「それで、最近アニメにハマってるんですね?」
「はい!お友達から勧めてもらって、こんなに面白い文化があったなんて……」
「ふふ、よかったですねぇクララちゃん」
恒例の昼食タイムがハナコとの貴重なお喋りタイム。最近はこういう時間も少なくなってきた。
外では雪が降り、すっかりピクニックのような食べ方は出来なくなった。
「ハナコさんは最近何してるんですの?」
「私は…………」
さっきまで笑顔だったハナコの笑顔が曇る。
「あんま、微妙な感じですか?」
「まあ……そうですね。クララちゃんは知らなくてもいいことですよ」
「むむむ……」
いや僕も隠し事してるけども。モヤモヤするものはするというか、そんなしんどそうな顔されると助けたいという気持ちが湧いてくる。
とはいえ放課後に忙しそうにしているハナコと同じように、僕もまたシスターフッドの活動に勤しんでいる。最初の仕事のように調査を命じられることもあれば、ボランティア活動や他の部活動の支援などにも駆り出され、活動は様々だ。ハナコは部活動に所属していないようだけど、じゃあ放課後に何をしているの?という話。知らなくてもいいと言われるのだから、何かしらしているんだろうけれど。
部活をしていないのであればこっそりとシスターフッドの活動の名目で手伝いに行くことも出来ないしなぁと。まあ本音は違うところにあるんだけど。
「ハナコさんとの時間が減るのは寂しいですわねぇ……」
ポツリと零した言葉に、ハナコが固まる。人がいるとは思えないほどの無音の空間が形成された。
「えっ、あっ、いや!迷惑を掛けるつもりはなくて!ただ、時間があれば前みたいにまたお出かけとかしたいなぁって、あ、あはは!ほんと暇な時とか、な、無いかもしれないですけど!」
慌てて弁明するもハナコは目を見開いて固まったまま。めんどくさいとか思われたかも。だってホントのことだし、仕方ないじゃんと思いつつ心の中に仕舞っておけよと心の中のもう1人の自分に怒られたり。
久々にバッドコミュニケーションやらかしたなぁとか思ってると、今度はハナコが呟く。
「私も、クララちゃんみたいになれたら……」
僕みたいに?
いやいや、別に人を羨むほど才のない人間でもあるまいに。
「ワタクシもハナコさんくらい頭が良ければって思いますわよ?」
元々才能を褒められたこともなかったし、平凡な人間だからこそ才能のある人はもちろん羨ましい。むしろ羨ましがられたことは……まあなくはないけれど、ちょっと特殊だったかな。
「いえ、そういう話ではないんですけど……」
結局ハナコが曖昧に微笑んでこの話は終わり。なんだかよくわからなかったけど、褒められてたのかもしれない。なら、いっか!
「そういえば、ハナコさんはアニメ見ないんですの?」
「アニメですか?私はあんまり詳しくはないですけど」
気になっていることを聞いてみたら予想通りというか、まあそんな気はした。今見てるアニメの話はやめておこう。
──────────────
「銃の扱いを、ですか?」
「はい、ワタクシは強くなりたいのです」
放課後、ヒナタに用があって尋ねてみるとそこには同級生sの姿も。別に聞かれたくない話でもないのでまとめて相談というか頼み事をすることにした。
「私もあまり得意とは言い難いですが……どうして急に?」
「クララさんは結構学者っぽいというか、資料専門の方かと思っていましたわ」
「アタシも、サクラコ様が資料の扱いを任せてるって言ってたからそういうことかと思ってました」
「ワタクシ、別に歴史学者になるつもりはありませんよ?」
知的なイメージは悪くないけど、別にそんなに見識を深めて権威ある人間になろうとかは思ってないので。
「ワタクシ、気づいてしまいましたの。強いということはカッコイイということに!」
「「あぁ…………」」
「?」
ヒナタはピンと来てないようだが、残りふたりはなんだか残念そうな視線を送ってくる。なんだよその目は!あなたたちのせいだよ!?
「そしてゆくゆくはシスターフッド第6位くらいの地位にいられればと思っていますわ」
「その、シスターフッドに序列は存在しませんが……」
「第6位というところがかなり拗らせた感ありますわね」
「それ、2歳くらい若くないと許されませんよ?」
「なっなんですか!?別にいいじゃないですか!」
なんだいなんだい、勧めてきたのはそっちじゃないか。
まさかこんなに面白い娯楽があるなんて知らなかったんだ。ハマるのも仕方ないし、憧れるのも無理はないと思わない?アニメってカッコイイ台詞とかシーンが多くてついこうなりたいな~みたいな気持ちが出てきてもおかしくないよね?
「つ、強くなりたいのはいい事だと思いますよ?ほら、正義実現委員会の方々はやっぱり憧れの的と言いますか、人気がありますから」
中には怖がられる方もいるらしいですが、とヒナタが付け加える。
「ああ、2年のエースのツルギさんのことでしょうか?」
「確かに、なんというか迫力がありますよね」
「2年生なのに1番強いというところがカッコイイところですわね!」
「……重症ですわね」
声フェチの冷ややかな視線から目を逸らしつつ、しかしながらツルギという人物の話は僕も聞いたことがある。
正義実現委員会───────すなわちトリニティの治安維持組織のトップ、つまりは最強の人間。しかも最上級生ではないにも関わらず誰もが認めるその強さ。権力の関与しない絶対的な地位。文句無しにカッコイイ。
「ヒナタさんはシスターフッドの中でもかなりの実力者とお伺いしました。是非とも!ワタクシに指導していただきたいと思いお願いしにきたのです!」
「え、ええと、まあ、私なんかで良ければ……」
「動機は不純ですが、まあいいことなのでしょう……」
「アタシはいいと思いますよ?」
これが修行編ってやつか。
魔術が使えない今この世界における絶対的な武器である銃を使いこなせなければ強くなれない。生前はほとんど触れることのなかったものだけど、今度はそういうわけにもいかない。戦わなければ、生き残れない世界なのだから!
「銃撃戦が下手でも生きていく子はいっぱいいますわよ?」
こら!水を差すんじゃない!
これからも同級生sは声フェチとアタシちゃん呼びでいきます。モブのオリキャラに名前まで付けちゃうと収拾つかない気がするので……。