いつも通りのクオリティですが、どうぞ
「…ふん、来たか」
「ヴァルハルト、我が祖国ソンシンの誇りにかけてお前を倒す!」
「よせ、サイリッ!」
ヴァルムの王
いや覇王ヴァルハルトとの直接対決にまでこぎつけたクロム達
クロム達としては、ヴァルムも脅威だったがペレジアの状況も気掛かりだった
思惑はどうあれ、ヴァルムまで来れたのは間違いなくペレジア国王ファウダーの力添えあっての事だ
そのペレジアが死んだ筈のギャンレル達により混乱の最中にあるという。更に未来から来た自身の娘ルキナによるとギムレーは死者を操れるとの事だ
となれば現在ペレジアを攻撃している者達はギムレーの手の者である可能性は決して低くない
現在、フェリアの二人いる王の一人フラヴィアはクロム達と共に戦ってくれている
そしてもう一人の王であるパシーリオはヴァルハルトにより帰らぬ人となっていた
現在でこそ国王のいるペレジアに仕掛けているギムレー達だが、その刃がいつ国主不在のフェリアやイーリスに向くかも分からないのだ
どうしても気が
…この時点でクロム達は大きな勘違いをしている
ギムレー側なのは彼等が気にしているファウダーであり、寧ろギャンレル達はクロム達にとって貴重過ぎる味方なのだ
だが、中途半端に
会頭ならば鼻で笑ってから
「未来知識?原作知識?
笑わせるわ。所詮それは参考程度にしかならんものよ
…それとも何か?その未来知識とやらに
と言うだろう
知識は知識に過ぎず、それを全てに当て嵌めると言うならば
人をムシケラと言う者達と何処が違うのか?
人のみならず生物には意思がある
その意思の元に動くのだ
それらを全て知っていると思うのが傲慢でなくてなんだというのか?
会頭がセレナ達を味方に引き入れたのは別に戦力としてアテにしている訳ではないし、原作キャラだからという訳でもない
放置しておいて、敵になったら
事実原作でかなりの成長率を誇る『最強の村人』ことドニ
彼は未だ村人のまま、母親達と一緒に生活している
それで良いのだ
別に力があるからと言って、無理矢理戦場に連れ出す必要を会頭は感じない
イーリス初代聖王はファルシオンの力を封じたとされる
「過ぎた力は争いの元となる」
との事らしい
それを知った会頭は嘲笑した
過ぎた力?
それを封じると言うのならばいっその事神竜族の様に神殿にでも祀っておけば良い
そもそも力を制御する理性を持つからこその騎士であり、力を振るう人間は少なからず理性的でなければならないのが常だ
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彼はアカネイア時代親しかったマルス軍の者はそこまで多くない
軍の指揮官であるマルスにその相談役のジェイガン。交易の関係でタリス王と親しかった事から誼のあったシーダ
商売の中心であったが故に必然的に関わる事の多いミネルバとマリア
チキにバヌトゥ、チェイニーとはかなり親しくしていたりはしたが
彼はある時バヌトゥとチェイニーに訊ねた事がある
「失礼かとは思いますが、一つお聞きしてもよいですか?」
「おお、構わんよ」
「どうしたのさ?」
「ファイアーエムブレムについてどう思いますか?」
「…ふむ、確かに何も思わん訳ではないのぅ」
「そう言うって事は知ってるんだ、へぇ」
彼の言葉にバヌトゥは苦笑いをし、チェイニーは驚いた様な顔を一瞬だけすると楽しそうに笑った
「ファイアーエムブレム
いえ、炎の台座ですかな。あれが元々神竜族のものであった事、パルティア、メリクル、グラディウスにファルシオンもまたそうである事は存じておりますよ」
「中々物知りじゃのう
ヒトはそれを忘れておるものかと思ってあったが」
「なるほどねぇ
それなら俺達を気にするのは当然かな?
