戦乱の裏側で   作:鞍馬エル

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カオスルート




 絶望(奈落)へと続く道を

「ファ、ファウダー様っ!」

 

「何事か?」

 

「申し上げます!ギャンレル以下ペレジア軍残党はイーリス軍の強襲により壊滅

されど、敵の一部の集団が此方に向かって突き進んでおりますっ!」

 

「…なに?」

ファウダーは予想外の報告に眉を顰めた

 

 

自分達と敵対していたのはギャンレルに従っている旧ペレジア軍残党だった筈だ

 

指揮官であるギャンレルが斃れたならば、その時点で此方への攻撃よりもイーリス軍への攻撃が激化すると考えていただけに驚いたのである

 

 

 

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「会頭!此処は我等にお任せを!」

 

「任せる

よく此処まで付き合ってくれたな。感謝するぞ、イーリスの騎士達よ」

 

「なんの

行き場を失い、誇りすら奪われた我等を救い上げて下さった恩に比べたならばこの程度の事如何程の事がありましょうか」

 

「そうですな

邪竜ギムレー復活という民にとって何よりも恐ろしい事を画策する奴等との戦いは『力無きものを守る』という我等の誓いそのもの

我等たとえ剣が折れたとしても此処を死守します。どうかお願いしますぞ!」

 

会頭と秘書

それにギャンレルから指示を受けて駆け付けた元イーリスの騎士達は一団となって神殿へと突撃を敢行していた

 

 

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「どうやら運は俺を見放したみたいだな

お前達は会頭の元に行け!

騎士であるテメェ等ならあいつ等に追いつくだろうからな!!

他の連中には悪いが、此処で出来る限りの時間を稼げ!」

 

ギャンレルにとっての勝利条件はイーリス軍の撃破でもギムレー教団との戦闘の勝利でもない

 

邪竜ギムレー復活の阻止とその企みの張本人であるファウダーの始末《ペレジアの未来を守る事》なのだ

 

 

その為ならば、一度死んだ身

何を今更恐れる事があるというのか?

 

 

たとえヴァルムに勝ったクロム達であろうとも、不意を突いた態度でギャンレル達ペレジア軍が総崩れになる筈もない

 

彼等は時間稼ぎに行動目標をシフトしたに過ぎなかったのだ

 

 

「さぁ来な

暗愚王と呼ばれた男の

ペレジアの未来を守ろうとした男の最期の意地。テメェ等に見せてやるぜ」

ギャンレルは不敵な笑みを浮かべ、クロム達を迎えうつ

 

 

----

 

「会頭、残り4騎のみです!」

 

「足を止めるな!

敵など通過点に過ぎん!俺達が狙うのはたった一つだ!!」

 

「「「「応っ!!」」」」

 

僅か6人の集団

だが、彼等はとうの昔に自身の生還など捨てている

 

屍兵は死を恐れぬが、思考もなく操られるままに動く

当然だが術者が戦況を正確に理解していようとも、それを動かすまでに僅かながらのタイムラグが出来る

 

会頭はリザイアで

秘書は敵から奪った武器を

騎士達もそれに続き、それを穿つ

 

屍兵を動かそうと意識を逸らせば自身の身が危うくなり、自身の身を優先すれば屍兵のコントロールが疎かになる

ギムレー復活を願う教団の者達からすれば、ギャンレルを倒した時点で『勝った(終わった)戦い』

だからこそ、命を惜しむのだ

 

 

ギムレーが復活したならば、あっさり失う事が確定している

その命を

 

 

故に彼等を止める事は出来ない

本来ならば、ファウダーの副官であるインバースなら対処出来なくもない話

 

だが、ファウダーは用済みと切り捨てている

 

 

そして彼等は辿り着く

 

 

----

 

「会頭!神殿です!」

 

「会頭、我等が血路を開きます

故、後はお願いします」

 

「…分かった

あの世であの女(エメリナ)やかの英雄王達に話してやるよ

お前の切り捨てた者達は

お前達の子孫達は立派な騎士であったとな」

 

「有り難く

ではお暇を貰いますぞ

皆、かかれっ!!」

会頭の言葉に騎士4人は笑い合うと

 

神殿を守る者達の中へと消えていった

 

 

 

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「残念だが俺達ではギムレーは倒せまいよ

だが、ファウダーならば可能だ」

 

「それが私達の最期の仕事、ですね」

会頭の言葉に秘書は頷く

 

「そうだ

甚だ不本意だが、ギムレーを倒す為にはファルシオンが必要だ

…全くマルス王に頼り、神竜族に頼る

どれだけ己が強くなったと嘯いたところで所詮はその程度の強さという事だな」

会頭はぼやく

 

