立場や手段が異なれば敵対する事もある
戦いの中で生まれる絆もあるならば
戦いの中で失われる絆もまたあるのだろう
今回から本格的に独自路線を突っ走ります
そんなのは認められない!
という方は此処でブラウザバックを強く推奨します
それでも宜しければ、どうぞ
「申し上げます
イーリスのクロム王らがヴァルムにて覇王ヴァルハルトを討ち倒したとの事にございます」
「…ちっ
やっぱりそうなるかよ」
ギャンレルは本陣で受けた報告を聞いて悪態をつきそうになった
確かに侵攻してきたのは事実
だが、力を示せばかの覇王ならば万一ギムレーが復活した場合頼れる味方として期待できたはずだ
…というよりも
「確かに戦うべきだっただろうが、滅亡させる必要なんぞねぇだろうがよ」
結果論とはいえ、これでヴァルム大陸側の援軍は見込めなくなった
ヴァルムという強大すぎる敵がいたからこそ、様々な思惑があった者達はまとまったに過ぎない
間違いなく、これからヴァルム大陸では国土の奪い合いや誰が主導権を握るまで壮絶な戦いが数多く起こるだろう
この辺が政治に疎すぎる癖に戦闘は得意な連中の欠点と言えるだろう
あくまでも戦争や政争は手段であって目的ではない
国を滅ぼしました
でも後の事は知りません
ではどうしようもない
統治機構である国を滅ぼすというのはそういう事なのだ
「…まぁ、政治から距離をとって自警団みたいな
更にそれを補佐すべき人員にも問題がある
武官としてフレデリクがいたが、本来ならば政治寄りの意見を出す文官なりが必要だった筈だ
恐らくだが、補給や後方支援などに長けた人間を態とつけなかったのだろうとギャンレルは推測する
自警団をやっているにせよ、そこには明確な目的と確たる行軍計画などが必要だ
恐らくだが、自警団が行き詰まるまで文官達は放置していたのではないだろうか?
それにより王子自身に足らぬ部分がある事を自覚させようと
何せ単純に考えたならば、亡き女王エメリナが政治を
クロム王子が軍事をそれぞれ担当すればバランスがとれている
様にも見える
言うまでもないが、そんな事は決してない
全てが一流である必要はないが、最低限の知識が無ければそれこそ下の者達に良い様にされる
政治が嫌いだとか
軍事を否定したい
などと言う個人的な主義主張など関係ない
国王としてあるならば、王族ならば
やらねばならない事なのだ
その空白に見事ハマったのが軍師であり、イーリス国王の妻であるルフレなのだろう
だが、彼女は軍略に明るくとも政治までカバーできるとは思えない
政治とは交渉や折衝の積み重ねであり、氏素性も知らぬ者が王子の信任だけでどうにかなるものではないのだから
それ故に政治に携わる者は人脈を作られねばならないし、孤立したままで強権を振るえば反発しか生まないだろう
加えて言えば、間違いなくヴァルム大陸への出兵は国内から反発があっただろう
何せ女王エメリナが亡くなって僅かな時間でイーリス国内をまとめ上げられたとは思えない。国民から長い時間をかけて支持される様になった彼女ですら政治中枢に裏切り者を抱えていたのだ
それが自分達を軽視していると見えるクロムが主君であるならば尚更だろう
軽視していないのかもしれないが、傍目からすれば
氏素性も知らぬ上にその為人すら知らぬ人物に自警団とはいえ、イーリスの戦力の運用を任せたのだ
実力云々の話ではない
仮に軍師たるルフレが優秀であるならば、それ相応の段階を経てイーリスの次期後継者筆頭たるクロムの傍に着くのが道理のはず
自警団員はクロムやリズの個人的な友誼などで構成されているが、曲がりなりにもイーリス聖王国の戦力であれば、ある程度の調査はしなくてはならない
それが王子や王女を守る為にも繋がるのだから
フレデリクはペレジアとの戦闘の後にイーリス聖王国の文官達から叱責を受けている
「貴殿はあくまでもクロム王子の補佐役ではない
必要とあらば、たとえ王子が御不快に思おうともそれを諌め糺すのが責務の筈だ
ただ王子のいう事に従うのであれば、騎士ソールや騎士ソワレだけでも充分。態々貴殿の様な人物を王子の側に置く必要など何処にもない
にも関わらず、フェリアにおける独自行動やペレジアへの侵攻に加えペレジア王をその手にかけるなど何を考えているか!
