思っている

だが

 

「生憎だがな

国やその地に住む民の事を考えもしねえ様な奴に国王なんざ任せるつもりはねえよ

滅びたきゃテメェらだけで寂しく滅べ」

 

会頭が帰った後ペレジア全土の調査をさせたが、屍兵などの跋扈する事態となっていた

名目上国王である筈のファウダー。彼の元にはギムレー教団の教団兵などがいるにも関わらず兵を出そうともしないと聞く

 

イーリスとの話し合いや交渉は後回し

 

「足元を固めねえ奴は何処かで転ぶもんだ

暴れてこい、イーリス軍。こっちは何とかしてやる」

愚か者達の宴が今此処に始まる

 

 

 

 

 

 

 




という訳でペレジア内でギャンレル率いるペレジア軍が動き始めます
なお、本作において未来組は何人かはクロム達と『合流しません』

何せ邪竜復活阻止なんていう割と切迫した状況
しかも生き証人であるルキナがいる以上、その危機感は相当なものだと思いますので


思いつくままに書いた結果、何故かこうなった
なんでやろうなぁ(白目)
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