デートですわよ!!!!
かぼちゃ頭の装飾が街で飛び交う季節(何を言っているんだ?)になった。この世界ではハロウィンと言われる催しがあるらしく、なんでもかぼちゃの被り物をつけて踊り狂うお祭りらしい。本当に意味不明だ。
で、そんな季節に僕はデートに誘われた。誰と、なんて決まってる。僕に友達は1人しかいないんだから。シスターフッドの人たちも仲はいいけど、ほら、同僚を友達とカウント出来ないみたいな感じあるじゃんね。
そんなわけで今日はハナコさんとデートだ。
恋仲でもない女同士で出掛けるのをデートと言えるのかは疑問だが、ハナコさんがデートしましょうって言ってたからまあ多分デートなんだと思う。
「ええっと、クララちゃん?」
「はい!」
「シスターフッドの制服は結構目立つのでは……?」
「これかトリニティの制服しか持ってませんわよ?」
「まあ、そういうことなのでしょうね」
生前も私服の類とか持ってなかったしね。だって衣類なんてなんでもいいじゃないか。と、思っていたけれど。
「ハナコさんのお洋服は、こう、とても綺麗ですわね……」
とても清楚な雰囲気を纏ったハナコさんを目の前にしては流石に衣類なんて、とは言えない。制服によって抑えられていた大人っぽさが全開になっている。
「ふふ、ありがとうございます。折角のデートですから、いつもとは違う私もお見せしたかったのです」
「いつもと同じワタクシでごめんなさい……」
「いえいえ、いつものクララちゃんも可愛いですから。……ああ、では今日のデートでクララちゃんの私服を一緒に選ぶというのはどうでしょう?」
「え?」
こういう機会でしか着ることないしあんまり必要に感じないけど。いやしかし待て、一緒に装備を選びに行くというのは気の知れた仲なら全然有り得る話だ。そう考えるとこのデート、何をしようかと思ったがこれが最適解なのでは?
「クララちゃんさえよければですが、一緒に服を選ぶというのはとても普通の女の子らしいと思いませんか?」
「え、はい!多分そうですわね!」
「そうと決まれば、早速出かけましょうか。時間をかけてゆっくり選びたいですから」
うんうん、いい装備は素材の質によって変わるものだからね。なかなか良いモノに巡り会えないなんてこともザラだ。
うん、薄々気づいてたけど僕の価値観ってこの時代の女の子とズレてるんだろうな。でも銃火器にはみんな目がないし、戦時中っぽくある割に生活が豊かすぎるし、わけがわからないよ。
そんなこの世界の常識に打ちのめされつつも、トリニティ自治区の外のショッピングモールまで電車で移動。ハナコさんは来た事があるらしく、さっそく服が売っているお店へと僕を連れて入った。
「定番のワンピースは当然似合いますね。あ、髪を下ろしてもいいですか?……はい、ありがとうございます。ええ、こちらのほうが大人っぽいですね」
「フリフリしたのもいいですね。お団子にしちゃって…………可愛らしい雰囲気でこっちもいいですね」
「パーカーも似合いますね……。ホットパンツと併せてカジュアルな感じに…………」
「デニムのパンツでボーイッシュな感じも……ショートヘアにしたらアリかもしれません」
「これは流石に……くっ、抑えなくては…………」
ただの案山子ですな。
いや本当に案山子になって言われるがままに着せ替えられてるだけなんだ。仕方ないよ、服選びとか僕に出来るわけないし、ハナコさんに全部任せるしかないし。
ハナコさんはとてもセンスがいい。僕に似合いそうな服を選んで持ってきてくれる、それだけでも感謝するべきだ。うん、なんか、それ服?みたいなのに手を伸ばして引っ込めてを繰り返してるけど、なにかの見間違いだろう多分。
ごめんやっぱ言及させて欲しいんだけどそれは服なの?どんな目的であれその布面積にはならないと思うんだけど。夏の干からびそうな日にしか着れなくない?ていうかもう裸で良くない?