挙げ句の果てには未だに素性すら明かせぬ娘を軍師としてだけではなく、クロム様のお妃として迎えねばならんなどと貴様は何をやっていたか!!」
防衛したのは評価されるし、賛美されて当然だろう
が、侵攻するとなれば国内に妹であるリズ王女なりを残すべきであったのに彼女すら一員としてヴァルム大陸へと渡っている
事実イーリスとペレジア国境の部隊や会頭指揮下の諜報部隊からは
イーリスに不穏な動きあり
との報告が寄せられている
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「動き出しやがったか」
ギャンレルは遂にこの時が来たかと腹を括る
ペレジアとイーリスはイーリスの代替わりによって、業腹ではあるがひとまずの全面戦争の危機は回避された
それがイーリス国民達から見たイーリスとペレジアの関係だ
だが、実のところ女王エメリナが騎士団を縮小した事により、イーリス国内の有力者達の私兵団が独自に思い思いの行動をし始めた事を果たしてエメリナ達は知っているだろうか?
イーリス国内での締め付けが緩んだと判断した一部の国境付近の領主達が略奪目的で度々ペレジアやフェリアに仕掛けていたのを知っているか?
何せ彼等を牽制する役割もある騎士団は解体され、王都付近以外の守備は万全とは言えなくなっていたのだ
騎士団の縮小によりイーリス王家は各地の領主や有力者の兵力すらあてにしなければならなくなってしまう。これにより王家の影響力は低下し、それに反して国内の有力者の影響力は増してしまう
…だが、イーリス(王都付近に住む)国民からすれば、騎士団を縮小したとしてもその傘の中にある
更に削った軍事費により、聖戦で疲弊したイーリス国内の立て直しが出来ていたのだ
彼等は喝采を挙げて『聖王エメリナ』の統治を受け入れた
王都付近以外の民を犠牲にして
無論エメリナのやり方に
だが、エメリナの悪く言えば
女王や王子、王女に対しては協力的に振る舞いながら自領に戻れば女王の意思などまるで気にする事はない
だが、辺境や地方にまでクロム達の目が届かないから彼等からすれば『イーリスの為に日々精進している』と見える訳だ
現在ギャンレル指揮下の部隊には会頭の部下達もいるが、その中には元イーリス騎士団所属の者もそれなりの数いる
彼等はギャンレルがこの大陸の存亡すらかけた大博打に挑もうとしているからこそ、かつての大敵であるギャンレルに従っている
変わってしまった
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クロム達に不満を持つ者達からすれば今現在の状況はこの上ない機会なのだ
何せクロム達に渡す情報についても、彼等は表面上クロム王の支持者として見られている為にたとえ
加えて彼等を始めとしてイーリス聖王国にいる者は『邪竜ギムレー復活』が何をもたらすのか?どころか、そもそも『邪竜ギムレー』すら知らない者ばかり
彼等が知るのは『死んだはずの反イーリスを掲げていたギャンレルが生きており、ペレジア内で争乱を引き起こしている』という事だけ
加えてギャンレルに対して敵意をどうしても持ってしまっているクロム達。本来ならば『自分の知る歴史と違う』という事に対してもう少し意識を向けるべきルキナもルフレという最大級の警戒対象に目を奪われている為に平静さを保っていられなかった
故にこれは必然だったのだろうか?
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「ファウダー様、イーリス軍が我等の支援に入ると」
「ククククク
そうか、なるほど
…ならばクロム王等に伝えよ
『窮状にある我等を助けてくれる事感謝したい』とな」
ペレジアの祭壇付近にある神殿内で報告を受けたファウダーは心底愉快そうに笑い、指示を与えた
「はっ」
『全くヒトとは愚かなものですね、ファウダー
我の復活を阻止しようとする者達を敵と定めるとは』
「まこと滑稽な事かと思いまする
しかし、御身はまだ力を取り戻しておられぬ以上はこれを利用すべきと愚考しました
…我等が神よ、お許しを」
そして、背後にいる彼等にとって救いとなるギムレーに対して己が判断への許しを乞うた
『良いでしょう
どうにも相手には面倒な者達がいる様です
…必要とあらば
「はっ有難き」
ファウダーとギムレーは戦いを見つめる事となった
なお、ファウダーにとって重要な手駒であったはずのインバースだが、彼女はこの神殿内で命を落としている
既にファウダーの目的は達しつつあるのだ
態々不確定要素を手元において置く必要を彼は感じなかったのである
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「会頭、どうやらクロム王子らはこちらとの戦闘を選ぶ様です」
「…やれやれだ
まぁ仕方あるまいよ。セレナ達とンンを急いで呼んでくれ」
「急ぎます」
そして、彼女達が揃うと
「悪い知らせだ
クロム王子達は我等と敵対するらしい」
と会頭は切り出した
「はぁ!?なんでよ?」
「ど、どういう事ですか!?」
「ええっ、どうして?」
「いきなり訳が分からないのです」
セレナ達は戸惑っている事を素直に口にする
「ギャンレル王はイーリスの女王エメリナを殺した張本人だ
それに一応今の国王は何故かファウダーらしいからな。上手く踊らされているのだろうよ
…いや、それは俺達も変わらんか」
「で、でもギムレー復活を阻止しようとしてるじゃない!