…というか、気が気でないでしょ?」
「協力して下さっている御二方からすれば、アレはアカネイアに奪われたもの。複雑な思いだと思ってはいます
…それにチェイニー殿は敢えて言われたのですよね?ファイアーエムブレムではなく、台座と」
「…あはは
バレたか」
「正直気が気でなかったですよ
その話を聞いた身としては」
「大変じゃのう」
彼からすれば神竜族に対する裏切りの証ともいえるこれらを良く彼等竜族の前で使えるものだと内心ヒヤヒヤしていた
伝えるべきか彼は悩んだがチェイニーから
「別に言わなくてもいいよ」
と言われたので口を閉ざしてはいるが
そもそも地竜族の長であるメディウスが動くとなれば、彼に従う人間が覇権を握っている現状に不満を持つ地竜族が味方するのは確実
無論復活してからにはなるだろうが
それに対して神竜族側からの助けがバヌトゥとチェイニーにチキだけと言うのは色々おかしい
彼からすれば人間との共生派である神竜族側の中にもヒトに不信感を持っている者が多いのではないか?と勘繰りたくなる
チェイニー達からすればたとえどの様な理由があろうとも、神竜族の長であるナーガを祀っているラーマン神殿にまでマルス達は踏み込んでいる
この時点でチェイニーはマルス達人間を見限ったのだ
バヌトゥは元よりチキを探すだけだったし、その縁がなければ協力もしなかった
故にこそ、チェイニーとバヌトゥは戦争後マルス達に何を言うでもなく姿を消した
彼とは偶にマケドニアで会って世間話に興じる事はあったものの、マルスやその子孫にあたるイーリス聖王国の初代聖王などにも力を貸す事はなかったのである
チキはまだ幼かったが故に、マルスの善性を無邪気に信じたがそれだけだった
本来であれば邪竜ギムレー相手なら竜族が力を貸しても不思議ではなかったが彼等は完全に人間を見限り自分達の領域に篭る事を選ぶ
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「今もって罪の象徴を知らぬとは言えそのまま振り回すとは無様を通り越していよいよ憐れに思えてさえくるな」
事情を知らないからこそ出来る事ではあるが、事情を知っている会頭からすればそれこそ冷笑しか浮かばない
そも宝玉とて神竜族の秘宝だ。呼び方こそ変わりはしたが
つまり人間はいつまで経っても神竜族の力に頼らねばならないという事でもある
「…さてどうしたものかね」
会頭は様々な事に触れるうちに朧げながら思い出していた
この時代にギムレーは2体おり、1つは未来から過去に逃れてきたルキナを追いかけてきた絶望の未来のギムレー
そしてもう1つは
「後腐れなくやるなら、適当に始末した方が早いんだけどなぁ
困った事にアレ今イーリス国王の妻だからねぇ。ホント面倒な」
会頭とて
「ま、別に構わんか
それで滅んだとしても時代がそれを選んだだけの事か」
一度どころか二度死んだ身
今更三度目の死を恐れる理由はない
「や、まぁ死ぬのは嫌だけどな」
…どうやらそうでも無かったようだ
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「おや?懐かしい顔じゃのう」
会頭にそう声をかける赤いフードを被った人物が近づいて来た
「…会頭、お下がりを」
秘書が庇おうとするが
「…ありゃま
バヌトゥさんじゃねぇですか」
会頭は秘書を手で制すると驚きの声をあげた
「…懐かしいのう
しかしお主人間じゃと思ったが。違ったかの?」
「…人間ですわ
実は色々ありまして」
会頭の苦笑混じりの言葉に
「ほっほ
なら久しぶりに話をする為にも」
「ですねぇ」
「邪魔者は始末しませんと」
バヌトゥは竜石を掲げ、会頭と秘書はそれぞれ武器を構えて
『生憎じゃがのう、この者は儂等の友人じゃて
少しばかり手伝わせてもらおうかの』
火竜に変化したバヌトゥはそう屍兵達に告げる
そして彼等は迫り来る屍兵達を迎えうつ
「…会頭、あの方は?」
秘書の女は屍兵を倒しながら問いかける
「かつてこの大陸の主だった竜族の人さ
…以前話していただろう?」
「すいません
流石に荒唐無稽過ぎて」
素直に頭を下げて謝罪する秘書
なお重ねて言うが戦闘中、しかも自分達よりも遥かに多い屍兵の群れを相手にしてこの余裕である
「流石に戦うとなると不利は否めませんね」
「つうかバヌトゥさん昔より強くなってねぇか?」
心底旧友の戦う姿に楽しそうな会頭
更に
「よっ
久しぶりだね。手伝うよ」
「おやチェイニー殿までとは有り難い」
「ま、アンタがいるなら手伝ってもいいかなと思ってさ
あの子も怒らないでしょ」
「いやぁ楽しくなってきましたなぁ
昔を思い出してはしゃぎたくなりますよ」
「…あの、会頭?」
秘書は今までどちらかと言えばやる気がそこまで無かった会頭のスイッチが入った様な言葉に戦慄した
(これでまだ本気ではなかったと!?)
「詳しい話は後のお楽しみだね
さ、やろうか?」
チェイニーもまた古き友人との再会に楽しそうな顔をして敵陣に飛び込んだ
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「…で?思わずはしゃいだ結果がコレか」
「いやぁ申し訳ない、ギャンレル殿」
ペレジア軍陣地にてギャンレルは会頭と秘書。それにバヌトゥとチェイニーに1人の少女を交えて話をする事とした
「先ずは助力感謝するぜ
俺はギャンレル。まぁ今は訳あってギムレー教団を潰す為に動いている」
「ほっほ
ご丁寧にのう。儂はバヌトゥ、しがないマムクートじゃよ」
「チェイニーだ。コイツと古い友人だから手伝っただけさ」
「…しかし驚いたぜ
確かに文献にはあったが、こうして竜族の者達と会えるたぁ思わなかった。それとすまねえ
アンタ等の秘宝をいつまでも私物化しててよ」
ギャンレルは頭を素直に下げる
ペレジアにも宝玉はあった
それが神竜族の秘宝だと知らなかったでは済まされないし、済ませてはならない。そうギャンレルは考えていたからだ
「驚いたね
はっきり言ってアンタ達からすれば遥か過去の事だろ?」
「だからと言ってそれで全部片付く訳でもねえと俺は思っている
勿論自己満足でしかねえがな」
「まぁそれはギャンレル殿が気にする事でもない気がするがのう
おお、そうじゃ。…今は何と呼べば良いかの?」
バヌトゥは会頭と呼ばれている男に話を向ける
「一応会頭と呼ばれてはいるな
好きに呼んでくれて構わないが」
「では儂等も会頭と呼ぶかの
実は会ってもらいたい子がおってな?」
「それがそこの娘っ子か?」
「娘っ子ではないのですよ!