「は、裸の方が良い!?もしかしてクララちゃん、そのような趣味が……!?」
ないです。
ということでね、なんと持ってきたもの全部買いました。いやどれもべた褒めしてくれるからつい……あ、最後のは買ってないよ。
気づけば夕方、日は暮れて辺りはすっかりと茜色に包まれていた。
毎日のように昼食を一緒に食べているものの、こうして夕食を取るのは初めてかもしれない。とか思いながらショッピングモールの中にあるレストランで夕食を取りながら談笑していると、ハナコさんが突然こんなことを言い始めた。
「ところで、クララちゃんはいつまでその慣れない言葉遣いを続けるんですか?」
「えっ!?バレてましたの!?」
「ええ、それはもう。最近は正しい使い方ができているみたいですが、出会った頃のクララちゃんと言ったら……うふふ」
今明かされる衝撃の真実。もしかして色んな人から同じように思われてた……ってコト!?
「そ、その……お淑やかさをどうにか見せようと思って……」
「クララちゃんの気持ちはわかりますが、実はそんなに気にすることじゃないんですよ?確かにトリニティ自治区内からの内部進学は多いですが、百鬼夜行や山海経など遠い自治区からの進学で入った子もいますし……それに内部進学の子が全てお嬢様というわけでもありませんから。ですから、クララちゃんはありのままでいていいんです」
そ、そうだったのか……。いやいや、でも僕みたいな男勝りな子は見たことがないぞ?別にそれで変な噂されるのは気にならないけど、目立ったり怪しまれたりするわけにはいかないんだ。
僕がうんうんと唸っていると珍しくハナコさんがちょっと不機嫌な顔をした。
「私では、信頼に足らないということですか?これでもクララちゃんとは良い関係を築けていると思っていたのですが……」
「や、いや!そういう事じゃなくて!えっと、ワタクシのいつも通りはちょっと人と違うというか、あまりに目立ちすぎるというか、えーっと、うーんと」
︎︎その言い方はズルいと思います!
だってそもそも住んでいた世界が違うのに、それを悟られないように生きていくには他人との差異というものはあまりにも重荷なもので。
「ではまずは私だけに素の姿を見せてみるというのはどうでしょう?私は絶対に笑ったりしませんし、乏すような真似もしません」
ん~~~そういう心配をしているわけじゃないんだけど。でもこれではあまりにもハナコさんに不誠実だ。
「それに、自分を隠し続けるというのはいつか限界が来るものです。そうなってしまった時に壊れてしまうくらいなら、どこかで少しずつ発散した方がいいと思いませんか?」
それは……まあ正論だけど。
「な、ならせめて心の中だけで留めておいてもいいでしょうか。やはり外に出すのは憚られるので心の内だけで呼び捨てにするということで……」
「むぅ……これ以上は無理強いですね。ええ、わかりました。今はそれを打ち明けてくれた事実だけでも十分です」
ホッと息を吐く。どうにかハナコさん……いやハナコは納得してくれたようだった。
「しかし呼び捨て……呼び捨てですか、ふふふ」
「あっ!?いや、ちがっ……くはないんですけど……」
「良いじゃないですか、友達って感じがして。とても距離が縮まったように感じませんか?」
「あ、う、あぅ」
口が滑ったことに気づいたのは全てが終わった後だった。まあ、呼び捨てくらいならギリギリ……トリニティで許されるかは微妙なところだけど。だって誰もがさん付け様付け御機嫌ようじゃんね。
「トリニティにもきっといると思いますよ?多くはないと思いますが」
本当にぃ?
「それに近年ではそういった堅苦しい風習を変えようという動きもありますから。いつかきっと、ありのままのクララちゃんを私に見せてくださいね」
む、むむ。それは約束できないけど……。
「まあ、もし、大丈夫そうだと思ったら……そう、する、ます」
「ふふっ……ええ、きっと」
まあ、心の中での呼び捨てで少しずつ慣れていけば、いずれはみんなともそんな関係に慣れるだろうか。
︎︎シスターフッドの人たちの顔が浮かぶ。ヒナタも───────サクラコも。
自然主義のハナコVS異世界人バレしたくないクララ、ファイッ!
迫真のサクラコ呼びは見ることが出来るのか。