なのに、何で」
セレナは戸惑いと共にやり場のない怒りを感じていた
確かにギムレー教団や屍兵は強力だ
しかし、あともう少しで本拠地たる神殿にすら手が届こうというこのタイミングで
しかも、自分達の母親達が戦いを仕掛けてくるのだ
彼女からすれば裏切られたと思っても仕方ない事だろう
「とにかくお前達はこの戦場から離脱しろ
此処で命を落としてしまってはギムレー復活阻止は叶わなくなる」
「ま、待ってください
私達
ノワールは既に涙目だ
「かくなる上は決死隊を編成し、ファウダーの首だけでも貰い受けるとしよう
…すまんが付き合ってくれるか?」
「元よりこの命はあの時に失っていたものです
…会頭、最期までお供させて下さいますよう」
会頭は秘書に声をかけ、秘書もまたそれを当然の様に受け入れる
「古き友人達との逢瀬。まさか叶うとは思いませなんだ
されど、此処からは醜きヒトの殺し合い。…バヌトゥ殿、チェイニー此処でお別れです」
「…そうか
お主がそう覚悟を決めておるならばもう何も言うまい
さらばじゃ、我等竜族の近しき友人よ」
「…あーあ。せっかくチキ様に会ってもらおうと思ってたんだけどなぁ。ホントヒトってのは面倒な事が好きだよなぁ
…また会いたいけど、流石に無理か」
バヌトゥもチェイニーも彼の覚悟を理解したのか別れの言葉を口にする
「待ってよ!もっと他の方法が」
シンシアはそう口にするが
「既に手遅れだろうさ」
会頭が示した場所を皆が見ると
「…黒煙が上がっているのです」
ンンは気が付いた
彼女もまたマムクートであり、人より鋭敏な感覚を持つ
だからこそあの黒煙の立ち上っているところこそが、ギャンレル達の本陣のある場所であると理解してしまった
つい少し前まで制空権を確保していたはずのギャンレルに従っていたペレジアの竜騎士達の姿は誰一人としてなかった
「皆、此処までの協力を感謝したい
セレナ、ノワール、シンシア、ンン。少ないがこれまでの報奨金だ。役立ててくれると助かる」
会頭はそう言って四つの袋を彼女達に差し出す
「バヌトゥ殿とチェイニーにはあの時渡しそびれた菓子のレシピを
…あのお嬢にでも振る舞ってやってくれると嬉しく思う」
「あいわかった。まかされよう」
「…多分これ貰ったらチキ様泣くと思うけどなぁ」
「もうあれから千年以上経ったのだろう?
いい加減大人になれ。そう伝えてもらえるか?チェイニー」
「損な役回りを引き受けるのは相変わらず、か
わかったよ」
チェイニーは渋々彼からそれを受け取った
「さて、時間の猶予はほとんど無い
悪いが直ぐに動いてくれ」
という訳でそろそろルキナを曇らせないといけないと思うのでかなりドギツイ話になりました
何故よりにもよってこのメンバーかと言うと
セレナ
母親であるティアモに複雑な想いを抱えており、尚且つ全てを背負い込むルキナに対して『私達を頼りなさいよ!』と言った想いを抱いている。なので凄く拗れると思ったからです
ノワール
おどおどしていても、キチンとした芯のある強い子だと思うのでルキナは敵対したとしたら凄く曇ると思いました
シンシア
かなり純粋な娘なので、仲間達と剣を交えるとなると相当曇ると思いました
ンン
残念な事に彼女は最初から外せないメンバーでした
何せ彼女がいないとバヌトゥやチェイニーとの再会が(元々強引なのに)更に不自然なものになると思ったので
更に彼女自身は『人の迷惑にならないよういい子になろう』としていた為に冷静な意見も出せるだろうと
つまり、かなり曇らせる事ができるかなぁって
以上余談でした