言うまでも無いが、雑談に興じながらも2人は邪魔となる生涯を的確に効率よく、無慈悲に始末していたが

 

「あと一つだけ話す事がある」

会頭は口を開いた

 

 

----

 

「まさか

まさか此処まで踏み込める者がいるとは正直言って驚いたものだ」

神殿の最深部に足を踏み入れた2人をファウダーは称賛と共に迎えた

 

多少目減りしたと言っても神殿内にギムレー教徒は軽く見ても数十人いた

それを最低限に絞ったといえど突破したのである

敵ながら天晴れと素直に賞賛できるだけのファウダーには貫禄があり

 

 

…そして、余裕があった

 

「故にこそ有難いものだ

貴様等の亡骸はさぞ素晴らしい尖兵となるのだからな」

ファウダーは事前に詠唱を終えていた闇魔法を解き放つ

 

だが

「それがどうした!?」

既に己の命など遥か過去に捨てた身

会頭はためらうことなく、ファウダーの魔法を受ける

 

「…なに!?」

ファウダーが驚くのも無理はない

 

彼の魔法を受ければ並みの魔道士なら即死レベルの魔法なのだから

 

 

「部下達に色々持たせたのがお前のミスだよ!」

魔法を抜けた会頭は詠唱を終えたリザイアを叩き込むべく集中する

 

 

----

 

彼の持っているスキルの中で唯一無二のものがある

 

スキル『強盗』

倒した相手の武器などを奪うスキルだ

 

神殿まで会頭。それと共に駆け抜けた騎士達や秘書

いったい彼等と彼女はどうやって

投擲する武器(・・・・・・)を手に入れたのか?

彼等は足を止める事すら許されない極限状態にあった

 

 

そして

身一つでアカネイアに放り出された彼がどうやって商会の長にまてま上り詰めたのか?

それがこのスキルのお陰であった

 

 

そして、神殿内にはファウダーの地位を脅かさんと企む者も少ないながらもおり、彼等はファウダーの強大な魔力と魔法に対抗する為『魔除け』を持っていたのである

 

元よりファウダーが魔道士として高い実力を持っている事はギャンレルより聞いていた2人は迷う事なく会頭に全ての魔除けを使った

 

 

 

そしてようやく掴んだ針のひと穴

 

「…バカな」

ファウダーもこれはかわせぬと見て目を見開いた

 

 

----

 

 

「アンタ達、何を自分達がしてるのか分かってんの!」

 

「…どうしてですか、セレナ!」

 

会頭達が神殿内に突入した頃、セレナ達は自分達の願いを不意にしたイーリス軍に剣を向けていた

 

セレナ達は物心ついた頃には親を亡くしているものが多く、だからこそ両親に逢いたいという思いは強い

…だが、それと同じくらいあの絶望の未来をどうにかしたい。そんな願いも強かった

 

 

セレナ達が会頭の部隊に組み込まれた時、彼女達は知識でしか知らなかったペレジア軍の人達などと関わる事になった

 

 

「…なんだ、まだガキじゃねえか

なんでアイツもこんなガキどもを戦場に出そうとするのかねぇ」

 

「ガキで悪い?

それでも私達はしなきゃならない事があるのよ!」

 

「…しなきゃならない(・・・・)ねぇ

なら仕方ねぇな、おいこのガキ達を鍛えてやれ。こいつ等の願いが叶うかどうかは知らねぇが、力無き者がどれだけ声を上げようと叶わねえのがこのクソッタレな世界だからな」

と口こそ悪いが確かに情のある王がいた

 

「おい、娘っ子

それだけしか食べねぇのか?それじゃ保たねぇだろう?」

 

「あ、あまり食欲がなくて」

 

「なら甘いもんなら食べられるだろう?

おーい、誰か甘味持ってねぇか?」

そう声をかけてくれた人がいた

 

「…ふむ天馬騎士なのかお嬢ちゃんは

私達は天馬騎士の戦い方にはそこまで詳しくないが、槍の扱い方は指導出来るが、どうかね?」

かつてイーリスにいたという騎士がいた

 

「マムクートというものは今殆どおらぬのじゃ

…ふむ、折角の縁。どれ、この爺が教えてやろうかの?」

そう言って導いてくれたお爺さんがいた

 

----

 

「アンタは、何を見ていたのよ!」

 

「わ、私は」

ルキナが知るセレナの剣筋の名残もある

…だが、明らかにあの頃に比べて強さが増していた

 

「未来を救いたいって思うんなら!誰かに頼らなきゃ出来ないなら!