私はンンと言います」
「まだ若いじゃねぇか
それこそチキよりも遥かに」
「そうじゃのう。話の限りでは生まれてからまだ20年も経っておらんとか」
「…竜族で20年とか赤子レベルじゃないか、たまげたなぁ」
会頭は絶句した
「ンンは子供ではありません!」
「ンンの主張はまぁ良いとしてさ
会頭は結構理不尽な生い立ちだから分かると思うけど、この子も大概なんだよね」
「…否定したいのに否定できんぞ」
チェイニーの言葉に力無く項垂れる会頭
「どうにも邪竜ギムレーが復活した未来からこの子は来たらしい」
「…」
陣幕内は静まり返る
「それでまぁ、どうしようもなくなって過去に来たらしいんだ」
「…雑ではありませんか?」
ンンはチェイニーをジト目で見るが
「あのさぁ、時間遡行なんて出来たとしてもやっちゃいけない事の筆頭なんだよ?
幾らなんでもチキ様は何でこんな事を」
チェイニーは頭を抱える
「盛者必衰は世の習い
実際竜族から大陸を奪ったのが人間なんだから、また竜族に奪い返されたとしても文句を言う筋合いはないと思うがね」
会頭はそう呟く
神竜族は確かに人との共存を良しとしている
だが、余りにも今回のコレは度が過ぎている様に思えてならない
「まぁそれはそうとしてギムレー教団を潰すのには何も変わらないんだけどな」
「違えねぇ」
「そうですね」
「そうじゃのう」
「だね」
「そうです!」
兎にも角にもギムレー教団を潰し、邪竜ギムレーの復活を阻止する
その目的は変わる事などない
会頭の言葉に皆それぞれが賛意を示した
「という訳でギャンレル殿
儂とチェイニー、それにンンは」
「分かってる
会頭の元で動いてくれたらそれで構わねぇよ」
「では元商会員達の指揮は引き続きお任せしますよ?」
「助かるぜ」
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会頭軍編成
会頭 ドルイド リザイア リブローの杖 リライブの杖
秘書 アサシン キルソード サンダーソード 特効薬
バヌトゥ マムクート 火竜石 特効薬
チェイニー コマンド 特効薬
ンン マムクート 火竜石 特効薬
セレナ 傭兵 キルソード 特効薬
ノワール アーチャー キラーボウ 特効薬
シンシア ペガサスナイト キラーランス 特効薬
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「ンンじゃない!」
「あ、セレナにノワールにシンシア
無事だったのですね!」
「よ、良かった。ンンも無事で」
「会頭さんに助けられたの?」
「いえ、マムクートのバヌトゥおじいちゃんとチェイニーさんに助けられたです」
「そうなの?
てっきり私はもうマムクートっていないと思ってたけど」
ンンの言葉にセレナは首を傾げるが
「いるにはいるらしいです
ただヒトと関わりを基本的に絶っているらしいですね」
なおンンの母親であるノノの様な存在はこの時代稀であるし、何なら人とマムクートの混血であるンンは更に珍しかったりする
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余談ではあるが別にシリーズを通してみれば前例がいない訳でもない
エレブ大陸(FE封印の剣、烈火の剣)において登場したソフィーヤもそうである(前者では参戦キャラ。後者では非参戦キャラ)
が、ンンはマムクートなどの通例である『見た目通りではない年齢キャラ』ではなく、ルキナ達と同世代である為その点では珍しい
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「ギムレー復活を阻止する
私達の目的でもあるわね」
「な、ならしっかりしないといけませんね」
「みんなで頑張ろう
ルキナも頑張っているだろうし」
「かなり頼りになる人達ですからしっかり自分の身を守りながら頑張るのです!」
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この後、ファウダー率いる教団勢はギャンレル率いる本隊と会頭率いる別働隊に翻弄される事となり、イーリスはそれを報されクロム達へとその報告をする事になる
絶望の戦いまで後わずか
あくまでもイーリスから見て正規の部隊はファウダー達であり、ギャンレル達は混乱を引き起こしていると見えます
更に中途半端な未来知識がクロム達の目を更に曇らせ、姉エメリナを殺したという事実もまた曇らせます
更に事態を直接確認しようにも遠く離れたヴァルムの地に彼等は居ます
思いは同じでも違う景色が見えていた
憎しみは消える事なく彼等を蝕み、思い込みもまた彼等の思考を鈍らせる
砂漠の神殿の奥で嗤うは邪竜
次回
けっせん