そこで生きる人達と向き合わなくてどうすんのよ!!」

 

 

「いいか、お前達

お前達が未来から来たと仮定して話すが

…縛られるな

お前達の知っている歴史は既に知識の上のものでしかない

間違うな

自分が知っている事全てが正しいなどと」

会頭さんは私達を集めてそう言っていた

 

ンンの知り合いであるバヌトゥさんとチェイニーさんは驚く事にルキナが目指していたマルス(英雄)王と実際に会っているらしい

…何故かその話を楽しそうに会頭さんも交えてしていたのは最後まで不思議だったけど

 

 

「アンタは父親に会って!

それで満足なの!?違うでしょうが!!」

 

「…うっ

くっ」

ルキナは次第にセレナの剣戟と剣幕に押され始める

 

「ルキナ!」

 

ひゅん

 

そんな彼女を助けようとウードやロランが動こうとするが

 

「う、動くなら遠慮なく撃ちますから」

ノワールによる精微な射撃がそれを阻む

 

 

 

また空中では

 

「普段冷静なのに、何やってるの!ジュロームッ!」

 

「ペレジア軍に与したというのか?シンシアッ!」

怒りに燃えるシンシアと何とかして無効化したいジュロームが激闘を繰り広げていた

 

 

そして

 

『悪いとは思いますが、手加減しませんですよ?』

 

「うう」

竜の姿となったンンはシャンブレーを組み伏せており

 

「シャンブレー!」

 

「マジかよ、くそっ」

アズールとプレディの相手をしてなお圧倒していた

 

 

 

ルキナ達はセレナ達を傷付けたいと思っていない

セレナ達はルキナ達を殺す気はないが、傷付けることには躊躇いがなかった

 

その意識の差とも言えるだろう

 

 

 

----

 

「…バカな」

驚愕するファウダーに迫る会頭のリザイア

 

だが

『戯れは終わりですよ?』

 

「…がはっ」

一筋の閃光が会頭を貫いた

 

 

倒れ伏す会頭

 

『見事なものですね

まさか此処まで踏み込んだ上にあわやファウダーすら討ち果たそうとするとは』

奥の闇から現れたのは

 

「ギ、ギムレーかよ」

 

『おや?貴方とは初対面だと思いましたが

…まぁ良いでしょう。非力なるヒトよ

我が名はギムレー。最期の餞としてこの名を刻むと良いでしょう』

会頭の言葉を受けて名乗るフードを被った女性は自身をギムレーと名乗る

 

 

『しかし困った事をしてくれましたね、貴方達は

折角用意した手駒の殆どを失ってしまいました。補充が効くとは言えど流石に困るものですね』

言葉とは裏腹に愉しそうに語るギムレー

 

だが

「…地竜族ってのはどいつもこいつも油断してくれて助かる限りだよ。バカな竜だ」

 

「な、何をするか!」

他に伏せていた会頭はギムレーを嘲笑うとファウダーに組みつき

 

「やれ!」

そう声をかけた

 

----

 

女にとって会頭は恩人であり、また父親の様な存在でもあった

薄汚れた街のはずれに打ち捨てられていた自分を拾い上げて、様々な事を教えてくれた

戦う術を彼女は求めたが、悲しいことに彼女には会頭の様な魔法の才はなく、どちらかといえば盗賊職が好ましいものだった

 

会頭いわく

「盗賊もやり方次第だろうよ?

俺の知っている盗賊は騎士相手にも時間稼ぎ出来るばかりか、油断すればその命すら盗める程の腕前だった」

との事

 

その為彼女は会頭の側で様々な事を学びながら、自分の才能を伸ばしていった

 

 

全ては恩人である会頭()の為に

 

 

 

父は言った

「奴等は死体すら操れる

俺達が死んで死体が残れば間違いなく奴等は嬉々としてそれを利用するだろう

…流石に死んでからも尊厳を穢されるのは我慢ならん

一緒に死んでくれるか?我が娘よ」

 

彼女の答えは決まっていた

 

「何処までも

たとえ地獄の果てであってもとと様のそばにいます」

 

 

故に

 

 

「やれ!」

父の声が聞こえるなり、彼女は物陰から飛び出すと

 

敬愛する父ごとファウダーをその短剣で貫いた

 

----

 

「ざまぁみろ

…メディウスよりも詰めが甘かったな」

それが会頭の最期の言葉だった

 

「が、はっ」

ファウダーも虫の息

 

『な

き、貴様等ぁ!!』

ギムレーは怒りの声を上げるが

 

「遅いですよ?」

彼女はそう笑うと父親から託された爆薬に火をつけた

 

「邪竜ギムレー

ヒトの執念を甘く見ましたね?」

彼女は閃光の中に消えていった

 

愛する父と倒すべき敵を道連れにして




という訳で会頭一派とギャンレル達は此処で退場です

セレナ達は神殿の爆発を見て、抵抗を諦めイーリス軍に捕縛されました
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